二章前に書き始めてそのまま放置してたものをそのまま書き上げたので、二章とかスルーしてます要注意!

うちのカルデアの女神様はきっとこんな感じかもなんて思いながら書いてました(過去形)

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あらすじ読んでから見てね。


女神の愛した人間

 (ステンノ)を構成する要素には、なにがあるのだろうか。

 そんなことを昔、あの島に住んでいたときに考えたことがあった。

 (エウリュアレ)駄妹(メドゥーサ)、三人で仲むつまじく静かに暮らしていたあの頃。

 駄妹にお使いにいかせて、(エウリュアレ)が昼寝をしてしまって暇になってしまった時。

 きっと私を(ステンノ)たらしめるに必要なのは、当時の私だったら確実に、そして他の可能性を考えることもなく姉妹だけと即答していただろう。女神として組み込まれたものもあったが、それは私を(ステンノ)と呼ぶために必ずいるわけでもなく、同じようにそれを持ったものもいたから。私唯一でもなかったから。

 それは確かに当時の私にはそれしかなかったから、間違いではなかったと思う。

 

 

 

 じゃあ、今、この人理を継続させるために喚ばれた私を構成する要素は? と考えると、およそ昔の私では考えられないような答えになるのだろうと思う。

 女神として、神霊として、人間を見守り続けるだけの偶像だった私。非力で誰かの力を借りないと生きていけなかった私。

 そんな私をきっと他に力のある英霊がいるだろうに喚んでしまった、あの愚かで、だけど綺麗な心を持った彼を、今の私は少しありがたく思う。

 おかげでまた(エウリュアレ)に会えた。一緒に過ごすことが出来た。

 そして、生き別れてしまった駄妹(メドゥーサ)にも会えた。今でもまだ意地悪してしまうことがあるけれども。

 やっぱりあの子を愛しているから。また会えたのは嬉しかった。

 他にも小さな駄妹に大きな駄妹とも会った。どちらも姿は変われど大事な可愛い駄妹には変わりなかったから。やはり私は彼に感謝してるのだろう。

 こうして生活する上で、私にとって重要な要素とまた会えたのは僥倖であり、きっと幸運だったのだろう。

 戦闘に関しては私は非力だったから、私に出来たのは、目の前を塞ぐ無粋な男共を惑わし、自滅させることだけ。

 (エウリュアレ)駄妹(メドゥーサ)みたく自分から攻めることは私には出来なかった。

 それでも彼は私の力を頼ってくれた。私を一番最初に喚んだらしい彼の場所(カルデア)は、まだ英霊が少なく、私もあの島にいたときほどの力を発揮することも出来ず、きっと力不足だっただろう。

 悔やむにも私には力がないから、私は私に出来ることをするだけ。そう割り切った。

 彼らと共に特異点を旅し、途中懐かしい形のない島(場所)や、新たな可能性を選んだ(エウリュアレ)に出会ったりもした。

 その旅は島に住んでいた頃では考えられないような、とても大変でおよそ一般人であった彼がすべきことではなかっただろう。

 それでも彼は音をあげず、過去の人間たちのように愚直に、無謀に、盲目的に、後ろを省みることなく進み続けた。

 そんな彼の瞳は純粋で、希望に溢れていて、ひたすらに前向きで、喚んだどんな英霊であろうと絆を紡ごうとしていた。

 ああ、きっと。私はそんな彼だから力を貸そうと思ったのだろう。非力な私でも、多少は力になりたいと思ってしまったのだろう。

 

 

 

 人理修復の旅の途中、私はあの島で生活していたときと遜色ないほどの力を取り戻すことが出来た。

 もちろんそれは彼のおかげだ。

 人理を取り戻す傍ら、私の力を取り戻す源を集めていてくれたらしかった。

 力を取り戻しても、私は相変わらず私だから、少々神々しさがあがるくらいの私では、きっとまだ力不足だっただろう。

 そんな私でもやはり彼は私を頼ってくれていた。

 だから私は彼に信頼に対して出来るだけ応えようと思った。

 厳しい戦いも何度もあった。

 そんな時も私は彼の声に応えて立ち上がって見せた。

 昔の私だったらきっと、有り得ない、と鼻で笑っていただろう。泥にまみれた服や、魔物などから受けた傷、そこから流れた血を見て、何をしているの、と聞いてきただろう。

 私も時々なんでこんなことをしてるのか疑問に思うことはあった。

 それでも、彼は私を喚んだ。

 力のない私を喚んででも世界を救おうとした。

 数多の英霊を喚んでもなお、非力な私を頼ってくれた。

 ならば、私もそれに応えてはいいんじゃないかと思ってしまったのだろう。

 

 

 

