転生したら『やぶれたせかい』の主だった件 作:名無しの転生者
リムルと ギラティナは びみょうな ひょうじょうを した !▼
ギラティナくんの捏造来歴が明らかとなった次の日。
リムルとガゼル王とギラティナは夜の食卓を囲んで(ギラティナは中に入り切らないので縁側でオボンのみを食べています)これからに向けた話し合いをしていた。
「リムル、そしてギラティナよ。俺と盟約を組む気はないか?」
「……待て、何言ってんだコイツみたいな顔をするんじゃない。ギラティナ、どうやったらそんな威厳のない顔になれるのだ?」
「コツを教えるか?まず顎あたりの関節を外してだな……」
「いや、いい。聞いた俺が馬鹿だった」
「この街は素晴らしい造りをしていた。立地的にもいずれ交易路の中心地となるだろう」
ガゼル王は酒をあおり、口を拭う。
「後ろ盾となる国があれば便利だと思うのだがな?それとギラティナ、あの山の鉱物を少しばかり拝借させてもらった。時空石と言うそうだな」
いつの間に!?
口には出さないが言外に驚いたギラティナの顔をガゼル王はくっくと笑った。
「鉱物もそうだがあの山には何か俺の得体の知れない『未知』が眠っているような気がする。新手の魔物にしてもだ。
まだ新手の魔物による直接的な被害は出ていないが、いずれ我が国に影響を及ぼす可能性は捨てきれん。今のうちに予防線を張っておきたくてな」
これを聞いたギラティナとリムルは顔を見合わせる。
「俺たち騙されたりしてないよな?」
「いや、聡明なガゼル王のことだ。何か策略を巡らしているに違いない」
「聞こえてるぞ貴様ら」
ため息を一つ吐き、額に手を当てるガゼル王。
その姿は手のかかる子どもを預かった叔父さんの姿を彷彿とさせる。
「恩師やドライアドの前でその主を謀ろうとはせん。そして竜種が目の前にいるのなら尚の事。
これは当然だが善意だけの言葉ではない。双方に利益のある話だ」
「俺はともかくギラティナはどうなんだ?ドワーフ達が竜種に利益を提供出来るとは思えないんだが」
リムルの指摘は尤もだ。
リムルの街は未だ後ろ盾もない上、本人達は分かっていないが数人の魔王に既に目をつけられている。
国として成立する以上、ここは安全な場所だと保証する国がどこかに存在しなくてはならない。
しかしギラティナはどうだ。彼の(一応の)現領地は『テンガンざん』だけである。
さすがに人が生活出来ないような場所を国と呼称するのは難しい。
そもそもこの世界の覇者と言っても過言ではない竜種が存在しているのに後ろ盾もクソもないのだから。
「ふっふっふっ。俺は聡明なドワーフたちの王であるぞ。秘策の一つや二つ、考えているさ。
時にギラティナよ、貴殿の山から新種の魔物が出現する、そう言っていったな?」
「確かに言ったが、それが?」
「そのうちの一体をこちらで捕獲することに成功したぞ」
「……ほぉ」
あまり驚かないのだな、とガゼル王は不服そうな顔をするが彼は内心めちゃくちゃ驚いていた。
(最初に『ポケモンGETだぜ!』ってするのは俺だと思ってたのにいぃぃいぃぃぃ!!!!)
