東国戦遊志~紅~(東国幻想郷シリーズ)   作:JAFW500/ma183(関ケ原雅之)

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自らを犠牲に弟の孫悟空たちを守ったラディッツ(if)、不思議な流れに導かれ彼がたどり着いた場所は幻想郷の『あの世』、裁ききれない罪を背負いつつ彼は新たな道を行く。
今回の舞台は、迷いの森の近くにあるらしい迷いの竹林。
ラディッツは引き受けた仕事とどう向き合うのか。
そして、慧音は親友を救うことが出来るのか。
それでは、新たな幻想郷の物語をはじめよう。

【注意】
この作品は『ドラゴンボール』、『東方プロジェクト』の二つの作品を主に元ネタとしたクロスオーバーものです。
今回の時間はバーダックが来る数年前となります。
このシリーズでも、本編同様に「オリジナルキャラクター」・「大幅のオリジナル設定」が出ます。
ラディッツの仕事は、毎回違うため、彼の行動範囲は広く、いろんな場所へ行きます。
今回は、ラディッツにとって一番最初の仕事になります。
また、ドラゴンボールZ本編のラディッツとは「別の道」を歩んだ「このラディッツ」の過去は『紅の#0話』となりますので、新鮮な気持ちで見てもらえると嬉しいです。
最後に、どこかでこのシリーズは動画化まで行けるかはまだわかりませんが、動画版のお便りこコーナーやこの話に彼やその仲間たちが出たときは、是非頑張っている彼らを応援してもらえると嬉しいです。

覚悟はいいか、俺たちはできている!

という方はこのままどうぞ!



東国戦遊志~紅~ #1 千年の孤独

罪がとがめられなくなる日はいつかはくるだろう。では、自分の中に生き続ける罪はいつになったら消えるのか…。

「へえ、なかなか興味深い話だねぇ…。」

「この俺も甘くなっちまったもんだ…。以前の俺なら何のためらいもなく殺していただろうけどなぁ…。」

遠くに見える街の明かりを目指しゆっくりと三途の川を船は進む。

「まあでも、弟さんたちもいい兄貴を持ったんじゃないかい?」

「そ、そうか…?」

すこし目をそらすのは先日入ってきた新人ラディッツ、今回初めての仕事で現世の方へ向かっているらしい。

「でも…、こうして振り返ってみるとそこ以外…。ヘタレた人生送ってきたんだねぇ…。」

「だ、黙れ!エリートと王子が相手なんだぞ!立場が弱いのも仕方ないだろう…。」

「まあまあ落ち着いた。どうせ先は長いんだから…。さあ続きを聞かせておくれ…。」

しょんぼり小さくなっているラディッツをなだめるのは、三途の水先案内人。三途の川は距離がその日や人によって変わるため、船で行くのが原則らしい。

「…なかなか泣かせる話じゃないか。弟のために命を懸けて守ってやるなんて…。」

「ふん、所詮俺たち程度の力じゃあ奴らには勝てん。俺の命一つで守れるものなら安いものだ…。」

あの時、ラディッツは悟空達相手に戦った後、ベジータたちとの接触地点で自爆した。弟を守るためにラディッツは仲間を裏切り、白い閃光の中に消えていったのだった。

「さて、あれからずいぶん時間がたつがまだ着かないのか?」

「いや、もうそろそろさ。」

それまで流れ一つない静かな川だったが、白い花びらが徐々にその水面に浮かんできていた。

 

 

<中有の道>

中有の道、本来死者が三途の川を目指していく道なのだが…、最近では生きている者や地獄になかなか堕ちない者も来始めているらしい。

「やはりこの街といいお前たちといい、死後の世界とは思っていたものとはずいぶん違うのだな…。」

「へえ、どんな感じのを思っていたんだい?」

「まあそうだな…。」

「赤い顔をした巨漢の閻魔のおっちゃんとか…、大きい金棒振り回してボコボコに叩きに来る鬼とか…。」

「あはははは!いや、間違っちゃいないけどそれは別の所のお話だよ。」

「どういうことだ…。」

「うちはうち、他所はよそってことさ…。」

どうやら、あの世というものは他の世界にもあるらしい。ラディッツは、肩の力を少し緩めてそのまま歩き続ける。

「しかし、想像していたのよりは随分可愛いものだな。」

「可愛いだなんて、照れるねえ。あんたと話していると気分がいいよ。」

「そりゃどうも。」

どうやら、なかなか話の合う者同士らしい。

「さて、やっと着いた。」

「ここが…。」

ラディッツ達の前に一軒の使われていない木造の宿舎がそびえている。どうやら、人が去って数年ほどたっているがまだまだ使える感じらしい。

「んじゃ仕事頑張りな新人、こっちも仕事に戻るんで…。」

「待った!」

仕事場にゆっくり戻っていく彼女の背中にラディッツの声が通った。

「自己紹介がまだだったんでな…。俺は、ラディッツ。生まれは惑星ベジータ、誇り高き強戦士族サイヤ人だ。」

しばらく間を開け、彼女は振り返りこう答えた。

「あたいは、三途の水先案内人をやっている小野塚小町さ、また今度一杯どうだい?」

一瞬、けれども確かに、互いに新たなコンビの盃が交わされた瞬間だった。

 

