ムース1/2   作:残月

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ムースの日記14と右京との出会い

 

□月○日

 

和風男溺泉の件から数日後。俺と乱馬で九能屋敷に赤こけ壺を返しに行った。小太刀からお茶を出され、少し話をした後に帰る。小太刀のお茶に痺れ薬や眠り薬が入っていない事に首を傾げた乱馬だが、実は俺は前日に九能屋敷に来て小太刀に『怪しげな薬を入れずに、お茶だけ振る舞ってみな』と助言をしていた。小太刀から『では、何を入れれば良いのでしょうか?』と返された時は『お茶に何も入れるな。アサシンかオメーは』と思わず素でツッコミを入れた。

まあ、助言の甲斐もあってお茶会は無事に終了。これで小太刀も乱馬の対応を見て少しはマトモな接し方になると願いたい。

 

 

□月×日

 

先日のお礼です、と小太刀から紅茶の茶葉の詰め合わせを貰った。凄く高級な一品だったので驚いたが、小太刀からは『感謝の気持ちですから』と押しきられてしまった。先日のお茶会は小太刀の認識を少し変えたらしい。良い傾向だ。

 

この後だがシャンプーに小太刀との仲を疑われた。シャンプーの機嫌が治るのに数日掛かった。解せぬ。

 

 

□月△日

 

貰った紅茶が凄く美味かった。普段からどんだけ良い紅茶を飲んでんだアイツ。

 

 

□月◇日

 

シャンプーの機嫌が治ったのでデートに出掛けた。まあ、先日のは小太刀の純粋な礼だったと気付いたシャンプーが気まずい雰囲気を出していたので、俺が外に連れ出したのだが。

 

デートを楽しんでいると見知らぬ店が出来ていた。最近、出店したのだろうか?

 

 

□月◆日

 

『近所に店を出しました』と関西弁の男の子が挨拶に来ていた。お好み焼き屋らしいのだが……そこで思い出す。コイツ、男の格好をしてるけど女の子だ。乱馬の幼馴染みの久遠寺右京。和風男溺泉の時もだけど……これから騒がしくなるんだろうなぁ……と俺は何処か他人事の様に感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆side右京◇◆

 

 

ウチはこの町に店を出すと決めてから近隣の飲食店に挨拶回りをしとった。

お父ちゃんの下を離れて暮らすと決めたのもウチを捨てた早乙女玄馬と乱ちゃん……やなかった、乱馬に復讐する為や。たっぷりと焼きを入れたる。

でも、この町に店を構えると決めたのも復讐のためだけやなかった。短期間やけど住んでみて良い町やからと思ったからだった。

 

そんな中、今日の挨拶する店はこの町でも人気中華料理屋の『猫飯店』やった。町の人の噂でも良い店だと聞いていたのですぐに挨拶に行きたかったのだが、先日挨拶に来たら臨時休業やった。通りがかりの人から『今日はピクニックに行くと行ってたよ。なんか壺を担いでたけど』と言っていたが、なんでピクニックで壺を担いでたんやろ?

 

それは兎も角、今日こそは挨拶という事で暖簾をくぐる。

 

 

「いらっしゃい。お一人様ですか?」

「ああ、お客さんとちゃうねん。近所にお店出したんで挨拶に来たんですわ」

 

 

店に入ると長髪でメガネを掛けた兄さんが接客に来てくれた。なんや、格好いい兄さんやな。

 

 

「そうでしたか?あ、もしかして二丁目の所の?」

「そうです。なんや、知ってたんですか?」

 

 

意外な事にもうウチの店を知っていたらしく直ぐに気付いてくれた。

 

 

「先日、その近くを通ったんですよ。おーい、婆さん、シャンプー」

 

 

ニコリと笑みを浮かべた兄さんは店の奥に行ってしまう。他の店員を呼びに行ったらしい。

町の人が良い店だと言っていたが理由が少しわかった気がする。店の雰囲気や店員さんの態度が優しいからなんやと感じた。

 

この後、店の奥からやけに小さいお婆ちゃんと綺麗な娘が出てきた。年齢の近いと言う事でシャンプーとはすぐに仲良くなったけど……なんや、兄さんの方がウチをジッと見ていた。

 

 

「なあ、キミ……男の格好をしてるけど女の子だろ?」

「女アルか!?」

 

 

なんやろうと思ってたら兄さんが驚きの発言をする。隣に座っていたシャンプーも凄く驚いていたが、ウチはもっと驚いていた。ウチは自分の部屋に居る時以外は男装をしている事が多く、今も髪を束ねて手拭いで固めてるから後ろ髪は見えない筈だし男の服装をしてるから気付かれないと思ってたらアッサリと見抜かれた。この兄さん、何者や!?

 

 


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