日菜ちゃんを憎んでしまう紗夜さん。

マイルドに書いたつもりですが、感性によってはちょっと読むのきついかもです。やっぱ暗めの話なので。

あと多少不謹慎なのもあるかもしれないので注意です。

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拝啓、十五の私へ。

 この世界は残酷だ。天から恵まれた才能を持つ者は皆、余程のことがない限り、十分に天才ぶりを発揮しその才能に違わぬ成績を収める。

 その天才の中にも種別がある。例えば特殊相対性理論で有名な、かのアルベルト・アインシュタイン氏はどうやら落第生であったらしいし、生涯に膨大な数の発明、技術革新を行ったトーマス・エジソン氏は小学校を中退している。

 ただ何でもできるから天才。とそんな考えを持つ人も少なくはないだろうが、世の中には様々な天才がいるものだ。

 

 そして天才の中のひと握りに、どの分野でも活躍できる万能の天才という者が存在する。非常に有名な絵画『モナ・リザ』や『最後の晩餐』等に加え、単に美術的な絵画でない『ウィトルウィウス的人体図』を描いた天才、レオナルド・ダ・ヴィンチ氏が先に述べた万能の天才に当てはまる。

 レオナルド・ダ・ヴィンチ氏は10を優に超える学問で様々な功績を遺し、加えて先の絵画達を描いた天才中の天才である。

 

 …………そして、恐らくだが。私の妹もこの類の天才に値する存在である。

 

 

 

 しかし。本当に。全く。

 

 それら天才は種別に関係なく、個人個人に合った分野で頂点に位置する存在。軽々なる天才もいれば目まぐるしい努力を重ね続けてその位置に到達する天才もいる。

 

 そう。そういう様々な天才がいる。

 

 ならば、天才でない者は?

 

 才能に恵まれず、持たざる者となった者達はどうすればいい。非才達が血の滲むような努力を持ってして到達するその域に、奴ら……天才達は当然かのように達し、挙句そんな場所は通過点に過ぎないと、我々を置いて届かぬ場所へと飛び立っていく。

 

 それはこの世の理として原初より定められている。そう思わされるほど明確に区分できてしまうものだ、天才と非才というのは。

 

 あまりにも残酷。冷酷。それでいて過酷なこの世界。

 生まれたいと願って生まれた訳ではない。生まれる前に無意識──意識がまだ生まれていない、という意味で──の内に願ったのかもしれないが、少なくとも今の私はそうでないと思っている。

 自らがこの世界に生まれ落ちたいと願って、その願いが叶い誕生した……そんなストーリーは一切信じてはいない。むしろ全くもって不愉快な冗談だ。

 

 生まれて来なければよかったとは思わない。それは必死で私を産んだ母親、それを支え続けた父親、私を育てるのに力を貸してくれた周囲の人々に失礼だ。しかし、もし私が生まれてこなかったら? そういうIF(もしも)くらいは、何度か想像した。

 もし生まれていなければ、こんな気持ちにはならなかった。こんな目には遭わなかった。こんな……こんな絶望(きもち)は、味わわずに済んだ。

 

 誰を憎むだとか、恨むだとかは違うと分かっている。

 

 これは誰のせいでもない。

 

 自分の才能が足りなかっただけ。

 

 

 そんなのは、分かってる。

 

 

 

 

 それでも、私は────

 

 

 

 

『おねーちゃんは、なんで出来ないの?』

 

 

 

 

 ────実の妹に、憎悪を抱いてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 日が昇れば起床。洗顔だの朝食だの、諸々を済ませ学校へ行く。

 

 風紀委員の仕事をこなし、教室へ。

 

 授業を受け、昼になれば昼食を取り余った時間で軽く復習。

 

 また授業を受け、放課後になればRoseliaの練習へ。

 

 練習が終わればそのまま帰宅。夕食や風呂等々済ませることを済ませ、就寝までに予習・復習と軽く自主練。

 

 平日はこんな生活。休日は授業の時間が家庭学習とギターの練習にあてがわれるだけで、あまり変化はない。

 

