魔法科高校の『触れ得ざる者』   作:那珂之川

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『恒星炉』実証実験

 第一高校の校長室にて、この中で一番の年下(転生前を含めると若いジャーナリストぐらいなら年下扱いになるであろう)である悠元の圧倒的な存在感と共に放たれた言葉に、誰しもが反論を躊躇う様な雰囲気の中、神田が口を開いた。

 

「百山校長の言葉は真摯に受け止めますが、私にも思うところがありまして」

「ほう、何でしょうか?」

(この少年、いくら十師族とはいえここまで老獪な雰囲気を纏えるものなのか? まるで政治家の大御所クラスと会談した時のような緊張感……これも魔法だと言うのか?)

 

 言い方や声質は年相応の少年そのものだが、彼から放たれている存在感は歳不相応とも思えるものに、神田の口調も自然とそれに即したものとなっていた。それに、メディア相手でも物怖じしないというあたり、何か魔法でも使っているのでは……と神田は推測したが、実際には間違っている。

 何せ、悠元の存在感も話し方もとある人物のスパルタ教育によって培われたものである、ということぐらい神田も冷静であればすぐに気付けたかもしれない。

 

「最近、魔法科高校のカリキュラムに関して、不穏な噂が流れております。魔法科高校九校は、生徒を軍人に洗脳しているのではないかと」

「長い目で見れば、魔法科高校から魔法大学か防衛大を通って軍及び関係機関の進路に進む者の割合が多いのはデータとして示されていますが、それはあくまでも当人たちの自由意思によるものです。それを“洗脳”などと宣うということは、神田先生は学術的に根拠が示された証拠をお持ちなのですか?」

「い、いえ、それは……ですから、魔法科高校が国防軍の出先機関などというイメージを払拭するためにも、ぜひ授業を見学させていただきたい」

 

 そもそも、洗脳という行為は魔法師の能力を低下させかねない行為だということは医学的に立証されている。言論や思想の面で「ブランシュ」のように洗脳させていく例は存在しているが、あれはその殆どが二科生だったことに加えてアンティナイトの存在が大きいからこそ成り立っていた。

 神田の秘書やボディーガード、取り巻きに関しては存在感で完全に黙らせていた。というか、存在感をこの部屋を覆う程度で展開しているだけだというのに、この体たらくとは情けない。とりわけジャーナリストは“第三の権力”を自称しているというのにだ。

 そして、神田に対しては辛うじて話せるレベルで威圧感を放っている。

 

「魔法技能は極めて緻密かつ繊細な制御が求められます。その実習に部外者を安易に入れることは出来ません」

「ご迷惑はお掛けしません」

 

 神田はそう言っているが、取り巻きの記者が勝手な行動をして生徒の心身を傷つける様な真似をする可能性が高い。ただでさえ、ここに来ている記者―――黒羽家や神楽坂家の息が掛かった者以外の大半は反魔法主義が色濃いメディアだからだ。

 

「……いいでしょう。教頭先生、五時限目の見学であれば問題はないかと思われますが?」

「五時限目……そうですな。ただ、実習はありませんが、魔法大学と共同で課外実験が校庭にて行われることになっております」

 

 八百坂も今の悠元が百山の代わりにここにいることを理解した上で、百山と接するように悠元からの問いかけに受け答えしていた。だが、これには神田が食いついてきた。当初の予定では魔法科高校の授業の見学をして、盛大に軍との癒着をアピールするパフォーマンスをするつもりであったからだ。

 

「そんな、せめて四時限目の途中からでも」

「先程も仰った通り、魔法の使用は精神に大きな負担となります。まさか、魔法師の人権保護を高らかに仰られている神田先生が、未来ある若者の可能性を摘み取る様な真似などされたくないでしょう?」

「……分かりました。では、せめてその課外実験だけでも見学させていただきたい」

 

 そうピシャリと言い切った上で、悠元は懐から端末を取り出して内容を確認した後、神田らに向き直った。

 

「実験の見学の許可が下りました。但し、こちらの提示する条件を必ず守っていただかなければ、即刻退出していただくことになりますので予めご了承ください」

 

 悠元の言葉を聞いて不満げな様子を見せる記者もいたが、そんなことなどお構いなしに悠元は説明を続ける。

 

