SIREN in Bloodborne   作:猫屍人

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※サブタイトルを一括変更いたしました

内容を示唆するものではなく、単語に収める表現力の練習です。あとSIREN風にするには時間表記ができないので(永遠に夜)
不評なら戻して加筆します

今しばらくご了承ください(ネタ切れじゃないんだからね)


縁由

 野太い雄叫びが街の中に木霊する。

 軋みを上げて回転する車輪を、回して回して回して回して回して回して回して……勢いのままに獣へと振り下ろされる。高速回転する車輪は肉をこそげ落とし、獣の頑強な剛毛を物ともせず、命までもを削り取る。

 

 血に濡れた鈍器とも言い難い仕掛け武器が、ぬちりと血肉を垂らしながら持ち上げられる。殺意と怨念のこびりついたかのような武器を振るうは、医療教会の外套を揺らす金の髪の狩り人。

 

「これで、片付いたようですね」

 

 ゆったりと周囲を見回した男は、落ち着いた声でそう言った。そんな冷めた反応の彼に反して、彼が居る広場には無数の獣や人型が派手に臓腑を撒き散らしながら屍を晒していた。人々を救うはずの医療教会所属であるはずが、正気を無くした大男。その他ただ人を襲い続けるだけの狂気に呑まれた教会の白装束。それらをも巻き込まんと訪れた獣ども。

 大聖堂が見下ろす階段の先、かつては憩いの広場であったのであろうそこは、もはや人の営みを感じられぬ衰退と破滅の様相を呈している。

 そんな場所にいたのは、なにもこの車輪を担ぐ金髪の男だけではなかった。

 

「助かったよ、アルフレートさん」

「お前、もうちょっと綺麗に戦えないのか…? 気分が悪くなりそうだ」

 

 そう、須田恭也と神代美耶子もまた狩人を追いかけようとしてこの広場へと訪れていた。しかし、彼らはすでに顔見知りの様子である。

 

「いえ、貴方も目的は違えど私と同じ狩り人。行動理念も、尊敬に値するものです。私で良ければいくらでも手を貸しましょう。キョーヤ殿」

 

 と、返したのはアルフレート、恭也にそう呼ばれた男だ。彼は狩人ではあるが、どうやら美耶子の声は聞こえていないらしい。む、と反応を見た美耶子は口をつぐむ。

 そのアルフレートであるが、今の見た目はかなり強烈だ。無数の肉片や臓物を狩装束へこびりつかせながら、屈託のない笑みを浮かべるという中々に狂気的な光景を作り出している。彼にとっては扱う武器が武器であるのだから茶飯事なのだが、慣れぬ恭也たちにしてみれば苦笑いを浮かべるのが精一杯であった。

 鈍感なのか、アルフレートは恭也の表情に気がついていないようだが。

 

 この二人が出会ったのは、恭也がオドン教会を出てすぐのことだ。開口一番、アルフレートは問うた。なんでも、「穢れた血族」というものを狩るためにこの夜を一人練り歩いているのだと。問うばかりでなく、他にも、彼は情報交換と称して何も知らぬであろう恭也に様々な情報を提供すると言った。この街に辿り着いてから、ようやく友好的な人物の登場というわけだ。

 いざ話そうと歩きながら辿り着いた先にあったのが、件の広場。彼も正気を無くした元同僚には思うところがあるらしく、せめて形が人のままである内に狩ってやりたいと言いでて始末をつけたわけである。

 

 そんな彼がもたらした情報は、医療教会が何をしているのか、血族とやらが医療教会にとって如何なる悪逆であるか。少しばかり主観が強いが、おそらく恭也が今まで得た中で最も正確な内容であった。これらを聞いた恭也は、あなぬけだった知識を補うようにして保管することができた。

 なぜ狩人のような存在が誕生したのか。そして血の医療とは何であるのか。そもそも、この街はどのようにして血の医療に着手したのか。それは、医療教会に長くいたアルフレートであるからこそ語れる数々。

 

 そして起源は、ビルゲンワースからであると。狩人が目指した場所が、獣狩の夜を解明するために必要な場所である。そう、恭也の中で最も明確に認識された瞬間であった。

 

