ハイスクールD×D 学級崩壊のデビルマン   作:赤土

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思ったより時間かかってしまいました。
近々、アンケートを採った部分に関しても公開したいと思います。


Will21. 自由行動へ

ホテル・プレアデス。

珠閒瑠(すまる)鳴海(なるみ)区にあるこの高級ホテル。

到底、たかだか学生の修学旅行に相当するイベントで部屋を借りれるほど安い宿ではない。

 

なんでも、一連の事件でビジネス客も富裕層もこぞってキャンセルしたため

予約やらなんやら宙ぶらりん、そこを駒王学園が利用したってのが

今回俺達がこんなところに寝泊まりできる真相……らしい。

 

ただ、一部フロアは避難場所としても公開されているらしく

所謂高級ホテルの客、ってのはあまり見かけないけれど。

 

そこに出入りしている人から聞いたが、10年前珠閒瑠市は町中に殺人鬼が溢れかえったり

私設軍が闊歩するような緊急事態になったりした経験があるからか

今回のような事態でも早めに避難しようとする人がいるみたいだ。

……こっちには今のところフューラーの軍隊はそれほど来てないみたいだし。

 

それに中に入っている店にしたってそうだ。

ほとんど大人向けの高級店ばかりで、教師連中これが目当てでここにしたんじゃなかろうな?

と言うのはもっぱらの噂だ。

 

「……心外ですねぇ宮本君。確かにエボニーにせよクレール・ド・リュンヌにせよ

 こういう時でもない限りめったに来られない場所ではありますが。

 少なくとも私は、そんな俗な理由で来たりしませんよ」

 

声に出ていたか、薮田(やぶた)先生が俺の心を見透かしたようなツッコミを入れてくる。

そりゃまあ、駒王学園の行事なんだからこの人がいてもおかしくはないけど。

でも正体考えるとなあ。こっちの神の方がよほど俗じゃないかって気はする。

 

「……とはいえ、俗な方が神というものも信仰を集めやすいのかもしれませんがね。

 ですが今この時代に神を望むのであれば、それは親しみやすい俗的なものではなく

 都合のいい英雄――機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)、のようなものでしょうね。

 私はそんなものになるのは真っ平御免ですし他人にもお勧めしません。

 宮本君も、そこは気を付けるべきですよ。

 人助けは結構ですが、いいように利用されては人のためにはなりませんからね。

 徒に自分を傷つけるだけですよ」

 

妙に説得力のある薮田先生の話に俺は実感がわかなかったのか、生返事を返してしまう。

その程度で気を悪くする人(神だけど)じゃないのは知っているつもりだが

やはり教師相手にとる態度ではないので、慌てて取り繕った。

 

「フッ……その程度で眉を顰めたりしませんよ。

 では私も明日以降の準備がありますのでこれにて。

 

 ……そうだ、宮本君。色々と大変なことを押し付けられてしまっているようですが

 その中でも、須丸清蔵(すまるせいぞう)はもとより布袋芙(ほていふ)先生にも注意した方がいいですよ。

 

 ――ニャルラトホテプ(這い寄る混沌)。宇宙の外から来たともいわれるこの神の名を

 よく覚えておいてください。

 超特捜課を覆わんとしている黒雲も、かの神から因果が紡がれている……とも言えますからね。

 私が知り得たのは、今はまだここまでです。いいですか、忠告はしましたからね。

 私がここまで話す理由、理解していただけますね? では失礼しますよ」

 

言うだけ言って、薮田先生は教師の集まりがあるのかどこかに行ってしまった。

周防(すおう)巡査も言っていた、ニャルラトホテプ。

同じ名前が出たという事は、薮田先生もかなり近い結論にたどり着いたって事か?

 

しかし、薮田先生がここまで俺に話す理由……なんだ?

俺の神器(セイクリッド・ギア)の都合上、わざわざ言わなくともいいのは知ってるはずだが……

 

『相変わらず肝心なところをはぐらかす神だな』

 

『神なんざそんなもんだ。だが、調べる手間は省けたんじゃないか?』

 

調べる……手間……調べる……

ま、まさか!

 

(なあフリッケン、アモン。以前俺が無限大百科事典(インフィニティ・アーカイブス)で検索して

 そのまんまぶっ倒れたのは知ってるだろ?

