東国戦遊志~紅~(東国幻想郷シリーズ) 作:JAFW500/ma183(関ケ原雅之)
この作品は『ドラゴンボール』、『東方プロジェクト』の二つの作品を主に元ネタとしたクロスオーバーものです。
今回の時間もバーダックが来る数年前で、旧作終了直前となります。
このシリーズでも、本編同様に「オリジナルキャラクター」・「大幅のオリジナル設定」が出ます。
いろいろと思い切った独自解釈まみれの幻想郷となっています。
また、ドラゴンボールZ本編のラディッツとは「別の道」を歩んだ「このラディッツ」の過去は『紅の第零話、第壱話』にありますので、新鮮な気持ちで見てもらえると嬉しいです。
「へえ、『生きる意味』ねぇ…。」
「まあ、そういうことだ。いろいろ考えさせられたがな…。」
ラディッツは小町と一緒に中有の道にある居酒屋で昼の休憩をしていた。
「まあ、生きる意味ってのは人それぞれさ…。ゆっくり考えるといいんじゃないか、ほれもう一杯どうだい?」
「ああ、すまねえな…。」
ラディッツが小町に酒を注いでもらおうとしたその時、
「小町、ラディッツ!!!」
「い”!?」
「きゃん!」
いきなり後ろの扉から雷のような一声が走った。
彼らのボス、四季映姫が厳しい表情でこっちを見ている。そして、ラディッツの後ろに移動すると静かな声で問い詰めた。
「ラディッツ…、さっきから連絡しているのに…何昼間から飲んでいるんですか…。」
「い…、いや…、ちょっと息抜きを…。」
「飲んでる場合ですかァ!!!」
一喝と共に、彼女の持つ悔悟棒の一撃がラディッツの頭に直撃した。
「う…ぎぃ…。」
初めてくらった一撃だが、想像以上にラディッツの奥底まで染み入り、酔いが完全にさめた。
「それから小町…、貴方にはラディッツに仕事の内容の書かれた紙渡すように言ったはずですよね…。何こんなところで一緒になって酒飲んでいるんですか!!仕事をしなさい仕事を!!!!」
「はっ、はいっ~~~~~~~!!!」
小町はラディッツに仕事を伝えるために来ていたが、せっかくの昼休みなので飲みながら伝えようとしていたが忘れてしまっていた。
「ラディッツ、これが仕事だよ…。」
悔悟棒で叩かれたところをさすりながら小町はラディッツに持ってきた手紙を渡した。
「…博麗神社だと…。」
「そうです。どうも最近里の方で妙に強い妖怪が現れて困りだしたようです…。」
それは、妖怪退治の手伝いの助っ人を依頼する内容だった。
「しかし、この仕事…。ラディッツにまで回ってくるものですか…?」
小町は疑問に思った。人間の里には、最強組と呼ばれる者がおり、普段こういったものは彼女たちの専門分野のはずなのだ。
「どうやら最近魔界へ行っているらしく、人手不足なんだそうです…。とにかく、ラディッツすぐに支度して向かいなさい…。」
額に手を当てつつ閻魔様はため息をついた。
「しょうがねえ…、行くか…。」
ラディッツは席を立ち、外へと向かった。
「それじゃあ、あたいも行こうかねぇ…。」
それに続いて小町も後を追って向かうが、
「小 町 さ ん …?どこに行くんですか…。」
閻魔様の力のこもった右手が肩に置かれた。
「い…、いやぁ…。ちょっと仕事に戻ろうかなって…。」
「そっちは現世ですよ…。貴方のハウス(職場)はあっちです…。」
徐々に右手が食い込んでいく。
「ワ…ワカリマシタ…。」
「素直でよろしい…。」
小町はとうとう観念すると方向を変え、三途の川の方へと戻っていった。
そして、映姫は大きなため息をついた。
「ああ…、小町も最初に見たときは真面目な奴だと思っていたのに…。」
赤く燃える夕日を背に、ラディッツは飛び続ける。
「あ~くそっ…。やっと楽になったぜ…。」
ラディッツは途中、香霖堂に寄り二日酔いの薬を買った。
「しかし…、あれを買って出ていくときに『君はここをどっかの薬局と勘違いしていると思うけど…。』って言ったのは何だったんだ…。」
そんなことを考えている内に目的の場所に着いた。
<博麗神社>
「で、今回助っ人として来てくれたと…。」
「まあ、そういうことだ。」
今回の依頼相手は、博麗の巫女をやっていた者、博麗レイムからだった。
