東国戦遊志~紅~(東国幻想郷シリーズ)   作:JAFW500/ma183(関ケ原雅之)

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最初の仕事から2年半、春の息吹が舞い込まんとする中、中有の道にてラディッツは喫茶店を開き、幻想郷の今を観光客に伝えるために企画したお便りコーナーの流れも決まった。あとは、待つだけ……。
 しかし、ことは一変する。突如旧地獄に開いた大きな狭間、その彼方からゆっくりと邪悪な者がこの幻想郷に近づいているのだ。さらに、不思議なことは続き、ラディッツの夢にも変化が表れ始め……。
 過去から復活した猛者を相手にラディッツはどう立ち向かうか。そして、力の四天王、勇義は立ち向かう彼を見て何を見出すのか……。そして、生き残るのはどっちだ!
 過去を見つめ、今を創れ!!

原作:東方project、ドラゴンボール(Z、超、ゲームシリーズ、映画)
参考二次原作:【東方】傍らの鬼、ブロリーでドラマCDシリーズ(ウポア)

【注意】
この「東国戦遊志シリーズ」は『ドラゴンボール』、『東方プロジェクト』の二つの作品を主に元ネタとしたクロスオーバー。
今回はバーダックが来る直前~フリーザ軍襲来後の間となります。
このシリーズでも、本編同様に「オリジナルキャラクター」・「オリジナル設定」が出ます。
ドラゴンボールZ本編のラディッツとは「別の道」を歩んだ「このラディッツ」の過去は『紅の第零話』となりますので、新鮮な気持ちで見てもらえると嬉しいです。
最後に、このシリーズは動画化まで行けるかはまだわかりませんが、動画版のお便りこコーナーやこの話に彼やその仲間たちが出たときは、是非頑張っている彼らを応援してもらえると嬉しいです。
 
 それでは、東国戦遊志シリーズ激動の第二部、今ここに開幕ッ!!


東国戦遊志~紅~#4 激突!サイヤ人VSサイヤ人

<???>

「これが旧都か…。」

その男は、手に持っていた実を口に運びつつ、ただ一人モニターを見つめている。

「まさか、この俺と同じ血を持つ者がこの世界にいるとは………。カカロットと同じ血を持つサイヤ人…ラディッツ…。」

 

 

<中有の道>

あれから2か月、ラディッツには新たに二人の部下ができた。一人は予言魚、気づいていたらこの三途の川を泳いでいたらしく、珍しく生きた魚が泳いでいるということで小町がその辺に置いてあった金魚鉢を以て捕まえて来たらしい。なかなか仕事の助けになることは無いが、通りかかる客たちの注目を集めたり、たまに重要な予言を言ったりすることがあるので一応置いている。(抽象的かつあいまいなので起こってから気づくのが殆ど。)そして、もう一人いるのだが…。

「おい貴様、いつまで掃除に時間がかかっているのだ!」

「~~~~ 」

この通り、掃除が遅い。もう初めて2時間たつというのにやっと二階の掃除が終わったというものなのだ…。

「貴様が掃除をしている間にとっくに一階は片付いてしまったぞ!なんのために掃除人をやらせていると思っているのだ!!」

「…。」

彼は見ての通り肉体のない魂だけの幽霊なので、しゃべることもできないのだが。ラディッツは言葉でなく気からそいつの考えていることを読み取っている。

「いいか、ここに毎度いらっしゃてくださる方々のために場を整え、気持ちよく迎え入れるのが貴様に与えられた仕事だ。もう一度その弛みきった心を見つめて、その緒をしっかり締め直せ、いいな!!」

「!!!」

どうやら言っていることは分かってくれたらしい…。第一回、お便りコーナーまであと2日。すでにトークの準備はできている、あとは時が過ぎゆくのを待つだけ…。

「お~~い、ラディッツ。電話かかってるぞ!」

「!ホントだ。」

さっきまで気が付かなかったが、携帯電話が鳴っている。

「はい、もしもし。喫茶、えっと……ラディオでございます…。」

「こんにちは、四季映姫・ヤマザナドゥです。」

「これはこれは閻魔様…、今日はどういった用件で…。」

「重要な仕事です。今すぐ、用意をしてこっちに来なさい、以上。」

切られた…。そして、フルネームだ…。もう嫌な予感しかしない…。

携帯を使うようになって以来の事である。ラディッツが仕事を受ける際、彼女はフルネームを言うようになった。そして、説教をするときと同じ冷たい口調で内容を伝えている。たとえ彼が酔っぱらっていても。

「ちくしょお…。せっかく羽を伸ばせると思っていたのによお…。」

「おい、ラディッツ!!」

「おん?どうした。」

「今回のお前の仕事結構厳しいぞ。それに、戻ってこれるか…。」

予言魚は、いつも『頑張れよ!』ぐらいしか言わないのだが、今日は何を見たのか厳しい顔になっている。

「おい…、どういう意味だそれは…。」

「お前の夢と関係があるが、これ以上は言わない。きっと言ったら、お前は逃げ出す。」

その言葉を聞いて、ラディッツの意思は決まった。

「この俺は、貴様の知っているラディッツではない。俺は決めた、『逃げない』とな…。」

そう言うと、ラディッツはスカウターを取り出し、着ていた服を脱ぎ、袴に変えると

「おいそこの白いの!今すぐ、俺の代わりにもう一人か二人捕まえてこい!」

「~~~~~!!!!!」

どうやら、この掃除人は無茶ぶりをされたので怒っているようだ。

「うるさい!無茶なのは承知の上だ…。だが、せめて毎度毎度集まってくれている方たちのためにもこのコーナーを簡単に休むわけにはいかんのだ!!何としても集めてこい、小町には俺から伝えておく…、いいな!!!」

