夏が終わり、秋になった。
緑色だった葉も赤く色付き、見慣れた景色に新鮮さを与えてくれる。
最近は過ごしやすい日も増えてきたけれど、これから寒くなると思うと少しだけ気が滅入ってしまう。
「お待たせ、先輩」
「終わる時間が一緒なんだ。ほとんど待っていないよ」
それは今までの話であり、これからは違う。
先輩と変わらず過ごしていけるのなら、それもあまり気にならないと思う。
一緒に過ごす時間がとても暖かく幸せだから。
「そう言えば、もう衣替えの時期か」
「先輩も着替えてるのに、私見て気付くんですか?」
「んー、確かにそうだな」
夏休みの間、何度も
けれどまだ、私と先輩は恋仲じゃない。
……何度かチャンスはあったのだ。
あったのだが……そのチャンスが来るたびに私はチキンとなってしまう。
そして家に帰り、雪乃ちゃんにそう報告すれば呆れたため息が返ってくるのだ。
恋愛ものの小説を読んだとき、早く告白すればいいのに。なんて思ったりもしていたけれど。
もし断られて今の関係が壊れるくらいなら、このままぬるま湯でもいい。
今の私なら、そう考えていたヒロインの気持ちが痛いほど良くわかる。
創作であれば分かりやすくするため、相手がどう思っているのか描写されたりしているが、現実ではそうもいかない。
先輩からもよく話してくれるようになってきたから悪く思われていることはないだろう。
けれど先輩が私に抱いている『好き』がどの『好き』なのか分からない。
けれどそろそろ、ぬるま湯からも出て行かなくちゃいけないのだ。
再来年になれば先輩はいない。
強制的に変化をしなければいけない時間というものはやってくる。
「俺が変わったきっかけが雪ノ下陽乃だから、かな」
「…………そうなんですか?」
「ああ、そうだよ」
☆☆☆
「ああ、そうだよ」
そう言って頷けば、雪ノ下陽乃は嬉しさを抑えようとして抑えきれず、ニヤニヤとした表情をし始めた。
それにしても雪ノ下陽乃の言う通りだ。
葉の色が変わっていることも、クラスメイトたちが衣替えをしていることにも気付いていた。
けれど季節が変わったんだなと確かに感じたのは雪ノ下陽乃を見てからだ。
変わったきっかけが雪ノ下陽乃だからと答えたが、本当は別の理由がある……気がする。
そしてその答えも知っているような……。
でも、それを明確にしてしまうと今まで通りではいられないような気がしてずっと目を逸らしている。
けれどそろそろ目を逸らし続けるのも限界な気がしてきた。
変わらない関係など絶対にない。
不変だと思っていたものでさえも時間がそれを変えてしまうのだから。
今一度、はっきりとさせるべきなのだろう。
俺は──雪ノ下陽乃が好きなのだと。
きっと、この気持ちは転生する前から抱いていた。
そして今、気がついた。
何故、雪ノ下陽乃に心動かされるのかを。
──好きな人の言葉が心に響かないなんてこと、ないだろう。
──好きな人の行動を意識しないなんてこと、ないだろう。
原作のキャラだとか関係ないのだ。
いま、ここで俺は生きていて、目の前にいる雪ノ下陽乃もまた生きている。
気付けば簡単なことだった。
ただそれだけの事だったのだ。
気付いた今、勢いのままに言わなければ今後はずっと大事な場面でチキンになると思う。
そう決意して口を開いたのだが。
「私、先輩のことが好きです」
雪ノ下陽乃にそう言われ、俺は脳の処理が追い付かずに固まるしかなかった。
ようやく自身の抱く気持ちに気付いた主人公なのに、告白を先越されるとはなんとも可哀想な……