「…。」
彼女は、ラディッツの目と手を見ると、
「まあいいわ、とりあえずこれを付けて待っていなさい。」
と言って彼に二つの物を渡した。
[chapter:人食い妖怪]
<妖怪の森>
人間の里から大きく離れた山の麓に存在する妖怪の森、かつて人間と争った時は多くの妖怪で栄えていたが戦争が終わるとそこに住んでいた者はそれぞれあるべき場所へ戻っていった。しかし、ある妖怪だけは依然としてそこに住んでいた。
自身が喰らった人間たちの屍と共に。
「忠告?」
白黒の洋服を身につけ、長いスカートと金色の髪の妖怪は言った。
「そう、古き友人としての忠告よ。」
相手は、幻想郷を創った賢者の一人、八雲紫。今、この幻想郷で生きる妖怪の中で最古参に入る者である。
彼女は笑顔で答えた後、真剣な顔で一つ言い放った。
「これ以上人を食おうと考えるのをよしなさい…。」
その言葉を聞いた妖怪は、一瞬呆然としたが、
「…ふふふ…、あははははは!!人食い妖怪になってしまった私に向かってそれを言うのか!?」
そのおかしな話を笑っていた。
彼女は、人食い妖怪として生きている。あの戦争の引き金になった張本人で、数えきれないほど人間を食い殺し、彼らの持つ闇を喰らって生きたのだ。
「そうね…でも…。」
もちろん、紫もそのことは知っている。しかし、紫は持っていた扇子を閉じると、
「あなたの場合、ちょっと食べすぎていたんじゃあないのかしら。」
ルーミアの後ろに重なっている屍の山を指して言った。
「あなたのせいでただでさえ少なくなってしまった里の人たちをまた食べ尽くす気?いくらなんでも度が過ぎているんじゃないかしら?」
「…。」
「里の人たちもあなたを恐れている…。このまま食べるのをやめてひっそり生きるか、人食い妖怪として死ぬか…。選ぶことね。」
しばらく重い沈黙が漂う。
「満たされないのよ…。」
そして、ルーミアは手元に転がっている骨だけになった頭を手に持つと語り掛けるように言い始めた。
「食べても食べても、いくら食べてもどうしてもこの復讐心は満たされない…。」
「…。」
「ねえ、紫…。私が人を喰らうをやめたら…。」
「どうして私は幻想郷(ここ)に居続けることができるの…?」
それは、ルーミアにとって一番の壁だった。彼女は、あの戦争以来人食い妖怪として変わってしまった。以前の宵闇の妖怪に戻るには一度闇を全て引き抜き、代わりになる闇を入れなければならない。
「…とにかく、人を襲うのは控えなさい。私は帰るわ…。」
紫は彼女の方から振り返ると暗い森に向かって足を向けた。
「…。」
「あ、そうそう。あなたのさっきの答えはこれから来る人が答えてくれると思うわ…。」
そう一言残すと、暗い森の中に消えていった。
「そんな奴がいるわけないだろう…。」
ルーミアがため息をついてから数分後。
「………?」
二つの足音が彼女の前で止まった。
「へえ……、なるほど…。」
その妖怪は笑みを浮かべると登っていた屍の山から下りた。
「あなた達が紫の言っていた人かしら…。でも、一人じゃないのね……。」
そして、現れた二人の前に立つと、仮面の隙間から見える瞳を見つめてそれぞれの正体を探った。
「なるほど、片方はあの伝説の博麗の巫女か…。でも…。」
次の瞬間、もう一人の目を覗き込むように近づいた。
「あなた…知らない顔ね…。それにこの尻尾…、新種の妖怪かしら…。でも、別にいいわ、これからあなたも食べることに変わりないから…。ただ…。」
その顔を離すと右手を顔まで上げ、
「食い殺す前に、その仮面を外してもらおうかしら!!!」
その仮面に一つの深い切れ込みが入った。
「ああ…、やっとすっきりしたぜ…。」
仮面の右半分は割れて地面に落ち、一つの瞳が覗いている。
「…人間かしら…。」
意外な顔をする妖怪を前にその男は残った左の仮面を外し、名乗りを上げた。
「人間ではない…俺は、地球人の心を持った強戦士族サイヤ人の末裔だ。」
その言葉を聞くとその妖怪は狂気に満ちた笑みを浮かべ、
「強戦士族か…美味しそうね。いいわ私も限界だったの、あいつらと同じように食べ尽くしてやるわ!!!!!」
