魔法科高校の『触れ得ざる者』   作:那珂之川

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政に疎い者、娘に悩む者

 七草家の屋敷―――その応接間にて、三人の人物が対談をしていた。そのうち二人は十師族・五輪家の長女である五輪澪、そして長男である五輪洋史。彼らを迎え入れたのは同じ十師族であり、この屋敷の主―――七草家現当主、七草弘一である。

 彼は室内であるにも拘らずサングラスをしている。その事情に関しては、魔法師である人間なら知らぬものはいない事件の傷跡を隠すためのもの……だということは、公然の事実となっているためにそのことを咎める人間など存在しない。

 

「事情は既に伺っております。務めを果たされるのは大変なことだと思われますが、どうかご自愛ください」

「ありがとうございます、七草殿。できれば香澄ちゃんや泉美ちゃんにもご挨拶したかったのですが、生憎ここ最近のドタバタが多いものですので」

「娘らには、私のほうから伝えておきましょう」

 

 澪と洋史が大陸方面への出征をすることは、当然弘一の耳にも入っている。国家公認の戦略級魔法師である前に十師族である以上、そのネットワークで既に把握していた。澪の言葉に対して弘一がそう述べたのは、最近距離を置きがちな娘らとの歩み寄りを図りたい、という父親としての思惑があるのかもしれない。

 

「高望みかもしれませんが、弟が三矢の嫡男殿のように好いた相手と連れ添っているのなら、私もより安心して任務に臨めるのですが」

「姉さん……それは今言うべきことではないでしょう」

 

 澪がそう述べた理由には、真由美のことが念頭にあると勘付いている人間は、おそらく弘一だけであろう。

 以前、澪と三矢家の三男が婚約を結ぶという話になったが、それは成らずに立ち消えとなった。それを好機と見た弘一は泉美との婚約を結ぶことに成功した。尤も、その話は弘一の失策によって婚約破棄となり、当事者の娘から冷たい目を向けられる羽目となった。

 洋史は澪を窘めるが、それをどこ吹く風と言わんばかりに受け流す姉の様子に、弟が折れる形となった。

 

 澪は元治の結婚式に参列した(五輪家当主代理という形ではあるが)折、元治とその妻である穂波と対面している。魔法師では極めて珍しい“親子二代の恋愛結婚”に、魔法師社会全体が羨望の目を向けるほどだったのは言うまでもない。

 それを見て、自分が好いている相手に振り向いてほしいと努力を積み重ねている。なお、長年の成長障害の影響で背丈が殆ど伸びないことに絶句したのは……彼女しか知らない秘密である。

 すると、扉のノック音が聞こえて弘一が入室を促すと、そこには余所行き用のワンピースに身を包んだ真由美が姿を見せ、澪と洋史に挨拶をする。

 

「いらっしゃいませ、洋史さん。澪さんはお久しぶりですね」

「ええ。九校戦は直に見に行きましたが、ご挨拶できなくて申し訳ありません」

 

 澪は真由美が猫を被っているということを見抜いていた。それは、自身もそうであるという自覚からくるものであり、恋のライバルになりうる可能性を秘めた相手。とはいえ、人生経験の差で巧みに隠し切っている澪の心情など、真由美に知る由もないのだが。

 真由美が声を発する前に洋史が立ち上がり、テンプレートともいえるやり取りを交わしたのち、真由美と洋史はソファに座る。

 澪らが今回訪問した目的を聴きつつ、真由美は思案した。

 

(にしても、何を聞きたいのかしら……もしかして、とは思うけれど)

 

 澪が戦略級魔法師として海軍と同行し、大亜連合との講和条約締結の示威行動を起こすことは既に決定されているが、現時点では機密情報のために弘一から念を押すように言われ、真由美は言葉と頷きで同意を示した。

 出征という言葉に表情こそ驚きをみせたものの、言葉に発しなかったのは“彼”のことが念頭にあったからだ。とはいえ、令嬢として失するような態度であったため、反射的に謝罪の言葉を口にして頭を下げた。

 

 今回の一件は、日本側からすれば領土的野心など持ち合わせていない。未だ“日帝憎し”の思想の火種が燻っているところに爆弾なんて投げ入れれば、忽ち大陸が火の海と化すのは想像に難くない。