そう言い残し、あの水先案内人の待つ三途の川の船着き場の方へ駆けていった。

 

<三途の川>

「浮かない顔だねぇ…。」

「…。」

ラディッツは、腕を組みじっと座っている。

「……まだ、迷いがあるようにあたいには見えるよ。」

初めて乗せてもらった時もそうだった…、あいつは『お前さんには結構迷いがあるんじゃないか』と言っていた。今更、何を迷っているのだ俺は。戻ってこない者は戻ってこんというのに…。

「最近…、夢を見始めるようになっちまった…。」

「夢…?」

「…俺が惑星ベジータにいたころの話だ…。俺は、親父とおふくろに育てられていた…。だが、サイヤ人の宿命(さだめ)か…。俺とカカロットを残して二人とも消えていっちまった。そして、数十年後カカロットは世界と共に消された…。戻ってくるはずないのによ…、最近、俺の夢の中によくその後ろ姿が表れるようになった…。もう忘れて生きようと思い始めた時になったのに…、ふとまた思い出しちまっている……。」

気が付くと、三途の川の方を見ていた。だが、ラディッツの目にはそこに立ち込める霧がいつもより深く見えていた。

「惨めだねぇ…。」

「なにぃ!?」

ラディッツは、ちょっと血が上りかけた。

「惨めだって言ったのさ!」

「この俺が惨めだったころに戻っているものか!」

「少なくともあたいが見ていたお前さんはそんな惨めな眼をしていなかったよ。人の想いを大切に生きていく…、前をしっかり見つめて生きようとする眼を持っていたあんただったッ!」

「…。」

ラディッツは言い返す言葉が見つからず黙り込むしかなかった。

「亡くなってしまった大切な者たちの想いを背負って戦ってみな…。たとえ、目に見えなくたって受け継いだものは残っているんだから。」

そう一言小町は残した。そして、同時に船は彼岸についていた。

「もう、一人で生きているんじゃないから……これ持っていきなよ。」

ラディッツの手にスキットルが一つ投げ渡された。

「酒か………。」

「その代わり、一つ約束しな。絶対に生きて戻ってくるって………。」

「………分かった。約束しよう。」

その言葉が入った餞別を受け取ると、ラディッツは裁判所に向かって走った。

絶対に生きて帰ってくるという約束をその死神と結んで。

<裁判所>

「――――ということです。」

「分かった。旧地獄にいる『古明地さとり』…。そいつに会えばなんとかなるんだな…。」

「そうです。」

ラディッツは自分の仕事を確認し外に出ていこうとしたが、

「但し!」

映姫はラディッツに一言付け加えた。

「貴方の寿命が消えているとは言っても、実質不老のまま生きている者と同じ…。死ぬことになれば、貴方は死にます…。そうなってしまったらそのまま地縛霊になりますから、それだけは覚えておいてください…。」

それは、忠告だった。彼が最初にここに来たあの時、仕事を引き受けることを条件に寿命を取り払った状態、つまり不老となることを契約した。だが、今このまま罪を返し切ってないため、死んだ場合、地獄にも天国にも冥界にも行けず永遠に地縛霊として死んだ場所に括り付けられてしまうのだ。

「分かった…。」

ラディッツは、そう一言返すと扉を開け目的地に向かった。

 

<灼熱地獄跡>

灼熱地獄跡、その名の通り、かつてこの地は灼熱地獄だった。しかし、数百年前の地獄の併合によって、今は罪人が堕とされることもなくなった場所である。だが、封鎖されているだけでそこでは今もなお煮えたぎるマグマで一面が覆われている。

「茹ってしまうぐらいに熱いな。これが、地獄といわれた場所か…。」

彼岸を出発して約半日、ラディッツは休むことなく飛び続け、ついさっき入ったばかりだった。

「それにしても…広いな。全然見つからんぞ…。」

ラディッツは、上に通じる出口を探していた。だが、一向に穴一つすら見当たらない。

仕方なく、近くにある高くそびえだった岩の上に降り立った。

「飯にするか…。」

ラディッツは、持ち出してきた木箱を開けるとそこには卵が3つ綺麗に並んでいる。

「せっかく地獄にきたのだ、これぐらいの楽しみはあってもいいのかもな…。」

そして、持ってきたアルミホイルとフルーツが入っていた空き缶を取り出すとアルミを敷き詰め、即席の鍋を作った。そして、水の入った竹筒を取り出すとその中に水を入れた。

「これでいいだろう…。」

するとその缶を岩の上に置いて沸騰させ、卵をその中に入れた。そう、地熱を利用して温泉卵を作ろうとしているのだ。

「なんとかして…ここから上に向かう道を――、!?」

ラディッツがもう一度上を向こうとした時、何か黒い点々が集まっていた。

「ガアアアアアア!!」

「…鴉か…。」

どうやら、侵入者を察知してこちらに来たらしい。

「気味が悪いが、いい目つきだな…。来いっ!!」

一斉に鴉の大群がラディッツに襲い掛かる!!が、

 

「ちょっと待ったァ!!」

 

右方向の彼方から風と共に力のこもった声が入り込んだ。

「なにぃ、まだほかにも援軍がいた……の…か………!?」

振り向いた瞬間、固まった。想像を超えるほど巨大な火の塊がこっちに襲い掛かっているのだ。

 

「その勝負私が!!もらったァ!!!!!」

 

 

「ちょ~っと、火力強すぎたかな?加減難しいんだよね。」

さっきまでラディッツのいた場所は跡形もなく消え去っていた。

「危なかったね、みんな。」

その少女は、鴉の大群の方を向く。

「私が来なかったら確実にやられていたよ。」

どうやら、その大群と会話ができるらしい。

「カアア!!」

「え?私の弾の方が怖かった…?」

 