 その時に調べたのが須丸清蔵。そして出た「這い寄る混沌」って単語。

 周防巡査はこれに「ニャルラトホテプ」って名前を付けていた。つまり……)

 

『須丸清蔵、布袋芙ナイア。これらは全て「ニャルラトホテプ」って存在と同一か

 あるいは、それを起源とする存在って事になるわけか』

 

『後、聖槍騎士団の連中もな。あの時あのメッティ刑事はそう言ってやがったぞ』

 

フリッケンもアモンも、大体考えていることは同じだった。

この間話していた敵のほかに、考え方によっちゃ元締めともいえるかもしれない存在か。

元締めと言うか、裏で糸引いているというか、後に控えているというか。

 

にしても、異世界からの侵略者の次は宇宙の神か。

今更だけど、スケールがでかすぎる。

そういや、冥界だの天界だのって一応地球上ないし地球圏内にあるって解釈でいいんだよな?

昔やったゲームの地底世界は、一応地球の存在に変わりは無いから

地球そのものがしっちゃかめっちゃかになったら、大損害喰らったって話が出たが

フィクションを当てはめても、ナンセンスだよなあ。いくら今が現実離れしすぎてるからって。

 

……悪魔だの堕天使だのを、現実の範疇に含んだとしても。

 

(布袋芙ナイア……俺の考えてることが正しければ、兵藤……

 お前、本当に取り返しのつかないことになるぞ……

 罪を償って更生するとか、悪魔として新たな人生を謳歌するとか

 そういう次元の話じゃなくなるぞ……!)

 

最も、宇宙の神と人の心の悪意の集合体がどう結びつくのか、まではわからなかったが。

 

 

――――

 

 

別ルートでホテル入りした俺達だが、ここまで来ればテロ容疑の関係ない

松田や元浜、ゼノヴィアさんらと合流することもできる。

逆に兵藤と紫藤はホテルにカンヅメになっているが……

この二人は特に監視下には置いておきたいが、こればかりは無理だ。俺だって学校行事がある。

そこで、事情を知っている周防警部が俺が学校行事に参加している間

張り込んでくれることになった。

顔を合わせる機会があれば、薮田先生が話していたことを言うべきかもしれない。

これで目下の心配事は無くなったのだが、気が気でない様子なのが姫島先輩。あのさあ……

 

……そりゃ、俺だって兵藤の監視の名目で兵藤と行動を共にしている以上

布袋芙先生の部屋に行くと言い放った兵藤について行ってみたら

まさか部屋であんなもの見せつけられりゃな。

その割には、姫島先輩の顔はまともに見られるんだが。

少なくとも、白音さんや黒歌さんの時ほどの気まずさは一切感じない。それもどうかと思うけど。

 

とりあえず、自由行動という事で俺はオカ研と共に蝸牛(かたつむり)山に行くことになった。と言うのも――

 

「蝸牛山の頂上に、クロスゲートを制御できる遺跡?」

 

「この地方に伝わる話よ。本当だったら、あの厄介な建造物に対して

 こちらから攻勢に打って出られるわ。これは是が非でも調査の必要があるものよ!」

 

あり得ない。クロスゲートなんてついこの間存在を確認したものじゃないか。

それがどうして言い伝えの中に出て来るんだ。突っ込むのもバカバカしい。

グレモリー先輩が我儘で部員や眷属を振り回すのは今に始まった事じゃないが

今学校行事でこっち来てるけど、一応いつ何時何が起きてもおかしくないって事は

理解してるんだろうか?