溢れる心の波を無理やり押しつぶしてポーカーフェイスを保つ。
モンスターボールでGETしてないからこれはノーカンだろうそうに違いない、そう自分を慰める度に何故だか惨めな気持ちになっていく。
「その魔物はそちらに返そう。その代わりに拝借させてもらった時空石を頂きたい」
「……これからも捜索範囲を広げて続けてもらえるか?もちろん、報酬は用意しよう。時空石以外にも色々あるからな」
「無論だ、引き受けさせてもらおうか」
その後リムルは『国家の危機に際しての相互協力』と『相互技術提供の確約』を条件に盟約を結ぶ。
一方のギラティナはリムルと同じく『国家の危機に際しての相互協力』と『新種の魔物の受け渡しとそれに応じた物資の見返り』を条件に盟約を結ぶこととした。
本来ならば数十年、あるいはそれ以上の月日がかかったことだろう。
魔物の街が人間や亜人に受け入れられるのは本来ならばもっとずっと遠いはずだった。
リムルはそう思い酒を口にしようとする。
「で、お前たちの国の名はなんと言うのだ?」
「……え?」
リムルはバッと忠臣たちを見るも皆一様に首を横に振る。ならばとギラティナを見ればボロボロの羽を「ナイナイ」と動かしていた。
「私が考えてはダメだろう。一応私の現領地は『テンガンざん』、あそこ一つなのだからな」
「ほう?あの山は『テンガンざん』と言うのだな?おいリムルよ、ギラティナはしっかりと山の名前を付けておるというのにお前と言うやつは!」
「いやいやいや。まだ国という段階でもなかったし、俺は盟主であって国主ではないからなぁ」
頭をかきながらどうしようかと口を尖らせていればリムルの視線の端にシオンが映る。
あろうことか彼女は肌身離さず持っている大太刀を抜刀しようとしているではないか!
「リムル様を王と認めぬものがいるならばこのシオンが……」
「コラコラコラ!物騒だからしまいなさい」
しゅんとしたシオンをリムルはヨシヨシと撫でる。
「俺のために怒ってくれたんだよな。ありがとう」
「うぅ〜!リムルさまぁ〜!!」
泣きついたシオンをしばらくそのままにさせているとベニマルが引っ付いたシオンを剥がして畳の上に転がす。
どうやら寝てしまっていたらしい。
「力ある者に従うのは魔物としての本能だ。だけど少なくとも俺たちは、それだけでリムル様の配下になったわけじゃない」
そうベニマルが力強く言えばその場にいたリグルドやゲルド、ガビルやランガは先ほどとは違って縦に一度首を振る。
「おいおい、あんまり俺を持ち上げるなよ。ここには森の管理者や俺より強い竜種だってい──」
「いいと思いますよ」
「いいと思うぞ」
『リムル陛下』
ギラティナとトレイニーさんは顔を見合わせ、クスリと笑う。対してリムルは死んだ魚のような目を二人へ向けた。
「どうやらここの王は貴様以外にはおらんようだな。まぁ、諦めろ」
ポンと頭におかれたガゼル王の手をリムルは鬱陶しそうに払い除ける。ガゼル王はそれに嫌な顔一つせず「弟弟子の反抗期だな」と豪快に笑っていた。
リムルは今日はもう何も考えないようにしよう、そう思った。
状況は好転しない。そんなことは当の本人も分かっている。
認識するのが辛いだけなのだから。
「では これよりドワルゴンとジュラ・テンペスト連邦国における協定の証として両国代表による調印を行います」
机を挟んで連邦国側にリムル、その後ろに侍大将のベニマルとゴブリンキングのリグルド。ドワルゴン側にはガゼル王、その後ろに天翔騎士団団長のドルフ、軍部最高司令官のバーンが並ぶ。
机には魔法陣が描かれており、二つの署名書がそれぞれの国側に置かれていて、それを見届けるようにして巫女姫のシュナ、宮廷魔術師のジェーンが立つ。
ちなみにギラティナの位置はシュナとジェーンの後ろだ。なんでも竜種が与するとめんどくさいことになる事情があるそうだ。
ギラティナ当人もめんどくさいことは嫌いなのでこれを了承する。
この盟約は魔法により保証され、世に公開される。
双方の調印が終わると署名書から光が立ち上り、遥か上空で四方へ弾けた。
これでリムルたちの国の名が初めて世に知られることになろう。
「拡散されるネットみたいだなぁ」
ギラティナは目の前で行われている前代未聞のことに動じることも無く、飛び散った光への感想を述べた。
まほうの ちからって すげー!▼
この署名が終わった後、ガゼル王は一旦国に帰った。
なんでも
私が『やぶれたせかい』で寝ていた頃に起こった幕間だそうだ。
ドワーフの朝は早いのだろうか。
