東国戦遊志~紅~(東国幻想郷シリーズ) 作:JAFW500/ma183(関ケ原雅之)
この作品は『ドラゴンボール』、『東方プロジェクト』の二つの作品を主に元ネタとしたクロスオーバーものです。
今回は怪綺談終了後からバーダックが来る数年前となります。
このシリーズでも、本編同様に「オリジナルキャラクター」・「オリジナル設定」が出ます。
ドラゴンボールZ本編のラディッツとは「別の道」を歩んだ「このラディッツ」の過去は『紅の第零話』となりますので、新鮮な気持ちで見てもらえると嬉しいです。
最後に、どこかでこのシリーズは動画化まで行けるかはまだわかりませんが、動画版のお便りこコーナーやこの話に彼やその仲間たちが出たときは、是非頑張っている彼らを応援してもらえると嬉しいです。
<中有の道>
「暇だ…。」
「暇だねえ…。」
ラディッツがこの街に住み始めて約3か月、この街も賑やかになっていたはずなのだが…。
「なんで、今度はこうも人がいなくなっているんだ…。」
まだ昼前のはずなのに、霊一つすら見えないのだ。それどころか、みんな何かにおびえているかのように離れていってるのだ。
「さあね…。最近なんだかあたいの方も人が少なくなっちまっておもしろくなくなっちゃったよ。」
小町の方も最近霊が来なくなってきており、面白い話が聞けなくなっているらしい。
「とにかく…、なんとかしないとな…。ごちそうさん。」
ラディッツがお汁粉の勘定を払おうとしたその時。
「うおっ!?」
突然出した勘定の賽が激しく光り、そして
雉になってしまっていた。
<裁判所>
「確かに…。これはちょっと困ったことになりましたね…。」
「そうなんですよ。彼の触るものみんな動物に変わってしまいまして…どうしましょう。」
ラディッツの周りには犬、サル、雉がいるという桃太郎状態になってしまっていた。そして、霊たちが最近近寄らない理由も分かった。どうやら彼からでるオーラらしきものが苦手で皆逃げているのだ。
「このままだと、私の商売もあがったりになりますよ…。」
小町もげんなりする始末だった。
「小町にしては珍しいですね…。今日は三途の川が嵐になるのかしら…。」
「いつもと変わりませんよ!」
しかし、会話はいつも通りだった。
「とにかく、この状況をなんとかしてくれ…。」
この状況を解決するため、閻魔様は二人に次のことを命じた。
「わかりました…。ラディッツ、それから小町。貴方たちにしばらく時間をあげますからその出ているオーラをなんとかしなさい。」
「え!?私も行っていいのですか?」
「ええ、今回は認めます。」
小町、初の現世での仕事である。
「ようし!!」
「よかったな…。」
しかし、閻魔様はもう一つ付け加えた。
「但し、一つ仕事がありますから…。そっちの方もしっかり片づけてくださいね♪」
「「ああ…、やっぱりあるのか…。」」
やはり、どこへ行ってもおいしい話というのはなかなかないものらしい…。
<博麗神社近くの丘>
博麗神社、昔は参拝客多く訪れていた人間が多く、妖怪も近寄らなかった。が、博麗の巫女が霊夢に代わって以来、妖怪や魔物が日常的に訪れ、常時たむろしている場になり、博麗神社に参拝する人間は少なくなってしまった。さらにある天狗の新聞には、「ここほど落ち着く場所はない」と書かれる始末である。そして、その居心地の良さは妖怪だけでなく、悪霊にも好評のようだ。
「う~ん。やはり、月の光を浴びれるのは気持ちがいいわね。パワーがみなぎるわ…。」
「ちょっと霊夢をいじめにいこうかな~❤」
霊夢にとって、永遠のライバルの一人である魅魔にとっても。
「魅魔、元気にしてた?」
いや、この神社の妖怪神社化は霊夢以前の問題だったかもしれない。
「あれ、霊夢のお母さんと…誰…?」
「俺は、戦闘民族サイヤ人、ラディッツだ。」
「あたいは小町、三途の川の水先案内人さ。」
「う~ん、私もついに死んじゃったか…。」
「って、元から死んでいるじゃないかい…。」
「あ…、そうだった。忘れてた♡」
「なんか…、独特な奴だな…。」
察しの早いラディッツであるが、自分も独特な髪形であることを忘れてはいけない。こうして、羽を伸ばしながら解決策を考えることになった。
「へえ~、貴方魔法使いか何か?」
「いや…、魔法使いじゃねえ、一応人間だ…。」
「それは珍しいわね。」
その魔法使いは意外そうな表情だった。
「一体どういうことだい?」
小町やレイムも頭に?がついたままである。
「まず、その黒いオーラの正体だけど…魔力よ。」
「ま、魔力だと!?」
「普通は人間でもある程度修行するか魔界の者でないと出ないものだけど…。」
全員、ラディッツに疑惑の目向けた。
「ラディッツやっぱりあんた…。」
「魔界の者だったのね。」
「魔法使いになろうか♡」
「んなわけあるかい!!俺は正真正銘のサイヤ人だ!この尻尾が何よりの証拠だろう!!」
腰に巻いた尻尾を指でさすラディッツ、もういろいろと大変なことになりそうな予感。
「レイム、その札で何とかならないの?」
「私は専門外よ。」
「そう…、ならば方法は一つしかないわね。」
そういうと魅魔は立ち上がった。
「なんだ、何かあるのか…!!」
「まあ、コントロールぐらいなら…。」
ラディッツの心に光が差し込む。
「よしっ、やっとこれで元に戻れるぞ。」
「よかったじゃないか。」
「ただ…、ちょっと時間と研究がかかるけど…。」
魅魔はそう一言付け足した。
「気にするな、やっと神を見つけたんだ。それぐらいの時間どうってことないわ!!」