 

<石焼ラーメンヴォルケイノ>

「なるほど…それに手伝いに来たわけか…。」

人気がまだまばらな店に夕日が一筋差し込んでいる。ラディッツの向かいに座っている女性が今回の依頼者、上白沢慧音。里に住む者で寺子屋をやっているとのことだった。朝に会ったので、ある程度打ち解けていた。

「まあ、そういうことだ…。ところで、何を手伝えばいいんだ。」

ラディッツが聞くと、その手に持っていた水を置き真剣な話に入った。

「この人間の里の外に迷いの竹林と森がある。静かで不気味な感じの場所なんだが、最近そこから夜に火の玉が出始めているって話が出てしまってな…。話が大きくならないうちに私たちで調査しようといういうことなんだ。」

ラディッツは手に持っていた水を一気に飲み干すと、

「なるほど、面白い話じゃねえか。」

と答えた。

「決まりだな。」

こうして、時季外れの肝試しが始まることになった。

慧音は勘定を払うと早速準備をしに先に戻っていった。残るラディッツは、手元にある石焼野菜超味噌ラーメンを眺めつつ考えていた。

「トチギか…。どんな国か一度行ってみたいもんだな。」

 

<迷いの竹林>

「ここで合っているのか?」

「ああ、間違いない。」

ラディッツ達の前にそびえたつ黒い影。どうやらこれが迷いの竹林らしい。

「ったく、気味が悪いぜ…。」

そびえ立つ影の向こうから風が吹きつけている。それだけではない、低く唸るような獣の鳴き声、かさかさと乾いた竹の葉の音、月にかかっている雲。侵入者を追い出しているような感じだった。

「どうした、帰るか?」

その一言がラディッツの肝に点火した。

「うるせぇ!オレは強戦士族サイヤ人だ、この程度どうってことないわ!!」

「あ、おい待てって!!」

慧音の制止を聞かず暗闇の中に、一人その足を向けて行った。

 

「くそっ!一体どうなってやがる…。」

どうやら、一人で突っ込んで行ったのは無謀以外の何物でもなく、ラディッツは完全に道を失ってしまった。

「さっきから、出口が見つからねえじゃねえか…。」

ラディッツは、いざとなれば飛んで出れると思っていたが甘かった。上に飛んでも竹林を抜け出すことはできず、前に進もうにも竹が邪魔でまっすぐ進めない。完全に迷子になってしまったのだ。