 

「……一応聞くけど、確かな情報なのか?」

 

「……まさか。この地方の出版社が出してる『メー』って雑誌の受け売りだよ。

 部長も読んだことあるはずなんだけど。

 なんでも、この珠閒瑠市の地下には『シバルバー』って宇宙船が眠っていて

 この間顕現したクロスゲートはそのシバルバーにそっくりなんだって。

 

 ……あれ? 『アメノトリフネ』だったかな? ごめん、覚えてないや」

 

俺は小声で祐斗に確認を取った。が、帰ってきた返事は案の定だ。

祐斗が行くなら、という事で――他にも理由があるっぽいが――光実(みつざね)も同行している。

なので俺はなるべく光実のフォローに祐斗共々入っている。

幸い、アーシアさんや白音さんもいるから気分転換には事欠かないだろうけれど。

 

「じゃセージ。検索しなさい。蝸牛山で」

 

「はぁ!?」

 

おい。俺は観光ガイドブックじゃねぇんだぞ。

俺も珠閒瑠市の見どころは気になってたから文句こそ言いはしたが、やるけど。

記録再生大図鑑(ワイズマンペディア)の使い方としては何ら問題ないのがまた、なあ。

 

COMMON-LIBRARY!!

 

 

――蝸牛山。

珠閒瑠市の外れに位置する、自然豊かな山地。

山の中には豪傑寺という猿田彦に連なる寺……ん? ああ、神仏習合の一環か……があり

健脚を維持しようとハイキングがてら訪れる観光客も多い。

 

山林に囲まれた立地は、心療にも効果があるとされ森本病院と言う精神病院も建立されていたが

10年前の火災で焼け落ちて以来、廃墟となり悪魔が現れると噂されるようになってしまった。

 

……ん? この部分、深く検索できそうだけど……いらんな。次。

 

山頂には遺跡とも噂される謎の建造物があり

満天の星空が見られることと相まって有数のフォトスポットとなっている。

夜間の登山にも対応できるよう、ロープウェイが稼働しており麓と山頂を結んでいる。

山道はやや入り組んでおり、豪傑寺に行く場合でも無い限りは

ロープウェイでの登山が推奨されている――

 

 

「……だそうですよ。行くならロープウェイ一択ですかね。

 他の場所も回るのなら、そうしないと時間足りませんよ。

 あ、飛ぶとか普通に論外なんで。俺はアモンの力使わないと飛べないですし

 そもそも光実はどう転んでも飛べません」

 

何か言いたそうに光実がこっちを見ていたが

まあ正真正銘普通の人間な光実が飛べる道理なんか無い。

俺みたいに悪魔が憑いてるわけでも、悪魔に転生したわけでもない。

飛べることを前提にスケジュールを組まれると、こういう時困る。

 

「……彼は置いて行ってもいいのだけれど? オカ研の部員でもなければ私の眷属でもないし」

 

「そうも行きませんよ。班分けでは一緒なんですから。

 一人だけ別行動って訳にも行かないでしょう」

 

光実はオカ研メンバー、俺、白音さん、ゼノヴィアさんと同じ班という事になっている。

勿論、超特捜課の横槍でこうなった形だ。

松田と元浜には悪いが、あいつらがこっちにいないことには安堵している。

何処をどう見繕っても一般人なあいつらを、怪異に極めて近いどころか

怪異そのものな俺らと行動を共にさせるわけにはいかない。

 

それに無実だとは思うが、オカ研面子にテロ容疑がかけられている以上

監視しないわけにもいかない。

で、監視員はこの俺だ。ホテルにカンヅメなはずの兵藤と同じ側に置く?

それこそナンセンスだ。

表向き退学になってないのに、学校行事に参加できないってのはいくら何でも、だ。

……外との接点が俺や白音さん、ゼノヴィアさん位しかいないのは……まあ、アレだが。

 

「はぁ……仕方ないわね。まあ、飛んでも悪目立ちするし

 ロープウェイもそれはそれで悪くないわね」

 

嘆息しながら、グレモリー先輩はロープウェイの利用に賛同した。

人間は飛ばないのが普通なんだが。そしてここは人間の世界。

出来ないことを出来るのは持て囃される一因だが

それを生来の技能に基づくとなれば……うーむ。

やはり、本当にグレモリー先輩は人間と言うものを理解する気があるのか?

と首を傾げたくなる。

俺の記憶では1年半はこっちにいるはずなんだが。俺が駒王学園に入る前の事は知らんが。

 

「……セージさん。彼女がリーダーで本当に大丈夫なんですか?」

 

「……不安要素しかない」

 

そんなだから、ロックシードを持っている以外は完全に普通の人間である

光実の愚痴にも付き合うことにした、勿論小声で。俺も同じこと思ってるし。

 

まあ、このパープリンセスに付き合うのも久々だ。

珠閒瑠市の心証が悪くならない程度に立ち回るとしよう。

……そういや、兵藤にとって珠閒瑠市は古巣なんだよな。名所とか聞いてないのか?