♨ ♨ ♨ ♨ ♨ ♨ ♨ ❕

 

「あ、そっか、下手したらみんな巻き込んでいたかもしれないんだ。ごめん…、考えていなかった…。」

但し、どうも何かが足りてないようだ。

「随分派手なあいさつじゃあねえか…。」

その少女が立つ岩の上から、その声は降ってきた。

「そう?挨拶なんてこんなもんでしょ。」

どうやら手加減という言葉が辞書に載ってないようだ。

「…まあいい。さっきのことは水に流してやる。」

そう言い放つとその男は彼女の前に降りて来た。

 

「ようやく、見つけれた…。その妙な服装…貴様が地霊殿の主だな…。」

ラディッツは、直感で思った。閻魔様の言っていた『古明地さとり』は地霊殿の主、そして多くの動物を従えていると…。この鴉たちの間にいきなり入り、攻撃を仕掛けて来るとは想像以上に厄介な奴だと思ったのだ。が、

「?地霊殿の主は私じゃあないよ。」

「なにぃ!?」

ラディッツの読みは外れた。そして、彼はまた考えることになった彼女が何者であるか。確か、彼女の他にあと一人その妹がいると聞いた。情報が少なくてどんな奴かはわからないが少なくとも彼女に匹敵する力を持つと言われている。

「それから、言っておくけどこの足は、八咫烏様の力を操るのに欠かせないすごい逸品なのよ。あまり舐めていると超高温超高圧の世界で究極のエネルギーを以て跡形もなく貴方もフュージョンよ?」

「…。(何を言っているのか全然わからん、何だ暗号か?)」

ラディッツの頭は混乱している。相手の言っている言葉の後半の単語の意味が彼の辞書の言葉を超越しきっている。そして、ラディッツは察した。もうすでに、自分の心が試されていることに。

「俺は逃げも隠れもせん、この場で勝負してやる!」

ラディッツは戦闘態勢に入った。

彼女は、ある一つの予想を立てていた。この長髪の男は一体何者なのか…。まず、この男は地上からではなく地価から入ってきた。ということはもうすでにあの世とこの世を超えた存在なのは間違いない。そして、先日私に力を貸しにやってきた者も外の世界からやってきたと言っていた。二つ目に、攻撃を仕掛ける前に視界にとらえたとき彼は宙に浮いていた。そして、外の世界から来たのも宙に浮いていた…。次の問いで彼の正体がわかるかもしれない。

「勝負?いいよ…、ならばこの『スペルカード』で勝負よ!」

「『スペルカード』だと!?なんだそれは!」

「いや、スペカだって!貴方、スペカを使っての決闘を知らないの!?」

ラディッツは、相手の正体を探っていたがこれでわかった。おそらく、相手は比喩のような何か難しいもので振り回している。『古明地さとり』は心理戦に長けていると聞いた。ならば、その妹もおそらく心理戦で来るだろう。この目の前にいるこいつの正体が分かった。

「知らんぞ、だが貴様の勝負には乗ってやる。この世界に来てしまった俺なりの覚悟だ…。」

両者ともに結論は出た。

「一つ、聞いてもいいか…。」

「こっちもあなたの正体が分かったわ…。」

「ほう…、こっちも貴様の正体を掴んだぞ。」

そして、互いにその手札を切った。

「貴様!!古明地こいしだろう!」

「貴方!!神様ね!!」

 

 

「…なるほど、私の鳥(ペット)が迷惑をかけてしまったようね…。」

「…。」

「しかし、迷惑ではなかったと…。」

「まあな…。」

ラディッツは、出されているお茶を手に取ると一気に飲み干した。

「なるほど、いいバランスだ。甘いものを食べたっきりだったからな…。」

ラディッツが、出発して以来食べたものと言えばあの缶に入っていたフルーツぐらいだった。

「ところで…。」

「申し遅れました。私は、古明地さとり、この地霊殿の主です。」

ラディッツは、あれからあの少女に連れられここにたどり着いた。

「やはり、ここは…。」

「そうです、貴方が以前魔王相手に戦っていた場所と同じ層にありますよ。」

ラディッツは、2か月前ここであの二人を相手に戦っていた。そして、孫悟空のことを告げられたのもこの地だった。

「そういえば聞き忘れていたが…。」

「そうでした。彼女は霊烏路空、私のペットの一人です。」

「ならば…。」

「こいしの事ですか…。まあ、そのうち帰ってくるでしょう…。」

「…。」

ラディッツは、一歩目から読みを外していた。彼が、閻魔様から受け取った情報によると『二人』のはずだった。しかし、実際には『四人』…。そして、心理戦を繰り広げていたのは、『古明地』ではなく最近八咫烏の力を半分を得たその『地獄鴉』…。ナッパだと思って戦ったたらサイバイマンだったような、どこか空しい気持ちになっていくラディッツであった。

「そんなに気を落とすことは無いと思いますよ…。ただ読みが深く行き過ぎた…、それだけのことですから。」

「惨めに考えない方がいいよ。」

逆に、空は全く落ち込んでいなかった。

「このオレが惨めになってたまるか!それと貴様!出会い頭にいきなり撃ってくるんじゃない。こっちは死にそうな気分だったぞ。それから、なぜ(ラディッツ=神)になる…。別にバカなのが悪いとは言わんが…。」

「そりゃあ私、物覚え悪いし…、頭だって良くないよ…。でも一生懸命考えた結果だし…、八咫烏様のことだって本当だよ…。それなのにそんな馬鹿ァって言わなくてもいいじゃないの…。」