「さてどうするか…。」

策を考えながら足を進めるラディッツ。

「うおっ!?」

バランスを崩し前に倒れた。

なにか、足が引っかかってしまったらしい。

「ったく、シャレにならない肝試し―。」

言いかけたその時、ふと後ろから温かい風が吹いていることに気が付いた。

そして、満月にかかっていた雲が消えかけていった。

「肝試しか…。随分と面白そうだな…。」

「き、貴様いつから!?」

ラディッツの顔に汗が出始めている。そして、声のする後ろの方を振り向くとそこには二つの火の玉があった。

「だが場所が悪いな、ここだと肝試しで終わりそうもない。早く帰ってくれ、その道を行けば戻れるから。」

全く、生気のない声だった。しかし、ラディッツは道を戻らず、振り返って言い放った。

「俺はラディッツ。生まれは遠き星惑星ベジータ、誇り高き強戦士族のサイヤ人だ。この道戦い続けて20年、俺に敵う者などないのだ!!」

ラディッツには自信がある。これまで幾千もの戦いを勝ち抜いてきた誇り、それに勝る者はいないはずだった。

「ふふふ…。」

「何がおかしい…。」

ラディッツは余計に気分が悪くなった。それは、誇りをはるかに超えたものを闇の向こうに感じているからだろうか。

「お前は…、これまで何年生きてきた…。」

唐突な質問だった。

「20年ちょっとだ…。」

「20年ねえ…。」

しかし、ラディッツは変な感じがした。普通、年齢を聞くだろうか。その疑問が頭の中に広まり、不気味に思えているのだ。

「だ、だからなんだ!!」

それでも、ラディッツは聞き返す。

そして、闇の中から炎が広がり辺りを覆い尽くした。

「…。人間50年、その生涯は儚い…。けれども、死なない者はだれ一人いない。だが、私は破ってしまった人間として超えてはならない一線を、もう、戻れない道を…。」

「お前一体…。」

「1300年…。それが、私が生きてしまった年だよ。」

白い髪に、光を失った赤い瞳。ラディッツは直感で認識した、こいつが慧音の言っていた奴だと。

「どうも話し合いじゃあ帰ってもらえそうにないか…。」

向こうもラディッツの目を見て分かったらしい。

「この俺は退かん、貴様のような相手でも容赦せんぞ!たとえ、1300年だろうがこの俺には通じんのだ!」

ラディッツは、弱いものをイジメる気はない。だがこいつは違う、自分より格上なのは間違いないが、ここで退いてはいけないような気をラディッツは感じているのだ。

そして、その少女はラディッツを鬼の目でにらみつけると言い放った。

「いいだろう…。1300年の孤独と苦しみをお前も味わうがいい!!」

 

 

「なんだよ。もう終わりか…。まだ本気の1/10しか出してないっていうのに…。」

「う…ぐ…ぐ…。」

動けないラディッツをゴミ同然に見下ろす妹紅。ラディッツの攻撃はほとんど通じず、赤子同然にひねり倒されてしまった。そして、来ていた戦闘服もボロボロになり、上半身のところはもはや原型が残ってない。

「く…。くそ…、あれだけやって10%かよ…。(今日は満月だというのに…、ついてねえな…。)」

今日は満月である。しかし、ラディッツの尻尾は反応せず、とっておきも使えなかった。

 

ふいに、妹紅はラディッツに背を向けた。

「?どういうつもりだ…。」

「…やめだ。もうこれ以上お前のような弱虫と戦う気なんざない、早く消えな。」

呆れを通り越して憐れんでいるような声だった。だが、ラディッツには一つ聞き捨てならない言葉があった。

「…貴様、今『弱虫』っていいやがったな…。」

その言葉は、ラディッツにとってかつての仲間と自分の影を思い出させるものだったのだ。

だが、妹紅は、そんなことはつゆ知らず、そのまま言い返した。

「そうだ、お前の20年がこっちの1000年に勝つことなんてどだい無理な話なんだよ。分かったら消えろ…。」

「この野郎!!」

ラディッツはとうとうメーターが振り切れたらしく、妹紅に向かって仕掛けるが、

「ふんっ!」

妹紅は、ラディッツの回し蹴りを紙一重でかわし、横蹴りを鋭く彼の腹に決めた。

「…ぉ。」

悶絶するラディッツ。みぞおちに入ったらしく気も遠くなっている。

そして、腹を抱えたままうずくまるようにして気を失った。

 

 

「やれたれ…。」

一段落して、妹紅がため息をついた。その時、

「ぐっ!?」

妹紅の胴に衝撃が走る。彼女に何かが体当たりしたのだ。

「ラディッツ!!」

相手は、一目散に横たわっている彼の方へ駆け寄った。彼の仲間らしい。

「先に仕掛けてきたのはそいつだよ。こっちは忠告したっていうのに…。」

「お前…、なにも気絶させなくても…。」

静かな怒りの混じった声だった。そして、その女は立ち上がり、妹紅の目を見て言った。

「私は上白沢慧音だ。お前…、名前を言ってみろ…。」

「名前なんて、とっくの昔に置いてきた…。」

妹紅は、名前などどうでもよかった。また、過去を振り返ることになるのだから…。

「…。」

その女は目をしばらくつぶると、妹紅の前に歩み出た。

「…やる気か…。」

「ああ…そのつもりだ。」

その瞳にはあの男と同じものがあった。

「そうか…、じゃあ好きにしろよ…。」

「ああ、そうさせてもらおう!!!」

 

 

「いい加減に分かれ…。お前がこれ以上戦っても無駄だ…。」

倒れ伏す慧音を見下ろし妹紅はこぶしを握り締めていた。

「…いや、それは無理だな…。」

慧音は、また立ち上がった。

「ならここで…眠ってもらおうか!!」

妹紅は鋭く彼女のみぞおちに一撃を入れようとする。

が、

「!!」

彼女はその手を掴み、うすい青からしずかな緑色に変わった。

そして、

「うぉあ!!」

妹紅の眉間に強烈な頭突きが一発入った。

 

