「では、八代くん。こちらがあなたに渡すプレート、G(ゴールド)プレートです」
「はい、ありがとうございます」
校長室より、八代はRIと書かれたGプレートを校長から受け取る。
「しかし、私は未だに信じられません。本来適性は勉強を重ね、魔力を体に覚えさせていくことで、ランクが上がっていくもののはず。今までの生徒で『B』の適性ランクは何度か見たことがありますが、『A』ですらなく『S』だなんて」
「お気持ちはわかりますよ、柊先生。昔はあったことなのかもしれませんが、今回の件は私ですら初めてなのですから」
柊先生の言葉に対し、校長も苦笑しながらそう答える。
「冬木・・・、いやここには冬木室長もいらっしゃることだし、八代と呼ばせてもらおうか」
「はい、大丈夫です。宜しくお願いします、柊先生」
柊先生に名前で呼ばれ、八代もそれに了承する。
「うむ。その落着きようからして問題ないだろうが、念のため釘を刺させてもらおう。この学校に来たということは、お前は魔法についてまだわからないことだらけだろう。その中で、適性がSランクだからといって、自分を過信しないよう気を付けるんだぞ」
「はい、気を付けます。正直Sランクと言われても自分はまだそれがどういう意味があるのか理解できていませんし、仮に理解できていたとしても現時点で自分と他の入学生とで魔法における明確な差はないはずですから。なので、授業に関しても他の生徒と同じようにちゃんと基礎から学んでいくつもりです」
「・・・お前、本当に冬木室長の息子さんなのか?」
「柊先生!?今の言葉聞き捨てならないんですけどっ!?」
「まあ・・・そうですね」
あまりにもしっかりとした八代の返答に柊先生は真顔で質問を返してしまっていた。
それを聞いた巧の発言に八代も苦笑しながらそう答える。
「よし。では簡単に現状の説明をしておこうか。まずお前の持つGプレートだが、教師である俺たちと同じで、他の生徒と違い多数の強力な魔法をインストールして使用することができる。マジックプレートにはインストールできる魔法の容量が制限されているため、本来すべての魔法を入れることはできないんだが、Gプレートであればほぼ全ての魔法のインストールが可能だ」
「ほぼ全てってことは、インストールする容量が大きすぎる魔法がある・・・ということですね」
「その通りだ。ただ先ほども言ったようにお前の適性がSランク、つまりどんな魔法でも使うことができる体質であったとしても、まだ魔法をしっかりと理解しているわけではない。そのような状態で強力な魔法をインストールしても、使いこなせなければただの宝の持ち腐れというわけだ。まあ、表向きはRIなのだから強力な魔法が多数使用されているとなればまず怪しまれるはずだ。そこのところは注意しておけ」
「了解です。もともと勉強してから色々な魔法を試そうと思っていましたし、最初からその認識をしていれば問題ありません」
柊先生の言葉に八代は自分の考えも付け加えてそう答える。
「ふふふ、あなたが仮初のプレートを本物にする日が楽しみですね。あなたの成績は聞いていましたから、この学校でしっかり学び、しっかり活躍すれば昇格試験の際に多少大幅なランクアップがあっても問題ないと思います」
「はい、頑張ります。このプレートが本来の姿になれるよう、ちゃんと自分の力で勉強していきます」
「まあ、頼もしいですね。期待していますよ」
八代が真剣にそういうと校長が満足したように言う。
「では、みなさん。これから宜しくお願いしますね。八代くん、ちゃんとお話しもできましたし、教室へ戻っていただいて構いませんよ」
「あ、わかりました。では校長先生、柊先生、ついでに父さん。今後ともよろしくお願いします」
「ええ、宜しくお願いしますね」
「ああ、気をつけてな」
「うん。けどついではひどいよ八代!」
それぞれ挨拶をすると、八代は教室へと戻っていった。
「まったく、あの子は父親をなんだと思っているんだ」
「まあまあ冬木室長。いい息子さんじゃないですか」
「ええまあ、自慢の息子ですよ。最近はあまり話してあげれてませんが、こちらに引っ越してきたからにはちょくちょくは帰ってあげるつもりですし」
柊先生の言葉に巧も嬉しそうにそう答える。
「これからあの子の活躍が楽しみですね」
八代が出て行った扉を見ながら、校長が嬉しそうにそう言うのであった。
「さて、確か俺は貧血で倒れて保健室で休んでることになっているんだったな」
自分の教室に戻るべく、八代は現在の自分の状況を整理しながら廊下を歩いていた。
「教室前まで戻ってきたのは良いが、このまま教室に戻っても問題ないのだろうか?」
1-Cの教室は目の前にあるが、事情を話していない相川先生には伝えてから会ったほうが良いのではないかと八代は考える。
----ガラガラッ
「ああ、おかえりなさい冬木くん。もう体調は大丈夫ですか?」
「えっ!?あ、ああ相川先生。はい、もう問題ありません」