「よし決まりね。さっそく始めようか❤」
その言葉を聞いて、さらに上機嫌になる魅魔。こうして交渉は成立した。
ただ、レイムと小町はなにか分かったような顔で
「「『ちょっと』ね…。」」
とこぼした。
<アリスの家>
魔法の森、その湿気と化け物きのこの出す胞子で人間はおろか妖怪でさえ近づくのを嫌がる場所である。そして、ラディッツ達が今いるのはその森の中にある一軒家の前である。
「ここがお前の家か…。」
「まあね❤(嘘)」
「それじゃあ、おじゃまします…と。」
早速、ラディッツはそのドアを開けると
「…おかえりなさいませ…ごしゅじん…。。」
メイドが一人、迎え出ていた。
「…。」
ラディッツは、一体何なのか考えようと思ったが考えるだけ無駄だと悟り考えるのをやめた。
「ん?なんだって、よく聞こえないわよ。」
そのメイドは、顔を赤らめて投げやりに
「お 帰 り な さ い ま せ ご 主 人 様 !!!」
と言った。
「まだまだね。」
「なんで、私がこんなことしなきゃいけないのよ~~~!」
「またやるかい?」
「うえ~~ん!!」
やはり、彼女が平穏に戻れるようになるまでまだまだ時間はかかりそうである。
<魔法の森>
「しかし意外だな。お前もそういう連れがいるとはな…。」
「ま、魔界の神(神綺)にもメイドがいたからちょっと欲しくなってね。」
「そうか…。」
ラディッツは持ってきた修行用の服に着替え、準備は整った。
「それじゃあ、始めようか。」
こうして、ラディッツにとって厳しい戦いが始まるのであった。(もちろん魅魔は余裕。)
<レイムの家>
博麗神社と人間の里を結ぶ一本道の中間地点にレイムの家はある。廃屋になった小屋を改装したため一部古いところが残っているが、住むには問題ないぐらいである。
「…懐かしい話だねぇ…。」
「ちょっと恥ずかしいわ…。」
小町と霊夢は人間の里にあるそば屋に来ていた。
「でも、あんたのおかげでこの戦争は終わったんだ。少しは、自信もっていいと思うけど…。」
「いや…、私だけじゃないわ。あの時一人で戦っていた私に手を差し出してくれた人たちがいたから…、私はまた生きようって思えたのよ…。」
小町はその言葉を聞いて、あのときのことをもう一度思い出し一つ、
「その気持ちしっかり大事にしなよ。」
と返した。
「ところで、結局私たちであの仕事やっているけどいいのかしら。」
そう、ラディッツの魔力の処理と、もう一つ仕事があった。それは、この里の近くで起きている石化の件だった。あれから3か月の間にそれ関連で運ばれた魂の数は約30。本来なら、レイムで片付くことだったのだが相手が神出鬼没でなかなか捕まえられず、こうなっているのである。
「まあ、ボスにはしっかり説明したから大丈夫でしょ。」
「なら、大丈夫ね。」
今回、ラディッツがいない間は小町とレイムで、彼の修行が終わったら彼を入れて3人でやることになった。
「遅いねぇ、ラディッツの奴。もう今日で終わると聞いていたけど…。」
あれから3週間、今日が彼の修行が終わる日となっている。
「そろそろこっちに来るはずよ。」
レイムが腕を組もうとしたその時。
「待たせたな…。」
ついに、ラディッツが着いた。
「やっと終わったのかい?」
「ま…まあな…。」
ラディッツの体から出ていたオーラは引っ込んでおり、一つ仕事が終わった。
「さすが、私が教えただけのことはあるわ♡」
魅魔も一緒に来ていた。
「へえ、久しぶりに聞いたわそのセリフ。あなたが魔理沙以外その言葉を言うとはねぇ…。今日は雨が降るのかしら。」
どうやら、レイムと魅魔はかなり前からつながりがあったらしい。
「ふん、この俺だって伊達にエリートを名乗っていたわけではないのだ。」
「でも、そのボロボロの恰好じゃあねぇ…。」
小町の視線の先には、ボロボロの服とボサボサの髪になっているラディッツがあった。あれから3週間、ラディッツは毎日体を清めていたが戦うたびに破れていく服はどうしようもなかった。
「なあに、心配はいらないよ。」
そういうと魅魔は何かを唱えるとラディッツの周りに魔方陣を浮かばせた。
「これが、噂に聞く魔法ってやつかい…。」
「そういうこと♡」
小町にとって初めて見るものだった。赤黒い光と紋章のようなものがラディッツを囲んでいる。
そして、次の瞬間一気に部屋中を包んだ。
「なるほど、流石一流と言ったところかしら。」
「なかなかいい感じになったじゃあないか!」
そこには、黒と赤の魔法使いの服を纏ったラディッツの姿があった。
「…新鮮で、いい気分だ…。」
彼もまた新しい感覚に浸っている。
「まあ、師が一流なら弟子も一流ってね。」
「えっ、お前弟子になったのい!?」
「まあな…。(魔理沙の次らしいが…。)」
ラディッツはどうやら魅魔の二番目の弟子になったようだ。
「まさか、弟子まで行くとわね…。」
これにはレイムも驚きだった。今まで、彼女が弟子をとったのは魔理沙一人。それ以外相手にされることすらなかったから。
「こんなにいい魔力を持った奴は久しぶりだかれね。それに面白いものも見れたし、こんなにいじめ甲斐があって教えがいがあったから❤」
「うおおおおおい!!ちょっと待てい!!貴様今いじめ甲斐があるとか言っていなかったか!?」
「そうだったかしら?」
「「(今気が付いたのかい…。)」」
すでに、小町とレイムは気づいていた。あの時の『ちょっと』という言葉と魅魔の笑みで。
「くそっ、ベジータに引き続きこいつにまでも…。」