「…人間じゃないな…。」

妹紅はずきずきと痛むアタマを抑えつつ、返した。

「ワーハクタク、それが私の力だ。お前は…、人間だろう…。」

「人間か…、懐かしい言葉だな…。」

妹紅は、揺れていたアタマを戻し、もう一度彼女の方を向き直した。

「お前…、一体何者だ…。」

「人間はとっくに捨てた…。不老不死の蓬莱人、それが今の私だよ…。」

「一体何があったというんだ…。」

妹紅は、目を鋭くして返す。

「もう話すつもりはない…。遊びはやめにしてやる…、来い。」

 

 

「…。」

「お前どういうつもりだ…。」

慧音はボロボロになって座り込んでいる妹紅に問い詰めた。

「どういうことだよ…。」

「今の攻撃、十分避けられたはずだ…。だがお前…、自分から当たりに行っただろう…。」

「だったらなんだ…。別に命の一つや二つ削っただけだろう…、何も変わらな――」

 

              バシイっ!!!!!

 

地面を蹴り、振り上げた慧音の右手が妹紅の頬を叩いた。

「…痛いじゃないか…。」

「ふざけるなァ!!何があってそうなったかはしらんが、例え不老不死でも命を軽く見る奴がいるか!それじゃあまるで自殺者となにも変わらないじゃないか!!!」

「黙れェ!!!」

耐えきれなくなっていた。

「お前に私の何がわかるっていうんだよ!いくら命を削ってもあの時の償いには届かない、結局自分の命なんて無に等しいもんだろうが!!!」

妹紅は、自身でもよくわからない感情が押し寄せた。

そして、握り締めた拳で慧音の左頬を殴った。

が、予想外の事が起こる。

「…。」

慧音は泣きも、喚きもしなかったのだ。

妹紅は呆然としていた。そして、さっと血の気が引き始めたとき慧音の両手が肩を掴み、

猛然と一発、妹紅の額に頭突きが入った。

 

 

ラディッツは弟が生まれる前、一人っ子として育てられていた。生まれながらにしてエリートクラスの戦闘力を持つラディッツは普通の家なら大切に育て上げられるはずだった。

「おいラディッツ、いつまで倒れてやがる。そんな弱虫で生きていけると思っているのか!!」

毎日朝起きてから夜遅くまで軍の施設の練習場でトレーニング、ラディッツに休日と呼ばれる日はあまりなかった。

「…くそっ…。」

彼の父親は戦闘に行っていることが多くラディッツの部屋に来ることはあまりないが、ラディッツと基地の練習場で会うことはよくあった。しかし父親は厳しく、子供であるラディッツに対して一切手を抜くことは無い。1時間以上休みなく戦うことが多く、彼にとって鬼にも等しかった。

「今日はここまでにしてやる、さっさと戻れ。」

ラディッツは、今日もズタボロになり家に帰った。

「…。」

ラディッツは一人、暗い部屋の中で考え込んでいた。どれだけ練習を重ねてもてもなかなか上がらない戦闘力、エリート集団の肩書だけになっていくような感じ、終わりのない壁が続いている気分だった。

「オレはどうしたら明日が来るんだ…。」

その時、ちょうどドアのチャイムが鳴った。

「ラディッツ、いつまで寝ているのさ。」

聞き覚えのある声だった。

「か…母ちゃん。」

ラディッツの母ギネは、配給所で働いているためあまり会うことは無かった。けれども、

「また、迷っているのかい?」

ラディッツにとっては唯一ちゃんと話の出来る相手だった。暗い部屋の外にいる母に向かって、ラディッツは重い口を開ける。

「俺は、いつになったらエリートになれるんだよ…。」

しばらくの沈黙の後、母は一つだけ言葉を残した。

「ラディッツ、戦闘力だけじゃあ見えない世界だってあるんだ。自分をしっかり見つめて自分の納得のいったやり方を見つけてみなよ…。」

それが、ラディッツにとって最後に母から受け取った言葉だった。

 

 

<慧音の家>

「悪いな、服を買わせちまって…。」

「いいんだ。巻き込んだのはこっちだからな…。」

ラディッツはボロボロになってしまった戦闘服の代わりに、新しい服を買ってもらっていた。色は紺色ベースの和服らしい。

「ところで、あいつ…。どうするんだ…。」

夕日が差し込む中、ラディッツが切り出した。あれからラディッツは、気絶していた間のことを慧音から聞いたのだった。

「…やはり、放っておくわけにはいかない。たとえ不老不死になったとはいえ間違いなく彼女は人間だ。」

慧音はここで退いてはいけないと強く感じていた。

「…やはりそう思うか…。」

「せめて、今日が満月だったら…。」

慧音は、そらに薄っすらと昇る十六夜月を見ている。

「満月だとなにかいいことがあるのか?」

「そうか…、まだ言ってなかったな。」

「まあな…。」

ラディッツは自分が遠い星にいた人間であることは伝えたが、慧音の力についてまだ聞いてはいなかった。

「分かった、教えよう…。」

 