「一つは、指定されたエリア以外からの見学を禁じます。この後いらっしゃるスミス先生が案内いたしますので、そこからの見学となることはご了承ください」

「何故ですか?」

「本来ならば、生徒の安全面を第一に考えるなら、あなた方のような来訪者など以ての外なのです。態々見学できる場所を提供しただけ『学校がまだ譲歩している』証拠ですよ」

 

 悠元の言葉で記者らが騒ぎ立てて、ボディーガードも警戒を強めるが、この程度の事など想定の範囲内だと言わんばかりに説明を続ける。

 

「もう一つですが、当校の生徒に対する一切の取材を禁じます。代わりに私が全てお答えしますし、今回の実験内容も把握しておりますので、受け答えする分には問題ないかと思われますが」

「そんな横暴が許されるのですか!?」

「何をどう勘違いしているのか分かりませんが、貴方方がここにいられるのは神田先生あってのことです。本来ならば、学校側が即刻追い出す対応を取ってもおかしくなかったのですから」

「君は報道の自由というものを知らないのか!?」

 

 はて、この国の憲法に言論と思想・信条の自由は確かに保障されているが、それは何もジャーナリストの特権ではないし、そもそも世論の代表者を標榜している彼らは誰しも“責任”を取ろうとしていないことが問題だ。国営放送を除いていち民間企業あるいは一個人でしかないジャーナリストは、何をしても許されると本気で思っているのだろうか。

 というか、根本的な問題として“報道の自由”なんてものは憲法で保障などされていないし、自由を得るからには相応の対価が求められる。煽るだけ煽って後は知らぬ顔……前世でも良くあったこと。しかも、そういった心ない記者のせいでまともな記者まで一緒くたに見られてしまうのも問題だ。

 

「事前の約束なしで乗り込んで来ておいて、正当な取材が出来るという甘い考えが本気で通用されると? そちらが無礼を重ねておいての態度であるにも関わらず、こちらとしては最大限の礼儀をもって応えています。それでいて横暴などと仰るのならば今すぐ出て行って頂きます……神田先生も、それで宜しいでしょうか?」

「あ、ああ……」

 

 悠元の有無を言わせぬ言葉に、神田とその取り巻きは押し黙る他なかった。悠元はそれを見た上で神田に確認の意味も含めた視線を送りつつ問いかけ、威勢を取り戻しつつある神田も頷かざるを得なかった。

 丁度話を終えたところでジェニファーが来たため、彼女の先導で校長室を後にしたのだった。

 

  ◇ ◇ ◇

 

 後ろでは取り巻き記者の一人が神田に話しかけていたが、その会話の内容など悠元からすれば筒抜けに等しかった。流石におかしいと気付いていても不思議ではないが、放射線実験室に入った際に非友好的な視線を向けられたことには流石に戸惑っただろう。

 だが、これが当然の反応なのだと理解すべきなのだ。

 それに対して助け舟を出すわけではないが、廿楽が悠元に話しかけた。

 

()()()、彼らが君からの連絡にあった見学者ですか?」

「ええ、廿楽先生」

「それでは、あちらのほうへ案内してあげてください」

 

 廿楽が視線を動かした先には丁度空きスペースがあり、実験装置を見渡せるだけの視界が確保されている。悠元もそれに頷くと、神田らをそちらへと移動させた。神田は学生の様子が気になって悠元に尋ねた。

 

「あれは、何をしているのですか?」

「先程少し触れましたが、今回は魔法大学の有志からの申し出で実施にすることになった魔法実験です」

「魔法実験と言うと、やはり先日の『灼熱と極光のハロウィン』のような敵艦隊を一瞬で殲滅させるような実験ですか?」

 

 ここで割って入ってきたのは取り巻き記者の一人だ。明らかに嫌らしい笑みを浮かべているが、そんな表情に一々反応することもなく淡々と答えた。

 

「その質問は工業高校の生徒に『核兵器の実験でもしているのですか?』と尋ねるに等しい行為です。ここで作業をしている彼らは魔法の平和的利用の為に日夜努力している生徒たちであり、先程の質問は礼を失するに余りあります」

 

