転生したら『やぶれたせかい』の主だった件   作:名無しの転生者

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I'll be back.


あくむのしょうじょ②

「『りゅうのはどう』」

 

 ギラティナは手首を左手で抑えながら右手を突き出して小手調べの一発を放つ。

 あくタイプに対してドラゴンタイプの相性は等倍なので当然ながらまともなダメージが通るとは微塵も思っていない。しかし予想外だったのは相対するダークライの動きの速さだ。

 

「種族値……か」

 

 某かめはめ波のように放たれる蒼と灰の奔流を難なく躱すダークライ。

 揺れるように動いたかと思えば白い軌跡を残しながら『りゅうのはどう』を置き去りにしたりと想像以上にすばしっこい。

 

 ただのひとつもかすりもしないことに痺れを切らしたギラティナは黒い翼を展開しながら次のわざを発動する。

 

 

「『ドラゴンクロー』ッ!」

 

 

 フワリと空中で様子見をしているダークライに向かって黒みがかったエネルギーで形成された巨大な爪を振りかざす。

 

「……遅い」

 

 ダークライはギラティナのドラゴンクローを余裕をもって躱しながら着地。その後の追撃はドス黒い瘴気を纏った『シャドークロー』で応戦する。

 タイプ不一致のはずだがどこで経験を積んできたのか、妙に巧みな爪使いに阻まれてギラティナは攻撃するチャンスが見いだせない。

 

 ──ならば搦手だ。あいにくだがこれは試合ではない。

 

 

「『シャドーダイブ』」

 

 

 シャドークローの横薙ぎをバック宙で躱して着地と同時に『やぶれたせかい』へのゲートへ飛び込み戦線離脱。

 

 突如敵影が消えたことで警戒を強めたダークライ。しかしそんな彼女を嘲笑うかのように影の中からぬるりとギラティナが彼女に迫る。

 

 

 その状況にまるで彼女に気づいていないような自然な素ぶりでダークライはギラティナの方に顔を向けた。

 

 しかしその顔は先ほどの素振りとは裏腹にまるでイタズラが成功したような子どもの笑みだった。

 

 いつの間にやら彼女の手から『シャドークロー』は消え去っており、その代わりにの『シャドークロー』とは比べ物にならないレベルの何かを手に纏わせていた。

 

 

「──それは反則でしょ」

 

 

 ギラティナは否が応でもその『力』の正体を見破ってしまう。

 

 精神(こころ)は覚えていない。

 しかしこの『身体』──ギラティナのボディがその『力』を憶えている。

 

 

 幻視だろうか。否、それはありえない。

 

 同じ存在から産み落とされた力を、この眼が見紛うはずは万に一つもありえないのだから。

 

 

「『あくうせつだん』」

 

 

 

 張り付けた微笑を一層深くして、ダークライはその手を振り抜いた──

 

 

 ──この程度だったか

 

 クレーターのように陥没した、というには些か断面が綺麗すぎるか。プリンをスプーンですくったような半球状の穴を前にして悪夢の少女は一つため息をついた。

 

 

 

 彼女が目覚めた場所は自分と自然しかないような殺風景な島だった。

 

 目覚めから数日、何故自分がここにいるのかも分からず独りウロウロと島を巡る。その時不意に気配を感じた。

 

 ここではない、遠いどこか。その気配はぼんやりとしか認識できないくせにすぐに失せてしまった。

 

 何故かは分からない、だけどそこに何かがある。私がいる理由がある気がする。そんな矮小だが強い思いが彼女の手を引き、島から外へと連れ出した。

 

 

 早速彼女は行動を開始した。

 彼女にとっては幸いに、自分の力の使い方をしっかりと分かっていた。

 

 もちろん誰かに教えられたわけではない。彼女(ギラティナ)と同じく身体が憶えていたということだ。生存本能と言い換えてもいいかもしれない。

 

 

 ダークライは決まって月の無い夜に訪れた街の人々を眠らせては『ゆめくい』で他人の記憶を覗き見して情報を収集していた。

 