ワーハクタク。彼女は人間でありながら妖怪の力を持ったいわゆるハーフ人種のようなものである。普段は満月の夜になると角と尻尾が生え、容姿の色も青から緑へと変わる。彼女はもともと人間であるのだが、何かしらの影響でそうなったらしい。

 

「そうか…。」

「だが、私がしたいのはそれじゃないんだ…。」

「?どういうことだ…。」

 

慧音の持つその力の真価は歴史を創りかえるところにある。『歴史の改ざん』というのが近いだろう。歴史は、実際に起こった事実とは違い、誰かにある事柄が知られ、広がり書き記されて初めて歴史になる。事実は、客観的かつ不可逆変化なもの、歴史は、主観的かつ可逆変化なものである。ドラゴンボールで起こる歴史改変は事実改変なのだ。

 例えば、ラディッツ達サイヤ人がいた。ということは間違いない事実である。しかし、フリーザがサイヤ人を滅ぼした今、サイヤ人に関わる話が書き記されて広まることがなければ、『サイヤ人』という歴史は無いことになるのだ。

上白沢慧音は、二つの能力がある、一つはこの人間である時の力で、歴史を隠す能力である。例えば、明治維新というのがかつて起こった事を、我々は書き残されたものから『歴史』として学んでいる。しかし、慧音が力を発動し、隠した場合、その事実があったことに間違いはないのだが、『歴史』からは完全に消え去ってしまう。こうして、社会で明治維新を習ったはずなのにどこにも残ってないという事態が我々の間で起こるのだ

もう一つの能力は、歴史を創る能力。あの姿になることで慧音は歴史を創り変えることができるのだ。例えば、明治維新というのがかつて起こった事を、学んでいる。しかし、慧音があの姿で力を発動し、明治維新を太平洋戦争にした場合、その事実があったことに間違いはないのだが、『歴史』は完全に書き変わってしまう。こうして、社会で明治維新を習ったはずなのに太平洋戦争で明治時代になったという事態が我々の間で起こるのだ。

 

慧音は後者の力を使う際、対象となるものの過去を見ることができる。それを利用して、妹紅の過去を見れないかと思っているのだ。

 

「なるほど…、その力であいつの過去を…。」

慧音はタイミングが悪かった。あの力は、満月のときでないとなれない。

「そう…。だが、昨日が満月だった…。この力はあと一か月はかかるだろう…。」

いつもは満月から解放されるのがうれしい彼女だが、今回ばかりは解放されてしまったことを悔やんだ。

「…。」

ラディッツは腕を組みしばらく黙り込んだ。そして、

「方法ならあるかもしれん。」

その手には、かつて母からもらい、忘れかけていたあの言葉が浮かんでいた。

 

 

「よし、この辺でいいだろう…。」

ラディッツは、慧音を連れて里から少し外れたある丘に向かった。すでに、日没から二刻。あたりは月の光と虫の優しい声に包まれていた。

「何をする気なんだ…。」

「まあ見ていろ…。」

ラディッツはその左手に力をこめると白い光の玉を浮き上がらせた。

「それは一体…。」

「簡単に言うと人口の月ってやつだ。」

 

サイヤ人にとって満月は一番本領の発揮できるものだった。月の光は満月が跳ね返ったもの、その光線の中に含まれるブルーツ波という光が満月の時に限りある一定以上の強さになり、それを目から吸収することで彼らは大猿に変わることができる。そして、限られたサイヤ人にのみパワーボールという特殊な球を生み出すことができ、人工的に月を作り上げることができる、ラディッツもその力を持っていたのだ。

 

「す、すごいこんな力が…。」

「準備はいいな。」

ラディッツは香霖堂で買ってもらったサングラスをかけ、慧音の方を向いた。彼女が小さくうなずくとラディッツは左手を大きく振りかぶって空へその球を投げた。

「はじけて、混ざれぇ!!!!!」

 

 

 

平安時代初期、大化の改新から約二百年。遣唐使は停止となり、まさに日本独自の文化の礎が築かれようとしていた。藤原一族が頂点に向かおうとしている中、妹紅は藤原一族の中心として生まれることができた。

「父は元気か…。」

「はい、最近は新しい律令のまとめをなさっておりますと…。」

「そうか…。」

庫持皇子、それが彼女の父である。妹紅は皇室に生きる者として国民の幸せを守りつつ政治に大きくかかわっていく重要な存在になるのは明白だった。

しかし、生きていくうえで絶対という安全な言葉が崩れるというのは今も昔も変わらないことである。

「姫っ!!」

「どうしたのですか…。」

「こ、これを…。」

 