「へえ、これはまた面白い話が聞けるわね❤」
魅魔の顔にはまた笑みが浮かんでいる。
「おいなんだそのほっこりしたような顔は…。俺は言わんぞ!!」
やはり、ベジータの時と似た扱いの運命は避けられそうにないと思ったラディッツだった。
<団子屋>
「はい、お汁粉セットですね…。」
「ああ…、悪い…。」
蕎麦屋の向かいにある団子屋。少し前までそれなりに客はあったのだが、あのそば屋ができて以来客は減り続け、多くて二桁の日が続いている。
「ところで…、今日は彼女とは一緒じゃないの?」
「ちょっと都合が合わなくてね…。」
「そうですか…。まあゆっくりしていきなさい。」
その言葉は優しく、心に沁み込むものだった。しかし、彼女の顔は明るくはならなかった。
<慧音の家の前>
遡ること、昨日の夜中。里の風紀を乱していた者を退治した帰りの事だった。
「なあ妹紅…。」
「なんだよ…。」
慧音は家の門を開けようとした時一つの問いを投げ掛けた。
「なんで、そんなに死に急ぐような戦い方をするんだ…。」
私からその顔は見えなかったが、どこか寂しさと哀しさの詰まった声だった。
「別に…。そんなつもりは…。」
「だったらなぜ!相手の振り回していた包丁に刺されに行ったんだッ!!」
「…。」
その声は厳しく、叱りつけるような口調だった。そして、私の方を振り向き言い聞かせた。
「もう、一人で生きているんじゃないんだ…。命を大切にして戦ってくれ…、お前を救った岩笠だってそう思――――。」
「黙れッ!!あれはもう昔の事だ…。今に残されたこの私に、生きる意味なんてないんだよッ!!」
気づいたらあいつの傍から逃げていた。過去を振り向けば、永遠に下ろすことのできないものが見えてしまうような気がして――――
「あの時、世界から消えるべきだったのはこっちだったんだよ…。」
いくら振り返ったって戻れないのにまた考えてしまっている。やはり、この呪縛から解かれることは無いのだ…。
「お待ちどおさま、お汁粉セットですね。」
「…悪いな…。」
頼んでいたお汁粉が来た、確かにおいしいのだがそれでも心が晴れることは無い。
「なにか…迷っているのですか…。」
「…分かるのか…。」
その女将は、優しく答えた。
「わかりますよ。だって、長いこと店やっているんですもの。」
ふと、あの時の記憶がちらついた。慧音と初めて会った時、彼女は傘を差さずに私の前に現れこの里に連れてきた。彼女は、きっと私のために傘を閉じたのだろう…。そして、この里の人たちも嫌な顔一つせず迎え入れてくれた。かつて、生きていた世界の人とは何かが違う…。
「一つ聞いていい…?」
「はい。」
「どうしてこの仕事を続けていけるんだ…。」
気づいたら、その言葉が出ていた。
「『どうしてか』か…。」
女将さんはしばらく考えると一つの答えを出した。
「やっぱり守りたいものがあるから、信じてくれる人がいるから…かな?」
「『今を』…。」
「そう…、私は亭主とこの店を継いでもう十年になるけど、最初は上手くいかなかったの。向かいのおそば屋さんに客を取られて大変だった…、でもここに来てくれる人たちが美味しいって言い残してくれたから…まだまだ諦めたくないってそう思えるの…。一人でも、認めてくれる人がいる限りその人の笑顔を作ってあげたいなってね。」
「認めてくれる人か…。」
「あっ、そうだ。ちょっと待っててね♪」
「…?」
すると、女将さんは奥へ戻りあるものを持ってきた。
「…それは…?」
四つのだんごが一本の串に刺さって、妹紅の前に置かれた。
「これは、みたらし団子って言ってね。この店一番人気の一品だったの。ちょっと食べてみて、サービスするから…。」
女将さんに勧められる中、妹紅はその団子を一口運んでみた。
「これは…炭火焼き…か。」
「よくわかったわね…、そうよ。」
みたらし団子は普通ガスで焼かれるのがほとんどだが、この店は手間がかかる炭火で焼いているのだ。
女将さんは、近くに置いてあった丸椅子を持ってくるとそこに座って、話を始めた。
「これまでうちではガスを使っていたの…。でも、食べてもらっても笑顔になってもらえなくってね…。そこで、初心に戻ってできるだけ昔にさかのぼって作り方をもう一回最初から考え直したの。」
「過去を見返した…。」
「かなりつらい決断だったわ…。それまで積み上げてきたやり方を捨てるんですもの。でも、おかげで新しい道が見えた。そして、大切なものが何だったのかも…。」
「…。」
「長くなったけどこれで答えになったかしら。」
妹紅は、立ち上がると一つ呟いた。
「きっと、いい店になると思うよ…。」
「その言葉、大切にするわ…。」
小さな声だったが、女将さんにはしっかり届いたようだ。
「さてと…、勘定いくらだ――――。」
その時、
「ぎゃあ――――ッ!!」
妹紅の目が一瞬で変わった。
「悪いな…。おかみさん、釣りは要らないから、そこに隠れていな!!」
「あ…、ちょっと…。」
女将さんが止める間もなく彼女はその声に導かれるように駆けていった。
<里の南側地区>
「な…なんなんだよお前らは…。」
逃げ腰の少年の前に現れた女性は柔らかい口調で語りかけた。
「悪いわねぇ、ボク…。ちょっと眠ってもらうわよ。」
女がその手を少年の前にかざした瞬間、その少年はその場に眠るように倒れてしまった。
眠ったのを確認すると、その女は飾っていた口調を外していつもの口調に戻った。
「まさか、こんなところで見つかるとはね…。」
