二人だけが知る   作:不思議ちゃん

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たぶん、続かない
息抜きとして書くかもしれないし書かないかもしれない
だけどはるのんとのイチャイチャは書きたい


一話

 人は常に愚かである。というのが俺の持論である。

 何をもってそのような考えかを述べると実に文庫本1冊以上にも及ぶ。

 

 中で1つ挙げるとするならば、人間関係だろうか。

 一見、仲睦まじい女子グループがあるとする。楽しそうにお話しているではないか。──なんて思ってはいけない。

 裏では牽制、蹴落としあいの合戦である。

 そんな表面上だけ取り繕い、言葉という鎖で相手を縛り、自身が優位になるようにとするための希薄な関係。

 

 それは大人になっても変わらず、自身の地位を守るためにも──。

 

「先輩、聞いてます?」

 

 声をかけられ、考え込んでいた意識が浮上する。

 

「全く聞いていなかった」

「全くって……真面目な相談だって言ったじゃないですか?」

 

 今現在、目の前に座る彼女を見遣れば。少し赤らめた頰を膨らませ、怒ってますよとアピールするためか腕を組んでいるが。

 その実、自身の武器となる身体(むね)を強調してからかってきているのが分かる。

 

 それを一瞥して鼻で笑い、手に持っていた文庫本へと目を落とせば。対応が気に食わないのか何やら騒がしいが、それも少ししたら落ち着く。

 何やら企んでいる雰囲気を感じたが、コーヒーの注がれたカップに手を伸ばせばすぐに引っ込んだ。

 

 チラリとバレないように横目で確認すれば、俺の反応をどうやって引き出そうか。なんてことを考えながらカップを両手で包むようにして持ち、コーヒーを飲んでいる姿が見える。

 

 …………はぁ。

 

「…………つまらなければすぐに帰るからな」

「うんうん、そうこなくっちゃ!」

 

 人に対して面倒だと感じるなんて、いつ振りだろうか。

 俺がこうなってしまったのは『転生特典』というやつのせいなのだが。

 

 やはり彼女──雪ノ下陽乃には期待せざるを得ない。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 ふと気付いた時、3歳の子どもになっていた。

 何を言っているのか俺自身でさえも分からないが、事実なのだから仕方がない。

 

 一通りの混乱が落ち着いたのを見計らったようなタイミングで『情報』が脳に流れ込んでくる。

 

 前世で死んだ俺は神様に出会い、特典として《人特攻》《人特防》をもらって転生した。

 転生先はランダムらしく、どうなってもうまく活用できそうなものとして選んだ特典だ。

 負荷がかかるため3歳までは記憶が封印されていたという。

 

 ここがどの世界なのかまだ分からないが、何とかなるだろうと言った余裕が、この時の俺にはまだあった。

 

 

 

 幼稚園、小学校を過ごし。もらった特典の幅広さに俺は言葉を失った。

 ただ単に物理が強くなるだけだと俺は思っていたのだ。

 

 しかし、蓋を開けてみればそれ以上だった。

 《人》に対しての特攻、特防はケンカで強いだけでなく。言葉に対しても《力》を持っていた。

 俺は人に何を言われても、それこそどんな口汚く罵られようが褒められようが何も感じることはなく。

 逆に俺が軽くバカにしただけで相手は傷つき、褒めればとても喜ばれる。中には感動して泣きだすものまでいた。

 

 それは芸術にも当てはまり、運動のほとんどにも当てはまった。

 一部、陸上や水泳など、直接人と戦わずタイムを競うものには当てはまらなかったが。

 

 勉強は人が解き明かしたものだからなのかできる。テストもどのような問題が出るか、先生の授業を受けていたらなんとなく分かるのだが……どういった原理なのか。

 

 人が何をしたいのか、何をやろうとしているのかが分かる。何で分かるのか分からないが、分かるのだから仕方がない。

 

 あとは意識して行動するだけで人に魅せることが出来る。

 この辺も発動条件がよく分からないが、魅せたい相手を意識する事が条件だと思っている。

 

 結局、自分でも何を基準に効果が出るのか分かっていない。

 ただ感動を覚えるのがほとんど自然になり。人の嫌なとこが目につき、他人と必要以上に関わらないようになった。

 受け答えはするが、1人で本を読んでいる時間の方が圧倒的に多い。

 

 

 

 だから中学を卒業し、振り返ってみても。周りは泣いている中1人、どこか浮いている気はしたが。

 それでも心が揺れるようなことはなかった。

 

 

 

 高校は家から近いという理由だけで総武高等学校に通うことを決めた。

 入学式があり、教室で自己紹介をし。グループができていく。

 この学校に知り合いは殆どいないため、俺を知らない子が声をかけてくるが。1週間もすれば中学と変わらない状況が出来上がっていた。

 

 また何も起きないまま卒業して大学に入り、卒業して就職。

 一体何をして生きていきたいのだろう。

 最近はこのような自問が増えたような気がする。

 

 

 

 そして代わり映えのしない日々を送りながら高校2年へと上がった時。

 すっかり忘れていたことを思い出した。

 総武高等学校で気付けたはずなのに。

 教室から外を見ていて彼女を見つけた。

 

 その時、長らく人で動くことのなかった感情に反応があった。

 だけど関わるとろくな事がないという印象しかない彼女と接点を持ちたくない。

 そっと目を逸らし、何も見なかったことにした。

 

 『俺ガイル』に登場するキャラクター。

 ──雪ノ下陽乃から。


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