「ええっと、アルフレートさんはさ、逆に欲しい情報ってあるのか?」

 

 多くを話してくれる事に感謝しつつも、この余所者を嫌う街の気風を脳裏に掠めた恭也は対価として差し出せる情報の如何を問うた。するとアルフレートはその気遣いに気づいたのか、くすりと微笑み一つの要求を伝えた。

 

「……ええ、血族の長が今も居座る場所、カインハーストへと至る道を見つけるようなことがあれば、是非とも知らせて頂きたい。私が望むのはソレだけです」

 

 血族。その事を話すアルフレートの雰囲気は、恭也も背筋を凍えさせるほど苛烈なものであった。逆に言えば、彼をそこまで苛つかせる何かを血族は成していたということである。現状その一つの意見しか聞いていないとはいえ、こうして共闘してもらった恩もある。

 恭也は一にも二にもなく頷いた。もちろん、返答は友好を求めるソレである。

 

「わかった。どこで見つかるかはわかんないけどさ、血族と、カインハーストだな。その単語を頼りに、俺も探してみるよ」

「おお、ありがとうございます!」

 

 元が整った顔立ちということもあって、アルフレートが浮かべる心からの笑みというのはずいぶんと眩しいものだ。恭也は内心で、イケメンとはこういう人なんだろうなと、ツンと立った異国の顔立ちにマジマジと視線を寄せる。

 

「私は市内にある医療教会所属の建物から情報を集める予定です。ですので、禁域の森に行かれるのでしたら、そちらに程近いテラスで情報を整理しています。何かあれば、そちらにお寄りください」

「うん。じゃあ俺はその先の、狩人さんが行った禁域の森だっけ。そこを抜けてみる」

「どうかお気をつけて。禁域の森は以前、大きな獣が暴れてからというもの、狂った住人共の手で大掛かりなトラップが仕掛けられていると、遠見の者からの報告を受けたことがあります。トラップがそのままであれば、人の身など」

 

 いとも容易く砕かれる。その言葉を腕で遮って笑顔を見せた恭也は、大きく腕を振りながらアルフレートと別れた。

 

「…やれやれ、あの様な少年がどのような業を背負わされているのか。しかし、有意義な時間でした。だからこそ、願わくば彼のような人物には穢れた血族なんぞとは関わってほしくはないものです」

 

 微笑むアルフレートもまた、恭也にマイナスの印象は抱いていないらしい。狩装束にこびりついた肉片を埃でも払うかのように振るって、車輪を担ぎ直す。そんな彼の行く末を、黄金の月光が照らしていた。

 

 

 

 

 禁域の森へと続く市内からの道は、当然というべきか、酷く荒れ果てていた。残骸に腰掛けたままの死体など、何があればあのような事態に陥ればああなるのか。未だ神秘というヤーナムに慣れきっていない恭也達を、容赦なく蝕むピースがまた一つ蝕んでいく。

 鬱蒼と茂る草木は月明かりを覆い隠し、闇夜に紛れる敵意が草の根かき分けながら恭也の首を食い千切らんと迫り来るが、彼が手に握る焔薙がそれをゆるさない。暗闇の中に蒼い光が炸裂し、獣の断末魔が響き渡る。

 

 見通しも悪く、常人では踏み入ることが出来ぬからこそ禁域の森。かつての聖地のはじまりを、残酷な時の流れで秘密と共に覆い隠した場所。いや、それが必然であったのだろうか。隠されるべくして隠された、神秘の巣食う学び舎。白痴を超え、神秘の秘密へ導く地。

 

 その森へとついに足を踏み入れた彼は、焔薙に灯した炎を頼りに視界を広げていく。彼が一歩を踏みしめるたび、ぐちりと腐った落ち葉が悲鳴をあげる。時折、何のためか焚き火や放火の後が見られるが、これはこれで、まだ正気を保った人間が獣に堕ちた者たちに抵抗した跡なのであろうか。

 もはや、その場にいる恭也にも命の息吹は感じられないが。

 

「この森、ずっと変なカンジがする」

 