一気にラディッツに襲い掛かた。
「うおあ!!」
ラディッツの振りかっぶた正拳の一撃が彼女を彼方の森に吹っ飛ばした。
「…。(紙一重でかわして拳を入れる動き、攻撃の受け止め方…やはり武術の類を受けたことがあるか…。)」
腕を組みながらレイムは彼の動きを見ていた。最初に遭った時、彼の目と拳に残っていた傷を見て彼がかなりの戦闘経験者であることを見抜いたのだ。
「さあ、いい加減人を食うのをやめるんだな…。今の貴様をこれ以上ぶちのめすのは、この俺にとって心がいたいものだ。ここで、降伏して従うことを勧めるぞ…。」
ラディッツは、その妖怪が吹っ飛ばされた森に向かって言い放った。だが、
「…確かにこの数百年いろんな人間を襲ったけど…、あなたほど強い心を持つ人間は久しぶりに見たわ…。やはり…、『気に入った』…あなたの骨の髄まで残さず綺麗に食べ尽くしてやるわ…。」
その妖怪はラディッツをしたたかに酔ったような目でなめるように見ている。
「やはり…、技だけじゃ無理か…もっと力を入れんとだめか…。」
ラディッツの攻撃は技においては良かった。しかし、あの妖怪が纏う闇のせいで威力が体にそのまま伝わらずいまいち効いてない。
そして、あの妖怪は目をつぶると告げた。
「…力で倒すねぇ…、あなたにできるのかしら…。」
「どういうことだ…。」
そして、次の一言で状況は変わる。
「いつ私が本気で戦っているといったのかしら…。」
「なっ…。」
次の瞬間ラディッツの目の前まで迫っていた。
そして、
ラディッツの右肩に彼女の出した闇が突き刺さった。
「ぬ……ぁ…。」
ラディッツは目をつぶり呻きながらも刺さったそれを手で折ろうとするが、
「ぎいやあああぁ!!」
触った右手に激痛が走ったのだ。
「ふふふ……馬鹿ねぇ…。」
あの妖怪は騒ぎ立てるラディッツを楽しむような目で見ている。
「ち…、ちくしょおおお……!!!!」
ラディッツは気力を振り絞り、残った左手で彼女の右頬を狙うが、
「前を見ててもいいのかしら……?」
すでに本体は後ろに回り込んでいた。
そして、ラディッツの肩に大きい一撃が落ちた。
「気を失っちゃった…情けないわね…。」
地面に倒れ伏しているラディッツを足で転がすと、その妖怪は残る巫女の方を向いた。
「あなたも戦うのかしら…。」
「…どうやら私の方まで順番が来てしまったらしいからね…。まあ、彼に点数をつけるとしたら25点といったとこらかしら…。」
そう言うと、巫女は被っていた仮面を外した。
「あら…仮面外すのね…。」
「もうこれは要らない…そう思ったのよ…。」
さっきまで笑みを浮かべていたその妖怪の表情は雲に隠れ、暗くなりよく見えなくなった。
「博麗の巫女…。かつて八雲紫と戦って痛み分けに終わったと聞いていたから硬い感じの顔だと思っていたけど…意外ね…。」
「…。」
「その綺麗な顔…。ちょっと食べるのがもったいない気がするけど…。」
そして、雲に隠れた月の光が差し込むと
「その分きっとおいしいそうね…。しっかり食べ尽くしてあげるわ。」
その笑みは一層深いものになっていた。
<博麗神社>
「ええい、くそぉ!!」
ラディッツは、近くにあった小石を暗い森の方に投げつけた。
「またこの様か…、俺は…一体いつまで弱虫のままでいるんだ!!」
ラディッツは、やり場のない怒りがこみ上げていた。これまでの仕事の中で、一度も指をくわえてその行く末を見届けなければならない立場にいた。寄り添うことでしか力を貸すことができなかったのだ。
「親父…、俺はサイヤ人として失格なのかよ…。」
ラディッツが、重い足を引きずったまま寝かされていた寝室に戻ろうとした時。
「っておい、なんなんだよこれはッ!!」
誰かが、叫んだ声がした。
「?さっきの奴か…まだ暴れていやがるのか…?」
ラディッツは玄関の扉を開けた。
「うるさいわね、悪い子にはお仕置きでしょう。反省するまでそこに縛り付けておくわ。」
「はぁ!?」
ラディッツはその光景に唖然とするしかなかった。あの人食い妖怪があの巫女によって頭に札を貼られ、木に縛り付けられているのだ。
「おい、レイム。これは一体どういうことだ…。」