 澪が出向くのは、国としての力の誇示と見れば理に適うが、まるで澪を東京から遠ざけたいようにも見えてくる……と考えていると、外部からノック音が聞こえてきた。

 

『失礼します、旦那様。お客様がお見えでございますが……』

「すまないが、今は別の客人を出迎えているため、少し待ってもらえるように伝えてくれるか?」

『それが、神楽坂家当主代行を名乗られておりまして。同席している五輪家の方々にもご挨拶をと……』

 

 何故そのことを知っている、と弘一は突然の来客―――それも、神楽坂家の人間という事実に思案していると、これを聞いた真由美が表情を変えていることに気付く。

 

「真由美。心当たりがあるようだな?」

「……恐らく、悠元君です」

「そうか……こちらに招くように伝えてくれ。澪殿に洋史殿もよろしいでしょうか?」

「ええ、構いません」

「はい……」

 

 弘一の問いかけに対して澪はハッキリと答えたが、洋史はどこか嫉妬を見せるような口調が混じっていた。何せ、その当該人物は自分が気にかけている人物の血縁上の弟にあたるからだ。

 使用人が弘一の言葉を聞いて少し経った後、その人物こと悠元が入ってきた。

 

「七草殿、突然の訪問となったことはお詫びいたします。ですが、私も思うところがあって訪問させていただいた次第です。空いているところに座っても宜しいでしょうか?」

「ええ……して、神楽坂殿。そのご用件とは一体何なのでしょうか?」

 

 弘一としては、最も探りを入れたいであろう人物の一角がいきなり目の前に現れたのだ。とはいえ、ここには弘一だけでなく真由美もおり、五輪家の人間である澪と洋史もいる。なので、恐る恐るといった感じに問いかけた弘一の言葉に、悠元はこう言葉を発した。

 

「簡単なことですよ。余計な探りを入れられてゴタゴタになるよりは、こちらからある程度の情報提供をすることで“手打ち”にするためです。まず、先月末に放たれた2つの戦略級魔法……その片割れを放ったのは自分です。このことはそちらにいる澪殿にも話しました」

 

 悠元の言葉に周囲の人間は驚愕に包まれる。政府が発表した2発の“戦略級魔法”のうち、その片方を彼が使ったという事実。これはつまり、悠元の元実家である十師族としての三矢家の地位を自ずと押し上げる結果となる。それだけでなく、神楽坂家次期当主が戦略級魔法師という力の誇示を周囲に対して行ったにも等しい。

 

 悠元が七草家当主である弘一に対してこの事実を公表したのは、今までの迷惑行為に対する“返答”そのものといってもいい。今年の正月に起きた十山家の叛意ともいえる誘拐未遂、そしてバレンタインの時の迷惑行為に入学式の介入、加えて神楽坂家入りの妨害。これらの出来事が“この順番”で起きたことも今回の釘差しに至った原因の一端である。

 国防軍がらみだけなら、今まで三矢家に大きな顔をしてきた十山家のスタンドプレーの範疇で済んでいただろう。だが、バレンタインの一件で三矢の人間だと知られることになり、九島家からも今まで以上に目をつけられる結果となった。

 全部が全部七草家が原因とまではいかないだろうが、弘一と烈の繋がりからその可能性を強く疑わざるを得ない。ならば、敵対するという意味がどういうことなのかを示すのが一番手っ取り早い。

 このネタで強請ったり排除しようとするのならば、相応の態度を以て臨むだけだ。

 

「悠君……今のは、本当なの?」

「自分は神楽坂家当主代行というだけでなく、『神将会』総長としても此処に出向いています。秘密を知った側である真由美嬢や澪嬢だけでなく、七草殿と五輪殿にも相応のリスクを負ってもらう、ということです。ご理解いただけましたか?」

「え、ええ……(……本当に、年下なの?)」

 

 今までの雰囲気がガラッと変わり、敵意を見え隠れさせるような様相の悠元に、真由美は年上であるのに自分が年下のような感覚が纏わり付いていた。それは自分の容姿からくる理由ではなく、実年齢という意味からして悠元が年上のように思えてならなかった。