そして、その女の背後から大きな影が一つ現れた。
「だが別に見つかったところで問題は無かろう。」
「甘いわお兄様。甘く見ている時ほど痛い目を見るのよ…。」
どうやら兄妹らしい。
「魔導師バビディか…、今度こそ消し炭にしてくれる。」
その大男が大通りに足を踏み入れようとした瞬間。
「!!」
いきなり彼の周りを日が取り囲んだ。
「どうやら…、最近暴れている妖怪はお前たちのようだな…。」
すると、その女は何かを唱えて杖を一振りし、その火を消した。
「なるほど…、その火の術…。『藤原妹紅』かしら…。」
「名乗った覚えはないはずだが…。」
「名乗らなくても、分かるのよ…あなたの過去も…。」
その女は、薄気味悪い笑みを浮かべると、彼女の前に出てきた。
「その顔の色…。ここの人間じゃあないみたいだな…。」
白い髪に薄青い肌、そして悪魔を模したような赤と黒の混ざる衣装、艶やかと怪しさが滲み出ている。
「そう…、私たちは暗黒魔界の住人…。そして…。」
「この私が、その界を統べる王だ…。」
あの大男も姿を見せた。こちらは妹とは違い、口の周りを囲む黒い髭、先のとがった大きな耳、斜めに生えた2本の角、そして大きな黄色く鋭い目に細長い黒い瞳。西洋の鬼の王を現したような容である。
「…。」
決して気を緩めていけない相手だと直感した。これまで、幾千もの妖怪と戦ってきたがその妖怪たちとは全く違い、武道と外道を入り組んだように混ぜたような相手なのだ。
「おいトワ、遠慮なく私が片付けていいのだろう。」
「もちろんですわ…。『お兄様』」
相手は一人で来るらしいが、それでも油断できない。あまり長引かせてはいけない気がしている。
「さて…、待たせたな…。さっそく始めようか…。」
得体のしれないものを相手に戦うものほど疲れるものはない。今回の戦いは想像以上に厳しく体力消耗は激しいものだった。
「はあっ!!」
「ほう…。足で剣をはじくとはな…。」
「伊達に戦っていたわけじゃあないのさ…。」
これぐらいの相手ならいつもは片付けて終わりなのだが、今回はそうもいかない。隙が大きい大技や蹴りが打ちにくいのだ。そこで隙の小さい手の方にしたのだが、なかなか決まり手がない。そして、厄介なことにこの王は、火炎放射や石化といった技を持っているのだ。火炎放射は何とかなるが、石化はまずい。おそらくかかったら石になって止まってしまうのだから。そして、おそらくあの女がいる以上、不老不死の対策ぐらい何か練っているはずだ。
「ふッ…。」
ふいにその大男が持っていた剣を天にかざすとその剣はたちまち槍に変わった。
「これで、もう貴様の蹴りは通用しない。リーチは私の方が長いからな。」
「そいつは、どうかな…。」
確かに、相手のリーチは大きくなったがその分隙ができた。槍を持っている以上一定のリーチがありこちらから一方的に仕掛けるのは難しいが、相手の攻撃は突きが主になる。その突きを利用して思いっきりカウンターを入れれば、あとは間髪入れず大技を入れてなんとかなる。
「なにか、愚かな作戦でも思いついたのかしら…?」
「まあね。」
そう返すと、思いっきり踏み込み一気に相手の間合いに入ると、地面を蹴り斜めに進路を変えた。
「無駄なことを!!」
相手は串刺しにするべく思いっきりその槍を脇腹めがけて突き出した。
「(今だ…!)」
当たる寸前にもう一度地面を蹴り、ついに懐に入った。
「なっ!?」
突然方向を変えてきた妹紅にその大男は対応ができない。そして、妹紅の一閃の拳がしっかりと眉間に入った。
「グオッ…。」
後ろにのけぞった、これで撃てる!
「『蓬莱「凱風快晴 -フジヤマヴォルケイノ-」』!!」
至近距離から噴火のごとく凄まじい数の炎がその男を包んだ。そして、大男はたまらずその炎をかき消すように地面をのたうちまわっている。
「なんとか…一人片付けられたか…。」
約10分のことだったが妹紅にとってその戦いは1時間ぐらいのものに等しかった。
「あと…、一人だな…。」
残っている女の方を向く。
「あとは、お前だけだけどどうする…?問答無用でやり合おうって腹積もりなら受けて立つけど…。」
しかし、その女はどういうつもりか笑みを浮かべている。相変わらずつかみどころがない。妹紅は自身の不死鳥を出すといい飛ばした。
「いいや…、だったら笑ったままあの世に行きな!!」
「甘いわねッ!!」
次の瞬間、妹紅の体が前に崩れた。
「ぐっ……。」
「残念だったな…、あと一歩押しが足りなくて…。」
体が槍に貫かれていた。
「ぐはっ!!!」
口から血が溢れ出し、体が痙攣し始めている。
「お兄様、今よ。」
「ようし…。」
その大男は、地面に妹紅ごとその槍を突き立てると一気に槍ごと石化させた。
「ち…ちくしょお…。」
朦朧としながらも目の前に座っている女を睨みつけるが、空しくも、暗い海の底へと突き落とされていった。
「終わったな…。」
「なかなか危なかったわ…。あと一瞬、術が遅れていたら取り返しのつかないことになっていたわよ。」
あの技を受けるぎりぎり直前で、彼女は彼の表面に特殊な層をかぶせ、その表面だけ燃やすようにしたのだ。そして、彼の迫真の演技力と彼女のワープ術で妹紅をだますことに成功したのだ。
「まずはこれで一人か…。」
「そうね…。さて、行きましょうお兄様、こんなところで道草食っていても4回目の歴史を変えるためのキリはなかなか集まらないんだから…。」
