転生したら『やぶれたせかい』の主だった件 作:名無しの転生者
『おれはみんながお気に入りしてくれて「ハッピーうれピーよろぴくねー!」って気分でおれのお気に入り欄を見ていたと思ったらいつのまにか次の話が出来上がっていた』
な…何を言っているのかわからねーと思うが
おれも何をしていたのかわからなかった…
頭がどうにかなりそうだった…
予約投稿だとか書き溜めを出しただとか
そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…
(まぁつまるところみんなのお気に入りが嬉しくて筆が動きまくったんですね)
03/18︰一部誤字、表現を修正。誤字報告ありがとうございます。
「ふんふんふっふっふっふ〜ん」
どうも、ギラティナだ。
現在私はテンガンざんの頂上にいる。
ここにやりのはしらを設置するのはある意味必然ではないだろうか、いやそうに違いない。
ここ以外にやりのはしら置いたってなぁ……何というかしまらなさそうだし。やっぱり置くなら山の上!そしてテンガンざんの頂上だよね!!
「ギラティナ様〜!オボンの実が芽を出し始めましたぞ〜!」
そんな感慨に耽っていた私の元にご丁寧にもテンガンざんのダンジョンを正規ルートで辿ってやりのはしらに入ってきたのは
なんでも親父に勘当されたらしく、それでリムルの配下に加わったとのこと。
彼をここに入る許可をしたのには理由がある。それは『きのみ』栽培の仕事を任せたからだ。
その前は先行隊としてテンガンざんの内部を配下と共に冒険してもらっていたが、途中で「紅白の球を見つけました!」と空を飛んで来た時は驚いたものだ。アンタらこの高度まで飛べるの!?登山するのにひでんわざいらないの!!?
そして紅白の球……モンスターボールもどきをテレキネシスを使って慎重に開けた。すると中に入っていたのは『オボンの実』だったのだ。
ヒポクテ草には遠く及ばないが回復効果のあるこの実や他の状態異常を治す果実も発見されたのでリムルに相談。
とりあえずは有事の際にも使うかもしれないのと、ヒポクテ草も生産体制が整うまでは無限に生え続けるわけでは無いのでコストカットに一役買うだろうと見込んで栽培を開始した。
ガビルは並行して封印の洞窟でのヒポクテ草の栽培も兼任している(リムル曰くアイツどこか抜けてるんだよなぁ、とのこと。この前もヒポクテ草と雑草を取り違えてスライムタックルを食らったらしい)。
一方通行なのがネックだが、やりのはしらから現在ガビルらが住処兼仕事場としている封印の洞窟内には一瞬で送り返せるのでそこまでの重労働では無いはずだ。
ちなみに栽培場所はテンガンざんの山肌のうち、ポケモンが出現しそうな草むらのあるちょっとした平地を見つけたためにそこで始めてもらった。
しかし数日様子を見ていたが、どうにも彼らの動きが鈍い。
どうかしたのか、と聞けば元々我々は湖近辺に住んでいたのでこの寒さは辛いものがありますな、とのことだそうだ。
そういえばあられが降ってもおかしくない雪山で栽培出来るとか私は何を考えていたのだろうか。
申し訳ないとガビルらに謝り、「にほんばれ」を使ってみた。
結果から言おう。生育問題もガビルらの体調もどちらも解決した。
この世界では「にほんばれ」は「5ターンのあいだひざしがつよいじょうたいにする」ではなく、「指定した区域を晴れの状態にする」といった効果のようだ。
「あまごい」もしてやろうかと思ったが「後は我々が成果をご覧に入れましょう!」とのことだったので任せた。どうやら雪解け水を利用して効率的に水やりをしている模様。うむ、感心感心。
さて話を戻そう。ここまでやったが結局植えて2週間は芽が出なかったので心配だったのだ。
「……そうか、よくやったガビル!引き続き頼むぞ!」
「お任せ下さい!あ、ところでそろそろ封印の洞窟に戻りたいのですが……」
ガビルが申し訳なさそうに言う。
毎日送っている気がするのだが……あ、お任せ下さいと言った手前ということかな?そこまで謙虚になる必要はないと思うが……。
そういえば労働を任せているにも関わらず、私は彼らを労ることをしていなかったな。
う〜む……おっ、そうだ!