 

「……神楽坂殿。先程『神将会』と名乗られたことは、本当のことなのか?」

「無論ですよ、七草殿。予め言っておきますが、十文字家を通して干渉できるとは思わないことです。ここまで明かした理由は、聡明な貴方なら気付くでしょうから口にしません。もし、今話したことを材料にして強請ったりなどした時は……滅んでもらうだけだ、と思ってください」

「っ……」

 

 悠元が戦略級魔法師であることと『神将会』のことを知っているのは、身内以外ならば四葉家(真夜と深夜、達也と深雪)、独立魔装大隊の幹部クラス(風間、藤林、真田)に限定される。彼らと弘一と真由美、洋史と澪以外にその事実を知るものが出た場合、真っ先に疑わざるを得ないのは四人のうちの誰かとなる。

 元実家の三矢家、母方の元実家である上泉家、現在の実家である神楽坂家は揃って家族に甘いが、秘密を厳守する義理堅さは悠元も信頼している。四葉家も徹底した秘密主義を持っているため、信頼を置いている。独立魔装大隊の幹部たちに関しても信頼している。だが、それ以外に関しては信用してもいいか疑問に残る部分が多いのだ。

 

「まあ、話せる部分はこれだけです。『神将会』のほかのメンバーや戦略級魔法の詳細を教えろというのは無理な相談だと思ってください」

「悠元君、それはどういうことなんだ?」

「本来なら、今話したことも国家重要機密に類するものであるということも理由の一つですが……深く探りを入れるのであれば、三矢家、四葉家、上泉家、神楽坂家を本気で敵に回す覚悟があると判断せざるを得ません」

 

 悠元の言葉は、真由美に対しての釘差しも含まれている。

 神将会の所属メンバー全員が神楽坂家の係累にあたる上、上泉家は先代当主が四葉の先々代当主(先代当主とも仲がよかったらしい)と親友であったことと、四葉家のスポンサーをしている一角が神楽坂家にあたる。

 

「悠君、どうしてそこで四葉家が出てくるのかしら?」

「神楽坂家は四葉家の前身である元第四研のスポンサーですし、母上は四葉の現当主を実の娘のように思っていると聞き及んでいます。神楽坂の依頼ならば四葉も快く引き受けてくれるでしょう」

 

 芋蔓式というよりは、四葉という爆弾を起動させれば連鎖的に『護人』まで波及することになる、と言ってもいい。その危険の一端を七草家は別の形で経験しているのだから、これ以上四葉に対して探りを入れるのを止めろ、という遠回しの警告である。

 

「……何故、四葉を庇われるのですか?」

「生憎ですが、四葉のことを何も理解しようとしていない人に、答える義理は持ち合わせていません。危険だからと言って遠ざけたり排除するようなことをしているから、諸外国に付け込まれるんですよ……それこそ、“3年前”のように」

「もしかして、悠元君は沖縄にいたのかい?」

「ええ。七草殿と澪殿は父から聞いているでしょうが、長兄の元治殿と自分が沖縄にいて、大亜連合の侵攻に巻き込まれました。兄は相手の妨害を見事に排除し、自分も十師族に連なる身としてあの戦いに参戦したまでです」

 

 自身が国防軍の特務士官であることは伏せつつ、その時は微塵にも思っていなかった“十師族としての責務”という言葉を口にした。当時は12歳で三矢の名を名乗れなかった仕来りがあり、それに加えて一緒に行動していた達也のこともある。

 あの時は、ただ生き残ることだけを念頭に入れて殲滅していた。躊躇えば死ぬような状況で、相手にかけてやる情けなどない。

 

 深夜の存在は無論弘一も理解しているからこそ、達也と深雪が十師族という結論に至るのはそう遠くない。というか、33年前の事件当時の年齢を考えれば真夜と深雪の繋がりを推察できそうなものなのに、至っていないのは真夜への感情が歪になっているせいかもしれない。

 弘一の問いかけに対して、悠元は普段でも滅多に見せない怒りを滲ませつつその問いかけを切り捨てるように返した。深雪の言い分が的を得ている……と、この時ばかりは内心で皮肉った悠元だった。

