ムース1/2   作:残月

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恐怖の混浴温泉⑤

 

 

 

風呂から上がった後は少し間を置いてから夕食となった。

 

 

「並べられたナイフとフォークは外側から使っていくんだ」

「は、はい」

 

 

洋食のコースだったのでリンスにテーブルマナーを教える良い機会に……と思っていたのだが早乙女親子と爺さんがマナーガン無視でガツガツと皿を舐める様に食べていた。

やれやれ……と思いながら俺は未使用のナイフとフォークを指に挟んで投擲の準備に入る。

 

 

「家で食べる分には良いだろうがホテル、それもマナーが必要な場でいつものノリは止めような?特に乱馬も玄馬さんも乱華にも恥をかかせるつもりか?」

「「は、はーい」」

 

 

大人が率先してマナーを乱すなっての。俺の仕草を見た乱馬と玄馬さんは青ざめ、更に乱華の名前を出されたからか二人は大人しくなり、爺さんも罰が悪くなったのか流石に静かになった。

 

 

「それも暗器使いとしての戦い方か?」

「戦わずして勝つってのも必要だがな。この場合は躾の為と思いたい」

「ほぼ犬の躾ネ」

 

 

良牙も若干引き気味に聞いてくる。と言うか良牙も若干マナーが守れてないな。ナイフで肉を切る時に内側から切るなよ。まあ、放浪生活が長いって聞くから仕方ないか。

乱馬達の場合だと犬の躾と言うより猛獣の調教だよなぁ。痛い目を見せなきゃ従わない辺りが特に。

と言いつつも本気で投げるつもりはなかったものの俺もナイフとフォークを投げようとする仕草は当然マナー違反な訳だが。

 

 

「賑やかで良いではないですか。他のお客様もいらっしゃらない訳ですし」

「え、他の客がいない……?」

 

 

他の客はいないから多少騒いでも大丈夫ですよ、と支配人さんは大目に見てくれていたが乱馬は驚いた様子。そりゃそうだよな。風呂で他の人間の気配を感じた訳だから。

 

 

「どうしたの、乱馬?」

「さっき風呂で気配を感じたんだ……俺達の他に客が居ないんなら……アレはいったい……」

 

 

あかねが恐る恐る乱馬に聞けば乱馬は妙に真剣な面持ちで答えた。うん、ホラーとかの定番な感じに。

 

 

「ま、またまた乱馬君ったら。温泉に入りに来た日本猿かなんかと見間違えたんじゃないの?」

 

 

早雲さんが苦笑いで気の所為だと笑い飛ばそうとしたけど地味に逆効果になってる。リンスや乱華なんか怖い話が苦手だから震えてるし。

その後、夕食を済ませた俺達は一番広い女子部屋に集まっていた。大人組は酒を飲み、若者グループはトランプである。

 

そんな中、なびきが先程の食堂での話題に上がった事で怖い話をし始めた。風呂場で死んだ女の話をして散々怖がらせた後に早雲さんの妖怪化での脅し。そんなコンボを決められたら誰だってビビるわ。

 

 

「ムースは怖い話とか知ってんのか?」

「女傑族や周りの村々は呪いの話とかもあったから色々知ってるぞ……そうだな……」

 

 

乱馬に怖い話の話題を振られたので少し悩んでから俺は口を開いた。

 

 

「ある村の片隅で……ある飯屋があった。その飯屋の食事は美味しく評判だったが……一つ妙な噂があった。土産で売っているシュウマイには人肉が使われていると言う噂が……」

 

 

俺の語りに皆がゴクリ……と息を呑む。

 

 

「その噂を聞いたある武術家の男は『くだらん噂だ』と気にせずに土産のシュウマイを買ったそうだ……しかし帰り道……ふと妙な視線を感じ振り返るが誰もいない。そして、男は噂話を思い出し……シュウマイの箱を開けた……すると……」

「す、すると……?」

 

 

あかねが恐る恐る聞いてくるが俺は蝋燭を自身の前に照らして笑みを浮かべる。

 

 

「六個入っていたシュウマイが……一つ無くなっていた。男はブルリと震えながらも自分に言い聞かせた『きっと最初から一つ足りなかったんだろう……』と」

「ガタガタ……」

 

 

話を進めると全員が聞き入っていた。乱華は怯えながら乱馬の腕にしがみついてる。

 

 

「男は少し歩いた所でまた妙な視線を感じ立ち止まった後、再びシュウマイの箱を開けた……するとまた一つシュウマイは減っていた……」

 

 

ゴクリと全員が息を飲む。更に俺は追い討ちをかける様に叫んだ。

 

 

「男は完全に驚き急いで家へと帰った。そして震える手でシュウマイの箱を開ける……すると驚く事に今度は更に二つシュウマイが消えていた!」

「いやぁ!」

 

 

リンスが涙目になって完全に怯えているが俺は止まらない。

 

 

「うわぁぁぁぁぁっ!と男は恐怖に震えながら蓋を閉じた!そして再び蓋を開けると……そこにはシュウマイは無く、空になった箱!『無い!シュウマイが消えた!まさか人肉を使ったシュウマイの話は本当だったのか!?』男は叫びながらシュウマイが入っていた箱と蓋を見つめた!そこには……」

「「「「そ、そこには!?」」」」

 

 

全員が話のオチが気になって仕方がない。そこで俺は叫ぶのをやめた。

 

 

「シュウマイは消えた訳じゃなく全部蓋の裏にくっついてたんだと」

「「「「…………」」」」

 

 

くだらない落語のオチの様な話に全員が肩を落とした。

 

 

「怖い話というより小話じゃのう」

「中々面白い話じゃったの」

「酒の肴になったでしょう」

「ムース君も話し方が上手いねぇ。さ、まだ遊びたいだろうけど夜も遅い。もう寝なさい」

 

 

爺さんと婆さんは酒を飲みながら笑っていた。年寄りには効かないか。

早雲さんの一声で今日の所はお開きとなった。

 

翌日に聞いたのだがリンスと乱華とあかねは余程怖かったのか抱き合って震えながら眠ったらしい。最後は笑いになったけど少しやりすぎたかな?

 




気づいた方も多いでしょうが今回、ムースがした怖い話は『GTO』で鬼塚が語った怪談話です。
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