 魔法はゲームのようにボタン一つですぐに発動できるようになっていない。基礎単一工程の魔法ですらアルファベット換算で最低五桁の演算を必要とする。イメージとして描くのは簡単だが、物理法則を改変するという自然の摂理に反することで特定の事象を成立させるには膨大な量の情報演算をしなければならない。

 記者自身が自らの素性を名乗らないことは既定路線だし、こちらは身元を明かしているのに自己保身のために明かそうとすらしない。そもそも、今回の反魔法主義のメディアを調べる際に社内データベースをハッキングして素性を全て調べ上げている。なので、顔を見ただけでどこの会社の記者なのかをすぐに判別できる。

 すると、どうやら準備が出来たようで、実験室の壁のシャッターが開いていき、外の光が室内に差し込んでくる。

 

「では、行きましょうか」

「三矢殿。その、今回の実験は一体どのようなものでしょうか?」

「―――現代魔法における加重系魔法三大難問、その一つに挑む実験です」

 

 悠元につられる形で神田も移動を開始した。記者はどうにか粗探しを目論んでいるようだが、これからやる実験を見てからの質問など……悠元からすれば予測するまでもない事であった。

 

  ◇ ◇ ◇

 

 校庭には実験装置を遠くから見ている生徒がかなり多かった。その中で見慣れない人間たち―――神田らの存在は生徒から見ても異質なものと認識されているようで、中には非友好的な視線を向ける人間も少なくない。

 とりわけ神田はここ最近のメディア露出が多いためか、彼の姿を見て気が付かない生徒は少なくないが、近くに悠元がいるためか直接的な行動に出るようなことは抑えられている形だ。尤も、生徒らの最大の興味はこれから始まる実験に注がれている。

 

「実験開始」

 

 拡声器を持った達也の合図で深雪が重力制御を発動すると、球体上の水槽に張り付く形で重水と軽水の混合水が中心部に球状の空洞を形成している。その次に発動するのは香澄と泉美の第四態相転移(フォースフェイズシフト)で、空洞部の水面から重水素プラズマと水素プラズマ、酸素プラズマが発生する。

 

「中性子バリア、ガンマ線フィルター」

 

 理璃の中性子バリアとほのかのガンマ線フィルター。どちらも核兵器の毒性を無害化するために開発された核抑止のための魔法であり、この二つの魔法はワンセットとして機能することが多い。良く知られた魔法だが、それを卓越したレベルで展開する二人の能力は確かなものである。

 

「重力制御」

 

 空洞部の重力を中央に反転させることで、空洞の中心部に重力場を発生させるとともに、物質相互間の重力が増幅される。

 重力魔法による核融合反応が加重系魔法三大難問となっているのは、時々刻々と変化する水槽の質量に合わせて魔法の出力を常に変化させ続けなければならない多変数化の処理が極めて難しいとされているためだ。

 この実験装置では、金属環に10個の照準補助装置が取り付けられており、それらを3台の並列処理型CADを経由する形で深雪のCADに送られる。本来複数のCADを挟むのは想子の干渉に不可能とされているが、想子のみを閉じ込める特殊な電子回路によって深雪はただ二段階目の重力制御を持続するだけで良く、複雑な計算自体はCADが全て処理している。

 

「クーロン力制御、定率制御(フラットドライブ)フィルター」

 

 セリアのクーロン力制御で高重力制御下の電磁的斥力は約100万分の1にまで低減。更に美嘉の定率制御フィルターによって容器の内外の温度変化をシャットダウン。核融合反応に必要なエネルギーが小さくなったことによって核融合反応が発生し、空洞部の中央を起点として眩い光を放つ。容器自体の温度は一切変化していないが、魔法の持続時間を考えると3分が一応の目安。

 核融合反応が起きてから3分が経過したところで、達也は手に持っていた拡声器を通して合図を送った。

 

「実験終了」

 

 先程の展開とは逆の手順で解除されていくが、定率制御フィルターと中性子バリアは容器保護と放射性物質の残留を考慮して展開したままだ。容器内の大気成分分析で放射性物質の検出が見られないとケントから報告が上がり、水槽に容器内を冷やすための注水が開始される。水槽の中に一定量の水が注がれた段階で残る二つの魔法も解除された。