 今日は休日。しかし最近はスランプ気味で、練習も怠っていなかった私を心配したRoseliaのメンバーから短期間のみ自主練のストップがかかった。

 私自身は大丈夫だと思うのだが……メンバーの気迫に押され、三日程度休息することとなった。

 

 しかし、平日はともかく休日は暇を持て余す……部屋に居ても勉強くらいしかやることはないし、スマートフォンをいじっていても虚しくなるのであまり好きではない。

 

「……えっと、おねーちゃん。入ってもいい?」

「……何か用? あなたに構っていられる時間はないから、何かあるなら手短にして」

「今日時間あれば、映画とか! 行きたいなって……ダメかな?」

 

 日菜……氷川日菜。私の妹であり、私がどうしても憎んでしまうヒト。

 

 彼女の才能はあまりにも大きすぎるもので、どんな分野でも一度の経験でほぼ極めてしまう。勉学然り、スポーツ然り。実際私が中学で始めた部活動に日菜は後から入り、私の努力で身につけた技術のことごとくを超えていった。

 学力に関しても同じで、校内定期試験や全国統一模擬試験。全てにおいてトップの成績を収めている。

 

 才能の違い。たった一つの現実で、明るく誰からも認められる『日』のような存在の日菜と、その妹より優れたもののない『夜』に隠れるような存在の私……そう明確に分かれてしまった。

 

「さっきも言った通り、私にはそんな暇はないわ。他をあたってちょうだい」

「で、でも………………ううん。そっか、ごめんね! じゃーまた今度、暇ができたら行こ!」

 

 暇を持て余して困っていたくせに、相手が日菜だからと突き放す私……そんな私に、日菜は変わらず明るく返答をしその場を去った。

 

 

「…………はぁ」

 

 私が悪い。分かっている。

 今まで才能があるかないか、そしてその分配がどれどけ非情なことかを題材に話してきたが、実の所それがただの自己防衛……自らを擁護しているだけというのは分かっていたのだ。

 何故か? それは当然、他者から見てはただの言い訳に過ぎないし、自分から見てもただのコンプレックスであるし。

 

(分かってる。分かってる。そんなのはとっくのとうに……ただ……それでも私だって、少しくらい人に認められたかった)

「だって……人生をかけた努力が報われないなんて、そんな非情なこと許されないじゃない……許されちゃいけないはずじゃない……!」

 

 自らの一生をかけた努力。だというのに、ほんの少しも報われない。

 そんなことがあってたまるか……いいや、たとえどんな人間でも、こんな状況にあれば多少気は触れるはずだ。

 私は強欲な人間なのだろうか? これは過ぎたる望みだろうか?

 どの分野でもよいので一つ、妹に勝てる何かがほしい。

 

 …………これは、いけないことなのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 とある休日。祝日だのなんだのが重なる時期、旅行に行く団体が多いものだが……

 

「紗夜、せっかくの連休だし……旅行とかどう?」

「家族で外出は久しいしな。ちょっと遠出も悪くないと思うぞ? な?」

 

 まあ、うちの両親も考えることは同じだったようで。

 旅行……か。となると日菜も行くのだろう。しかしそうなれば、普段日菜との会話等の様子を極力親に見せないようにしているので、心配をかけるかもしれない。

 それに日菜と同じ空間に長い間居るのは辛い。それは自らの悩みと長時間相対することと同義で、それは好ましくない。

 

「……今回はいい。バンドの練習もあるし、ライブも近づいてるから」

「そっか。日菜は来るみたいだから、3日くらい1人になっちゃうけど……大丈夫?」

「うん。平気だから、構わないで行ってきて」

「でもな、気をつけるんだぞ。何かあったら父さんと母さんに連絡してくれ」

「ありがと。いざとなったらそうするから、楽しんできて」

 

 ……いつも部屋に一人だし、あまり変わらないが……家に一人というのは新鮮だし悪くないかもしれない。だからこれでいい。

 日菜もいないし、遠慮なく家中を歩けそうだ。

 

「ありがとね、紗夜。それじゃあ明日から行ってくるからね」

「……わかった」

 

 

 

 その日の夜。

 日課であった自主練を取り戻し、多少狂っていた調子も元に戻りつつある。

 

「……」

 

 ひたすら音を奏でる。自らの求めるレベルにはまだまだ達していない。

 

「……っ」

 

 何度やっても満足のいく音は出ない。ひどく正確で、自らの音だと自慢げに語れる。そんな個性を持っていて、なおかつ周りと調和の取れた……そんな音。

 そう、まるでそれは彼女(・・)の──

 

「っ!!」

 

 ガシャンッ!!!