 入り口であろう太鼓橋を渡った辺りで、美耶子が不安げにそう呟いた。

 えっ、と恭也が反応しかけた瞬間、彼の足は硬質なものを踏み込んでしまい、姿勢はかなり前のめりになる。

 

「ま、前!」

「うぉわっ!?」

 

 すんでのところで、棘をこれでもかと取り付けた丸太のブランコを屈んで避けた恭也はブチブチと嫌な音を立て始めた振り子トラップの真横へと飛び込んだ。一瞬遅れて、恭也が屈んでいた場所に紐のちぎれたトラップが投げ出され、その勢いのまま転がったかと思えば進んできていた太鼓橋があった谷底へと堕ちていく。

 巻き込まれていれば、死にはせずとも重症と共に戻れぬ谷底へのダイブを強制させられていただろう。

 

「ごめん恭也、サイアクのところで呼び止めちゃった」

「大丈夫だって、ほら、ピンピンしてるし」

 

 恭也は美耶子の視界をジャックしながら、彼女が見ている方へと手を広げた。美耶子に生かしてもらったこの身体があってこそ。加えて、なだれ込んできた啓蒙とやらのおかげで、恭也の体捌きは以前の異界のソレとは比べ物にならないほどの成長を遂げている。

 だが、美耶子が言いたいのはそういうことではない。こうして、自分と話すようになってからというもの、恭也は随分と矢面に立って戦いたがる。その心境を察せないほど、美耶子も鈍感ではない。ではないのだが、そんな彼に何もしてやれない。無力感が、美耶子の心に僅かな陰りを生み出していた。

 

「気にするなって」

 

 恭也は笑ってそう言うが、この短時間でここまで大きな怪我を繰り返してきたのは初めてだ。銃で撃たれる、刃物で切られる、焼かれる。確かに大怪我だろう。だが、獣のような膂力で抉られたり、内側から弾けとんでも可笑しくはない威力で叩きつけられたり、恭也は人智を超えた痛みをすでに味わっているはず。

 だが、今までの異界で確かに呻いていたはずの痛みを、彼はもうなんともないかのように振る舞っている。

 

「……啓蒙って、本当にいいものなのかな」

「え?」

「アデーラは真実を見るための力だって言ってたけど、それはわたしの幻視とはまた違う。そんなのを得たから戦い方が分かるなんて、なんかおかしい」

「うーん…そうは言っても、おかげであんまり痛みとか気にならなくなってきたしなあ」「気にならないって、恭也」

 

 聞き捨てならない事を耳に挟み、美耶子は頭の何処かで警鐘を鳴らしながら聞き返した。対して、恭也は何でも無いかのように彼女に答える。

 

「痛いのは痛いんだけどさ、そんなことよりなんとかしなきゃ、って感じが強いんだよな。だから怪我とかも気にせず身体が動かせるんだ。ほら、あの大橋の上のバケモノの時なんか―――」

「やっぱり、ヘン。ヘンだよ恭也」

 

 致命的に、人としてズレてきている。美耶子はそう思った。

 自分のせいで恭也は約束を果たし続けているが、その過程では、せめて、人らしくあってほしかった。だが、恭也は確実に只人のそれとは離れた精神性を得始めている。あのとき、神を討った時とはまた違う。どこか、狂気にも似た妄執の片鱗。

 普通の人間ならば感じられないであろうソレを、長く恭也を見てきた美耶子は感じていた。

 

「ねえ、この異界をどうにかしたいって思うのはいいけど、でも」

「止まれないんだ」

 

 だから美耶子は、懇願して彼の歩みを少しでも遅くしようと言葉を考えた。それも、彼自身によって遮られたのだが、後に続いた言葉は彼女を黙らせてしまうもの。

 

「ここはさ、美耶子が体を持って、触れるようになる方法があるかもしれないんだ。そう思うと、町の人達のこともあるけど、何より美耶子のためにさ、止まれない」

 

 足取りを重くさせる湿気った地面、ちらほらと見えてきた人の手が加えられた腐った木材の道。それらを踏みしめながら、恭也は自然体で歩き続けていた。焔薙は草を切り払い、刀から発せられる炎は彼の道を照らす。決して見失わないようにと、言い聞かせるかのように。