彼女たちが動く理由はこの幻想郷の歴史改変が狙いらしい。妹紅が300年前に会うはずだった輝夜に会えなかったのも、霊夢のお母さんが生きているのも、人間と妖怪で戦争が起こったのも、彼らの行動が重なった結果だったのだ。
「そうだな――――。」
「「!?」」
次の場所に向かおうとした瞬間すでに足に札が張り付いており、足元が橙赤に光っていた。
「『神技「八方龍殺陣」』。」
その声と共に一気に、天に舞い上がる回避不能の波に包まれた。
「相手ひとり片を付けたところで油断するその甘さが命取りになるのよ。」
博麗の元巫女、レイムの一撃だった。
「すごいな…。」
「決まったか…。」
ラディッツ、小町、そして慧音も一緒に来ている。が、
「いえ、浅いわバリアーを張られた…。」
そこには、青い光に包まれて立っている二人の姿があった。
「なるほど…、博麗レイム、小野塚小町に上白沢慧音か…。なかなかいい奇襲ね、ちょっとバリアーを張るの遅れた上に、このバリアーを貫通しかけちゃったわ…。」
「貴様…、どうやらここの人間じゃないようだな、どっから来た。」
「あら…、ラディッツ、まさかあなたまでいるとは…、意外ね…。」
どうやらこの女、ラディッツのことを知っているようだ。
「知り合いかい?」
小町がラディッツに尋ねるが、
「俺は知らんぞ、こんなおっさんとお嬢ちゃんは…。」
彼は全く知らない様子だった。
「『お嬢ちゃん』ねえ…。まあ半分許してあげようかしら…。」
ちょっと嬉しいようなイライラするような感じらしい。
「おい貴様、おっさんとは失礼なッ!!!」
あの男の方はそうでもなかった。
「誰なんだ貴方たちは。」
慧音が鋭い声で問いかけると、威厳をもった声で名乗りを上げた。
「我が名は、魔界王ダーブラ、暗黒魔界を統べる者だ。」
「我が名は、トワ。魔界王ダーブラの妹で科学者。ラディッツ、貴方と同じ世界から来た暗黒魔界の使者よ。」
それを聞いた瞬間、ラディッツの目の色が変わった。
「なっ…、なんだと。じゃあまさか俺をここに連れてきたのも…。」
「あれは、予想外よ。本当はフリーザを連れて来るはずだったけど…。彼が断わったせいでおかしくなったの…。」
「フリーザだと…。じゃあカカロットやベジータはどうなっちまったんだ…。」
ラディッツは、かつてベジータがいつかフリーザを倒して宇宙を支配すると言っていたことを思い出した。彼が生きているならあのまま黙ってついていくはずがないのだ。
トワは呆れたような顔をして、衝撃の一言を言い放った。
「残念だけど…。貴方の生きていた世界は消されたの…。」
「は?」
ラディッツは言われた意味が分からなかった。世界が消されたということ自体何を言い表しているのかがわからないのだ。
「貴方が死んで数十年後の未来に何者かによって宇宙全てが消し去られたの。」
「お…、おい待て!!じゃあ、なぜフリーザが生きている!!」
「フリーザはその世界が消滅する寸前で、私が暗黒魔界に飛ばしたのよ。あそこだけ運良く残っていたから…。」
「ば、馬鹿な…孫…。」
「皮肉ね、貴方の弟さんは彼に2度も勝ったのに、結局あの世で消滅してしまった。」
いきなりのことでラディッツは整理が追い付かない。孫悟空が死んでおり、そして消滅してしまったことも実感がないのだ。
「ところで、キサマ…。」
「なんだ…。」
ダーブラが慧音に言った。
「仲間を放っておいていいのか…?」
「仲間…って、おい妹紅!」
慧音は、石になってしまったままの妹紅に近寄った。
「ハハハハハハハッ!!残念だったな!もう少し早く来ていれば助かったものを!!」
「そうか…お前…悩みすぎてとうとうこんな姿になってしまったのか…。」
「馬鹿め!!そいつは私の術で石になったのだ!!私を倒さん限り永遠に戻らん!!」
その言葉を聞いて、レイムは落ち込みかけているラディッツを立ち上がらせた。
「ラディッツ、今、悲しんでいる時間はないわ。せめて、目の前にいる彼らだけでも倒してきなさい。この相手じゃあ私の博麗拳術はなかなか効きそうにないから。」
「わかった…。」
ラディッツは、ちょっとふらつきながらもしっかり立ち上がり、トワの方に向かって言い放った。
「おい、貴様!このオレが相手をしてやる、広い場所に連れていけ!!」
その言葉を聞くとトワは笑みを浮かべ、
「さすがサイヤ人といったところかしら…。いいわ…望み通り広い場所へ連れて行ってあげるわ。この中から死に場所を選びなさい。」
3つの場所を映し出した。
「彼岸、魔界、旧都か…。どうする。」
「行くなら、旧都か魔界かねぇ…。」
「彼岸がいいわ、慰謝料払わずに済むから…。」
「ラディッツ、決めるのは任せたぞ。」
結局、ラディッツが戦うのだからと彼が決めることになった。
<旧都(地底)>
「で、ここ(旧都)を選んだってことかい。」
「まあ…ね…。」
レイムはかつて拳を交えた友と酒を飲み交わしている。
「あいつはあんたの教え子だねぇ、動き方に面影が見える。」
「技と動きの基本はしっかり教えたわ。あとは…。」
「心の強さってところかな。」
「どうした、ただ守っているだけか!!」
ダーブラのラッシュがラディッツを襲う。だが、守っているだけで終わるラディッツではない、相手のラッシュが上半身に集まり始めたのを見抜き、
「うおあ!!」
鋭いカウンターの一撃をみぞおちに入れ込んだ。
「ぐ…ぎぃ…。」
「あの動きは…。」
「レイムの動きだねぇ…。」
今の技は相手の動きを見つつ、しっかり入れ込むという見切りに近い技だ。
「バ…バカな…。貴方はそもそもサイヤ人のはず…。過去の動きからしてそんな技身に着けられるはずがないわ。」