それは、庫持皇子の失踪を告げるものだった。

 

それ以降、妹紅の政治上の地位は下がり始めていった。政治上、敵対していたグループからの皮肉の混じった手紙が幾度となく手元に届けられ、さらに父がいないのでこれまで支えていた人々からの支援も手薄くなっていった。そして数か月後、父が戻ってくることは無く妹紅は皇室を離れ、宮中を去ることになってしまった。

妹紅はそれ以来藤原を名乗ることはなくなり、数人の侍女と共に仏に使える身として働くことになった。だが、政治の世界で得てしまった歪みはなかなか取れるものでもなかった。

「どちらへ行かれるのです…。」

「ちょっと、外に行ってくる。」

妹紅は、そう言い残すと暗くなりゆく中、その仇の家に向かった。

「ちょっと、いきなりなんだ貴様。」

妹紅は、家の警備についていた者と争いになっていた。眠っていた翁の服を掴んで脅し、姫の寝室まで向かっていったのだ。

「うるさい!そこにいるんだろう、早く出てきたらどうなんだ、なよ竹のかぐや!!」

妹紅を止める兵の後ろにある簾の先に仇はいる。しかし、これ以上妹紅が踏み入ることは許されず、応援に駆け付けられた兵たちによって取り押さえられ、そのまま門の外に放り投げられてしまった。

「く…、くそぉ…。」

妹紅は言い表せないほどに膨れ上がった怒りを地面に叩きつけた。しかし、怒りは収まらず湯水のように湧き上がっていく。

「何か、お困りですか…。体冷えますよ…。」

ふと背後から声がした。しかしその服を見た瞬間、妹紅の怒りは堰を切って流れ始めた。

「てめえ!!よくも父と私をこんな目に遭わせやがって!!今ここでぶっ殺してやるぅ!!!」

妹紅はその首を掴もうとしただが、次の瞬間そこにあったはずの首はなく、手がむなしく宙を舞った。

「何か、勘違いをなさっているようですね…。藤原妹紅。」

妹紅は大きく見開いた。捨てたはずの藤原という言葉を耳にしたのだ。

「お前…、一体…。」

妹紅のあふれていた怒りが徐々に別の物に変わっていった。

「それ以上はいけません…、もうあなたも分かったはずです…。」

そう言い残すと、その少女は光を纏って消えていった。

「…。」

妹紅は、自分が一生かけても越えられない壁を感じ悔やんだ。しかし、このまま何もやれず引き下がりたくないと妹紅は強く思った。

 

それから数年後、あいつが月へ戻ったという話が広まった。そして、受け取った手紙とあるものを燃やしに東の国にある天に近い山へ向かうという情報が皇室の中で流れ、妹紅にもその情報が秘密裏に伝えられた。

「本当に行かれるのですか…。」

「ああ…。」

「やはり、考え直すのがよろしいのでは…。」

「…。」

妹紅は仕えていた侍女一人を残し、その山を目指した。そして、移動すること2週間。彼女は、目的の山に着いたが準備が甘かった。

 

「…はあっ…。はあっ…。」

妹紅は岩陰に隠れつつ数名の一行を追う。しかし、樹海という巨大な迷路を相手に大苦戦し、風が強く険しい道の続く山登りですでに限界に達していた。そして、もう一つ致命的なことがあった。

「く…そぉ…。岩が小せえ…。」

隠れられる岩もなくなりつつあった。

「ちくしょう…。」

とうとう妹紅は尾行を断念し、座り込んだ。

もうこれ以上打てる策もなく、体力も限界。諦める以外どうしようもないのだが。

「?」

ふと、一行の足が止まった。

そして、一人の男がこっちに引き返して歩いてきたのだ。

「とうとうばれちまったか…。」

妹紅は、年貢の納め時だと思った。

だが、その男の右手には小さな竹筒が握られていた。

そして、妹紅の目をしっかり見つめ。

「ここまでよく頑張った。頂上まで一緒に来い、ここで立ち止まっても凍え死ぬだけだ。」

妹紅は、一瞬時が止まった。その男は、妹紅がつけてきていることに気づきつつも妹紅に救いの手を差し伸べたのだ。妹紅は、何か心の奥底からこみ上げてくるものを感じつつも黙ってその一行と共に頂上に向かって歩み続けた。