 

 その顔が浮かんだ瞬間、思わずギターを支える手が機能しなくなり……滑り落ちたギターは床へ激突し大きな音を立てた。

 本当に情けないものだ。自らがその音を奏でられないからと、その妬みでここまで不注意になるものか。

 

「おねーちゃん……? 大丈夫?」

 

 その音を聞きつけたのか、日菜が私の部屋を訪れた。しかし私がギターを落とした原因は日菜を思い浮かべたことが原因であり、その頃の私がそれで日菜に心配されることを何も思わないはずはない。

 

「勝手に入らないでって言ってるでしょ……早く出ていって」

「で、でも……演奏中にギター落とすなんて。しかもおねーちゃんがそんな……」

「あなたには関係ないでしょ……!」

「か、関係なくなんて……」

 

 「っ……! いいから早く出ていきなさいっ!!!」

 

 私の強い口調に怯んだのか、日菜は一言「ごめん」と告げて部屋を出ていった。

 いくら日菜に思うことがある私でも、辛くないわけじゃない。しかしそれ以上に、日菜自身に心配されることが情けなく、そんな自分にも腹が立った。

 そしていつも通り……結果的に、私は日菜に当たってしまう。それでまた情けなさが溢れ出してくる……そんな負の連鎖が、私というちっぽけな存在を押しつぶしてくるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。

 日菜にどう接すればいいのか分からなくなっていた私は、見送りをすれば日菜と顔を合わせてしまうので両親を見送ることはできなかった。

 

「…………全く、最低な姉よね」

 

 自己嫌悪に苛まれるのは別にいいが、やることはやらねばならない。

 普段と変わらない朝を過ごした後、自主練としてギターを弾く。やはり前よりも格段と調子を取り戻し、音が弾んでいる……自分で聞くと大して良くも聞こえやしないその音色。

 

 

 

 それが何だか──いつもより(・・・・・)響いている(・・・・・)気がした。

 

 

 

 

 

「紗夜。お疲れ様」

「お疲れ様です、湊さん」

「お疲れ〜! 今日も頑張ったね〜。紗夜、今日なんか調子よかった? 結構音弾んでたじゃん☆」

「そうですか? であれば、それは単純に自らの技術が良い方向に変化している証拠ですね」

 

 Roseliaの練習を終え、メンバーと軽く反省をし始める。今井さんは相変わらずムードメーカーのような存在で、湊さんはいつでも冷静に良い点、悪い点をまとめている。

 普段であれば白金さんと宇田川さんもいるのだが、今日は用事があるとかで彼女らは早めに帰宅したようだった。

 

 練習はそこまで早い時間から始めるものではなく、練習が終わり家に帰ればもう日が沈む直前だ。更にライブなどのイベント帰りであれば、日はとっくに沈みきった時間の帰りとなってしまう。

 しかし有意義な練習であればそれほど時間を使う意味も当然存在するし、ライブも貴重な経験である。

 

 そんなことを考えているうちに湊さん、今井さんと別れ一人帰路につく。今日も普段と大して変わらない一日だったような気もするし、何だか妙な一日(・・・・)だったようにも思える。

 よく分からない気分の悪くなるような感覚。何かが起こる気がした。そもそも、今日自体何かが違った。

 

 何が違ったのか考え続け、家に帰ってからもその違和感は払拭できなかった。

 

「…………なんなのよ、一体」

 

 そんな気分のまま夕食をとる。自分の作った料理は大した完成度ではなく、更に先程の妙な感覚のせいでなんだか異常に(すごく)不味(まず)く感じた。

 

 そして────

 

 

 

「…………電話?」

 

 固定電話のコールがなっている。この家には今私しかいないので、仕方なく受話器を取る。

 

「もしもし」

 

