「・・・なぁ八代」
「・・・なんだ大賀」
「やっぱ一緒の班になってくれーーー!頼むよーーーーー!」
「ええい、やかましい!自分の蒔いた種だろ!諦めろ!」
地獄の班編成HRが終わり、廊下をともに歩いていると、九澄が八代に泣きついてくる。
その理由は目の前の光景を見れば簡単である・・・。
「キャーー!?んもー、伊勢のバカ!」
「ハハハ!佐倉ァ、ちょっと肉ついたんじゃねぇかー?」
「・・・最低だな」
「・・・ああ」
女子生徒のお尻を軽やかに触る男、伊勢カオルを目にした瞬間、九澄と八代の不安は倍増されたのである。
そう。この伊勢カオルこそ、5人1組の九澄の班になった1人なのである。
「大体もう班編成の用紙は委員長が持って行ったんだから変更しようもないだろ」
「うぅー、こんなことになるんだったらちゃんとクラスメイトをちゃんと把握しておくべきだったぜ・・・」
「それはお前の自業自得だな。けど柊と一緒の班になれたんだろ?だったらそっちを喜べよ」
「まあなー・・・ってそれは関係ねぇだろ?!」
「どうだかねぇー」
八代の言葉に肯定するも、九澄は顔を真っ赤にしながら抗議する。
九澄と伊勢でペアを組んだ途端、案の定ほかの女性たちは伊勢を嫌がったため、男女合同の班決めだったため九澄たちは班を決めあぐねていた。
そこへ柊が九澄と伊勢を同じ班で良いと誘われ、一緒に組んでいた三国 久美と乾深 千夜とで5人1組となったのであった。
八代としては九澄がいつも気にかけている女の子が都合よく一緒の班になったのだ。
応援してあげたい気持ちもあるわけで、そのまま放っておくことにしていた。
(まあ親バカの柊先生には悪いけど、大賀がよりやる気を出せるようにするにはやっぱりモチベーションが上がるようにしてやんなきゃダメだからな)
言わずもがな、柊と同じ班になることに対して柊先生から猛反対されたが、もう決まったことだと押し切ったこともあり、渋々受け入れてもいる。
どちらにせよ、あとは九澄が自身で魔法授業を乗り切っていくしかないのだ。
「なに話してんだよ、お二人さん!俺と一緒にエロトークで友情を深めていこうぜ~!」
二人で話していると伊勢が両手を広げながらこちらに駆け寄ってくる。
「・・・お前ってホント女子の言う通りの奴なんだな」
「ある意味予想通りだな・・・」
「なに言ってんだよ二人して~!こういうことは男なら当然じゃねぇか!美しさってのは見て触れて初めて理解できるものなんだよ!こういう欲求は素直に受け入れなきゃいけねぇ、溜め込んじゃいけねぇのさ!」
「・・・あ、・・・そう」
「垂れ流しもダメだと思うがな・・・」
伊勢が持論を熱く語っているが、九澄と八代は呆れながらもそうツッコむしかなかった。
「やっぱ、強力な味方がついてくれたから、俺のゴールドフィンガーも絶好調だぜ!」
「大賀、短い人生だったな。お前が犯罪者として一緒につかまらないことを俺は祈ってるよ」
「ねぇ、やめて!結構リアルだからそういう言い方やめて!」
「おっ!!あれは『Gの旋律』B組時田!あぁ~、俺の右手が美を求めるぅぅぅ~!!」
「「ダメだこいつ・・・」」
通称『Gの旋律』と呼ばれる1年生で一番のバストサイズを誇るB組の生徒、時田マコを見つけるやいなや、伊勢は鼻歌交じりに右手を先行させて時田に近づいていく。
それを目撃した二人はもう何を言っても無駄だと悟ったのであった。
----ブォッ!!ボガーン!!