考えていた矢先に扉が開き、相川先生が出てくる。
突然の状況に若干焦りながらも、八代は落ち着いて答える。
「そうですか。それはよかったです。ただ残念なことですが、先ほど最後のHRは終わってしまいましてね。もう皆さん下校すると思いますし、キミも体調が優れないでしょうから内容は後日お話しするとしましょうか」
「ああ、わかりました。保健室を出る途中で担当者からある程度お話を聞けたので、それで問題ないです」
相川先生の言葉に八代は頷く。
実際には校長室だが、その際HRの話を聞けたので何も問題はないと考える。
「そうですか、それはよかったです。ああ、それと・・・Gプレートの件、校長からお話を聞きました。お互い注意していきましょうね」
「・・・もう伝わっていましたか。ご迷惑をおかけすると思いますが、宜しくお願いします」
「校長先生から個別でテレパシーがきていましたから概ね理解していますよ」
相川先生が小声で言い、八代も小声でお願いする。
「ではまた明日、気をつけて帰ってください」
そういって相川先生は廊下を歩いて行った。
それを見送った後、八代も教室へ入っていった。
「あ、八代!貧血倒れたって聞いて心配したよ!歩いて大丈夫なの?」
「八代くん、大丈夫?プレートはちゃんともらえた?」
教室に入ると桃瀬と出雲が近寄ってきて心配しながら言う。
辺りを見渡すと皆もう帰る支度をしており、残っているのは数名しかいなかった。
「二人とも残っててくれたのか。心配かけて悪かったな。大したことはなかったし、もう大丈夫だよ。ほら、プレートもちゃんと貰えたよ」
「「よかったー」」
八代は心配させたことを謝り自身のプレートを見せると、桃瀬と出雲は安堵の表情で言う。
「よっ、冬木。俺津川 駿って言うんだ、よろしくな。検査中お前だけ倒れたって聞いたからちょっと気になってよ。もう大丈夫なのか?」
「ああ、もう大丈夫だ。心配してくれてありがとうな、津川」
「いいってことよ!クラスメイトなんだしこれから仲良くしようぜ!」
「そうだな、宜しく頼むよ」
ニカッと笑いながら津川が話しかけてきたので、冬木も笑顔で返す。
「それにしても、みんな同じ魔法陣使ってたのにお前の時だけ異常が出るなんて変だよな。お前の後に検査したやつは大丈夫だったって聞いたぜ?」
「そうだよね。私も八代の後その魔法陣使ったんだけど、特に何事もなく終わったからね」
津川が起きた出来事を不思議に思い、桃瀬も自分が体験したことを話す。
「ああ、そのことか。なんでも俺の場合、熊本からこっちに引っ越してきたことが影響して、うまく測れなかったらしいぞ」
「そういえば、熊本も魔法特区指定だったって先生が言ってたっけ」
「ああ、だから熊本の魔素とこっちの魔素が混じっちゃって、うまく測れなかったってわけ」
(実際はあの魔法陣が魔力適性ランクBまでしか測れなかったってことが原因なんだけどな)
異常の原因については校長と巧が試行錯誤し原因を突き止めていた。
だが、理由としてはこちらの方がピッタリだと判断し、他の人にはそのように伝えることとなったのだ。
「なるほどなー。てか話には聞いてたけどさ、冬木は熊本からこっちに来たって言うじゃん!九州の方ってどんなものがあるんだ?熊本の話とかいろいろ聞かせてくれよ!」
「あー、それ私も聞きたいな!」
「わ、私も!」
津川が九州について興味を示すと、それに桃瀬と出雲が乗っかってくる。
「んー、別にいいけど大した話はできないぞ。それに今日はもう終わりだし、帰って引越しの整理したいから今度でいいか?」
「おう、全然問題ないぜ!てか、まだ引越しの整理中なのか?」
「まあな。今日引っ越してきたばかりだし、段ボールとか積みっぱなしだからさ」
八代は自分のカバンを持ちながら帰る支度を進める。
「八代ー、大変そうなら手伝ってあげようか?」
「いや悪いだろ。重いものもあるし、開けてもどこにしまうとかわからないだろ?」
「それなら八代が指示してやればいいんじゃね?てか、重いものもあるなら俺も手伝ってやるよ!」
「気持ちはありがたいけど、お前らの時間つぶしちゃうぜ?いいのか?」
桃瀬と津川がそれぞれ引越しの手伝いをしようと進言する。
嬉しいことだが、他人の時間をつぶしてしまうため八代は聞き返す。
「なんだよ水くせぇ。困ったときはお互い様だろ?」
「あたしも問題ないよー。個人的には八代の家に興味あるし♪」
「ならあたしも手伝ってあげるわよ。人数多い方が終わるのも早いでしょ?」
「んー、ならお願いしようかな。ここから近いし、4人でやれば早めに終わらせられそうだ。終わったらなんか奢るよ」
3人とも手伝うと言い出し、八代も早く終わらせたかったため、厚意に甘えることにする。
「よっしゃ、じゃあさっさと帰って八代ん家にいこうぜ!」
「「おー!」」
「お手柔らかに頼むよ」
テンション高い3人に八代は苦笑しながらそう言い、4人は校門へと向かうのであった。