 

 そして、五十里と佳奈に加えて達也を含めた実験メンバーからの後押しという名の目線を感じ、半ば最後の締めを押し付けられた形となったあずさが一つ深呼吸をしてからマイクに自らの声を乗せた。

 

「常駐型重力制御魔法を中核技術とする継続熱核融合実験は所定の目標を達成しました。『恒星炉』実験は成功です」

 

 その言葉に校庭にいた生徒のみならず、校舎の中から見ていた生徒からも歓喜の声が上がった。それはまるで、暴力的とも言える様な熱狂的な歓声であり、魔法の平和的利用へ繋がる魔法の可能性と未来を称えるかのような雄たけびにも聞こえる様なものだった。

 

  ◇ ◇ ◇

 

 その歓声に対して硬直していた神田とその取り巻き記者は、実験装置の片付けと見学していた生徒が校舎に戻っていくのを見たところで現実に引き戻され、悠元に尋ねた。

 

「あれは、一体どういう内容の実験だったのでしょうか?」

「プラズマ化させた重水素と水素を衝突させ、その衝突によってヘリウムを生成する際に生じる質量差をエネルギーとして利用するものです。核融合の原理自体は御存知の筈でしょう」

 

 太陽が熱を発する原理は重水素による核融合反応によるもので、だからこそ『恒星炉』という名称を持っている。核融合の基本概念はアインシュタインが提唱した質量エネルギーの方程式である。しかも、その理論を体現した魔法が既に存在しているのだから驚きという他ない。

 

「核融合の実用化は断念されたはずですが」

「実用化はされていなくとも、研究は続けられております。太陽光エネルギーシステムが主流となった現在においては、資金的な問題で大型実験装置による実験はされていませんが、魔法学以外でも研究は続いています」

 

 魔法による核融合の研究もその一環であり、電磁気制御による核融合は制御が複雑すぎるため、重力制御魔法による核融合が研究されてきた。今回の実験もその可能性を見出すためのものだ。悠元の説明には、廿楽が感心したように聞き入っていた。

 

「核融合の研究とは、魔法による核融合爆発の実現を目指すのですか!?」

「例えば『灼熱と極光のハロウィン』で使用されたような?」

 

 よくもまあ、意地の悪い質問を平気と投げられるな、と内心で質問をぶつけてきた記者に毒づきたくなってくる。しかも、彼らは知らない。その二発の戦略級魔法を放った人間がどちらもこの学校に在籍している事実に。

 しかも、片方は同じアインシュタイン方程式を用いてはいるが核融合爆発ではないし、もう一方は核融合すら使っていない戦略級魔法。詳細を明かせないのは軍事機密故に仕方ないだろうが、憶測でしかものを語れないのか……と内心で独り言ちる。

 その質問に近くで聞いていた廿楽が声を上げようとしたが、悠元はそれを目で制止しつつ記者に答えを返した。

 

「―――笑えない冗談ですね。もし仮に核融合爆発を起こさせるとしたら、例え実験であってもこんな都心で出来るような代物ではありません。例えば核分裂反応の話になりますが、過去の歴史における原爆や水爆の実験は周囲への被害を最大限に考慮して実施していることぐらい貴方方とて承知の話でしょう」

 

 達也の戦略級魔法『質量爆散(マテリアル・バースト)』は水滴単位でタンカークラスの船を丸々呑み込んだのだ。対象の質量をキログラム単位になんてしたら、下手すれば地球すら吹き飛ばしかねないほどの威力を出してしまう。

 質量・エネルギー変換の原理を用いる核融合爆発実験は危険を伴ってしまうため、放射線管理に加えて周囲への人的・物的被害が生じない地下深くか深海クラスの海中でないと実験の安全マージンが保障できない。

 

「それに、核融合反応を起こす魔法は十三使徒であるミゲル・ディアスの戦略級魔法『シンクロライナー・フュージョン』以外確認できていませんし、術式の再現に誰一人として成功できておりません。そもそもの話、単純に爆発を起こすだけならば複数の術式を用いる必要なんてありません。いくら優秀な高校生とはいえ、そんなことが可能と本気でお考えなのですか? もし、今回の実験を『水爆実験』などと謳うようならば、平和的社会貢献の精神を以て実験を行った彼らに対する誹謗中傷と受け取らせていただきます」