奴の意見とは言え貴重だ。そう思い、聞いてみることにしたのだが……

 

「そういやグレモリー先輩に姫島先輩。兵藤の奴は以前珠閒瑠市に住んでたと聞いてますが

 奴から穴場とかそういう情報は聞いてないんですか?」

 

「……朱乃、どうなの?」

 

「いいえ、そういう話は全然。イッセー君も珠閒瑠市に行くことは聞いてたはずなんですけど」

 

ダメか。住んでた人間の声を聞きたかったが、無いなら仕方がない。

無いなら無いで別に構わない話だったのでそこは別にいいのだが……

 

 

……一瞬、兵藤の名前を出した時にグレモリー先輩の表情が険しくなった気がした。

 

 

姫島先輩は光実以上にポーカーフェイスだから表情から心情を察するのは難しい。

一度激昂すると手に負えないのはある意味、グレモリー先輩以上だと思うが。

 

「……私は『しらいし』に行ってみたいです。抹茶あんこタンメンバナナマシマシ」

 

後ろで白音さんが不穏なメニューを挙げていたのは、敢えて聞かなかったことにする。

あの時、色々と気が気でなかったが白音さん自身は結構楽しんでたからな、あの動画。

 

取り立てて反対意見も出ていないので、蝸牛山の後はしらいしに行くことが決まってしまった。

なにこれ。食わなきゃいけない流れ? イチゴ餃子とかあんこタンメンとかそういう系。

自分では健啖家と自負できる程度には食えるけど、別にゲテモノ食いじゃないんだけどな……

財布的にはがってん寿司って言われるよりよほど楽だけど。

そんな微妙な顔をしている俺を見て何かを察したのか

祐斗や光実、アーシアさんが声をかけてくる。

 

「セージ君、リサーチ不足で申し訳ないんだけどさ……

 『しらいし』ってそんなにヤバいお店なの?」

 

「……普通のラーメン屋兼飲み屋、のはずだ。ただ……メニューが……」

 

俺が述べたメニューに、一同は目を白黒させていた。そりゃそうだわな。

だがそれに関するクレームは俺は聞かん。店主のおばちゃんに言ってくれ。

 

ところが、場所を変えようという流れには意外とならなかった。

好奇心か? 好奇心は猫を殺すというが。

 

ともあれ、俺達は一先ず蝸牛山に向かうことになった。

……どうせ、収穫はゼロだと思うが。




セージニャルの秘密に一歩近づくの巻。
ほんとこの作品原作の敵を先取りしすぎですわ。
E×E:アインスト、巨人族、インベス
リゼヴィム:聖槍騎士団
いつSCP由来の怪異が来てもおかしくないですね(ヒント:噂悪魔)。
とりあえずサメでも殴っておきますか?

>蝸牛山に向かった理由
罪で存在したカラコルの事を指してますが、そもそもあれも噂でああなった臭いので
その辺ほぼ無効化された現在の珠閒瑠市でそれが適用されるかどうか。
情報源がトンデモオカルト雑誌ってのがまた。

>豪傑寺
原作ママ。リメイクで陰陽師が出て来るかと思ったけどそんなことは無かったぜ。
アラヤ神社と言い神仏習合なネタ多いですね。拙作独自設定とは言え。
流石メガテンの系譜。

>しらいし
噂で女スパイにされたおばちゃんが経営するラーメン屋(赤提灯)
彼女も広義のニャルの被害者ですわな。ゲテモノ料理を普通にメニューとして並べ……
あれ? 栄吉の証言だとほら吹きは元々だったような?

財布的にがってん寿司でなくてよかった、とセージが述べてますが
罰で公僕の克哉兄から指摘されたり(雑誌記者ってそんなに給料いいの?)
やり手のサラリーマンが昼間っからエンガワ食ってたりの世界なのに
よく罪で高校生が入り浸れたなぁ……栄吉のお陰か。

>セージが触れている動画
こちら参照。
https://syosetu.org/novel/95124/8.html
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