候補は三つ程に絞りましたが、どの泉に落としても出来る話と出来ない話の多さに非情に悩み、話を組みやすいと判断し娘溺泉にしました。
もう一つの理由に書きたいエピソードが出来たのですが、その話の為にムースが娘溺泉に落ちている事が前提の話となっていた為に……と言った次第です。
他の泉に落ちると予想された方やアヒルムースが好きな方、また女体化嫌いな方にも不快な思いをさせた様です。申し訳ない事をしました。
未熟な文章の小説に今後とも、お付き合い頂けたら幸いと思います。
新咲葉月様より素敵なイラストを頂きました。ありがとうございます!あらすじの方にも貼らせて頂きました。
【挿絵表示】
「ムース、動く良くない。綺麗に纏められないネ」
「あのな、シャンプー……」
シャンプーは俺の後ろで座りながら俺の髪を弄ってる。さっきから三つ編みにしたり、ポニーテールにしたりと色々と変えられてる。
「ムース兄様、今度はこれを着てください」
「リンス……俺が着るには派手じゃないか?」
リンスが笑顔で持ってきたのはモデルさんとかが着ていそうな派手な服。いつ購入したんだ、そんな服。
「ホッホッホッ……楽しそうじゃのう」
「俺としては不本意だがな」
女になった俺と楽しそうにしているシャンプーとリンスを眺めて笑う婆さん。
原作に負けないようにと思ってアヒルにはならなかったけど、まさか女になってしまうとは……まさに予想外だよチキショー。こんな事になるなんて誰が予想出来ようか……
「ま、これも修行の内じゃ。呪泉郷の呪いに掛かってる内は水を掛けられない様に周囲に気を配るんじゃな。特にムースは心眼の完全な習得に至ってはおらんのじゃからな」
何処が修行になるんだか……と思ったけど尤もらしい理由が。加えて耳の痛い事を……
「お主も悩みが消えたのか晴々としておったからの。心眼の習得も早かろうと思い、更なる試練を与えたのじゃ」
「その試練が無ければもっと早い習得になったと思うがな」
せっかく、原作を気にしないとかバタフライエフェクトを考えないとか色々とスッキリしたのに余計な悩みを増やしやがって。
「しかし、可愛らしい姿になったのう。ワシの若い頃を思い出すわい」
「乱馬の気持ちがよーく分かるよ……」
男が可愛いとか言われても嬉しくないっての。
俺の女体化だが乱馬と違って背は低くならなかった。パワーは落ちたが暗器を取り扱うには問題無さそうだ。良かったよ、変身したら服の重みで身動きが取れなくなるとかシャレにもならん。
因にだが、変身後にシャンプーに胸を揉まれ「良かった……私の勝ちネ」と言われた。まあ、元男に胸の大きさで負けるってのは屈辱なんだろうな。それを考えると、あかねが乱馬に対して怒っていたのは間違いではないのだろう。
「それで、呪泉郷での修行は終わりなのか?」
「いや、次からが本番じゃ」
呪泉郷で修行というか苛められた俺とシャンプーだが、まだ修行の本番が待っていたらしい。俺の髪を弄っていたシャンプーの手が止まり、一緒に婆さんを見る。
「それで……どんな修行なんだ?」
「うむ……お主とシャンプーは日本に行き、様々な知識と武術の技術を学んでくるんじゃ。聞けばシャンプーを倒した早乙女乱馬は無差別格闘流と言う流派じゃそうだな。他にも吸収すべき技術は日本に有ると見た……そこでムースとシャンプーに行ってもらい、その技術を継承するまで村には里帰り以外での帰郷を許さん。これは族長命令でもある」
「な……ママはまだ私に無理強いをさせる気か!?ちょっと行ってくるネ!」
俺が婆さんに促すと婆さんから告げられた修行内容は、要約すると『日本に行き、様々な技術を体得してこい』との事だった。その話を聞いたシャンプーは怒り心頭で族長の部屋へと慌ただしく向かっていった。しかし、俺にはこれは修行とは思えなかった……
「なあ……婆さん。これって要は『シャンプーを甘やかせる為に修行場所を友人のいる日本にして、更に心行くまで遊んでおいで。たまには村にも里帰りしてね』に聞こえたんだが」
「ま、そうじゃの。ワシも日本には同行するつもりじゃったがコスメは未だに素直に成りきれておらんの」
俺が婆さんに問うと予想通りだったらしく婆さんはやれやれと呆れ気味だった。
「ま、長年厳しくしておったからシャンプーもコスメの甘やかしに気付いておらんがの」
「あの様子じゃハッキリ言わないと気付かないと思うけどな」
既に族長の部屋から言い争う声が聞こえてきてる。
「似た者親子だな」
「シャンプーも猫になったから懐くまで時間が掛かるかの」
素直になれない所や勘違いする所、ついでを言うなら気の強い所も全部、族長譲りなんだよなシャンプーって。
「ムース兄様……ムース兄様もシャンプー姉様もまた村から出ていってしまうのですか?」
逆にリンスは真逆だよな。俺の脚にしがみついて泣きそうな、この子は天使としか言いようがない。しかし、こればかりは俺がどうこう出来るかは問題じゃないんだよな。何よりも族長がリンスを村から出すのを許可しないだろうから。
「心配するでないぞ、リンス。お主も日本に行くんじゃからの」
「え、そうなのですか!?」
「マジかよ」
婆さんの言葉に驚かされるのも本日、何回目だろうか。リンスも凄いビックリしてるし。
「コスメがの……シャンプーとムースからリンスを離ればなれにさせると可哀想と言い出してな。まあ、ワシも一緒だからこそ許可を出したんじゃろうがな。それにリンスには日本の学校に通わせるつもりじゃしの」
なんか本人の知らぬ所で大人達に勝手に行く末を決められていた。ま、俺に不満はないけどね。女にさせられた事以外は。
「じゃ、今日は帰るわ。親父と母さんにも話さなきゃだしな」
「お主の両親は既に知っておるが……まあ、お主からも伝えてやるのが親孝行じゃの」
俺は婆さんに挨拶を済ませると家路に着くことにした。
「そうそう……シャンプーの修行内容には花嫁修業も含まれとるから期待しても良いぞ」
最後に胸が膨らむ事を言いやがって……ん、胸?
婆さんの発言に視線を下に向ける。そこには山が二つ……女に変身したままだった……
「男に戻ってから帰ろ……」
そう呟いて族長の家の台所にお邪魔してから帰る事にした。アヒルじゃないだけマシなんだろうけど前途多難な気がしてきた……
女ムースのイメージは『fate/stay night』のライダーが黒髪になった物をイメージすると分かりやすいかもです。