「…うっ…。」

空の目から涙が今にも零れ落ちそうになっている。そして、正論を言っているはずなのにラディッツの心が押しつぶされていく。

「私、バカじゃないもん!地獄落ちろバカぁ!!」

「……なっ…。地獄に…堕ちる……。」

ラディッツの心がぺちゃんこになった。

 

<旧都>

「戦ってもいないのに、こんなに疲れちまった……。」

ラディッツは一人、かつて戦った場所へ来ていた。

そして、懐から小町が渡したスキットルを取り出し、中に残った酒を一気に飲み干した。

「カカロット…。お前の帰るべき場所はもうなくなっちまったが、お前のことは一生忘れん…。」

ラディッツは、懐からくしゃくしゃになった新聞紙を取り出し広げた。ここに来る途中道の傍らで季節外れに咲いていた一輪の彼岸花。その花を戦火の爪痕が残る道の脇に置いた。これが、彼の最大限にできるせめてもの償いであった。

「戻るか…。」

また来た道を戻ろうと足を出す。

「こんなところに何しにきた……、観光旅行かい?」

「!?」

突然、空から一つの大きな影が降ってきた。

「よぉ、この前はずいぶん派手に暴れてくれたねぇ。」

「まあな…。だが、お前の方もあの巫女相手に暴れたらしいじゃあないか…。」

「あれは、飲み勝負だったからねぇ…、今度は力比べといこうか。」

彼の前に現れたその鬼神の名は星熊勇儀。前回の戦いの裏で、博麗レイムともう一つの戦いを繰り広げていた。だが、勝負は時間切れで痛み分けに終わった。しかし、飲み比べだけが鬼の土俵ではない、力の四天王と呼ばれるぐらいその力は凄まじく、現実では説明のつかない尋常でない力の強さがそこにはある。

「いいだろう…、こっちも貴様と一度戦ってみようと思っていたところだ…。」

「いい覚悟だ、ついてきな!」

 

<旧都のはずれにある広場>

ちらほらと観客が集まり始めている。だが、凄まじい戦いになると思っているのか、かなり離れたところから見ている。

「それほど人間がいるわけではないらしいな…。」

「地上の奴らが降りてくることは殆どない。まあ、上がっていこうとする悪い連中はいるけどね…。」

数百年前の地獄の併合の際、賑わっていたこの街も静寂に包まれるようになった。そこで、地中に眠る怨霊たちを出てこないように鎮めるという約束でこの地に彼の鬼は移り住んだのだ。

「さて…。」

ラディッツは、来ていた上着を全て取ると袴だけになった。

「貴様のその怪力乱神とやら…、この拳を以て迎え撃たん!」

「威勢がいいのは口だけじゃあないだろうねぇ!!」

こうして、第弐幕最初の戦いが幕を開けた。

 

 

激戦の開幕は、勇儀の轟音唸る右ストレートの一撃からだった。回避することも、防御することもできる。だが、その男はどちらもしない。こぶしを握ると右足と左足を肩幅に広げ、その一撃を胸部中央にしっかりと受け切った。口からは一縷の血が垂れる。だが、その顔は苦しみで歪んでなどいない。むしろ、サイヤ人として生まれてよかったという喜びを表す笑みが浮かんでいた。そして、この一撃で彼らはこれから続く限界への挑戦を楽しみ合えることを理解した。

「今度はこっちの番だ!!」

雄叫びを上げ、ラディッツは一気に間合いを詰めた。そしてその懐に入ると、かの巫女が放つ拳打のごとく思いっきりその拳を全身に叩き込んだ。

「連撃かい…やはり…あの巫女が見込んだことはあるね…。だが、力が足りない…。かかってくるなら、これぐらいの力(りき)入れてかかってきな!!」

「ぐ……ぬう……。」

押し寄せる重い一撃に、渾身の力で耐える。だが流石『力の四天王』、頑張って踏みとどまってもその余韻が体に刻み込まれていく。なんというそこのしれない力だろうか…、この心の奥底からいつの間にか尊敬のような気が湧いて止まない。自分より格上だというのに…。だが、戦う。たとえこの足がへし折れようとも真正面から戦い抜いてみせる。それが、俺がサイヤ人の心を持って生き続けた証であり、これからの道を切り開くのに大切なことであるはずだ。

「ならば…。」  

ラディッツは、その拳を開くと紫の雷を帯びた球を出した。そして、

「こいつでどうだ!!」

思いっきり振りかぶって投げつけた。

 

「うあああああーーーッ!!!」

 

凄まじい方向が大気を揺らした。そして、ラディッツの放ったそれは爆発四散し、花火のように辺りに降り注いぐ。

「…なんだと……。」

ラディッツの十八番のサタデークラッシュが鬼の咆哮一つで花火に変えられた…。これまで普通に戦ってきたような単調なぬるいやり方では、勝てない。もっとひねりや凄みを効かせなければならないのだ。

「そんな程度じゃあ効かないのよ…。」

勇儀が天に手をかざすと盃が降ってきた。そして、どこからか投げ渡された、その酒瓶を手に取るとその盃に注ぎ、そして一気に飲み干した。

「さあて、こっちは久しぶりにに本領発揮しようか!!」

そして、その杯と酒瓶を天高く投げ上げた。

ラディッツは無意識に構ていた。なぜ構えたのかよくわからないが、多くの死戦を経験したから構えたのかもしれない。次の瞬間、彼の体は宙を舞っていた。

「――――っ!?」

地面に叩きつけられる。そして認識した、胸にはしる痛みを。

「ええい、くっそぉ!!」

ラディッツが体勢を立て直そうと起き上がった瞬間、あの鬼の腕が頭の上まで来ていた。

 