 

「……ばか。止めたいと思ったら絶対に止めるから」

「心配してくれてありがとうな、やっぱ、ちゃんとさ、美耶子に触れたいよ」

「すけべ」

「え、そういう意味じゃないって! 分かってて言っただろ今の」

 

 思ってくれているのは本当に嬉しいが、やはり希薄な存在でしか無い自分には、恭也を引き止めることは出来ない。元々、ここに来るまで彼は美耶子に触れられなかったし、声も聞けなかった。

 そんな長い旅路の中、その一端がこうして手に入った以上、彼が固執するのも必然だったのだろう。

 美耶子は、涙を飲みながら、あくまで声だけは平静を保って彼とのやり取りを続けた。今だけは、姿が見えないことに感謝しながら、そんな自分を卑怯だとも思いながら。

 

「お、なんか見えてきた」

 

 気持ちも落ち着かせ、気持ちを新たに進んだ先で彼が声を発した。

 この森といえば、墓石のようなものが立ち並んだり、それらの近くで狂った獣狩の民衆がたむろっている道しかない。そんな場所を進んだ先で、ようやく集落と思しき場所を発見したのだ。酷い荒れ具合である上、今のところは狩人が先行したと思わしき死体が、彼の進んだ目印のように転がっているため、あまり迷うこともなく、突っ切ることが出来ていた。

 ここも住人たちの憩いの場であったのだろう。だが、其処に倒れる死体の全てが体の一部に獣となりかけた痕跡が見える。蕩けて形のない瞳を見開いたまま倒れる屍、そして彼らが持っていた武器が辺りに巻き散らかされている。このような事ができる人物を、恭也はすぐに脳裏に浮かべた。

 

「この人数を一人で捌いたのか……」

 

 あの狩人も強いな、と息を巻く。戦闘の際、恭也は不死性を利用したゴリ押しと、焔薙や宇理炎という強力な神器を用いた圧殺を主としているが、対する狩人は手にした仕掛け武器を持ち替え、変形させ、状況に応じて確実に銃撃を差し込み致命傷を与える戦い方。

 集中力が続かなければ戦えないとも言えるが、故にこの惨状から実力が伺い知れる。

 

「なんだろう……この感じ」

 

 恭也が目の前の光景を焼き付けている中、美耶子がもどかしげに呟いた。

 

「どうしたんだ?」

「あっち、あっちの崖上から…なんか嫌なカンジがする」

「えっと」

 

 視界を借り、美耶子の指摘したほうを見る。道と呼べるかは怪しいが、確かに人が通れそうな場所はあった。しかし自分の視界にはないが、美耶子の視界には赤い何かが流れている様子が見えた。

 赤い何か。どちらかと言うと黒っぽい。飛び散ってしばらくした血のような色。死血の色。濃厚な死血という単語が頭に浮かんでくる。これもまた、高まった啓蒙のもたらしたものなのだろうか。

 

「嫌な感じかぁ」

 

 恭也はそのような感覚は無いが、物理的な慣れが無い美耶子でなければ気づけない違和感というものもある。もう一度彼は本来狩人が通ったであろう道を見る。死体が標のように続いており、それが彼の足跡代わりにもなっていた。追うのは、そう難しくはなさそうだ。

 

「狩人さんの事も気になるけど、美耶子が嫌な思いしてほしくないしな。ちょっと寄り道しようか」

「でも」

 

 失言であると思ったのか、ハッとしたように言葉を続けようとした美耶子に、かぶせるように彼は言う。

 

「同じところ探すより、狩人さんが行ってない所でなにか探したほうが良いかもしれないだろ」

 

 誰が聞いても取って付けたような理由であることは明白だった。美耶子はそれを少しうれしく思いながらも、また自分がきっかけで恭也を縛り付けているのではないかと不安を抱いてしまう。

 だが、やはり何度でも思うのだ。こうしてただ一人、自分を思い続けていると信じられる人間が居ることが嬉しいのだと。赤面しそうな顔を、見えないのに咄嗟に覆い隠してしまった。

 

