エム×ゼロ 規格外の魔法使い(仮題)   作:九澄清矢

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第9話:魔法授業

「なるほど、そんなことがあったのね」

 

「まあな。ちょっと調べてみたら伊勢先輩はSプレートで元生徒会魔法執行部だったみたいだし、あそこまで魔法を自在に操ってるのを見ると、相当な実力者だなって思ったな」

 

「へぇー、そうなんだ。・・・というか八代って結構厄介ごとに巻き込まれるタイプ?」

 

先ほどあった騒ぎの内容を八代に聞き、出雲と桃瀬はそう言う。

 

生徒会魔法執行部・・・。

それはこの学校で規則を破った者がいた場合、実力行使でその生徒を取締まる学校直属の警察のような部である。

この学校では時間外の魔法使用は原則禁止となっており、執行部はその時点で連絡を受け取締りを行うのだが、その際に逃れようと抵抗してくる生徒も少なくはない。

そのため、取締りを行う執行部のメンバーは制圧することができるもの、事実上必然的に魔法の実力がある者が集められているということだ。

 

「・・・個人的には否定したいところだ。どちらかというと、大賀のほうがその気質があるからな」

 

「確かにあれは厄介ごとの塊だわな。Gプレートってだけでも目立ちまくりだしよ」

 

肩を竦めながら八代が言うと、孝司が苦笑しながらそう言う。

 

「・・・ちょっと、お喋りはその辺にしときなさいよみんな。柊先生、こっち見てるわよ?」

 

「おっと。悪い氷川さん、気を付けるよ。ありがとう」

 

「・・・別に」

 

氷川が注意し、柊先生をみると授業の説明しながらこちらを見ていたので、お礼を言いながら八代は授業に集中することにした。

 

現在、魔法実習授業により、八代達1年C組は高校敷地内の聖凪山自然区域にきていた。

ここでは魔法を使用することを許されており、野外授業で使われることが多く、周辺には木々や岩など自然で溢れている場所である。

 

「けっ、大したことねーよあんなヤツ!ここにGプレート持ってる1年がいるじゃねーか!」

 

「いいっ!?」

 

そんな中、一際大きな声が聞こえたと思ったら、伊勢が九澄を指さしながら柊たちに話をしているところだった。

伊勢の声が大きめだったため、他の生徒も九澄たちの班に注目する。

 

(聞こえた内容からすると、俺らと同様で伊勢兄の実力が凄いって話だったから伊勢がぶった切ったんだろうな。けど・・・)

 

八代がちらっと柊先生を見ると、大きなため息を尽きながら、大きな木にプレートを挿入するところが見えた。

 

すると、木からツルが伸びて九澄のほうへ向かっていく。

 

それを見た瞬間、八代は氷川にお礼のジェスチャーをし、それを確認した氷川も気にするなとばかりに苦笑する。

 

「ったく、ハタ迷惑な・・・。俺を巻き込むんじゃねぇよ。気持ちは分からなくもねーが・・・」

 

「ああ、気持ちはわかる。こういった野外授業はついムダ話をしてしまうものだ・・・」

 

ため息をつく九澄の後ろに柊先生が目を光らせながら、先ほど伸ばした木のツルを九澄の足に巻きつけていく。

 

----ヒュッ、ガシッ!!

 

「はっ!?」

 

「だが、俺の授業では命取りだということを覚えておくんだな」

 

「ヒィーーー!!すみませんーーー!!つかなんで俺だけーーー!!」

 

足をツルに巻き取られた九澄の身体は上下が反転し、木が大きく揺られて九澄自体を大きく振り回すこととなった。

 

「助けてくれーーー!!!」

 

(これ操作系の魔法だな。操作自体は大賀の足を掴む以外は単一の命令で操作してるのか)

 

人間バイキング状態の九澄を見ながら八代は冷静に柊先生の発動した魔法の分析をしていたのであった。

 

 

 

 

 

「では、聞いていなかった馬鹿者も含め、再度説明する。今日のこの時間は1つの課題をクリアしてもらう。基礎学習で物に動的変化を加える技術は習ってるハズだ。今回はその応用で、一塊10kg弱の石を浮かせてもらおう」

 

そういうと、柊先生は身近にあった石にプレートを投げ、適当に浮かせながら説明をしていく。

 

「時間は30秒間。この授業時間が終わるまでに各班5人が全員クリアできたら合格とする。わかったな。浮かせる方法は一種類ではないぞ。風圧、引力、重力制御あるいは空気を固めてその上に乗せてもいい。各自身についている魔法で対応しても良し、魔術書の魔法を今入力してもかまわん。オイ、九澄。ちょっと手本を見せてやれ」

 

「はぁ?・・・っと、俺はあんまり人前で魔法を見せびらかしたくねーから・・・」

 

「いいからやれ!」

 

----ヒュッ、ピッ!