「見ての通り『退治』よ。」
「これが、『退治』か…。」
ラディッツは今までこんな解決の仕方を見たことはなかったが、ここが幻想郷であることを思い出し、これまで持っていた自分の世界観で測るのは良くないと思いその言葉を納得した。
「やれやれ、これで一件落着ね…。ラディッツお茶を入れてきてもらえるかしら。」
「分かった。」
「ちょっ、こらッ、ほどけぇッ!!」
「ああそうか…、そんなことが…。」
「まあ、久しぶりにいい運動になったわ。」
ラディッツとレイムは、温かい緑茶をすすっている。ラディッツにとってお茶は初めて飲むものだが、いい感じに混ざり合う甘みと渋みという感じに心地よさを見出した。
「ところで…。」
ラディッツは持っていた湯呑を置くとレイムに尋ねた。
「俺の点数が25点ってどういうことだ…。」
さっきの話で出てきた彼の戦い方に疑問があった。あのころと比べて戦闘力はかなり上がっただろう…。しかし、その実力に合わない結果ばかり出しているような気がしてならないのだ。
「そうね…。」
レイムは近くに置いてあったジェンガを持ってくるとその問いに答え始めた。
「まだパワーに偏っている気がするの。足りない者は二つ、一つ一つの技のキレと自分の中から出てくる恐怖ってところかしら…。」
「キレと恐怖か…。」
「そう、あんたの場合この積み木の一部分が空洞になっているのと同じ、これも穴があるとどれだけ積み上げても簡単に崩れてしまう。あんたもこのまま修行とかで力を上げようとしてもそれに見合わない結果になるのがオチでしょうね…。」
崩れた積み木を見て、ラディッツは少し考え込んだ。そして、
あぐらをかき、両手をついて頭を下げた。
「頼む、俺のためにしばらく修行を付けてくれ…。」
ラディッツは、エリート集団に属していたので人から教わることには抵抗があったが、このままあがいても一生井の中の蛙で終わってしまう気がした。彼は、今そのエリートという帽子を脱ぎ、弟のカカロットと修行した時のように初心に戻り教えを乞うことを決意したのだ。
「…わかったわ…。あんたの技のキレを磨いてあげる、その代わりちょっと高くつくわよ。」
「わかった……………………ありがとう…。」
それは、ラディッツが初めて直接感謝の言葉を口に出した瞬間だった。
<博麗神社付近にある河原>
翌朝
「よし、それじゃあ始めるわ。」
「始めるのはいいが…、こいつもつれてきたのか…。」
「…ふんッ…。」
レイムは昨日戦った妖怪を縄でつなぎながらここに連れてきていた。
「しょうがないでしょ神社空けているんだから。それに…、勝手に逃げられたら困るから。」
「…。」
レイムと木に縛られているその妖怪がにらみ合う。この時、ラディッツは改めて怒らせると怖いのは男だけではないことを察した。
「さて、まずは正拳からね。」
「パンチの事か。」
「まずはその石でやってみなさい。」
そう言うと彼女は河原に落ちていた大きめの石をラディッツに渡した。
「ようし…。」
「はあっ!!」
ラディッツが思いっきりその石に向かって拳を放つとその石は粉々に割れた。
「まあ、こんな感じだぞ…。」
「なるほど…。」
少し離れてみていたレイムはその場に落ちている石を持って、ラディッツの前に出るとその石を大きな岩の上に置いた。
「よく見てなさい。」
彼女は、振り上げたこぶしを一気に振り下ろした。
「はあっ!!!!!!」
すると、持ってきた石は綺麗に真っ二つに割れ、岩にも少しではあるが綺麗なひびが入っていた。しかし、ラディッツは一つコツをつかんだ。
「そうか、拳を当てるとき人差し指と中指の面で撃っていたのか…。」
「そのとおり…。なかなかいい眼をしているわ。あんたは、拳全体で撃とうとしているけどそれだと力はうまく伝わらない、そして硬い相手と戦った時骨折するかもしれない…。」
するとレイムは中指と人差し指を立てた。
「今から二日でこれを習得してもらうわ。」
「二日か…。」
「但し、一回一回しっかり意識して、撃った後の石をよく見ること。正しいやり方で身に着けることが目的だから焦らないこと…。いい…?」
「分かった。」