今も人間だった頃と同じように起きているはずなのだが……。
「あっ、いっしょにドワルゴン行けばよかった……」
「ほれ、コイツだ」
次の日、朝一番にガゼル王はこちらにやってきた。
何故朝一なのか?それは私が受け取り場所を『テンガンざん』に指定したからである。ちなみに集合は山の麓にした。さすがに『やりのはしら』は高度的にもペガサスには辛いだろう。
荷運び用のペガサスに括りつけられただいたい1m程のカゴが地面に降ろされてパカリと空けられた。
中を覗けばそこには三つの鈍色の球体、六つの磁石、そして九つのネジ。球体の真ん中にある目はグルグルと回転している。
紅白のあのボールに入っているわけでもなし、初めての体験に目を回してしまったのだろう。
しかし何故こいつが……?テンガンざんには出現はしなかったと思うのだが。
「むぅ、これはレアコイルか」
「知っているのかギラティナ?」
「見れば名前くらいならば分かる。ああ、言っておくがネームドという訳では無い。種族名だ。ともかくこいつは頂くぞ?」
「そのような約束だったからな。次からはどうすればいい?」
あー、それは考えてなかった。……当分は私が直で受け取ることにしようか。
「ゲルドたちに麓に急ピッチで小屋を作ってもらうことにするつもりだ。それまでは麓に来れば直ぐに私が受け取ろう」
「相分かった。では次はリムルのところにお届けものがあるのでな!では、また会おう!」
ガゼル王たちは去っていった。
……このレアコイルは随分と消耗しているみたいだな。
私は『やぶれたせかい』の一角に溜めてあったラムのみ一個とオボンのみを二個取り出す。
とりあえずラムのみを食べさせて状態異常:混乱 を回復させた。
どこに口があるのか分からないのにきのみが減っていく様はすごい怖い。
削られていく、というのが見たままの表現に近いだろう。
オボンのみを渡せばすごい勢いで噛み付……いやホントにどこに口あるんだお前?噛み付いてるっていう形容はおかしいだろう。
噛み口はクレーターのようにキレイなものだった。
《条件の達成を確認。ユニークスキル:携帯獣の権能の一部を解放します》
この世界に来てから聞いていなかった天の声が聞こえた。さすがにあれだけ聞けばこの無機質な声に驚くことはしない。
さて、天の声によれば権能の一部が解放されたらしい。リムルの大賢者は『何かに出会うことが必要です』と言っていたらしいが……ポケモンに出会うことが必須条件だったのかもな。
私は『ステータス閲覧』を起動して開放された権能が何なのかを調べる。
(おっ、NEW!って表示があるな。どれどれ……)
NEW!『ポケモン図鑑』
ポケモンと出会うことで本機能は解放されます。
出会ったポケモンの詳細情報を知ることが出来る。
保管してある道具やきのみの一括管理、捕まえたポケモンに技を覚えさせることも可能。
実際行った場所のMAPの表示が出来てどこにどんなポケモンが分布しているか分かる。
「へー、中々いいな。さすがに雑な技構成だと、自衛の術としてはまずいかもしれないからなぁ」
この時ギラティナは気づいていなかった。
スキルの説明欄に『どこにどんなポケモンが分布しているか分かる』という文字列に秘められた真意を……。
────とある時刻、とある島。
バチャリ。
その影は水たまりに足を踏み入れる。
何故自分はここにいるのだろう。そんな疑問を問いかけるもここには誰もいないようだ。自分と自然しかない、殺風景な島。
白髪の少女はしばらくその広めの水たまりを見つめたあと、ゆっくりとその蒼く澄んだ瞳で空を見上げる。
ならば誰かに聞けばいいだろう。
幸いなのか、どうなのか。彼女にはその手段がある。
いつになったら分かるかな、と口を三日月にして微笑んだ。
しかし表情とは裏腹にその空に月は無く、冷え冷えとした星だけが瞬いていた。
はいどうも、名無しの転生者です。
現在首位を独走中のシンオウ・ホウエン地方ですが見た感じ他の地方は突破できなさそうなので、二日後にアンケートは撤去させていただきます。
また別のアンケートを出すのでそれまでもう少しお待ちくださいな。
次回のキャプション芸は頑張ってギアッチョのアレを書きたいなと思ってます。
ちなみに私は昼間に大まかなプロットを考えて、夜十時から二時頃にかけて全力で書き上げるような毎日を送っております。
え?昨日休んでなかったかって?
花粉症で体調崩してしまって……申し訳ない。
カリュブディスまで書いたら一旦計画の見直しと休憩を挟もうかな……。