 

「!・・・アハハ、しっかたねーか・・・。ったく、ちょっとダケだぜ?」

 

一通りの説明をすると、柊先生が九澄を手招きして実演を指示する。

魔法が使えないため九澄は否定していたが、柊先生のサインを確認し仕方がない振りをしながら前に出てくる。

 

「大賀、最初は派手に見せた方がいいぞ」

 

「ああ、俺もそう思ってる」

 

横を通り過ぎる際、八代は九澄に小声でそういうが、九澄もわかっていたようで八代に対してそう答える。

 

「そーいや俺らって九澄が魔法使うトコ見たことねーな」

 

「大概は実演で指名しても拒否ばっかだったからねー」

 

周りからは九澄が魔法を使ったことがないことに気づき、ほとんどの生徒が九澄の実践に注目する。

 

「そーだなー。普通の石コロじゃもの足りねーか、どーせならこっちのでけー岩くらいいきますか、センセイ?」

 

「こんな重そーなのを?てか岩じゃん」

 

「マジ?」

 

九澄が指さしたのは先ほど柊先生が浮かしていた10Kg弱の石ではなく、それよりも明らかに大きすぎる岩であった。

それを聞いた他の生徒たちは一気にどよめきたてる。

 

「・・・おい、調子に乗るなよ」

 

「いーじゃんいーじゃん、こういうのはやるならトコトンだって!最初の擦り込みはハデなほど信じ込みやすいし。一回信じちまったことは人間そう簡単に疑えなくなるモンだろ?」

 

(・・・こいつ)

 

こめかみをピクピクさせながら柊先生が小声で言うと、自分の考えを言い九澄はにやっと笑いながらそう伝える。

その考えに柊先生も納得し、自分もプレートを投げる準備をする。

 

「ねぇ八代ー、ああ言ってるけど実際にあんなに大きい岩を操作なんてできると思う?」

 

「ん?ああ、大賀のことか?魔法自体は強力な操作魔法があるの知ってるからできるとは思うけど、どの魔法も今のRIじゃMPの消費量的に不足してるから実質無理だな」

 

「なるほどね、つまり九澄くんならGプレートだし、その魔法をインストールしていれば可能ってわけね」

 

「そゆこと」

 

桃瀬の質問に八代が答え、その内容に出雲も納得して九澄の成り行きを見る

 

「そんじゃいくぜーーーー!ほいっ!」

 

----ヒュンッ!!

 

九澄は自分のプレートを前にだし、思いっきり投げると見せかけてプレートを胸ポケットにしまう。

そしてその九澄に重なるように立っていた柊先生の手から岩に向かってプレートが投げられていた。

 

(まるで手品師だな・・・)

 

事情を知っている八代は呆れながら事の成り行きを見守っていた。

岩にプレートが挿入され、次第に岩が持ち上がっていく。

 

「1メートルじゃつまんねーし、ガケの上くらいいっとくかー!」

 

「お、おいこら!」

 

「いっけーー!!」

 

(ったくあのやろー!)

 

----ゴゴゴゴゴッ、ズズズズズゥン!!

 

柊先生の静止の言葉も受け付けず、九澄が崖の上へ腕を突き出したため後戻りもできず、仕方なく崖の上まで岩を運んでいった。

 

----ゴウゥンッ・・・

 

「ふぅ・・・、こんなもんかな」

 

『おおおーーーー、』

 

九澄がいかにも魔法を使って疲れたようなフリをすると、周りから歓声が聞こえた。

 

「すげぇ、さすが九澄だぜ!」

 

「やっぱりGプレートは格が違うな!」

 

「ねぇねぇ、今度私にも魔法教えて!」

 

「ハハハ、また今度な」

 

先ほどの魔法が凄かったようで、他の生徒が言い寄ってきたため、九澄も苦笑しながら席に戻っていく。

 

「凄いね、九澄くん!やっぱああいうのを見るとホントにGプレートなんだなって実感するよね!」

 

「そうだな。彼は簡単にやってみせてるけど、実際魔法操作は難しいからやっぱり相当な実力者なんだろうな」

 

「ああ、そうだな(実際は柊先生が操作してるから疲れなんて微塵も感じてないんだがな)」

 

委員長と孝司が感嘆の声をあげているが、実際の状況を考えると八代は苦笑するしかなかった。

 

(でもこれで大賀が魔法が使えることの証明が全体的にできたわけだ。後はお前次第だよ、大賀)

 

「では、それぞれ班ごとに分かれて課題に取り掛かってくれ。また、もうこの場ですぐにクリアできるという生徒はこの後私のところへ来なさい。課題がクリアできればその場で合格印を押してやろう。では、各班練習始め!」

 

柊先生の合図により、他の生徒たちはそれぞれの魔法を試すために散り散りになっていく。

 