――――怪 力 乱 神――――

 

ラディッツの体は大きく地面にめり込んだ。そして、身をもって理解した。力の四天王といわれているその怪力と豪快さを。

 

 

「なんだい、もうバテちまいやがった…。」

勇儀の手には投げ上げていたさっきの杯と酒瓶がある。そして、その顔には余裕というものが浮かんでいる。

「もっと骨のある奴だと思っていたが…、こんなもんかい…。」

その言葉には、どこかしら寂しさとむなしさが詰まったものだった。幻想郷ができて間もないころ、もう一人の四天王、技の萃香は勇儀にこんな話を語った。

 

 

妖怪も恐れる人間の里って聞いたことがあるかい?もう何百年も前の話さ…。その物騒な里には鬼のような力を持った男がいたんだ。ゆえにその男は、『鬼神』と呼ばれ恐れられていた…。でも…それを聞いたらさ…、なんだか嬉しくなったんだ。その男が守る里をこの目で見たくなった。もうその男はいないよ…『約束』を果たす前に病で逝っちまった。でも私の気持ちは伝えることができた。本当に、気持ちのいい年月だったよ…。

恐怖という感情を生み出すのが人間なら恐怖に立ち向かうことができるのもまた人間…。人間は恐怖に挑む強い勇気を持っている。それは鬼にもない力なんだよ…。私はそんな人間の強さが大好きなんだ…。ひどい目に遭ったけどさぁ、勇儀…やっぱり私はまだ自分は人間が好きだと信じている。『真正面』から力であんたに勝てる人間がいたらさあ。そん時はそいつと笑いながら酒を飲み交わしてあげな…。

そいつもきっと『あの人間』と同じ瞳を持っているから。そして、きっと『約束は果たされる』からさ。

 

――――真実だけは永遠に消えない――――

 

「さて…、そろそろお開き――――。」

「待てよ…。」

「…!?」

その男は頭から血を流しつつもまた立ち上がった。その瞳には、『生き残る』という覚悟と『不屈』という灯が映っている。

「まだ、勝負はついておらんぞ…。」

「…まだ続ける気かい?」

「見せてやるッ!!このオレが死の淵からつかみ取った心と力。」

 

―――― 界 魔 神 拳 を !!!!! ――――

 

 

<地底入り口>

「いい月だねぇ…。」

「満月か…。いつ見ても素晴らしいものだな…。」

ラディッツと勇儀は同じ月を見つつ盃を交わした。

「たく…、そんな力あるならもったいぶらずに最初から出してきても良かったんじゃあないかい…?」

「それも言えるだろうな…、だが結果よりも過程というものが重要だと思うぞ。」

ラディッツは、一番最初の仕事のことを思い出していた。翼のない不死鳥の過去を一緒に見たときあいつはこう言っていた。

『たとえこんな結末になっていても、彼女が歩んだ過程というものが大切なんだ…。あのまま不老不死を選ばずにいたらこの世界を見ることもなく時の海に還っていっただろう…。たとえいつか訪れる『死』という『結末』があっても、そこまでに何をしたかという『生き方』によって全く違うんだ。』

「『過程』か…。あいつにも言ってやりたいねぇ…。」

「技の四天王、萃香の事か…。」

「さっきの戦いで私が受け取ったこの酒…。間違いなく、あいつの選んだ酒だよ…。」

「『この酒』が…か。」

「それを寄越したんだ。あいつもきっと信じているんだよ人間と一緒に杯を交わすことを…。」

「その夢はきっと叶うはずだ…、根拠はねえが、あいつらと会って俺はそう思った…。」

ラディッツは盃に残ったわずかな酒を飲み干すと立ち上がった。

「すまねえな…。加減が出来ず、その腕をへし折っちまってよ…。」

包帯の巻かれた勇儀の右腕を見る。体中あちこち痣が出来ているが、折れているのは彼の攻撃を多く受け止めた右腕だけだった。

「いいんだい、あんたは全力でかかってきた。それでもう今日は十分さ…。」

勇儀も残った酒を飲み干すとゆっくり立ち上がった。

「情報によれば、その侵入者は明日旧都に来るだろう…。見に来てもいいが、俺に戦わせてくれ…。」

「分かったよ。その代わし、またつきあってもらおうか…。」

「いいだろう、やはりこうして戦う方が俺の性に合っているからな…。」

再び杯を交わすことを約束するとそれぞれ家路に戻っていった。

 

 

「これだけ食えばもう怖いものはない…。」

その男は持っていた最後の実をかじり尽くすと立ち上がり、薄い光のさすスキマを見つめた。

「時は来た。始めようか…、どっちが本当の『サイヤ人』かを…。」

 

 

<旧都郊外>

「そろそろ正午だな…。」

ラディッツは一人、壁に現れたその狭間を見つめている。昨日見に来た時と比べて変わってないが、緊張は時がたつにつれどんどん強大なものになっていく。

「あいつらも、この戦いを見ているのか…。」

先日お世話になったあの主とそのペットたちの事だった。心理戦は得意でも肉弾戦の方はまだまだだ…。あの鴉は目を輝かせていたが、危ないからと屋敷の中から見守ることとなった。そして、あの杯を交わした鬼はその子分たちと共に屋根の上からこっちを向いて見守っている。やはり、約束を破らないところに何か感じるものがある。だが、この俺は生きて戻れるのだろうか、小町と約束をしたのだがこの狭間の奥からあふれ出てくる気が近づいてくるたびにだんだん幻想に終わる気がしてきた。