そう言い残すと、彼女は来た道を戻っていった。
<三途の川>
ラディッツが出発して二日目、小町は三途の川を往来している。
「ふう、今日はよく働いたな。これだけ働けば今日の夜には帰れるだろう。」
「どこがよく働いたですか。」
「きゃん!」
彼女のボス、閻魔様と一緒に。
「まだ10人のうち5人しか来てないじゃないの。」
「あ、あー、いや、頑張ってはいるんですが…霊が…。」
「霊が…?」
「霊が――、そう、生前の未練がなかなか断てず、川幅が広くなってしまっているのです。」
すると、映姫は浄玻璃の鏡に映るものを小町に差し向けた。
「い”!?」
そこには死者の霊と楽しそうに会話をして全然前に進んでいない小町たちが映っている。
「小町、貴方が仕事をしているのはいいことです…が、いつも貴方は平均20キロ、約2時間で運んでいます。ただでさえ遅いというのに…、あなたの今日の所要時間は5時間、漕いだ距離は5キロですよ…単純に計算して1時間1キロですよ!!歩くのより遅いってどういうことですか!!」
「すみません!すみません!!」
「いい?私たちは生前の罪を裁く者。罪を裁く者は常に公明正大に身を正していなければならない。そう…あなたは怠けすぎている…。」
この一言で小町は裁かれる運命にこれからなることを悟った。
「このままでは、貴方を首にしないと示しがつかない…。貴方を放っておくこと自体が、私の公明正大に傷をつける。」
「すみません!もうしません!まじめに働きますから!!」
しかし、閻魔様は恐ろしいほどやさしい表情で続けた。
「一度私の裁きを受けてみる?そうすれば、少しはあなたも裁きの恐怖を感じられるでしょう。」
「すみません、許してください、なんとかしますから~~~~!」
こうして、逃げられない密室の客船で恐怖の裁きが始まるのだった。
<博麗神社付近にある河原>
「うおあ!!!」
ラディッツの気合のこもった一撃が遂に石を真っ二つにした。
「はあっ…、はあっ…。やっとコツがつかめて来たぞ…。」
あれからもう何百回繰り返しただろうか、彼の両手に巻かれたテーピングも真っ赤に染まり切っている。
「…もう夕方か…。」
ラディッツは暮れ行く西の空を見つめる。彼が弟と一緒に修行した時もこんなことが多く、よくカメハウスで一緒にご飯を食べたことがあった。
「そういえば、昼飯まだだったな…。」
ラディッツはあの巫女が去っていく際に置いていった竹皮の包みを開けた。
「おにぎり5つと沢庵か…。」
もうすでに冷め切ってはいたが、なにかあたたかい温もりのようなものがあった。
「…。」
何を思ったのかラディッツはそれをもう一度包むと、立ち上がり、ある方に向かって言った。
「…なんだよ…。この前の仕返しか…。」
昨日戦った妖怪のもとだった。
「…。」
「やるならやれよ!!たとえ、お前のような人間があがいたところで妖怪が消えることは決して――――」
そのとき、ラディッツの仕返しは終わっていた。
「ほらよ…。」
そこには、さっき持って行ったおにぎりの入った包みが置いてあった。
「…どういうつもりだ…。」
その妖怪はラディッツに怒りに似た顔を向けた。
「別に貴様に言わなくても分かるだろう…。」
「…違うッ!!的に飯を送る奴がいるかッ!!どういうつもりだ!!」
「知るか…。お前を見ていたらカカロットのガキの顔がちらついた…。ただそれだけだ。じゃあな。」
ラディッツはまた修行を続けに戻っていく。
「なんなんだよ…。なんなんだよお前はッ!!!!!」
ラディッツは振り返ることはなかった。けれども、一つの言葉を残した。
「俺は、サイヤ人だったのかもしれん…。」
<三途の川>
ラディッツが仕事に出かけて3日後、彼岸ではいつもと変わらぬときが流れている。
「なるほど、だからラディッツを…。」
小町は、あの時ラディッツを雇ったもう一つの理由を聞いた。
「そういうことです。って、あの時あなたもいたでしょう…。」
一つは、彼が数えきれないほどの命を奪い続けた罪を、どれだけの時間がかかるかわからないが、仕事を含めて償いきること。
そして、もう一つが彼にとって大切なことなのだが…。