 その時に『魔物の国が世界で初めて成立した』という興味深い情報を入手する。もしかしたら……もしかするのかもしれない。

 

 ダークライは『ゆめくい』を続けながら魔物の国へと進軍。あともう少しというところで彼女は邪魔をくらった。

 何か同じ匂いがするような相手だったが恐らく自分とは関係ないだろうと考え殲滅した。

 

 さぁ、やっと魔物の国に行ける。そこに私の求める何かがあるはずだ。

 そうして歩を進めようとした彼女の足にガシリと硬質な何かの感触がした。

 

 フイと振り向くとそこにはボロボロになったギラティナの姿があった。その腕には炎を象った細長い布が巻かれていた。ダークライは舌打ちをしながらその手に影の爪を纏わせた。

 

 

 

 

 

 ⚫

 

 

 

 

 き、きあいのハチマキなかったら即死だったぜ……。

 

 なんか予感はしてたんだ。こう、死にかける予感が。

 

 

 とりあえずHP1なのでベスター謹製の『まんたんのくすり』を喉に流し込む。身体に刻まれた痛々しい傷跡はビデオの逆再生のように巻きもどり、HPは全快した。

 

 ダークライちゃんは驚いているのか苛立っているのか分からない表情を浮かべながら『シャドークロー』を発動した。

 

 

「どうして、邪魔するの?」

 

「どうしてって……このままだと君が私たちの生活圏に来てしまうからだ。君は今まで沢山の人々を眠らせながらこちらに向かってきただろう? 私たちが眠らされるとちょっと困っちゃうんだよね」

 

 カゴのみジュースかベスター謹製濃縮ねむけざましを常時使っていれば多大なる精神的疲労と引き換えにダークホールをぶつけられても目を開けていることは出来るだろうが……さすがにみんなそんなことしたくないだろうしなぁ。

 

「私、は知りたいだけ」

 

「私がなんでいるのか、なぜ生まれてきたのか。その理由を、知りたい。だから、ここに来た」

 

 敵意のこもった瞳から一転、ダークライちゃんの目は寂しさに怯える子どものような感情を見せた。そして私はその言葉に妙な引っ掛かりを覚える。

 

(生まれてきた……。ポケモンって私がここに転生してくるまでこの世界で生まれたことはないんだよな。じゃあもしかしてダークライちゃんが生まれたのって……)

 

 

「……私のせいだ」

 

 

 ユニークスキル︰携帯獣の内部スキル︰ステータス閲覧、の説明欄。

 

『実際行った場所のMAPの表示が出来てどこにどんなポケモンが分布しているか分かる』

 

 今確認してみたらそう記載があった。明確には書かれていないが、この世界にポケモンを生み出したのは私だ。テンガンざんの内部かその周辺だけかと思ったが、どうやらその範囲は私が思うよりも広域に広がっていたらしい。

 

 

「君、朗報と悲報があるがどっちから聞きたい?」

 

「……朗報」

 

「朗報は君が求めている答えを私が持っている事だ」

 

「本当!?」

 

 おっと、ダークライちゃんの方が背がでかいからいきなり詰め寄られてちょっとびっくりしちゃったぜ。

 

「まぁ最後まで聞いてくれ。次に悲報だ。君をこの世界に生み出したのは……」

 

 

 ────私だ

 

 

 




どうも、受験戦争に飲み込まれて疲れからかガチで転生してしまいそうな名無しの転生者です。ノイローゼなりそう。

超絶遅くなったのは前述の通り受験のためです。

センター試験は今回でラストになります。ここで合格しないと執筆の暇どころか人生おじゃんになる可能性もなくはない状況に陥ってしまいます。

上手くいけば春先頃――五月辺りにまた更新出来ると思います。

今回は死にかけながら書きましたので内容の粗は大量にあるかと思いますが平にご容赦くださいますようよろしくお願いします。

とりあえずセンターと二次試験を突破できれば休める時間を確保できると思います。それまではどうか更新できないことを許してください。

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