「俺には、帰る場所があるんだ…。こんなところでくたばってたまるか!」

自分に喝を入れたその時、その狭間は大きく開いた。

「なるほど…、貴様がカカロットの兄、ラディッツか…。だが、俺にはわかるぜ、やはり貴様は『サイヤ人』だ…。」

「なっ…、か…カカロット…。親父…。」

ラディッツは、それ以上言葉が出なかった。なんと、彼の弟の孫悟空、そして自分の父バーダックと顔がうり二つ、全く同じなのだ。

「フフフフフフ…、俺とカカロット、そして貴様の父バーダックと似ているのも無理はない、俺たち使い捨ての下級戦士はタイプが少ないからな…。」

完全に想定外だった。この男が死んでいった父と弟の面影を持っていたことが…。たしかに、あの予言魚 の言う通りだった、聞いていたらおそらく引き受けるのをためらったかもしれん…。だが、心は既に決まっている。どんな相手であろうと逃げだしたりはしない。それは、俺が隠していた罪の一つであり、これから生きる上できっと大切なことなのだから。

「たとえ、貴様の顔があいつら同じだからといっても容赦はせん。この幾千もの戦いで学んだ拳と心を以て、倒してくれる!!」

「サイヤ人の心を失った今のお前が、サイヤの心しかないこの俺に勝てると思うか?この俺はカカロットとは違う…、この地で貴様を葬り去ってやる!!!」

 

 

激闘の開幕は、ラディッツの一撃からだった。が、

「こ…こんなことがありえるのか…全然効いてないぞ!!」

加速をつけた彼の一撃がターレスの服を貫き腹にめり込むはずなのだが、服を破るどころかちょっとしかめり込んでいない。

「神聖樹の実を8000万個も食べ尽くしてきた…、貴様とこの俺とでは天と地ほどの差があるのだ!!」

ターレスは、その拳を振り払うと振り払った手の裏拳でがら空きになっている彼の顔面に一撃をくらわせた。

「ぐっ……ぎぃ!!」

後ろに数歩よろめくラディッツ、想像以上に相手の一撃が重い。頑張って踏みとどまることができないのだ。

「お前の力はその程度か、もう少しこの俺を楽しませてみろ!!」

相手の鋭い一喝がラディッツを貫く。どうやら、死ぬ気で立ち向かわないと彼の両手を地面につかせることはできないらしい。

「いいだろう…、こっちも死ぬ気で貴様に立ち向かおう!!」

「それでこそサイヤ人だ。来いよ、サイヤ人くずれ。貴様がサイヤ人、そしてエリートであったことを思い出させてやる!!」

 

 

地底全体を震わせるような、拳と拳の咆哮が響き渡る。放たれた衝撃は、それだけで形を持った力となり、旧都の端にも襲い掛かった。もちろん、サイヤ人たちには言うまでもなくその力を互いに受けているものだから、体への痛みは言葉で言い尽くされるものではない。

「なかなかいい攻撃だ…。だが、その程度の攻撃じゃあこの俺を倒すことはできないぜ。」

そう、言い放つとターレスは手をバチンと合わせるとその手の間にオレンジ色の雷撃が走り始め、そして大きな輪の塊となった。

「死ねぇーーーーーーッ!!!」

その咆哮と共に一気にラディッツに向けて放った。

「うああああぁぁぁーーーっ!!」

ラディッツは咆哮を上げた。その声は、かつて大猿の力を持っていた頃の面影が一瞬映る。そして、肩幅二倍まで足を前後に広げ、地面を踏切り、その輪をぎりぎりでかわし、一気にターレスとの間合いを縮め、その懐まで切り込んでいった。

「なにぃ!?」

「これで決める…。」

その手を彼の胸に押し付けると、貯めていたエネルギーを一気に解き放った。

 

「必殺…、ダブルサンデー!!!!!」

 

眩い閃光が辺りを包んだ。そして、一瞬遅れて大波がラディッツ、旧都、地霊殿を襲う。

外にいたものはみな耐えられず散り散りに彼方へ飛ばされていった。そして、勇儀もその衝撃を受けて後退し始めていく。

「…なんて…無茶苦茶な技を出しやがるんだ、あいつは…。」

鬼としてはこのまま踏みとどまりたいが、子分たちが吹っ飛ばされていくのを黙って見逃すわけにもいかず風に身を任せ、彼らの飛ばされた方へ向かった。

 

「はあっ…はあっ…。」

ラディッツの息は上がっている。そして、じわじわと昨日の戦いで久々に全力近く解き放った界魔神拳の反動で両腕に痛みがこみ上げてくる。だが、ゼロ距離から放ったサタデークラッシュの強化版の新技、ダブルサンデーの威力の手ごたえは十分にあった。間違いなくあのサイヤ人の戦闘服を貫通し、そのまま埃の舞い降りる彼方へと飛ばしたのだから。

「…雪か…。」

気が付くと肩に冷たいものがついていた。そして、果てしないその天井からゆっくりと降り下りてきている。

「いい天気だな…。」

そう思った次の瞬間、

「!?」

いきなり吹雪に変わり、前方から押し寄せてきた。そして、その風と共に舞い上がっていた埃も全て流れ去った。

「結構効いたぜ…。貴様の一撃はな…。」

その男は、立っていた。頭をはじめ数か所から血を流しているが、そんなことでサイヤ人の力は落ちたりはしない。そして、その男はつけていたスカウターを外すとラディッツに向けてこう言った。

「さっきは悪かったな…、貴様をサイヤ人くずれと言っていたが、無礼だったな。撤回しよう…、貴様は間違いなく本物のサイヤ人だ!その隠している力を含めてな…。」

ラディッツは驚いた、どういうわけかこの男、自分が力を隠していることに気づいているのだ。

「だが…、貴様だけじゃあない…。力を隠しているのはな…。貴様のようなサイヤ人と巡り会えた俺からの贈り物だ…、見せてやるサイヤ人の限界の壁の…その先の世界を!!!」