「いや~、ちょっと不覚にもうたたねを…。」
あの時、彼女もラディッツに下された裁きの瞬間を見たのだが。重要なところで、寝ていたのだ。
「もう一回、やりますか。」
「もうしません…。」
小町はあれから閻魔様の裁きを受け、痛烈な一撃を心と体に染み込まされた。やはり、相当堪えたらしく翌日、顔が死んでしまったらしい。
「まあ…、正直に言ったことだけは認めてあげましょう。」
「ところで四季様。」
「どうしました、小町?」
「なんで、『今日も』一緒に乗っているのでしょうか…?」
小町には一つ嫌な予感がしていた。あの日、小町の裁きは終わったので閻魔様は裁判所に戻っていたのだが、今日どういうわけか、また一緒に乗っているのだ。
「あの時、貴方があまりにも遅すぎるのでこの船の上で裁判をします。滅多に見られることじゃないですよ。」
どうやら、閻魔様はしばらくの間、常に小町を監視する必要があると思っていたらしい。
「な…なにもそこまで頑張らなくても…。」
「それに、ここならあなた達も逃げ場がない…。まさに、説教を受ける方にもいい場所ですから…。」
「や…、やっぱりもうちょっと真面目にやっていればよかった…。」
「もう遅いです。さて、始めましょうか。」
それから2週間、小町は映姫様のありがたい説教を毎日聞くという裁きの日々が続いたのだとか…。
<博麗神社付近にある河原>
「や…やっと身につけたぞ…。」
「まさか…。ここまでのみ込みが早いとはね…。」
あれから十日余り、ラディッツは技の基本である突き、受け、手刀、蹴りを一通りマスターすることができた。
「まあ、伊達にエリートを名乗っているわけじゃあないからな…。これぐらいなんとかなるものだ…。」
ラディッツの拳と足のテーピングからは血がにじみ出ているが、彼の瞳はまた一段と締りのあるものになった。それを見ると、レイムは
「それじゃあ、明日から実践に入るから先に戻っていなさい。」
と修行で疲れ切った彼に言った。
「わかった…。悪いな…。」
そう言い残すと、ラディッツは夕日がわずかに差し込む中、神社のある森に向かって消えていった。
「さてと…。」
レイムは腰につけていた狐のような仮面をかぶるとその妖怪のところに立った。
「気分はどうかしら。『人食い妖怪』さん…。」
「…。」
その妖怪は、うつむいたまま黙ったままだった。
「いい加減…決めたらどうかしら。」
レイムが封印の札を取り出した瞬間。
「ああ…、決めたぜ…。」
その妖怪は、口角を大きく吊り上げ、縛られていたロープを一気に切った。
「伸びた爪で縄を切ったのね…。」
「そうだ!!やっとこれで自由になれた…。やはり私は妖怪として生き続けてやるぅッ!!」
暮れかかっていた空は完全に闇に包まれ、すでにあの妖怪の本領発揮の時間になってしまった。
「そのボロボロ体で、やれるのかしら…。」
あの巫女は、一歩も退かずに彼女の前に立っている。
「ヤってやる…。お前を…、ここで倒してッ!!!」
<博麗神社>
「な…なにぃ!?逃げられただと!!」
「ええ…。ちょっと吹っ飛ばした隙に。」
レイムは、ちょっと気まずそうに言うしかなかった。あの後、強烈な正拳を入れたのは良かったのだが、思いっきり吹っ飛ばしすぎてそのまま逃げられてしまったのだ。
「オイオイ…。大丈夫なのか…?」
「まあ、安心して…、あの妖怪に札は貼れたから。」
「札って…なんの札だ…。」
「人間を襲おうとすると『おすわり』になっちゃう札かしら…。」
あの時、彼女が取り出した封印の札のことだった。
「おすわりか…。(犬みたいになるのか…。)」
おすわりとはなにかラディッツが考えていたその時。
「はあ…、つかれた…。」
いきなり玄関の扉が開いて、小さな子供二人と亀が一匹入ってきた。
「…。」
ラディッツは、一体何が起ころうとしているのか分からず顔のパーツが行方不明になった。
「さてとお邪魔するぜ…。」
「ちょと待てい!」
ラディッツは、行方不明になった顔のパーツを戻し、回復した。
「なによ…。」
「なによ?じゃないの!貴様いきなり現れやがって今何時だと――――。」
ラディッツがツッコミを入れようとしたその時、