途中、何度か立ち止まりそうになるも共に励ましあって乗り越え、出発から1か月。ついにその山頂に着くことができた。

そして、妹紅は岩笠と名乗る者に一つ聞いた。

「私は、山賊であなた達を付けていたがとんだ失態を見せてしまった…。」

それを聞いて兵士たちはみな笑っていた。妹紅ひとりでは敵うわけはないと思っていたのだろう。だが、岩笠は違っていた妹紅を黙って見つめていたのだ。

「だが、一つ聞きたい。お前たちは何のためにこの山を登っているのだ…。」

岩笠は、しばらく目をつぶると一言だけ返した。

「勅命だ…。」

その後、岩笠は兵士たちに命じ壺にひもを括り付けた。妹紅が近くにいる兵士に聞くとこの壺を火口に入れて燃やすとのことだった。そして、紐を括り付けた壺を火口に投げ入れようとしたその時、明るい光と共に一人のこの世の者とは思えないほど美しい姿の女性が現れた。

「あ、貴方様は…。」

妹紅には一つ思い当たることがあった。そして、次の言葉で確信に変わった。

「私はサクヤ姫。この山の噴火を鎮める女神です。」

一気に全員の目が変わった。突然の出来事を前に動揺する者、反射的にひれ伏す者も現れた。そして、サクヤ姫は目をつぶると優しく儚い顔を一変し、真剣な表情で岩笠の方を向き、次の言葉で流れを変えた。

「その壺をこの山で焼こうとしてはなりません。」

岩笠は、一瞬黙り込んだが返す。

「私はこの壺を最も点に近いこの霊験あらたかなる神の火で焼かなければならない。これが帝の勅命でございます。」

その言葉を聞いて、サクヤ姫は一つため息をつくと岩笠に向かって言った。

「その壺をこちらで焼かれますと、火山が活発になり私の力では負えなくなってしまうでしょう。その力は神である私の力を上回ります。貴方たちはその壺に入っている物がどのようなものか分かっているのでしょうか…。」

兵士達は皆沈黙した。誰一人何が入っているのか知らされていないようだ。しかし、岩笠は血の気が引き始めていった。

「その壺に入っている物は…。」

「それを言ってはならぬ!!!」

「いいえ、ここまで担いできた彼らには知る権利があります。」

そして、次の言葉で岩笠と兵士たち、そして妹紅の運命は変わってしまった。

「不老不死の薬…ですよ…。」

時が止まった。そして、岩笠は地面に手をついた。その瞳には先ほどまであった灯が消えてしまっていた。

「この山の北西の先に八ヶ岳という山があります。そこに住む私の姉なら供養できる。姉は不死不変を扱う神ですから供養してもらうには丁度良いでしょう。」

「しかし、その山では高さが足りないのでは…。」

岩笠は何とか気を立て直したらしく、話をつづけた。

「いいえ、昔あの山は私の山より高かったのですよ。」

「その話は初めて聞くが…。」

「その昔、あの山とちょっと喧嘩がありまして…。とにかく、山の格としては十分です。月までの距離もある意味あちらの方が上ですから、周りが不幸にならないうちに一刻も、一刻も早くそちらに向かいなさい。」

「そうか…。それではさっそく下山し八ヶ岳へ向かおう。迷惑をかけてすまなかった。」

岩笠は震える声でそう言うと、サクヤ姫は安心し火口へと姿を消した。

「岩笠殿一体あの薬は…。」

兵士たちは動揺を残しつつも岩笠に迫った。そして、岩笠は観念したらしく勅命の内容を打ち明けた。

 

あれから二日、妹紅たち一行は富士山の麓で夜を迎えることになった。あれ以来不死の薬は全員の真ん中に置かれ、そして誰も信用できなくなったのか常に二人以上順番に壺を見張るようになっていた。

しかし、その二日目の夜に事件は起こってしまった。

「…。」

妹紅は気を失っているように眠り続けた。しかし、何かの光に導かれれるように目を開けた。

しかし、目を開けたその時、妹紅は壮絶な光景を前に絶句してしまった。

一面の血の海、ボロボロになった兵たちの衣服、焼失している髪、焼け爛れきって誰が誰だか分からなくなった顔、マネキンのように硬直しきった体、そして顔面を覆うように当てられた両手。妹紅にとって彼らの最期の苦しみという地獄絵図を想像させるには十分であった。

絶句している妹紅を前に岩笠も目を覚ました。岩笠はその光景の壮絶さのショックのあまり言葉を失い、回復後、もう勅命を遂行することはできないと悟っていた。その後、彼は壺を担ぐと妹紅を連れて夜明けの近づく中、妹紅を後ろに山を下りて行った。

互いに話を交わすこともなく、変化のない急な坂道を歩いて行く。妹紅は、岩笠の背負っている壺と足場を交互に見ていた。

妹紅は、迷った。本来の自分の目的と岩笠から受けた恩の狭間で。妹紅の目的は壺を奪うこと、しかし奪うにはこの岩笠という男を殺さないといけない。だが、岩笠には何の恨みもない。それどころか、助けてくれた上に見捨てることなく山頂まで連れて行ってくれた…。

