楽しんでいただけたら幸いでございます。
「ふぁ~・・・」
桜並木の歩道。
その中を一人の青年があくびをしながら歩いていた。
彼の名前は「冬木八代」。
今年から聖凪高校に通うこととなった生徒だ。
短髪の黒髪にアメジストのような瞳をしており、
その顔立ちはどこか大人びた表情をしていた。
「やっぱすこし早すぎたかな?」
桜が舞う季節。つまり春。
春といえば新学期の始まり。
中学から高校へと上がる八代にとって、これが最初の高校生活。
熊本から引っ越してきた彼にとって、初めてはやはり緊張するものだ。
たが、知らない人だらけの学校で不安でありつつも、やはりどこか楽しみにしている。
そんな自分を「子供だなぁ」なんて思いながら歩いていると、やがて聖凪高校の校舎が見えてきた。
「やっぱり綺麗なとこだな・・・」
自分の見たものに対し率直な感想を述べる。
古き伝統が残ると言われているこの学校は、初めて自分が見たときもその通りであろうと思った。
正直八代にとっては引っ越した際近いから通うのが楽だという理由であったが、
このような素晴らしい学校に通えるのなら、頑張って合格した甲斐があったというものだ。
しかも親はほぼ家に帰れないと言っているため、家は好きにして良いときた。
そのため、今日から自分は事実上ほぼ一人暮らし。
嬉しいやら悲しいやら考えたが、自分の好きなように生活ができるこの環境に、八代は心の中でガッツポーズをとるのであった。
「・・・そういえばあいつもこの高校受かったかな」
とある日に起きた突然の出来事。
八代は思い起こしながら自分の教室に向かうのであった。
---2か月前 2月7日 聖凪高校受験当日
「さて、いっちょやってやりますか!」
校門の前で気合を入れながら、八代は聖凪高校に向けて歩き出す。
「っ!?八代じゃないか!?」
「ん?」
校門を通って受験会場まで歩いていたところ、後ろから急に声をかけられた。
振り返ってみると、驚いた表情でこちらを見ている見知らぬ男の子が立っていた。
「えっと、悪い。俺君のこと思い出せないんだけど、どこかであったっけ?」
「えっ!?誰って俺は・・・あっと、初対面だったよな?」
「いや、俺に聞かれても。というかなんで俺の名前知ってるんだ?」
「悪い、俺にもよくわかんねぇんだ。なんかパッと頭に浮かんで、つい呼んじまったんだよ」
「へぇ、そうなのか」
(なんとも不思議なやりとりだな・・・)
頭を抱えて「わけわかんね~。俺どうしちゃったんだ~~!!」と頭を抱えている男の子を見ながら八代は苦笑する。
(多分どっかであってるんだけど、俺が忘れちゃっててこいつが気を使ってくれてるんだろう)
「じゃあしつこくなっちゃうかもしれないけど自己紹介な。俺は冬木 八代。熊本からこっちに引っ越すことになったから、先に受験に来てるんだ」
「熊本から!?遠いところから受験しにくるなんて大変だな。えっと、俺は九澄 大賀。急に名前呼んじゃって悪かったな」
「別にいいよ。そのまま名前で呼んでくれて構わない」
「そっか、じゃあ俺も大賀でいいぜ!宜しくな、八代!」
お互い名前で呼び合いながら握手をする。
「そういえば八代はなんで聖凪受けるんだ?ここ受験難しいし、熊本から来たならなおさら入りやすい学校受けた方がいいんじゃね?」
「まあ普通はそうだよなぁ。でも入れればいろいろ免除されるし、この学校見たとき凄い綺麗でさ。しかもこれから住む俺ん家からスゲー近いから受かったらいいなぁって思ってね!」
「ハハハ!最後が一番の決め手みたいだな!」
「大賀は?」
「俺?俺は・・・」
会場に向かいながら話していると急に九澄があることに気付く。
「あー、やべー!俺入試案内書を家においてきちまったんだった!」
「はぁっ!?お前、何してんだよ!たしか受験はこの入試案内書必須って書いてあったぞ!」
八代は自分の入試案内書を見せながら大賀に言う
「そうなんだよ!だからわりぃ、俺行くわ!柊父に言われてて、なんとしても合格しなきゃならねえんだよ!それに案内書なら事務室に行けばあるかもしれねえからさ!」
「事務室?ああなるほどね。てか、ひいらぎちちって誰?」
「説明してる暇はねぇ!八代、すまん!俺行くわ!」
鞄を担いで大賀が走り始める。
「まったく・・・。大賀!」
「なんだよ!俺、急いでるって・・・」
「また会おうな!」
八代はそういって拳を握り締めて高く上げる。
お互いこの高校に入って再開しようという気持ちを込めて。
「っ!おう、また会おうな!!」
そういって大賀も拳を上げた後、事務室を探しに走っていった。
[受験生の皆さん、校舎へお入り下さい。まもなく面接試験が始まります。面接が始まる前に入試案内書の面接試験の項目を隅々までしっかり読み直しましょう。万が一案内書を忘れてしまった受験生は最寄りの教職員にお申し出下さい。]
「あいつ足早ぇな。・・・さて、俺も頑張らないとな!」
今度会ったら話せばいい。
八代はそう思いながら、再び受験会場へ向かうのであった。
---現在
「あれから無事に入試案内書もらえてれば多分入学できてるはずだよな・・・」
唐突の出会いだった。しかも急に名前を呼ばれるというなんとも不思議な出会い。
だからこそ、八代にはあの時の記憶が頭に焼き付いて離れなかった。
「楽しそうな奴だったし、また会えるといいな!」
そんなことを考えながら八代は校門をくぐり、入学式の会場へと向かうのであった。
いかがでしたでしょうか。
各キャラクターの設定は後ほど上げようかと思ってます。