「あら、霊夢と魔理沙じゃないの…。」
「あれ…?お母さん…。」
「これは、先代殿お久しぶりでございます。」
「…。」
ラディッツは雷に打たれた。さっきまで修行を付けてもらっていたあの元巫女がこの子のお母さんであることに。
「紹介するわ。こっちが私の娘の霊夢、隣が魔理沙、そして端にいるのが玄爺。えっと…空飛ぶ亀よ。」
「よろしく!」
「よろしく。」
「どうぞよろしくお願いします。」
「俺は、戦闘民族サイヤ人の生き残りのラディッツだ。こちらこそよろしくお願いします。」
あれから、しばらくラディッツの電源がOFFになりかけていたが、なんとかONにして話を整理することができた。
「ところで、さっきから見え始めたのだがこの変な白いのは何だ?」
ラディッツの肩にまとわりつくように白いどんよりしたものが乗っている。
「魔物よ。」
レイムが答えた。
「これがねえ…。」
ラディッツはもっと凶悪なものだと思っていたがそうでもないことにちょっと拍子抜けした。
「そう、その溢れ出した魔物をなんとかするために魔界に行っているらしいんだけど…。」
「霊夢殿…、まだ半分ちょっとまでしか行ってませんよ。あと半分、がんばりましょう…。」
「分かっているわよそれくらい…、でも二人は厳しいわよ!ふつう一対一でしょう!!」
霊夢と玄爺が言い合っている。
「霊夢、ここは違う方を先に倒したらどうよ。」
そこで、魔理沙がいいアドバイスをしたのだが。
「もう怒った!!あのユキとかいう方を最後に倒して終わりにしてやるんだから!!!」
いばらの道を行くことを決心してしまった霊夢だった。
「それじゃあ、行ってくるわ~!」
「行ってきます。」
「それでは、私たちはこれで…。」
「行ってらっしゃい。」
朝日が昇りゆく中、霊夢たちは魔界へ旅立つのだった。
彼女たちを見送った後、レイムは神社へ戻った。
「さて、ラディッツ。あんたも修行行くわよ。」
「ようし…、だが二つ聞かせてくれ。」
ラディッツには、疑問があった。
「まず、この修行あとどれぐらいかかるんだ…。」
ラディッツが出発して十日、昨日閻魔様からあとどれぐらいかかるのかの手紙が来てしまったのだ。
「そうね…、最低であと3日は欲しいわね。」
「3日か…。ならなんとか伸ばしてもらえるかもしれんな。」
ラディッツにとってそれぐらいの日数はどうということはないらしい。
「それで、あとひとつは何かしら…。」
「それは…。」
ラディッツは、ちょっと気まずかった。母は答えてくれたのだが、ナッパの母に聞いた瞬間恐ろしい目にあったからだ。だが、今回は聞かずにはいられないことだった。ラディッツの覚悟は決まった。そして、真剣な瞳を以てその問いを投げ掛けた。
「お前、一体いくつなんだ…。」
そう、彼が疑問に思っていたのが年齢だった。容姿からしたらまだ20くらいなのだが、子供がいる以上その年齢はあり得ないのだ。そして、レイムはその口を開いた。
「50よ。」
ラディッツの時が止まった。彼は、30ちょっとだと思っていたのだがそれをはるかに上回っていたのだ。
「そんなに驚くことかしら?」
本人はあまり気にしてないらしい。
「お前のその『博麗拳術』は不老か何かの術なのか…。」
ラディッツは、頭のネジがどっかへ行ってしまっていた。
「そんなわけないでしょう。さっさと行くわよ。」
こうして、新たな衝撃の中、残り3日間死に物狂いになる修行を続けるラディッツ達であった。
<人間の里から続く道>
「くそ…あの巫女の野郎…。まだ力を隠していやがって…。」
あれから、彼女は本気を出して彼女を殺しにかかろうとしたのだが…、彼女の仮面を真っ二つに割っただけにおわり、そのままカウンターの一撃をまともにくらい人間の里の彼方にまで吹っ飛ばされてしまった。
「ち…ちくしょお…。もう力が…。」
もうすでに10日余り飲まず食わずだったため空腹が限界に来ていた。
そして、足音が一つとなにか話す声が近づいている。
「こんな…人間なんかに…。」
彼女はその場に眠るように倒れてしまった。
妖怪は常に人間のある部分を強く映し出したものである。ルーミアもまた人間のある部分を強く映し出した妖怪である。