 

「そもそも、横浜で使用した魔法に関して言えば、その大半が最低でも戦術級相当の代物です。下手に話して関係者を軍事的に縛り付けることを自分は許容しません。ただ、その代わりと言っては何ですが……こちらを差し上げておきます」

 

 悠元がそう言って懐から取り出したのは、数枚の紙の束。弘一がそれを手に取って目を通すと、紙を持っていた手が震えていることに真由美が気付く。彼を驚愕させるほどの内容は気にかかったが、それを口に出す前に弘一が悠元に問いかけた。

 

「この術式と資料を差し上げるとのことですが……よろしいのですか?」

「構いません。その程度の術式ならば神楽坂家の持つ秘密の一角にすらなりませんから。それに、大亜連合を動かして澪殿を東京から遠ざけたい連中がいる以上、神楽坂家や上泉家だけでも限界はありますし……こんな大事な時期に内ゲバなんてされたら、困ることのほうが多いので」

 

 悠元が描いている計画は、今後渡来してくることになる「パラサイト」を念頭に置いている。原作だと同じ魔法使いの家系であっても協調姿勢が見えずにバラバラであった部分が多かったため、十文字家現当主を治療し、七草家当主に対しては対パラサイトに特化した拘束術式を渡した。

 そして、資料に書かれているのはパラサイトに関する資料であり、その大本は全てイギリスから取り寄せた研究資料を翻訳したものだ。加えて、それが発生する時期を“判断材料”として明記してある。ようは、パラサイトに関する研究は認めるが、その対価として余計な諍いを起こすな、という忠告。

 ひとまず自分ができる範囲での仕事はしたと判断して、悠元が静かに立ち上がったところで洋史が声を掛けてきた。

 

「悠元君。先程君が言った言葉だけれど、姉さんが東京にいられたら困る連中って一体誰なんだ?」

「洋史、その質問は……」

「構いませんよ、澪殿。……北と西の大国が動いたとなれば、次に動くのは……これ以上は何も言いません。それでは、失礼いたします」

 

 そこまで親切に教えるわけにもいかず、悠元は言葉を切って軽くお辞儀をすると、応接間を去って行った。

 残された四人は、彼の言葉の続きにあるものを理解していた。だが、東の大国はこの国にとって“同盟国”……その国が動く意味を考えるならば、その一端に悠元が含まれていることは明白だ。

 しかし、かの国がそこまでするのかという疑問は……公の権力を捨てたが故に、政治的駆け引きに疎い彼らが出せる答えの範疇を超えていた。

 

 余談だが、その日の夕食で悠元が七草家に来ていたことを真由美が口を滑らせ、それを聞いた泉美が凄みのある笑顔で弘一と真由美に問い詰めた出来事は……彼らと香澄、そして名倉だけの知る一幕であった(使用人らは空気を読んで、速やかにその場から退避していた)。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 後片付けに追われていたのは神楽坂家に限った話ではない。上泉家も無論だが、その縁を持つ東道家―――現当主である青波は、吉田家を訪れていた。彼を応対したのは当主である幸比古で、出された茶を一口啜った上で青波が切り出した。

 

「先日は敵が酷い有様であった。聞けば、其方の子息も彼ら相手に奮闘したとのことだが」

「私も聞いたときは血の気が引きました。相手がテロリストとはいえ初めての人殺しになったので危惧はしていましたが……今日は魔法科高校が休みのため、門下生と訓練をしている最中です」

「成程。十半ばの歳で肝も据わっているとは、中々に面白いな」

 

 青波は養子に迎えようとしている幹比古の事情について詳細に調べ上げていた。彼にそこまでの変化を齎したのは千葉家の娘も大いに関係しているであろうが、彼の親友である神楽坂悠元が変化の原点であるだろうと推察していた。

 

「ところで、吉田殿。連絡を受けた件について真偽を問うわけではないが、間違いなくそう答えたのか?」

「はい。急ぐことでもないと私は述べましたが、閣下のお話を受けると快く返事をしました。どうやら、先日のことで思うところがあったのかもしれません」

 

