転生したら『やぶれたせかい』の主だった件 作:名無しの転生者
〜WARNING!!〜
そのうち主人公が擬人化します。もしかしたらその他にもどんどん擬人化要素が入ってくるかもしれません。ご注意ください。
「ご……が……ぁ」
ミスった。なんてことをやっちまったんだ、俺は。
俺こと
登山歴10年ちょいだってのに、なんてザマだよオイ。ちなみに登っていたのは日高山脈。北海道の中央南部辺りにある山だ。
うつ伏せになった身体を無理やり転がせば、視界が空を映す。
暗闇の隙間から漏れ出た小さな光が俺を照らしている。
谷底の気温は低いが、俺の周りだけは何故だか暖かい。
(なんか……暖かいな。温泉に浸かってるみたいだ)
そう思ってなけなしの力を振り絞り、自分の手を上に掲げた。
ぐちょり、びちゃり、と音がする。
確かにその手は暖かい液体に濡れていた。もっともそれは源泉かけ流しでもなんでもなく、自分のひしゃげた身体から吹き出た血なのだが。
(……死んだな、これ)
自己の崩壊。現世との別れ。
あまりにも唐突に訪れたソレを前にした俺の頭はなぜだかすこぶる冷静だった。
死ぬ直前というのは狂気が一周回って落ち着いてしまうものなのだろうか。
(……転生とか出来ないんだろうか)
何を考えてるんだよ、と独りツッコミ入れて場にそぐわない笑みを浮かべる。
力無くあげた腕はボトリと落ち、俺はまた空を仰いだ。
どうせそのうち死ぬのだ。最期に妄想したって、あるはずもない次の生に縋ったっていいじゃないか。
せめて死ぬ前くらい、幸せな気分で俺を眠らせてくれ。
(そうだ、俺が登山を始めたのはあるゲームがオリジンだったな)
そう思って俺が夢想するのは『ポケットモンスター プラチナ』というゲームだ。
あのゲームには『テンガンざん』という山が存在する。アレの頂上に達した時の喜びはもうヤバかった。
《確認しました。『
続けて『携帯獣』の獲得により実行可能領域の拡大を確認・・・『
小学五年生の俺の心は現実世界の山を登った時にもそんな気分が味わえるんじゃねぇかと思ってたんだ。
まあ実際俺の性に合っていたから、それからの俺は山登りが趣味になったんだよな。
《確認しました。『ロッククライム』獲得・・・成功しました》
俺は山のテッペンにこだわってた。
けど、綺麗な景色を見るだけなら別に山頂じゃなくたっていいはずなんだ。三分の二くらい登れば大概満足するような写真は撮れる。俺個人としてはね?
《確認しました。『写生』獲得・・・成功しました》
なんで俺がそれにこだわってたかっていうとさっきのソフトの話が起因してくる。
あの時出てきたアイツに俺ぁ惹かれたんだよね。
あの登場シーン、影の中から現実世界に這い出てきたアイツの姿を俺は今でも忘れられない。
伝説のポケモン、ギラティナ────
《確認しました。既得スキルによる実行可能領域拡大により『
付随して権利者の種族は『竜種』に固定されます》
どこかの山の頂きにはそんな神秘的な場所があるんじゃねぇかなって、そんなことをずーっと信じていたんだ。
頂きに行けば会えるんじゃないかなって。
『やぶれたせかい』への穴がポッカリ空いてたり、『やりのはしら』みたいな神殿跡があったりさ。
《確認しました。『やりのはしら』・・・既得スキルによる実行可能領域の拡大・・・『
続けて『やぶれたせかい』への穴・・・『
もちろんそんなことは誰にも言ったことはなかったけどね、恥ずかしすぎるから。
そんな夢も、今日ここでおしまいだ。
ああやばい、さっきまで無駄に意識が明瞭だったくせにだんだんと混濁してきた。目に見える景色が霞んで薄い絵の具で描いた抽象画みたいになってくる。
……本当に逝っちゃうんだな。実感はあまりないというか、現実を受け入れてしまってるっていうか。
《確認しました。意識混濁・・・類似系として『気絶耐性』獲得・・・成功しました》
今のもさっきのも多分走馬灯の耳バージョンとかそんなところだろう。きっとそうだ。
「来世はきっと、いいところに……」
もうこれ以上は声は出ないだろう。俺は目をつむり、薄れゆく意識に抗うことをやめた。
《確認しました。権利者の希望に該当する地域を検索・・・完了しました。権利者の転生位置は『ジュラの大森林』に固定されます》
こうして反道 隆真の人生は早々にその幕を下ろす。
だが彼の想いは異なる世界とこの世界に小さな穴を穿った。
肉眼では見ることも叶わない、極小の次元の亀裂。そこから漏れ出た『魔素』と純然たる想いを乗せた魂。
『魔素』はそのイキモノを生み出す元となり、反道隆真の想いに基づいて、身体を組み上げていく。
天文学的確率で、反道隆真は異なる世界の異なるイキモノとして転生する事となる。
種族内最年少、そしてこの世界で五体目の『竜』という種族に。
「祝え!『やぶれたせかい』の主の力を受け取り、時空を越え歪みと魂をしろしめす狭間の王。
その名も”反骨竜 ギラティナ”! まさに生誕の瞬間である!」