 知らない番号からの着信で、思わず全く抑揚のない声が出る。

 しかし相手方の声にも抑揚はなかった……心做しか、意図的にそんな声を出しているようにも思えた。なにか……緊張しているのに、無理やり(・・・・)冷静を装っているような。

 

「もしもし。氷川さん……氷川紗夜さんでよろしいでしょうか?」

「はい。私ですが……ええと、どなたでしょうか?」

「夜遅くに申し訳ございません。私、旅行代理店の者でございます」

 

 違和感がした。

 

「急な連絡で申し訳ないのですが……紗夜さん、落ち着いて聞いてください」

 

 

 

 今日は、妙な一日だった。

 

 ギターはいつもより全然良い音だった。まるで何か(わだかま)りがなくなったような、そんな音。

 

 

 

「紗夜さんのご家族……お母様、お父様、妹様ですが……先程起こった飛行機の墜落事故で……」

 

 

 

 嫌な予感がした。いいや、嫌な予感がしていた。

 

 何かが違う一日、出かけた家族。弾むギターの音。

 

 

 

 取り返しがつかない何かが。

 

 

 

「生存は、絶望的でございます」

 

 

 

 起こってしまった────

 

 

 

 

 

 

「…………え?」

 

 意味がわからなかった。むしろこの状況で、普段通り物事を判断できる人間はいるのだろうか?

 

 ガタンッ……

 

 受話器が手から滑り落ちる。全身が震え、声が出ない。

 

 旅行代理店の方が何か呼びかけているが……そんなことも全く気にせず、ただただ放心していた。

 

 

 

 …………死んだ? あの、日菜が?

 

 嘘だ。冗談だと。頭がそうやって言い続けている。

 頭が。そう、言い続けているのだ。

 脳が勝手に理想論を唱えているのだ。理想を頭に植え付ける。日菜は生きている。これはタチの悪い冗談で、そんな現実はありえない。

 

 嘘に決まってる。だってあの子の為にまだ何もしてない。いつかこの憎しみが消えた時、姉として何かしてあげたいと。そう思った日があったのに。

 

 嘘だ。絶対に。嘘であって。嘘であってよ……

 

「……そんな、嫌だ……お母さん、お父さん……日菜……!」

 

「そんなの……嘘でしょ……嘘って言ってよ、昔みたいに(・・・・・)……っ!」

 

 

 

 ……ねえ、玄関を開けて……帰ってきて、言ってよ。日菜。

 

 昔みたいに……無邪気な笑顔で────

 

 

 

 

 

 

 

 三日後。

 

 相変わらず私の家族は、遺体すら発見されていない。しかし生存は絶望的……それは変わらず、そろそろ遺品整理をしてもよい頃だと思う。

 

 ……そんなことをする余裕があればよいものだが。

 

 

 

「……日菜」

 

 

 

 妹の名前を呟きながら、ふと気になって彼女の部屋に入る。色々と物は散らかっているが、片付ける所は片付けている。気まぐれなあの子のことだ、したい時に片付けをしていたのだろう。

 

 たとえ主がいなくとも、部屋は日菜のにおいが微かに漂う。日菜のギターは珍しく置き場所を用意したのか、綺麗に立てかけてある。

 参考書は綺麗なままで、意識して綺麗に使っているよりかは、あまり使っていないから綺麗……という理由に見える。

 本棚にはなんだか天文学の本が多いような気はするが、他にはこれといって決まったジャンルはない。

 

 

 

 そう、見渡していると……机の上に何かが置いてあるのに気づいた。

 

「紙? 一体なんの……」

 

 ただの紙かと思えば、どうやら手紙のようだった。あの子にしてはすごく質素で、そのせいか手に取るまで手紙であるとは気づかなかった。

 

「これ……一体誰に」

 

 あの子が旅行前のタイミングで手紙を書くとしたら……

 

「……私、に?」

 

 開いてみると、案の定『おねーちゃんへ』と書いてあった。

 

 

 

 そして私は、決定的な間違い(・・・・・・・)に気づいた。

 

 

 

『おねーちゃんへ』

 

 まず最初に、謝りたいことがあります。

 

 この前おねーちゃんがギターを落としちゃった時、無神経に部屋に入ったりしてごめんなさい。

 