「ぐはぁっ!?」
「キャー!!」
時田へ近づく前に、一回り大きくなった本が連結した状態で伊勢を吹き飛ばす。
その光景を目の当たりにして怖くなったのか、時田は悲鳴を上げながら走って逃げていった。
「このボケが・・・、俺と同じ名前背負って恥さらしなマネしてんじゃねーぞ」
「あ、兄貴!!」
「あ、あいつはあの時の・・・って兄貴!?」
伊勢の発言に大賀は驚きながら、やってきた男子生徒を見る。
彼の名は伊勢聡史。
伊勢の兄であり、魔法力が高く1・2年の中では一番のだと言われているほどの実力者である。
「大賀、あの上級生の人知ってるのか?」
「あ、ああ。俺がこの校舎に侵入したときに、たまたまあいつがカツアゲしてるところに出くわしちまってよ。その時に絡まれて俺もテンパってたから何人か連れをボコっちまったんだ」
「カツアゲって・・・随分穏やかじゃない話だな」
大賀は関わりたくなさそうに嫌な顔をするが、八代はその話を聞いて伊勢兄を睨みつける。
「相変わらずしょーもねーヤロウだ。何も取り柄がねーくせに、みっともねーことだきゃ人一倍しやがる。だから俺の出がらしって言われんだよ」
「こ、この!お前こそいつも上からモノ見やがって、なめんな!!」
「お、おい!こっち来るんじゃねぇ!」
「俺らを巻き込むなよ・・・」
伊勢兄の言葉に怯み、九澄と八代を盾にして凄みながら言う。
「ん?お前は・・・あん時以来だな。聞いたぜ、授業中レベルが低い魔法は一切使わない舐めきった態度のGプレート一年ってのは。お前だろ、九澄 大賀。それにそこの点取り虫も一緒ってことは、あの噂はホントだったみたいだな」
「噂?」
「お前のことだろ、冬木 八代。たまたまそこの腑抜けたGプレートを捕まえただけで、いい気になって点数稼ぎをしてる目立ちたがり野郎は」
「なんだとっ!?」
八代と九澄に気づき、伊勢兄が噂について話すとそれに対して九澄が反応する。
「大した腕もないくせによ、出しゃばってんじゃねえぞ。それに、そこのゴミと一緒にGプレートの金魚の糞になってる時点で実力もたかが知れてる」
「・・・・・」
「ゴ、ゴミだと!?この野郎、言わせておけば!そりゃ俺はアンタにまだ何一つかなわねーよ!でもな、魔法に関しちゃまだ答えは出ちゃいねーんだよ!見てろよ、俺ぁあんたより良い成績あげて、あんたの上をいってやるからな!」
「るせぇ!!誰もてめーとは話しちゃいねーんだよ!!!」
伊勢兄の言葉に伊勢も反応し、見返してやると声を張り上げるが、黙れと言わんばかりに再び伊勢に向かって先ほどの魔法が飛んでくる。
----ブォッ!!
「・・・待てよ」
----ガァンッ!!
「・・・あん?」
「九澄!?」
「わけわかんねー兄弟ゲンカに関わりあいたくねーが、弱えーから頭押さえつけよーってのは気に入らねーな」
伊勢の前に割り込み、九澄が飛んできた本を上から殴りたたきつける。
「それになぁ、俺のことはいくら悪く言っても構わねぇよ。実際その通りだしな。けどな、俺とは違って八代は本当に魔法に一生懸命で頑張ってんだよ。それをバカにすんじゃねぇ!!」
「・・・大賀」
先ほどの悪口に腹が立っていた九澄が伊勢兄を指さしながらそう言い放つ
「ハンッ、くだらねぇ!友情ごっこはよそでやれよ!そーいやお前とはケリがついてなかったな!ここで続きやるか!!」
----グォンッ!!
「いいっ!!?」
自分に盾突いたことが気に入らなかったのか、伊勢兄が魔法を展開すると九澄へ矛先を変えて本を飛ばしてくる。
「伊勢!先生が来ないか辺りを見張ってくれ!」
「え、なんで!?」
「校内での魔法バトルは禁止だ!あの調子じゃ大賀も魔法を使って防御するしかないだろうから目撃されたら困るだろ!」
「そっか、わかった!」
そう言って伊勢が辺りを見渡そうと後ろを向いて確認する。
そして、八代の前には九澄と本の魔法が見えるが伊勢兄が見えないことを確認する。
その二つを確認した八代は九澄の手に向かって自身のプレートを投げる。
(『カトゥーン・ハンド』!)
「え?うわぁ!?手が大きくなった!?」
「大賀!周りは俺達が見張ってるから、気にせず魔法を使ってくれ!」
(ってことはこの魔法は八代の魔法か!)
「わかった!サンキュー、八代!」
カトゥーン・ハンド・・・。
授業中に柊先生が時々使用する魔法であり、対象の手を強化及び巨大化しさせる魔法である。
「うおぉぉぉーー!!」
----ボボボボボボボボッ!!