 彼は一度集落を出ると、崖上に続く道の方へと足を向けた。途中凶暴化した犬も物陰から襲いかかってきていたが、美耶子が事前に察知して教えていただけあって、逆にタイミングを合わせて喉笛を切り抜けていく。血糊を払って蒼炎で浄化し、恭也は更に細い道へと顔を向けた。

 

「あっちの方?」

「うん」

 

 美耶子の視界には、先程よりもはっきりと赤黒く濃厚な流れが見える。その源流を辿ってみれば、洞窟の入口がポッカリと口を開けて待ち構えていた。

 

 更に狭く、そして闇に閉ざされた場所だ。

 彼は刀の柄を握る力を強め、意を決して飛び込んだ。

 

 

 

 

 

「安定していますね。今のところは、大丈夫でしょうか」

 

 アヴァの額に乗せたタオルを替えて、アデーラは胸をなでおろした。

 幸いにも、アリアンナが自分の娼館から持ってきた飲水や食料の蓄えはまだある。加えて、教会の狩装束を着た金髪の狩人がどこからか医療品を持ってきてくれたおかげで、アヴァの看病にも余裕を持って臨める。尤も、その金髪の狩人は物を届けるなりすぐどこかへと行ってしまったが。

 

 さて、とアデーラは一息をつく。不謹慎だとは思いつつも、アデーラ自身、こうして誰かの看病に専念することで自分の嫌な記憶を掘り返すような考えに至らなくて済んでいる。もう少しだけ、落ち着かせる時間が欲しいなどと。手付きとは裏腹に、自分勝手なものではないか。彼女はそうして、結局己を嫌悪していた。

 

「私も癒者の心得があればよかったのだけど、流石に専門家には劣るわね」

「アリアンナ……さん」

 

 ぎこちない敬称を込めて呼ばれたアリアンナは、いつものように微笑を携えアデーラに水を手渡した。ただタオルを替えるだけでなく、アヴァの症状に気を遣いながらの看病だ。また、この状況が否応にもアデーラの緊張を張り詰めさせる。

 

 受け取った水に少しばかりの視線を投げてから、彼女はグラスを傾けゴクリと喉を鳴らした。山間の冷えた空気が自然と貯蔵水を冷えさせ、火照った身体によく染み渡る。味のほどはいつもの不味さではあったが、それはアデーラをいくらか落ち着かせた。

 

「ありがとうございます」

「いいのよ。状況はどう?」

「おおよその傷は癒えていると思います。あとは体力の回復と、彼女の精神が打ち勝てば無事に目覚めるでしょう」

 

 サーベルという、人を殺傷するための武器が振り下ろされたはずのアヴァ、その肩口に大きな傷跡が残っているが、既に新たな皮膚と肉が傷口を繋ぎ止めていた。恐るべきはこの街がもたらす血の医療の賜物か。はたまた、彼女が偶然摂取した身内の輸血液との相性か。怪我に関しては、もう心配はないだろう。この街で傷のある女など、珍しいことではない。

 だが、アリアンナもアデーラも、そして未だ正気を保つ住人たちが唯一恐れる可能性が残っている。

 

「…獣の病は?」

「先程、言ったとおりです」

「そう」

 

 盲目の赤衣の男も固唾をのんで見守るアヴァには、獣化の危険性が新たに残されていたのである。

 住人たちにとっては周知の事実、狩人であろうと、このヤーナムで輸血を受けた以上はいつ獣の病が発症しても可笑しくはない。あの少年は、この結末を知っているのだろうか。あるいは。

 

 オドン教会の時間は、迫り来る暗闇と、祓いきれない恐怖によってゆっくりと過ぎていく。

 

 成り行きを見守っていた偏屈な初老の男は、気に食わない、と鼻を鳴らして帽子を深くかぶり直した。




誰も見る人居なくなった頃合いを見て投稿です。
花苗やら物品整理で疲れて中々投稿の気力残ってなかったのもあります。
細々ながらも終わりを目指して投稿続けていきますので今後共よろしくオナシャス(化けの皮剥がれた

まぁあんまりにもコンセプト離れるようなら罵倒してください
といってもあんまりバッドエンド好きじゃないのですが







追記 須田恭也は救世主ではない

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