 あたし、どうしてもおねーちゃんが心配で……よっぽど何か嫌なことがあったのかなって思って。

 

 何かあたしに出来ることないかなって思ってたんだけど、やっぱり何も出来なくて。

 

 むしろおねーちゃんからしたら邪魔だっただろうし、ほんとダメダメだよね〜……

 

 だからそれだけは謝っておきたいと思いました。

 

 

 でももし、何かあたしに出来ることがあれば言ってほしい! あたしがおねーちゃんにとって嫌な存在かもしれないのは分かってる……

 

 けど、それでももし何かおねーちゃんの為になることが出来るなら、それは幸せなことだから。

 

 もし何かあったら、遠慮なく言って欲しい!

 

 

 

 だって……

 

 

 

 おねーちゃんが大好きだから!

 

 

 

 あとは、そうだなぁ……あ、前映画行こうって言ったよね? もしよかったら、暇な時行こうね!

 

 それとおねーちゃんのギター、すごくいい音出てる! 前よりおねーちゃんって感じがして……すごくるんっとくる! 私には出せないな、あの音。

 

 あたしはあの音大好きだよ〜。また聞かせて欲しいな、ライブする時は言ってね! 絶対見に行くから!!

 

 

 

 ……えっと、色々書いたけど……あたしはおねーちゃんのこと何も考えずに、酷いこと言ってたかもしれない。

 

 だから、本当に今までのことは謝りたい。それと一緒に、もう一回おねーちゃんとやり直したい。

 

 おねーちゃんのことが大好きだから、そんなおねーちゃんとお話したい。遊びたいし、一緒に過ごしたい。

 

 だから……ごめんなさい。そしてありがとう!

 

 

 

 これからも、ずっと一緒にいてね! おねーちゃん!

 

 

 日菜より

 

 

 

 

 

「……う、あ」

 

 

 

 ああ、私は……私は、なんてこと、を。

 

 

 

「ああ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっ!!!! う、ううっ……あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

 

 今まで私が持っていたコンプレックス……憎しみや恨みなど、どれだけ愚かだったことか。

 日菜はこんなにも私のことを想っていて、こんなにも私のことを考えてくれていた……大好きな姉として、存分に愛してくれていたのに。

 

 そんな日菜を否定して、拒絶して、突き放して、嫌って、恨んで、憎んで妬んで裏切って……!!!!

 

「私……私は……う、あああ……っ!!」

 

 

 

 絶対に許されてはいけないことだった。

 

 才能の違いがなんだっていうのだろうか。

 

 日菜は言ってくれた。私のギターの音が大好きだと、私のギターの音は、自分には出せないと。

 

 上手いか上手くないかじゃない……そんなのは関係なく、人には個性があって、人の分だけ色んな良さがある。

 

 そんな初歩的なことにも気づいていなかった……私は、そんなことにさえ気づいていなかった。

 

 

 

 だからこんな、取り返しのつかない過ちを犯してしまった。

 

 

 

(ごめんなさい……今更謝っても遅いのは分かる。それでも……日菜、私はあなたに謝りたい……)

 

 

 

「日菜……愛してあげられなくて、本当に……本当に、ごめんなさい…………っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『拝啓、十五の私へ。』

 

 後悔が、ある。

 

 どうして、私は……あの子を恨んでしまったのだろう。

 

 どうして、私は……私に素直になれなかったのだろう。

 

 どうして……

 

 

 

 

 

 どうして、私は。世界でたった一人の……大切な妹を、愛してあげられなかったのだろう。

 

 

 

 

 

 十五の私へ。

 

 どうか、あの子を責めないでください。

 

 どうか、自分に素直になってください。

 

 どうか……

 

 

 

 

 

 どうか妹を……日菜を、愛してあげて────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん…………」

 

 なんの変哲もない朝。今日も変わらず学校に行き、普段通りの生活を送って一日を終えるだろう……

 

「……ん、これは……?」

 

 そう思っていた私の目に映っていたのは。

 

 

 

「……手紙?」

 

 

 

 憂い、哀愁。そして……願いのこもった、一通の手紙だった。

 

 

 

 

 

 

 〜fin〜


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