「貴様らはタイムトラベラーのようだが、肝心なことを忘れているぞ。予測だけでわかるもんじゃあない…。俺たちサイヤ人の力はな。」
そう言い放つと、やっと呼吸の戻ったダーブラに向かって突進して行った。
「バカが…。真っ二つにしてやる!!」
次の瞬間突進したラディッツを剣が両断したが、
「!!」
「残像拳ってやつだ。」
すでにラディッツは背後に回っていた。そして、ダーブラが振り向く間もなくゼロ距離からサタデークラッシュを放った。
「ぐ…っ!!」
背後から攻撃を受けたダーブラはそのまま彼方にある壁にぶつかり崩れた。
「威張っていた割には大したことはなかったな…。」
ラディッツが、次の攻撃を仕掛けるべくその場所に向かおうとした時だった。
「待ってもらおうかしら。」
トワがゆく手を阻む。
「ふん、貴様のような奴に用はない。」
「言ってくれるわね。だけど、ここからよ…。私たちの本当の力は…!!」
「…。」
ラディッツは、ふとあることに気が付いた。さっきまで戦っていたあいつの気が大きく上がろうとしているのだ。
「私は、貴方がてっきりただのラディッツだと思っていたけど…。貴方、昔、孫悟空と一緒に修行していたラディッツね…。」
「そうだ。」
「ならば、容赦はしない、一気に片を付けてあげるわ…。」
そう言うとトワは何かを唱え始めそして、
「はっ!!」
ダーブラに向かって何かの強い魔法をかけた。
「待たせたな…。」
埃の舞上がる彼方から、一その姿は見えた。
「これが…、魔界王ターブラの本当の姿だ。」
先ほどまでと比べ物にならない威圧感が辺りを取り囲む。戦闘装束も青一色の胸が大きく開いたものから、内側は連れの奴と同じ赤と黒のインナースーツに、そして外側の衣装は黒一色の大きく胸が開いたものと肩につけられた赤いマントに変わり、目の下の黒い淵はより厚くなった。
「さっきまでのように上手くいくと思わないことね…。」
「チッ、こうなったら仕方ねえ、こっちも奥の手を使ってやる!!」
ラディッツは、スカウターを外すと小町に投げ渡した。
「奥の手って、何かあるのかい?」
「あいつ(魅魔)と編み出した技がな…。」
ラディッツは足を肩幅より少し大きく広げて構えたのだが、
「ん…あれ!?」
「どうしたんだい?」
「どういうことだ、魔力が出てこんぞ…。」
いくら頑張っても少ししか出てこないのだ。
「ちいッ!仕方ねえ、このまま戦ってやる!!」
奥の手が出ないままラディッツはその魔王に向かって一人立ち向かっていく。
「あっ…、そうだラディッツに魔力使いすぎると溜まるまで時間かかるの言うの忘れてたけど…。まあいっか♡」
その事実をラディッツが知ったのは戦いが終わった後であった。
「つあッ!!」
ラディッツの渾身の力を込めた後ろ回し蹴りがダーブラの胸の中心に入った。が、
「なかなかいい場所を狙ってくれるな…。」
「なっ…ぎぃ!!。」
当たる寸前で受け止められ、足を掴まれたまま地面に叩きつけられた。
「…やはりだめだ…。技が上手くてもスピードが足りてない…。」
あまり戦うことのない慧音でもそれは分かった。先ほどまでの蹴りと比べ彼の今の蹴りの速さが目に見えてがくんと下がっている。
「くそっ…、ぐッ!!」
ラディッツはなんとか膝をついたが、その足先からは血が垂れていた。ラディッツはこの開戦直後、相手の動きを見て攻めていこうとしたが、相手のスピードが圧倒的に速く、首を掴まれ持ち上げられてしまい、もがこうとする前に相手の持っていた槍で右足を貫かれてしまった。今、彼は舞空術で体制を保っているが、やはり地面に足がついていないため踏み込みが出来ずしっかり力が伝わってない。
「なかなかキレのある動きだったが、ここまでだな…。この本気の私が相手をすることになってしまった。そのままじっとしていろ、今楽に殺してやる。」
ダーブラは持っていた槍を剣に変え、ラディッツの前に立った。
「じっとしていろか…。そいつはできねえことだな…。」
ラディッツは、顔をゆがませながらもこぶしを握り二つの足でしっかり立ち向き合った。そして、吠えるようにその魔王に言い放った。
「サイヤ人は戦闘種族だ!!たとえどんなに強い相手だろうと一歩も退かん!!この命に代えても貴様に膝をつかせてやる!!!」
それは、親父や弟のことを改めて思い出したからであろうか、普通なら逃げ腰になってしまう彼なのだが、戻ろうとする安らぎに背を向け立ち向かっていくといういばらの道を向いて歩きだした。
「牙を抜かれた犬がキャンキャン吠えおって…。細切れにしてあの世に葬ってやる!!」
剣が高く振り上げられていく、だがこの一瞬の隙を逃すラディッツではない、感覚がなくなりつつある右足で思いっきり地面を踏み込むと一気にその懐に飛び込み、自分も吹っ飛ばされる覚悟で握りしめた気の玉をゼロ距離で爆発させた。
「ぬうあ”ッ!!」
ラディッツの体は広がっていく土煙と共に斜め前の家に背中から突っ込み、ダーブラの体は後ろに大きく、くの字に吹っ飛ばされた。
「「ラディッツ!!」」
見守っていた、慧音と小町が彼のもとに駆け寄る。
「しっかりしなよ、まだこんなところでくたばるお前さんじゃないだろう…?」
ラディッツは、ぼんやりと霞みゆく目を凝らしてその顔を見て、
「…膝…つかせた…ぜ…。あとは…頼む…。」
と一言残し安らかな顔でその目を閉じた。
「ラディッツ…。」
慧音は、被っていた帽子を脱ぐと誇りが立ち込める彼方に立つ男を睨んだ。