「さてと。八代、お前はどうすんだ?クリアできそうなら柊先生のとこ行ってきていいんだぜ?」

 

「え?八代、もう課題クリアできるの?!」

 

「・・・まあ、やれなくはないかな。けど孝司、なんで俺がクリアできるってわかったんだ?」

 

孝司の言葉に桃瀬が驚いていると、八代が不思議そうに尋ねる。

 

「いや、クリアできるかはわからなかったぞ?けどお前、毎日蔵書室で魔法の勉強してたし、魔法はたまにローテションしてるみたいだから使える魔法があれば即クリアできそうだなって思ってよ」

 

「ああ、なるほどな。確かにお前の言う通り、今日の課題にマッチしてる魔法があるわけだし、先にクリアしてお前らのフォローに回るのもアリかな」

 

「ゆ、ユッキーが頭使ってるっ!?悪いものでも食べたの?!」

 

「お前が普段俺のことをどう思っているのかよーくわかったわ!」

 

孝司に関しては普段だらけた姿がほとんどだったため、八代に推測を話している姿を見た瞬間桃瀬が驚きながらそう言う。

 

「じゃあ、八代は課題クリアしてきたら?私たちもあまり時間つぶしてるわけにもいかないし、他の場所で魔法を試してるから後で合流してくれればいいからさ」

 

「そうだね。みんなどんな魔法使えるのか確認したいし、今日子ちゃんの言う通り授業中の課題となると魔法インストールする時間も考慮しないといけないから場所変えよっか」

 

「賛成ー!じゃあ八代、さくっと終わらせて早く来てねー♪」

 

「へいへーい。んじゃ行ってくるか」

 

そういって八代を除いた他の者は離れていき、八代は柊先生のもとへと向かっうのであった。

 

 

 

 

 

「む?やはりきたな、八代」

 

「ええ、まあ。せっかくの機会ですし、先生のご厚意にも答えないといけないと思いましてね」

 

「フッ、採点はしっかり行わせてもらうぞ。Gプレートだからといって魔法を使いこなせていなければ減点させてもらうからな」

 

「望むところです!」

 

八代は柊先生のもとへ向かうと自分のプレートを取り出し、そばにある石を見ながらそう答える。

その場でできる生徒とは言ったが、柊先生としても八代以外の生徒がすぐに自分のもとに来るとは思っていなかった。

この課題に関しては、まず自分の魔法が何をどれくらいできるかしっかり把握している必要がある。

その上で他の魔法が必要か、このままの魔法で問題ないかを判断しなければならないのだ。

ましてや、一定時間以上という特定の指示をしているため、自分がその魔法を持続できる時間も把握しなければならない。

そのため、授業で教わったことを含め普段からしっかりと魔法を使用して勉強しているものでなければ、たやすくこの試験を合格することはできないのだ。

その点、八代に関しては九澄の魔法を使用するフリの練習をしているときに、自由かつ大胆に様々な魔法の練習をしている。

Gプレートである前に、八代が魔法について勉強をしていたことも柊先生は知っているため、自分の魔法さえ理解していれば難なくクリアできると考えていた。

それゆえに、早めの課題クリアを希望と考え、先ほどのような言葉を選び、八代もその意図に気づいたため、こうして足を運んだというわけだ。

 

「では、始め!」

 

「いくぞ、『重力操作(グラビティコントロール)』!」

 

柊先生の開始の言葉を聞き、八代は石に向かってプレートを投げ、石の重力を操作する。

重力を操作された石は徐々に浮上し始める。

重力操作・・・。

対象にしたものの重力を任意で変更することができる魔法である。

対象にしたものの質量によってかかっている重力が違うため、操作できる度合いは異なってくる。

しかし、今回の課題では30秒以上地上から浮かすことが目的のため、石の位置の固定を気にしなければ、コントロールはさほど難しくはないと考えた八代はこの魔法を選んだのであった。

 

「27・・・28・・・29・・・30!よし、合格!」

 

『おおー、スゲェー!』

 

「ふぅ、『魔法解除』」

 

30秒継続したのを確認し、柊先生から合格の言葉を聞いた後、八代は石の重力を徐々に重くしていき、静かに降ろした後に魔法を解除する。

周りで見ていた班からも歓喜の声が上がる。

 

「ふむ、石への重力操作を多彩に行うことで、静かに降ろしたか。流石だな、八代」

 

「ありがとうございます、柊先生。上手くいってよかったです」

 

「フッ、そういうことにしておくよ。では、プレートを渡してくれ。合格印を押してやる」

 

八代は照れながら柊先生にプレートを渡し、合格印をもらう。

 

「じゃあ、俺は他のやつらの課題見に行くので、これで失礼します」

 

「ああ、頑張ってこい」

 

八代は柊先生に一礼し、その場を後にするのだった。


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