 彼なら世界を救えると思っていた。そしたらきっと、彼も救われるのだろうと。

 幾度もの危機を乗り越え、強敵を倒し、積み上げた小さな奇跡は、ついに世界を救う一歩手前に辿り着いた。

 あれはきっと彼だから成し得た奇跡であり、彼だからこそ辿り着けた必然でもあったのだろう。

 絆を紡ぐのをやめなかった彼に()()()力を貸そうとあの場に集った彼らは言った。

 きっとあの場に別の私がいたのなら、私もそう言っていたかもしれない。

 それは幾重にも広がる小さな枝にも似た可能性の話。今はもう遠い昔のような思い出の欠片。

 世界を救った彼は、確かにその重圧から救われた。正常に回り出した世界というなの歯車の中で、ようやく彼は自身を救うことが出来たのだ。

 そこからの彼は忙しそうだった。空白の一年間を補完するためだかなんとか、私にはよく分からなかったが、日々なにかを紙に書き綴っては職員に回すということを繰り返していた。

 人理を修復してから、カルデアにいた英霊たちは大半が座に帰って行った。

 (エウリュアレ)や駄妹たちも帰ってしまった。

 私も帰っても良かったのだろう。他に残った英霊たちに任せても良かったとは思う。

 しかし、彼の行く末を見たいと他でもない私が願ってしまった。

 だから私も残ることにした。

 世界を救った彼は、まだきっと誰かの絆を必要とするのだろうと。

 不確かだけど、絶対であろうと女神の勘が告げていたのかもしれない。

 きっと彼は退屈はさせないだろうとも思っていたから。

 

 

 

 そうしてまた現れた特異点の亜種をも乗り越え、彼はようやく安寧を手に入れた。

 今度こそ英霊たちは退去した。残るものはきっといないだろうと、彼は思っていたのかもしれない。

 だから、私がいたときの顔は今でも思い出せる。

 驚いたような、だけど嬉しそうな顔を。

 

 どうして。と彼に聞かれた。

 

 なんとなくよ。と私は答えた。

 

 そっか。と彼は呟いた。

 

 そうよ。と私も微笑みを浮かべた。

 

 これからどうようか。と彼は私に聞いた。

 

 どうしましょうか。と私は聞き返した。

 

 どこかでゆっくりしたいな。と彼は遠いどこかを見て言った。

 

 そうしましょう。と私は彼を肯定した。

 

 

 

 今の私を構成する要素に、昔の私では考えもつかなかっただろうものが入った。

 一つは(エウリュアレ)

 一つは駄妹(メドゥーサ)

 そして新しく入ったのは、彼。

 では、彼がいなくなったら、私は(ステンノ)ではなくなるのだろうか。

 いや、そんなことはないのだろう。駄妹がいなくなった時も、私は私のままだった。

 なら、彼がいなくなっても私は私なのだろう。

 だけど、この形容しがたい痛みはなんなのだろう。

 駄妹がいなくなったときとは違う、きっと根本から違う痛み。

 考えても答えが得れないから、私は彼に聞いてみた。

 

 ねえ。と私は彼に声をかけた。

 

 どうしたの。と彼はゆっくりと昔より大分嗄れた声で返した。

 

 痛いの。と私は素直に言った。

 

 どこが。と彼は心配そうにあの時と変わらない目で私を見つめた。

 

 分からない。と私はなぜか胸元を押さえながら答えた。

 

 そっか。と彼は納得したように言った。

 

 分かったの。と私は彼に答えを聞こうとした。

 

 うん。と彼はゆっくり頷き答えた。

 

 教えなさい。と私は言った。

 

 いいよ。と彼は笑みを浮かべた。

 

 彼は、ベッドに横たわりながら、しばらく窓から外を見て、それから私に顔を向けた。

 

 きっとそれは、誰かを好きになったんだよ。と彼は答えた。

 

 好きになったの。と私は微妙に納得しないまま聞き返した。

 

 そうなんじゃないかな。と彼は茶目っ気のある顔を浮かべた。

 

 彼にそう言われて、心のどこか(痛かったところ)が軽くなったように思えた。

 そして、ようやく私は今と向き合うことができた。

 

 そうだったのね。だから、こんなにも痛かったのね。と、私は彼をあの頃から変わらぬ姿で見続ける。

 

 変わっていく彼の姿から私は無意識に目を逸らしていたのだろう。

 痛みを都合のいい言い訳にして、人間の終わりを直視したくなかったのだろう。

 それもこれで終わりだ。

 あなたが答えをくれたから。

 これでようやく、素直になれる。

 

 好きだったわ。あなたのこと。そう私は言った。

 

 ありがとう。僕もだったよ。彼もそう言った。

 

 果たして何十年とかかった気持ちの整理は、ものの数分で呆気なく終わってしまった。

 でもそんなものなのかもしれないと、今は思う。

 冗談めかしてあなたをからかうのも今日で終わり。

 続きはまたあっちの世界で、もっと賑やかな場所でしましょう。

 

 だから。

 

 だから、それまでは。

 

 おやすみなさい。良い夢を。

 

 

 

 おやすみなさい、女神様。

 

 そんな声が、最期に聴こえた気がした。


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