「ま…まさか…。」

相手が目をつぶると恐ろしいほど一気に気配が膨れ上がった。その男の口の端が吊り上げっていく。ラディッツは、かつてベジータたちと組んでいた時、ある噂を耳にしたことがあった。サイヤ人は普通大猿にしか変化しないが、穏やかで純粋な心を持つものが現れる時その大猿をも超える黄金に輝く戦士が現れることを…。だが、

「なっ…、なんだ色が抜け…。」

その男の髪は逆立ったが、徐々に色が抜けていき、そして薄い緑色の気がその髪に流れ始め、水に絵の具を溶かすように筋が入り始めた。そして、

「うおああああああああ!!!!!」

その咆哮と同時に、吹き付けていた吹雪が収まった。そのサイヤ人の気配はこの降り積もる雪のごとく、濁りがなく澄み切っている。ラディッツの界魔神拳が獅子であるとするならば、このサイヤ人、ターレスの今の姿は神…いや、その先に存在するであろうもの――――

「これが…、苦しみの先に辿り着いた世界…。」

 

―――― 超サイヤ人 零(ゼロ) ――――

 

白きサイヤ人と黒きサイヤ人…。

 第弐戦の開幕は、ターレスからの一撃だった。あまりの速さに回避はおろか、防御の時すらない。次に気が付いた瞬間、彼は胸に風穴があいたような衝撃によって意識を飛ばされそうになった。勇儀の時とは全く違う、風のように速く、切り裂くように鋭い。朦朧とする意識の中、ラディッツは相手の方を見つめたが既に相手はいない。

「…!?」

ふと、頭の上に何か影のようなものが覆いかぶさった。見上げる。ターレスだ、この一瞬の間に自分の上に回り込んでいたのだ。

「だあっ!!!!!」

躱しきれない拳のラッシュが雨のごとくラディッツの体に降り注ぐ。一撃一撃はあの鬼の一撃より軽いが直にめり込んできていてまずい。だが、それで攻撃は終わることは無かった。地面にめり込んだラディッツの体を持ち上げると天高く投げ飛ばした。

「……………ぐっ。」

ラディッツは、視界が暗くなる中せめて一撃でも入れようと身を返したが、それ以上動けなかった。もうすでに体が限界に達していたのだ。そして、また地底に落ちていった。徐々に街の明かりが見えていく、だが落ちる場所は街ではない、落ちる場所は投げられた場所の少し先。そして、そこには拳を構え迎え立つあのサイヤ人、ターレスの姿があった。そして、彼は後進すると、思いっきり壁を蹴り突進し、その拳を思いっきりラディッツの腹にねじ込んだ。

「ぬぅあああああああ!!!」

鬼のごとく重い一撃がその身に思いっきり入り込み、そのまま彼方にある壁にめり込んだ。何とか保っていた彼の意識はこれをもって完全に暗く没した。だが、あの男は攻撃を一切緩めない。

「ふんっ!!!!!」

彼の手から放たれた無数の気弾が容赦なく襲い掛かる。そして、接触すると同時にその弾は炎となりラディッツの体を包んでいく。そして、ターレスはそのままとどめにはいった。

「ラディッツ、貴様が死んだからには、俺がこの暗き地にしっかりとお前の墓を建ててやる。サイヤ人として最後まで戦い抜いた貴様への贈り物だ…。」

そう言い残すと、ターレスは手を合わせ、あの輪を創り出した。

「さらばだ…ラディッツ!!!!!」

とどめの一撃がその体に接触し爆散。ラディッツの体は立ち上がる爆音と共にその彼方に消えていった。そして、彼がつけていたスカウターは足元に落ちて、割れた。

 

 

「やっぱり、帰ってこないか…。」

小町は一人、そのスタジオに着いた。

「ラディッツは一緒じゃないのか?」

見慣れたあの予言魚が小町に尋ねた。

「いいや…。」

ただその言葉だけが返ってくるだけだった。

重い空気が辺りに流れる。ラディッツがいたらきっと明るくなれるだろうに…。その主役がいない。こんなにも空しいものがあるだろうか。祝うべき人のいない誕生会、亡くなった後に駆け付けた救急車、さっきまで生きていたから乗せてくれと頼みこむ遺族の声…。それに似た感情が込みあがってくる。この仕事について数百年、こんな気持ちになったのは初めてだ。

「ラディッツ…、お前さんのことは忘れないさ…。」

もう時間が迫ってきた、あと10分。もう客の列は見えないほど長く続いている。この幻想郷を見に来た者たちのためにも笑顔で迎えなければならない。

「それじゃあ、入れるか。」

小町が、ドアを開けるよう手伝いの者に伝えようとしたその時、

「ちょっと待ちな!」

背後にある勝手口から声が聞こえた。

「誰だい…?」

「まだ…、あいつの…、ラディッツの勝負は終わってないよ!」

何を言い出すのかと思ったが、よく見ると目つきは違うが、その髪型はラディッツの物と同じだった。多くの人を乗せてきたから分かるきっとこの人は――――

 

 

「ラディッツ…、貴様まだ…。」

「俺は死なん…、この俺に…帰る場所がある限り…。」

全身から血を流しつつもラディッツは生きていた。あの回避不可能の連続攻撃を受け切って死にかけたが、ぎりぎり踏みとどまりそして何かに導かれるようにまた立ち上がったのだ。

