二人だけが知る   作:不思議ちゃん

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もうイチャイチャだけ書きたい


二話

 大体の学校では入学して1週間もすればグループが出来上がり、1ヶ月が過ぎる頃にはグループも固定され、新しい環境に慣れて多少の落ち着きが出てくる。

 

 だが、今年度の新入生はとある1人の女生徒によって少し様子が異なっていた。

 グループは確かに出来上がり、カーストもあるのだが、それらの頂点に女王がいる。

 カースト上位に位置するような人ばかりが周りにいるが、そんな彼女は皆平等に接していた。それを見て彼女の好感度が上がり、慕う人が増えていく。

 

 多感な時期である学生にとって彼女が話題にならないなんてことはなく。ひと月が経つ頃にはその噂は学年を超え、上級生までもが件の女生徒を見にクラスまで押しかけていた。

 

 そんな彼女──雪ノ下陽乃のことを知らないという人が居なくなるのに、そう時間はかからなかった。

 

 

 

 

 

「そういえばそろそろ中間テストが迫ってきてるけど、陽乃ちゃんは大丈夫? 最初で躓くと後に響くから、俺が教えてあげよっか?」

 

 中間テストまで2週間と少し余裕があるが、ある程度の人は取り掛かるであろう時期。

 勉強を教え、好感度を稼ごうとするのが丸わかりな男子生徒だが、それでも嫌な顔ひとつせず。

 

「それは良いですね! みんなで勉強会だなんて!」

「え、う、うん。こっちも良い復習になるからね。他の人にも声かけておくよ」

 

 純粋な笑みを向けられた男子生徒は望んだ状況ではないが、否定して拒否されるよりはとその案を受け入れた。

 

 男子生徒を見送った陽乃は残った休み時間でクラスにいる子へ声をかけたり、SNSで作ったグループに勉強会のことを伝える。

 学校が終わるまでには参加するかの返事もきて人数も分かるだろうとスマホをしまい、次の授業で使う教材なんかを用意して、ふと外に目を向けた。

 

 校庭には体操着に着替えた男子生徒たちがおり、もうすぐ始まるであろう授業を待っていた。

 そんな中、1人だけ少し距離を置いている男子生徒に陽乃の目が向く。

 同じ学年とは少なくとも1回は顔を合わせているため、上級生とまでは絞れたが、2年か3年かまではこの距離で判断がつかない。

 

 ただ、自惚れで無ければほとんどの男子生徒は声をかけるかけないは置いて遠巻きにでも見に来ていると思っている。

 それでも彼を見たことがないため、隠れて見ていたか、そもそも会ったことがないのか。

 

「…………ふふっ」

 

 チャイムが鳴り、先生が教室に入ってきたために観察はそこで終わってしまったが、面白いおもちゃを見つけたと笑みを漏らす。

 

 この時、隣に座っていた男子生徒が笑い声を聞いて陽乃のことを見ていた。

 その笑みはこれまで見たことがない心からの笑みだったという。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 …………見られてるなぁ。

 そちらに目を向ければ目が合うため、確認することはないが、確実に見られていると分かる。

 他の人から見られた時と似たような感覚だが、雪ノ下陽乃のそれは質が違うように感じた。

 

 なんだか興味を持たれた気がする。

 俺1人だけ少し周りと距離があるし、これまで雪ノ下陽乃と会わないようにしてきた。

 だからこそ興味が向いたのだろう。

 

「…………はぁ」

 

 体育教師が来たため、そちらへ向かう途中にため息が出た。

 そしてその事実を認めた時、自分自身に少し驚く。

 自身に関することでため息なんかいくらでもついてきたが、人が関係してついたため息はいつぶりだろうかと。

 

 まだ直接関わっていないというのに、これほどの影響があるとは。

 

 特典のせいで色褪せてしまった世界だが、彼女ならばこんな世界にも彩りを与えてくれるだろう。

 

 だが原作の彼女を知っている分、どうしても1歩が踏み出せない気持ちでいる。

 そんな俺を笑うかのように、授業が始まっても時折、雪ノ下陽乃から視線を感じていた。

 私のおもちゃだと主張するかのように。




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