「さっきの一撃はかなり痛かったぞ…。」
内側に着ていたインナーはボロボロに破れ、顔にもいくつか傷がつき血が流れている。
「人間のくせに、悪あがきしやがって…。」
「いや…、こいつがあんたにしたことは悪あがきじゃあないさ…。」
当たりに立ち込めていたものが、吹き出した風と共に流れていった。
「なにぃ!?」
そこには、陰りなき満月の光に照らされた白沢の彼女の姿があった。
不老不死になって1300年、結局私は生きる意味も分からず永遠に続くらせん階段を下っていくだけだった。そして、いつからか座り込んでいた。
「あの時、サクヤ姫さえ出てこなければ――。いや、結局選んだのは自分だったのか…。」
後悔しても戻れるはずがないのに、またあの日に戻っている。何もかも忘れてただ楽しくいきたいのに…。振り返れば振り返るほど、かつて犯してしまった消えない二つの罪に飲まれていく。
「生きる意味ってなんだ…。」
生者必滅、生きとし生けるものは必ず死ぬ、それが世の定めだ。ならば、私はあの薬を飲み込んだ瞬間から生きていないのではないか。生きるために行動することは無意味ではないか。私は何を目的に生きていけばいいのか…。
「やはり、あの時死ぬべきだったのは私だった…。こんな命もあの時に消え去っていればよかったんだ!!」
「それは言ってはならん!!」
ふと、背後から威厳をもった厳しい一喝が入った。
「たとえ不老不死になろうと…、人の道を忘れてはならないものだ。…庫持の皇子の娘…、藤原妹紅。」
「…。」
その声を聴いた瞬間、永き間抑えていたものが溢れ出しそうになった。
「お前は…。」
「言わなくても…分かるでしょう…。」
その言葉には、憎しみの心は無かった。
「なぜだ…、私は貴方を殺すつもりだったのだぞ…。」
「分かっていたから…、あの時『助けた』のです…。貴方は、人の道を平気で外れるような人じゃあないと思ったから…。」
「…。」
妹紅は、言葉を失った。あの時から既に『読まれていた』。
「わたくしも正直こうして会えるとは思ってはいなかった…。けれども、貴方のことを必死で救おうとする方々がいるからここにたどり着くことができた…。」
妹紅が、その男の方を振り返るとそこにはあの魔王にボロボロになりながらも立ち向かうかの親友の姿があった。
「いい加減諦めたらどうだ。たとえ、妖怪に変わったところでこの私との差は埋まらん上に倒すことすらできん。たった一人の愚かな奴のためにわざわざ立ち向かうか。」
慧音は切り付けられた傷口を抑えながらダーブラに言い放った。
「この命が尽きるまで立ち向かっていくだろうな…。もし、あいつが奈落に落ちたのなら這い上がれるまで苦しみ歩む…。それが、私が今貴様に立ち向かう理由だ!!」
忘れていた…、いつからか…、私には共に行こうと手を伸ばした親友(とも)がいたじゃあないか。
妹紅は、立ち上がるとその光さす扉の方を向いた。
「…私はまた生き続けるのだろうか…。」
無意識にその言葉はこぼれていた。孤独のままなら恐れることも悲しむこともないのだから…。
男は少しの沈黙を以て頷いた。
その時、すでに妹紅の覚悟は決まった。
「罪を見つめ、許せるもの許されないものをよく見よ!振り返ることはつらいが、その罪と向き合ってこそ自分の今を見つめられるものだ。たとえ穢れていようと、汝には受け継いできたものがある。その地と誇りを以て生きる意味を見出し生き続けよ!!」
その言葉をしっかり受け止めると妹紅はその扉を開け、青い空へと飛び出した。その頬には、一縷の光が零れ落ちていた。
「はあっ…はあっ…。」
月の効果は切れ、人間に戻ってしまった。そして、肩を槍で貫かれ地面に張り付けられている。
「しまった、これだと距離が…。」
小町は距離を操ろうとしたが、あの女が術で縛っていて動けない。
「お兄様…、もうやっていいわよ…。」
その言葉を待ち望んでいた魔王は、その拳を握り剣を作り出した。
「これで…とどめだ!!」
剣が高く振り上げられた――――
「まだ決着は早いさ。」
「!?」
それは、上白沢慧音が心の底から待ち望んでいた者の声だった。
「なっ!?」
突然のことにダーブラは振り向く。が、
「遅いよ。」
すでに、火を纏った蹴りが顔面寸前まできていた。
「げへェッ!!」
防ぐ間もなくその一蹴が右頬にめり込み、斜め上にのめり込んでいく。何とか体を翻して石化をしようと思うも体が追い付かない上に紅く纏ったかぎづめが目前に迫っている。
「ハアっ!!」
腹から胸にかけて三つの閃きが突き上げ、炎が体を引き裂く。回避はおろか、防御の余地すらなかった。そして、痛みを感じる間もなく次に繰り出された横蹴りを以て彼の体は吹っ飛ばされ、背後から地面に叩きつけられた。
「お兄様!!」
妹の叫びが聞こえるが、すでに彼の意識は朦朧としている。一瞬の間をつき仕掛けてきた人間の捨て身の一撃による痛みと、恐れにも一歩も退かずに立ち向かってきたあの人間の頭突き、そして奈落の底から這いあがってきたあの不死鳥のごとき人間の連撃…。こんなことがあり得るのだろうか…、死を覚悟し最期の力を振り絞ってかかってきたあの小賢しい界王神と、凄まじい剣裁きと癪に障るほど強き心を以て立ち向かっうサイヤの誇りを持つあの地球人と、同じような心を持つ奴らがこの世界にもいるというのか。
「くっそ…。」
気づくと一歩下がっていた。恐れるはずはない…、こんなたかが3匹の虫けらどもを相手に魔王である私が自らその足を退くなどというものはあるはずがないのだ!!!