カトゥーン・ハンドのおかげか、九澄は次々と襲い掛かる本の嵐を拳の連打によって叩き落していく。
「オイ、何だあれ・・・?」
「本と人間でバトルしてるぞ!大道芸にしか見えね~!」
激しいぶつかり合いのせいなのか、次第に野次馬が増えていく。
「こらソコ、何やっている!校内での魔法バトルは禁止のはずだぞ!」
「冬木、遠くから教師が近づいてくるぜ!」
「ああ!大賀、伊勢先輩!これ以上は危険ですのでやめてください!」
伊勢がそう言い八代もそれを確認すると、戦ってる二人に対して停止を促す。
「チッ・・・邪魔が入ったか・・・」
次第に本の攻撃が止まり、自身に引き寄せてから魔法解除を行うと、本とマジックプレートが伊勢兄の手元に戻ってくる。
(シルバーか。やはり、あれだけの質量を手足のように自在に操っている以上、実力は本物のようだな)
伊勢兄が手にしていたマジックプレートはSプレート。
先ほどの戦いを分析しながら、八代は実力は本物だと改めて確認する。
「ま、いいだろう。いずれまた戦う機会もあるだろうし。そん時にじっくりお前らの実力を確かめてやるさ」
伊勢兄はそういうと、九澄と八代に背を向けて立ち去っていく。
「大賀、伊勢。俺達もここから離れるぞ!」
「ハァー、ハァー、・・・えっ!?あ、ああ!」
「ちょっ!?待ってくれよ二人とも!」
八代は先ほどのバトルで息を切らしている九澄の首根っこを掴み、伊勢を置いてその場を後にする。
「ここまでくれば大丈夫か。お疲れさん、大賀」
廊下の角を曲がり前方に誰もいないことを確認すると、八代は魔法解除し九澄の手から出現した自身のプレートを回収する。
「さ、サンキュー、八代。お前の魔法のおかげで助かったわ」
「気にすんな。それに、ありがとな。俺なんかのために怒ってくれてさ、嬉しかったよ」
魔法バトルから解放された九澄が脱力する中、八代は照れくさそうに頬を掻きながらそう言う。
「やっと追いついた・・・。」
「悪いな伊勢、置いてきちまって」
「ホントだぜ!って言いたいけど、助かったぜ二人とも!それに、やっぱ九澄は強いし頼りになるぜ!」
伊勢が遅れてきたため八代が謝るとそんなこと気にしないくらいに笑顔で二人にお礼を言う。
「いや、あれは俺も危なかった・・・じゃなくて!あそこは八代も怒るところだろ!伊勢だってあんなに言われてたのに、お前はあんなこと言われてムカつかねぇのかよ!」
「そうだぜ!冬木はなんであそこまで言われて黙ってられたんだよ!悔しくねーのかよ!」
九澄と伊勢が憤怒しながら八代にそう言う。
「んー、確かに腹は立ったけど。伊勢先輩も噂を聞いたってだけだったみたいだし、俺の代わりに大賀が十分怒ってくれたから別に気にしてもないさ」
「そりゃそうかもしれねぇけどよー。普通怒らねぇ?」
「所詮事情も知らない奴らが流した噂だろ?次第にそんなこと言えないくらい実力をみせていけば、そんな噂も消えていくさ」
「前向きだねぇー、冬木は。少なくとも俺はあんなこと言われて黙ってはいらんねーなー」
二人はそれぞれ思ったことを口にするが、自分のことなのに怒る素振りを見せない八代に対してこれ以上は言わなかった。
「それより、そろそろ教室に戻ろう。次の授業に遅れてしまう」
「ああ、そうだな。それにしても、改めて九澄はGプレートなんだなって再確認したぜ!さっきの魔法って柊先生がやってる『カトゥーン・ハンド』だろ?先生クラスの魔法が使えるんだからスゲーよなぁ!」
「え?あ、ああ。・・・まあな」
(俺も再確認したぜ。八代がホントにGプレートなんだってな。あの魔法がなきゃ、俺の手は膨れ上がってたろうからな)
伊勢が激励を言い、教室へ戻ることを促す八代の背中を見て、九澄は改めて心強い仲間がいることを感謝しながら、二人の後を追うのであった。