「ガビル、そしてお前達。乗れ」
「……は?今なんと?」
私はガビルらに背を向けて、尻尾で背中をつついた。
「乗れ、と言っているんだ。私の頼みが聞けないのではなかろう?」
「アッハイ!乗らせて頂きますとも!ええ是非!」
ガビルら数人(ヒポクテ草よりも規模が少ないのと、それ程手間もかからないので2桁にも満たない人数で『きのみ』の生育現場は稼働中なのだ)を背中に乗せて重力を感じさせない動作でフワリと飛び立つ。
「いつも世話になっている礼だ。ちょっとした遊覧飛行と洒落こもうか」
「「「「は、ハイ〜ッ!!!」」」」
平面的な翼を羽ばたかせてゆっくりと空を回遊する。ガビルらの方を見れば目を輝かせて眼下に広がる景色を眺めていた。
何時も見ているだろうに、と思ったが自分で飛んで見る景色と何かに乗って見る景色とでは感じるものが違うのだろう。
……もう少しサービスしてやるか。
「出血大サービスだ。お前達をこれから雲の上に連れて行ってやろう」
「はぁ……ってええぇ!!?」
でも「かえんほうしゃ」で凍った箇所を溶かすみたいな芸当は竜人族だし出来そうな気もするけど。
まあともかく今の反応からして行ったことはないようだな!
「しっかり掴まってろよ!いくぞっ!」
テレキネシスでガビル達を自分の身体にガッチリと固定。そのまま一気に天に向かって加速する。
数分もすれば既に雲は眼下にあり、お天道様がこちらを覗いている。
「気分はどうだ?」
「さ、さいこうれすぅ……」
後ろを見ればガビル以外は気を失っていた。なんという事だ……まさか自分で飛ぶのはいいけど他人で飛ぶのはちょっと無理ですとかそういうアレだったのか?
「酔いが覚めるか目覚めるかまではここをブラブラしていよう。なあに、まだ時間は大丈夫だ。『やぶれたせかい』を通じていけば直ぐに着くさ」
はっはっは、と笑って私は回遊を始める。
ガビルに起こされた竜人族達は広がる雲海を眺めて思い思いの感想を口にしていた。
驚嘆や感動が多くこちらも連れてきたか甲斐が有ったというものだ。
しばらく回遊した後、そろそろ封印の洞窟に彼らを送り届けようかと思った時にリムルから「思念伝達」で連絡が入った。
『ギラティナ!聞こえるか?今どこにいる?』
「今は今日のシフトで働いていた
随分と声色が焦っていた。
何か緊急事態でも起こったのだろう。
「私はすぐそちらへ向かえばいいか?」
『出来るだけ早く頼む。なんで回遊してたかは後で聞かせて貰うからな。あ、場所分かるか?』
「思念伝達をこのまま繋げていてくれれば行けるぞ」
『了解!』
「ガビル、聞いていたな?」
「もちろんですとも!リムル様の一大事、我輩達も同行させて頂きましょう!」
さっきよりも手荒くなるかもしれないが……今は何があったかは分からないが緊急事態だ!四の五の言っていられない。
「
は?と
すごく急いだので後ろを気にする余裕はあまり無かった。
この後ガビルらが気を失っていたのは言うまでもない。
(気絶から起きたとしても直ぐに万全な状態になれるとは限らないので、ガビルたちはやぶれたせかいの中で休憩を取らせました)
「……お久しぶりでございます」
カイジンが片膝と片手を地につけて頭を垂れた。忍者が指令を待つ姿勢と言えば分かりやすいかもしれない。
「ガゼル王よ」
街のはずれにその場所には似合わない程のフルプレートの騎士達が集結している。
カイジンは
大臣のベスターの罠にハメられて有罪寸前だった俺達(カイジンらドワーフ鍛治職人達も被告人だった)はこの王様の公明正大な判決のおかげで事なきを得たわけなんだが……今日はいったいどんなご要件でここに来たのだろうか?
「王よ、本日は何か御用があるのでしょうか」
カイジンが俺の気持ちを代弁するように話してくれた。すると王は軽めに伸びをして悠然と話し始める。
「なに、大した用ではない。そこなスライムの本性を俺自ら見極めてやろうと思ってな」
今日は王ではなく一私人として来た、と周りを見回しながら言った。
まぁ、そりゃあ物々しくなっちゃうよね。普通王様はそんな気軽に国外に出歩かないもんね。
でもちょっとマズいかも?