 

 術式の再現、という意味ではある意味悠元でも出来ていない。何せ、『シンクロライナー・フュージョン』自体に重要な秘密を抱えているためだが、それを態々口にすることではないと判断しつつ「冗談でも軽々しく魔法を兵器と結びつけようとするな」という意味も込めて言い放った。

 記者たちはどうしても魔法と兵器を結び付けたがっているようだが……そこで、神田は方向性を変えて攻めてみることとした。

 

「これは知人から聞いた話なのですが、三矢殿は3年前の沖縄防衛戦に自ら義勇兵として参戦されていたと聞き及びました。それこそ、軍に強制されての事ではありませんか?」

 

 「何故そのことを」と思ったが、彼の行動を黙認している人物から諭されたとすれば筋は通る。伝えた本人からすれば、神田に対してあくまでも手荒な真似はするなという釘差しも含めてのもののようだが……神田の発言に対して真実なのかと問い質してくる記者たち。

 だが、悠元からすれば却ってありがたかった展開に違いなかった。

 

「その知人とやらには非常に興味がありますが……確かに、私は義勇兵として沖縄防衛戦で戦いました。ですが、私自身が義勇兵として参戦しようと決めたのは私自身の意思で決めたことで、軍の意思や家の都合は一切関係ございません」

「ですが、貴方の知らない間にそういう風に誘導されていた可能性も―――」

 

 黙れ、と言わんばかりに鋭い眼光を向けた。これには問いかけしようとした記者だけでなく神田も押し黙った。

 当時は三矢の姓を名乗っていないが、内面的には三矢の人間だったことは間違いない。だが、あの時は完全な非常事態と認定できる状況だった。大亜連合の艦隊や潜水艦、そして上陸してくる兵士に基地内の反乱兵がいたという情報は沖縄防衛戦後に開示された報告書で記載されていた。無論、そのことを知らない筈がないのだ。

 敵の侵攻という非常事態時に誘導もへったくれもありはしない。国防軍の規則の特例に基づく特務士官としての参戦であり、達也の扱いに関しては“現地にいた義勇兵”ということで報告書に書かれている(本名は記載できないため、その際に“大黒竜也”という名が使われた)。

 あの状況で俺が参戦を決めたのは、置かれた状況からして自分が出なければ不利な状況を覆せなくなると踏んだからであり……近くにいた達也や深雪を含めた面々を守り抜くと決めたからこそだ。

 それを「軍に誘導された」と断ぜられるのは以ての外、としか言いようがない。

 

「無責任な憶測の押しつけはお止めいただきたい。実際に戦場にすら出たことのない貴方に当時の私の心情が推し量れると? 神田先生の取り巻きの方々は非常に優秀ですね?」

「あ、いえ、その……」

「では、それほど優秀な貴方方にお聞きしますが、ここ4年で沖縄、佐渡、横浜と国外の勢力からこの国を守った戦いには何が決定的な要素として働いたと思いますか?」

 

 反撃として放たれたこの悠元の問いかけに、神田とその取り巻き記者は押し黙ってしまった。何故ならば、この答えこそ悠元に言わせるべきだということにだ。無論、その程度の事など悠元も把握している。ならばこそ、彼らの望む答えなんて与えないと言わんばかりに悠元はその答えを述べた。

 

「実に単純な事ですよ。国を護ろうとする心―――この場合は愛国心と申しましょうか。魔法の有無に関係なく、自身が生まれ育った国を守ろうとする心がある者たち。自己評価をするようで癪ではありますが、自分を含めた彼らが死力を尽くして奮闘したお陰で、この国は平和を保っているのです」

 




 記者たちの思考回路というか言動は原作小説(12、24巻)や漫画のダブルセブン編を参考にしています。
 というか、国立大学付属校である魔法科高校に議員のバックがあるとはいえ、我が物顔できるジャーナリストは一体何様なのかと読み返していてそう思いました。
 見えない力は恐怖なんでしょうが、言論という力を振るっている側のジャーナリストが言っていい台詞ではない筈ですが。

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