「あなたは、食べていい人間ね…。」
「…違う。俺は、何もやってないんだ。」
「じゃあ…。その手に持っている『人の首』は何かしら…。」
「あ…。」
「ふふ…。嘘が下手ね…。」
彼女が持つ闇は人間の持つ闇そのものでできている。罪悪感や嫉妬などの負の心から湧き出る闇の力を彼女は人間を喰らうことで得ていた。しかし、ここ最近治安が安定してしまったせいか、襲った人間でそういう心を持つ人が少なくなり、いくら食べても満たされないようになってしまったのだ。
「……。」
暗い海のそこからやっと明るいいつもの世界に戻った。しかし、どこか圧迫されているような感じが右手にはしる。
「これは…包帯か…。」
傷だらけの右手に包帯が巻かれていた。そして、ふと後ろを振り返ると人間の子だろうか?亀と共にどこかへ飛び去っていく姿があった。
「…。」
叫ぼうとしたが、もう自分に声を張り上げる力は残っていなかった。ただ、その子が去っていく後ろ姿を見つめる以外どうしようもなかった。
「…これは…、置いていったのか…。」
傍らに小さな竹の包みが置いてある。
中を広げてみると、そこにはあの日と同じ想いが入っていた。
「ちくしょう…、ちくしょ…。」
気づいたら、もうすでにそれを口に入れていた。
もう味が分からない。何百年、妖怪として生きている自分だったが、灼熱の荒れ果てた砂漠にバラの花が一つ咲いてしまったような感じだった。そして、次々に湧き出る水のせいでそれを止めることができない。
「私は妖怪なんだ…。こんなものが…、湧き上がるはずがないんだァ!!!」
<幻夢界(魔界と現世の狭間)>
「よろしいのですか…、ご主人様…。」
「何が?」
玄爺は背中に乗っている彼女に問いかける。
「あなたは博麗の巫女です。あまり妖怪に肩入れするのは…。」
背中の主人は、しばらく間をおいてこう答えた。
「確かに爺の言うとおりかも…。でも、今日は『退治』の依頼なんて来てないからいいんじゃない?」
玄爺は目を閉じてその言葉を聞いていたが、何かに気づかされたのかもう一度目を開け、
「やはり、これでよかったのかもしれん…。」
と呟くと、主人にしっかり捕まるように伝え、魔界まで一気に飛ばした。
<博麗神社付近にある河原>
ラディッツは目の前にある大きな岩を前に一人立っていた。そして、右手を引くと。
「はあっ!!!」
見事にその岩を綺麗に真っ二つに割った。
「やっと使いこなせるようになったわね。」
レイムは持っていた竹筒を彼に投げ渡すと、ラディッツは中に入っていた水を一気に飲み干し、腰を下ろした。
「まあな、だが驚いたぞ。まさかこれほど動きが綺麗になるとはな…。」
「これで私から教えることはとりあえずなくなったわ。あとは戦う中でその技を極めつつ新しい技をあみ出しなさい。それがあんたにとっての本当の技になるはずだから…。」
「わかった。」
そう答えるとラディッツは立ち上がり、沈みゆく夕日を眺めた。
出発から3週間、長いけど短かった時が過ぎた。閻魔様には、今日帰るという手紙を出してある。
「わるいな…、こんな3週間も手伝わせちまって。」
「いいのよ、私もいろいろと気づかされたから…。」
彼女の目は、どこか優しく温かいものがあった。
ラディッツはレイムの方を振り向くと約束を交わした。
「元気でな…、よかったらまた修行の相手をつけてくれ…。」
「いいわ…。それまでにしっかりと教えた技磨き上げなさいよ!」
こうして、また新たな仲間たちを持ったラディッツは大空へと舞い上がっていくのであった。
<三途の川のほとり>
同時刻、仕事を終えた小町と映姫が何か話している。
「やはり、変ですね…。」
「どうしたんですか?」
映姫は、もっていた浄玻璃の鏡を取り出すとあることを言った。
「先ほどまでに裁いた10人ですが、全員あの妖怪の仕業ではないようです…。」
そこには、白い石になって割れている姿が映し出されていた。
「ということはまだ…。」
「ええ、まだこの事件は解決していない…。」
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