「3匹まとめて消し炭にしてやるぅッ!!」
ダーブラは、体中の魔力を取り入れた空気と共にため込み炎に変え、一気にその3人に向かって撃ち放った。
これで、消し切ってやる――――
残っていた魔力全てを使って、最大にまで引き上げた。
「消し切れないさ…、この炎だけは…。」
彼が放っていた炎がたちまち炎の風となり、大きな渦となって道を造った。その彼方から鋭い鳴き声と共に影が一つこちらに飛びこんできている。そして、渦を作っていた道は風となり、新たな生命を生み出した。金色と赤で彩られた大きな翼、幾重にも分かれた長く美しい尾、そして鷲のごとく立派に羽ばたくその姿…。
死しても再び蘇る伝説の鳥「不死鳥(フェニックス)」を。
フェニックス再誕 火の鳥 ――鳳翼天翔――
「これで…借りは返せたかな…。」
「十分返したじゃあないか…。」
傷ついた慧音を力強く抱きしめる妹紅。慧音も気づいたら、抱き返していた。
「…。」
小町はただ黙ってそれを優しく見守っている。それは、あの世ではなかなか見ることのできない生きていることを感じる瞬間だったからであろう。
「…。」
ラディッツは、疲れ切って目を開けることができないが、なにか重く抱えていたものがやっと降りた感じだった。
決着は終わった。あの魔王は灼熱の炎に身を包まれていたが、彼を助けようと必死でその妹が術を何度かかけなおしてやっと消えた。しかし、その男には戦う力は残っておらず彼女が何か唱えるとどこかへ消えてしまった。だが、もうこちらには戻ってくることはないだろう。去り際に『もう私たちの歴史改変は成功した。また新たな場所へ行きましょう…、お兄様…。』と言っていたのだから。
「やれやれ…、一件落着と言ったところかな…。」
小町は、ラディッツの腕をかつぎレイムの方へ行こうとしたその時。
「こっちも……一件落着したわ…よ……。」
顔を真っ赤にしてあの巫女が戻ってきていた。
「もう終わったのかい?」
「まあ…ね…。」
かなり酔いつつも意識は保っていたらしい。ラディッツ達が戦う一方で彼女もまた戦っていたのだ。鬼とどれだけきつい酒を飲めるかの勝負を。そして、彼女はわずかな差で残った。
「それじゃあ、そろったことだし行くかい?」
あの二人も、気持ちを切り替えこっちに戻ってきた。小町は、目をつぶると距離を操る力を以て博麗神社に移動させた。
<博麗神社近くの丘>
「なにぃ…、言い忘れていただと…。」
「まあね♡」
「まあね♡で済むか!あと少しで俺は死にそうになったんだぞ!!」
「まあいいじゃないの、やっと弱虫とおさらばできたんだし♡」
相変わらず、こんな調子の師匠である。
「ところで、修行を終えたらお前の弟子についてのなにか情報をくれると言っていたな。」
「そうだったかしら?」
「そうだったの!」
「しょうがないねぇ…。」
すると、魅魔はポケットからあるものを取り出した。
「何だそりゃあ…。」
エアコンのリモコンのように細長いものだった。
「最近はやっているものらしいよ、レコーダーとか言ってたっけ…。」
そういうとそれをラディッツい投げ渡した。
「これに情報があると…。」
「そういうこと❤」
何か裏があるらしいが、ラディッツは考えるのをやめ、懐にしまった。
「長かったが、世話になった。」
「いつでも挑戦しにきなさい、また逝く寸前までいじめてあげるから♡」
「ふん、俺が行くのは三途の川の手前までだ。これ以上あのボスに裁かれるのはごめんだからな。」
そう言い残すと、青く澄み切った空に向かってラディッツは思いっきり飛んでいくのであった。
<裁判所>
「やっと帰ってきましか…。」
「すみません四季様、色々ありまして…。」
片膝をつき頭を下げるラディッツ。長引いてしまったが、仕事終了の報告に参ったのだ。
「報告は聞いています。今回は良しとしましょう…。」
そう、言い渡されると、次の裁判が始まろうとしているためラディッツは外に出ていった。
「いい景色だな…。」
立ち止まってみると普段見慣れた場所も違うように見える時もある。ここ、彼岸はどこまでも花畑が続き昼も夜も季節もなく、ただ暖かく優しい光に包まれているだけだ。しかし、それはどこか時を忘れさせる場所のようにも見える。私たちは、いつも何かに追われて生きるうちに『自分』というものをどこかにしまったままにしてしまうが、時を忘れ自分を見つめたり過去を振り返ったりするとき、『自分』を自覚しまた生きていこうとする。ラディッツは罪と向き合い、償いきらない限り死ぬことは許されない、だがこの景色を見る時ラディッツはいつも思い返す。自分が生まれた故郷の事、弟のこと、そして自分を育ててくれた親父やおふくろのことを。
「さてと、それじゃあ行くか…。」
ラディッツは迎えの待つ船着き場に向かっていく。だが、その瞳には新たな明日が宿っているようだ。
今回で第一幕は〆となります。
次回 東国戦遊志 紅 #4 激突!サイヤ人対サイヤ人
激闘の弐幕へ続く。