俺は貶されてるとは思ってないが(煽られてるとは思っているけど)鬼人たちが見るからに爆発寸前なのだ。王よ、わざとやっているのではないでしょうね?
後ソウエイが地味に怖い。口角が三日月型に歪んでるんだもん!怒りを通り越して別な領域にいっちゃいそうだし……。
「……あー、今は裁判してるわけじゃないしさ。こっちから話しかけてもいいんだよな?」
「もちろんだ」
おっと、ガゼル王のお付きの人が抜刀しそうになったな。止めた人GJ!
下がっておれ、とガゼル王が低く口にするとその二人はすごすごと下がって行った。
どこか不服そうな顔をしているが……まぁそこは許してくれ。
「まず俺から名乗ろう。名はリムルという」
徐々に人型に身体を変化させながらガゼル王をしっかりと見つめた。多分ここで目を逸らしたら負けな気がするのだ。
「スライムなのはビンゴだけど、だからって侮るのはやめてもらおうか」
完全に人化形態となり、シズさんの仮面をゆっくりと外す。
「これでも一応はジュラの森大同盟の盟主なんでな」
ガゼル王は眉間ひとつ動かさない。
スキの一つでも見せてくれりゃあ良かったが、そう上手くはいかないか。アッチの準備が整ってるといいんだけど。
「これが本性って訳でもないんだが、こっちの方が話しやすいだろ?だからそんなに警戒しないで欲しいんだけどな」
「それを判断するのは俺だ」
ぬぅ、確かにそうだな。
でもさガゼル王、なんで剣を抜いてるのかな?そして切っ先を何故こっちに向けてるのかな……?
「言葉は不要。貴様を見極めるにはこの剣一本で十分だ」
「この森の盟主などという法螺吹きにはキツイお灸を据えねばならんようだしな」
王はニタリと人の悪い笑みを浮かべた。ちょっと後ろの鬼人たちが限界の限界を超えそうなのでそろそろ煽るのは勘弁してもらいたい。
────でも、そろそろだな。
そんなことを言外に思うとひらりと俺の目の前で葉っぱが舞った。
その葉っぱの出現にタイミングを合わせるかのように、またあの時を焼き直すように、地面に黒い波紋が浮かび始める。
波紋はひとしきり浮かび上がった後、やがて雨上がりの水たまりのように鳴りをひそめる。
俺は知っている。これはヤツが出てくる合図なのだ。
突如虫に食われたような平面的な黒い翼が、虚空の中からザバリと顔を出した。
両翼端についた真紅の鉤爪が地面に勢いよく突き刺さると、ゆっくりとその主を現し世へと持ち上げる。
深淵の陰に濡れたその体は神々しささえ感じられよう。
ガゼル王や
もはや、俺の口角が良い方向に曲がることは誰にも止められやしなかった。
ヤツが紅い眼光をギラつかせれば陰は溶けるように地面に落ちる。もちろんその跡はどこにも残らない。
「我らが森の盟主に対して傲岸不遜ですよ。ドワーフ王」
「そうだな、些か傍若無人が過ぎるのではないか?まさかとは思うがリムルの
「よう、トレイニーさん。そして、ギラティナ」
(タイミングバッチリでした?)
(グッチョブだぜギラティナ!それに、トレイニーさんも!)
(私はギラティナ様にいいところを根こそぎ持っていかれたような気がしますが……)
実は
元々は俺が大森林の盟主である証拠として二人にやって来てもらおうとしていたのだが、ガゼル王が中々に俺を煽ってきたので意趣返しとして二人に絶好のタイミングで出てきてもらおうという作戦に変更したのだ。
効果は上々……だけど何か虎の威を借る狐のような気分だ。
「ところでさ、ガゼル王」
────どこの誰が法螺吹きだって?
……俺はこの時前・今生含めても過去最高の悪い顔をしていた気がする。
03/18時点ではラムパルドが人気ですね。
03/21には締め切らせていただきますのでご注意を!
03/19現在ではレアコイルが人気ですねぇ!