「だが貴様、もうこれ以上戦うのはやめろ。その体じゃあこの俺には勝てん。犬死にするつもりか…。」

「戦うのは止めん…。そして、この俺は死なん。絶対に『生きて帰る』という盃を交わした奴がいるからな…。」

ラディッツは、周りの音が消えゆくのを感じた。あの魅魔とあの技を見出した時もそうだった。自分の鼓動だけが妙に大きく聞こえ、辺りの音が消えゆく感覚…。

 

 

生きる力と守る力をを持つと覚悟した時強くなれるものさ。

 

亡くなってしまった大切な者たちの想いを背負って戦ってみな…。たとえ、目に見えなくたって受け継いだものは残っているんだから。

 

 

「見せてやる…。このオレの覚悟、受け継いだ心を…。」

 

―――― 極 技 界魔神拳 かいましんけん ――――

 

 

最後の開幕は、両者の覚悟を背負ったの一撃からだった。無と獅子、それぞれの生き方を現したような拳の動きである。ラディッツが攻撃を仕掛ければターレスはその攻撃を流し、一撃を入れる。だが、ラディッツはそれを受けつつも空いたもう一方の手でターレスの顔面に入れた。そして、両者間合いを取ると次の攻撃へと移っていった。

「はあっ!!!!」

ラディッツは、気合を入れると一気にその間合いを詰めた。ターレスは焦る。さっきまでのスピードと比べ物にならないほどラディッツのスピードが速いのだ。

「くっ!?」

「うぉぉあっ!!」

ラディッツの一撃が彼の戦闘服を割った。そして、鋼鉄のように硬かったその大木の表面に当たる。流れは一気にラディッツの方に向いた。

「うおああああああああ!!!!!!」

ラディッツの拳の雨がターレスの全身に打ちつける。あの巫女の放つ『夢想封印 瞬』を明らかに超える拳速であり、その一発一発の強さはあの鬼の繰り出す怪力乱神すら超える。そして、ついにターレスの体を吹っ飛ばし背中を地面につかせた。

「………っ!!」

だが、ターレスもただで終わるほど甘くはない。地面に打ち付けながらもラディッツの顔に向けて気功波を一発お返しした。そして、一回転すると体勢を立て直し、一気に地面を蹴り離れた間合いを詰め返した。

「うぁぁあ!!!!!」

スパークを帯びた一撃がラディッツの足元に襲い掛かる。が、ラディッツは一瞬で足を裁き、その攻撃をかわすとその背中に向かって正確に彼から向かって右側に気弾を5つ一斉に打ち込んだ。

「ぐはっ!!」

ターレスの背中の甲冑を貫き、見事命中。同時に、ターレスは一瞬で悟った。このまま戦ってもこいつには勝てない、そして時間切れも見込めない。次の一撃で、確実に仕留めにかかる。

「くっ!!」

ターレスは手を以て地面を押すとひねりを入れた宙がえりでラディッツの方を向いた。

「なるほど…、確かに覚悟は貴様の方が上だ……。だが…、覚悟だけじゃあ生きてはいけないのさ…。」

「………。」

ターレスは、手を合わせると先ほど彼を葬ろうとしたのと同じ輪をつくりだした。この技を相手に飛ばし、かわそうとする直前で一気に閉じる。これで、確実に当たり、あの変身は解ける。そしてそのすきを見逃さず、とどめの一撃で決着をつけてやるッ!!

「こいつを破れるものなら破ってみろ!!」

「来い!!貴様とオレの過去…このオレが破る!!」

辺りに降り注ぐ雪が吹雪に変わった。先に動いたのはターレスだ!

「死ねぇぇい!!」

あの輪がこっちに向かってくる。だがそれだけではない、あの男、先ほどラディッツの足を狙いに来たあの技の準備をしている。あれに当たればおそらくもう自分の命は無くなるだろう。もうすでに、界魔神拳を使った時点で無事に帰れる見込みなど無いのだから…。ラディッツの次の動きは決まった。

「なっ…。」

ラディッツは、前屈蹴り上げの姿勢をとるとその足指を以て地面をしっかりとらえ、その技に向かって踏み出した。そして、向かうスピードを一気に最大まで上げその輪が収縮する前に通り抜けた。ターレスが迎え撃とうとしたその時、すでに彼の必殺が撃ち込まれていた。

 

 

「界魔神拳奥義…。天破牙殺(てんぱがっさつ)。」

 

ターレスの右半身に無数の牙が撃ち込まれた。

 

 

「…くっ。」

もはや、戦うことはおろか、立ち上がることさえ出来ない。だが、彼は残った意地でなんとか膝立ちになって踏みとどまった。

「貴様…、この俺に情けをかけるか…。」

「オレにはサイヤ人だった頃の心だけではない。カカロット、そしてこの国で過ごすうちに持った新しい心がある…。ターレス、お前は純粋なサイヤ人だ。だが、ここはお前の戻るべき場所ではない。貴様にも他に戻るべき場所があるだろう…。」

ターレスは、妙にその言葉が心の奥にすっと入っていく感じがした。あのカカロットとは違う…、この男はサイヤの心を持ちつつまた別の心を受け継ぎ成長させているのだ。悔しかった…下級戦士という枠組みから抜け出せれない自分が、そして自分以上にサイヤ人の心を持った奴がいたことが…。ターレスのとるべき道は決まった。

「戻る場所か……、そんなものこの俺に残っているはずがない……。この幻想郷に入ってしまった時点でな…。だが……、最後の相手がお前がふさわしい……。これで、『サイヤ人』として『終われる』ぜ……。」

「……!!!」

ターレスは残った左手を胸の前に置いていた。

 

そして、残った力をその左手に集めると一気にその心臓を貫いた。

 

 

 

 

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