崖に差し掛かった。

妹紅は、意を決すると岩笠に向かって蹴りを入れようとする。

が、急に岩笠がしゃがみこんでしまい妹紅の足が空を切った。

そして、勢いをつけすぎてしまった妹紅はバランスを崩しそのまま崖の方に滑落しそうになってしまった。

「し…、しまった…。」

妹紅の体が宙に差し掛かる。ふとその時、妹紅の肩を何かが掴むと同時に妹紅は一気に後ろに向かって引っ張られた。

 

「…。」

妹紅は辺りを見回すとそこには壺が置いてあった。周りには誰もいない。

「これが不老不死の…。」

頭がズキズキと痛むが、その壺を覆っていた包みを開け、中に入っていた白い粉を見つめた。そして、頭の痛みが引いたころ、その薬は空になった。

「やっと、あいつに報いたのか私は…。」

実感はなかった。髪の色も変わることは無く、着ている服も変わっていない。だが、一つ妹紅はあることに気づいた。

「そうだ…、岩笠…。」

妹紅は崖下を覗き込みそして、完全に血の気が引ききってしまった。

「…。」

そこには、変わり果ててしまった、人だったものの姿があった。

 

あれから数か月後、妹紅は寺で仏道修行に励んでいたが。

「げほっ…。」

都で流行している天然痘にかかってしまったのだ。一緒に連れてきた侍女はそれにかかって亡くなってしまい、そして、妹紅も彼女と同じように病状は悪化し、もはや助かる見込みはなくなってしまった。そんな中、祈祷をするべくあるお坊さんが妹紅のそばで経を読み始めたその時、妹紅の体が光に包まれた。

「な、何事ぞ!?」

一体何が起きているのか訳が分からなくなっている彼の前に炎が現れた。そして、その炎から変わり果てた妹紅が出てきた。

「ひ、ひえ~~~~っ!!!!!」

あの薬の呪いがはっきりと表れた瞬間だった。

「一体なにが…。」

鏡に映る変わり果てた姿を前に妹紅は呆然とするしかなかった。髪は黒から城に変わり、黒かった瞳も赤くなってしまった。

「これが…、結末か…。」

それから数日後、妹紅は寺から追い出されることになった。変わり切ってしまった彼女は、誰からも受け入れてもらえることは無く、人の少ない山の方に逃げるしか方法は無かった。

そして、妹紅は自分が犯してしまった罪をもう一度認識することになった。あの時、崖から彼を突き落とそうとして崖から落ちかけた彼女を岩笠は自分の命と引き換えに救い、彼女の恩は彼の命を奪うことになった。

妹紅の未来は終わった。

妹紅は、人間本来の道を外れただけでなく、自分の行動が原因で人を死なせたという皇室に生きた者として下ろすことのできない十字架を背負い、そらに、かつて自分が幸せを願って働いていたはずの国民から見捨てられるという終わりのないらせん階段を下り続け、彼女の心は幾重にもかけられた鎖の中に埋もれていった。そして、不死になって1200年、妹紅はこの幻想郷に流れ着いていた。

 

 

 

「…。」

妹紅は傷だらけのまま星を眺めている。決して戻れぬ過去を見つめても変わらないことには変わりないが、いつからか夜、一人で考え事をし始める癖がついていた。皆同じ夜を生きているはずなのに、私の夜は彷徨っているような…。

「誰だ…。」

一つの足音が妹紅の前で止まった。

「星が綺麗ね…。」

「………。」

「このたくさんの星も一つ一つの輝きは弱いけれども、耐えることなく輝いている。妹紅、お前が犯した罪は償い切れるものじゃない…。でも、心を閉ざしてはいけない。」

彼女は、その右手を差し出すとこう残した。。

「私と一緒に来い、過去に縛られたまま一人で生きるな…。」

 

「これでよかったのか…?」

朝日が昇りゆく空を見つめつつラディッツは後ろにいる慧音に問いかけた。

「これでよかったんだ…。きっと彼女もまた『生きる』意味を見つけ出すはずだ…。」

「『生きる』意味か…。」

慧音のその声は優しく、どこか温かいものがあった。

「いろいろとありがとう…。」

「別に、俺はちょっと手伝っただけだ。」

ラディッツの声には昨日までと違い、なにか新しいものを目指そうとするものがあった。

「また時間があったらこっちに来てくれ、またどこか美味しいところへ連れて行こう。」

「そうか…、それじゃあまたいいところ教えてくれよ。」

そう言い残すとラディッツは地面を蹴り、明け行く空へと飛んでいった。

 

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