 それは幸比古だけでなく青波も同意見だった。元々上泉家と東道家の取決めとはいえ、一先ずは年末に本人の考えを聞いてみるという状態であったからだ。

 だが、論文コンペの翌日に幹比古は幸比古のもとを訪れ、東道家への養子の件を受け入れると表明した。それを聞いた幸比古はすぐさま青波に連絡を入れ、今現在に至るという形だ。

 

「恐らくは三矢家の三男―――神楽坂悠元に影響されたのだろう。だが、父親として其方は宜しいのか?」

「私のような苦しい思いをしたところで、息子らに遺恨が残るだけです。それに、幹比古が神楽坂家との繋がりを持ってくれた以上、高望みするのは精霊魔法を極めることだけにすべきだと思ったまでのことです」

 

 幸比古が経験したことを実の子らに負わせるのは心苦しかった。現に二人の息子はお互いに切磋琢磨するような形で実力を高めあっている。だが、吉田家の家督が一つしかない以上、幹比古が大人しく身を引く選択をするのなら、止めることこそ家を滅ぼすことになりかねないと幸比古は判断した。

 

「それに、幹比古が別の家で神祇魔法を残せば、吉田の血脈は自ずと保たれることになります。しかし、閣下は宜しいのでしょうか?」

「……実は、今回の話を聞いた妻が子息に会いたいと強請ってきおった。娘も顔写真を見て惚れたそうだ」

 

 今回の場合、本来なら幹比古が入り婿となるはずだったが、青波の妻が幹比古を東道家の養子にしたいという話になってしまった。そんな性格の一端は間違いなく剛三の妻……いや、千姫の姉譲りだと青波は思っている。

 しかも、幹比古の顔写真を見た娘も幹比古に一目惚れし、彼に会おうとして吉田家の道場に入門しそうになった。だが、当の幹比古本人は伊勢家が養女として迎え入れる同じクラスの女子に惚れている。彼らを婚約させる段取りは既に水面下で進んでおり、幸比古にもその許可を既に取っている段階だ。

 なお、それを聞いた娘は「その子とも会ってみたい。なんなら、私が愛人枠でもいいし」と大胆に発言して、海千山千の巧者である青波が卒倒しかけたことは、東道家だけの秘密である。

 

「東道家の魔法のこともあって第一高校には進学させなかったが、娘の機嫌を損ねるわけにもいかんのでな……三学期のはじめに転入させることとした。とはいえ、なまじ隠すのが下手なので、恐らく一科生での転入になるだろう」

「……うちには娘がいませんので、閣下の心情をご理解するのは難しいですが」

「気にするな。八雲のところで迂闊に言えることでもないからな」

 

 吉田家が『九頭龍』の役目を担っていることを青波は当然知っている。だが、青波からすれば『九頭龍』の長を担う八雲は、好敵手ともいえる人物である。

 30代とも思えるあの外見で忘れがちだが、八雲は実年齢50代―――青波とは割と年齢が近い部類に入る。実を言うと、青波は一時期八雲の師に師事していたことがあり、八雲とはその頃からの付き合いである。

 人の弱みを知るとからかわずにいられない性格だったため、青波からすれば弱みを見せたくない人物の筆頭が八雲になる。立場上弱音を吐くのが難しい青波の心情を察し、幸比古は苦笑を滲ませつつ青波の言いたいようにさせるべきだ、と判断したのだった。

 




 5000字ぐらいで収めようとして、何故か7000を超える……なんでやねん。
 七草家に対して情報を開示したのは、もし情報がばれた際の経路を辿り易くするという保険とともに、一種の撒き餌みたいなものです。
 真由美以上に腹芸が得意な相手なので、下手な勘繰りをされて邪魔されるよりも、情報開示によって秘密を共有してもらう形です。
 そもそも、春の一件で上泉家から二度と裏切れば次はないと言われているのに、神楽坂家からも忠告された以上、四葉に対する圧力を緩めざるを得ない状態へと追いやる形となります(弘一本人がどう判断するかまでは面倒を見ませんが)。
 幹比古にどういう心境があったのかという話は、来訪者編序盤のほうで消化する予定。
 書いていく内に段々青波が丸くなっている気がする……

 アニメまでに書き終わるといいな(願望)

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