魔法科高校の『触れ得ざる者』   作:那珂之川

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一日一往復(※)

 全員を何とか現実に戻し、生徒会室に戻ってきた。端末の動かし方も一通り教わったが、そこまで難しいものではないと学び終えたところで、真由美がちょっと、という感じで手招きしてきた。鈴音に断った上で真由美に近づくと、風紀委員会本部を見てきてほしいと言われた。

 

「どうしてです?」

「実はその……摩利は片付けが苦手でね……」

「美嘉姉さんが知ったらスープレックスですよ、それ」

 

 入学する直前、美嘉から摩利のことについて一通り聞かされていた。

 引き継ぎの時、『あんたはいい加減なんだから、それでトラブルを起こしやすい。あと、常日頃から片付けておきなさい』と文面まで丁寧に残していたにも拘らず、風紀委員会本部は酷い有様になっているらしい。

 流石に気になって見に行ったところ、文字通り酷かった。すると、この光景に見かねたのか片づけをしている達也がいた。その達也も悠元の姿に気が付いた。

 

「悠元、どうした?」

「いや、会長に言われて様子を見に来たんだが……俺も手伝うわ。二人だと大変だろ?」

「ああ、助かる」

「別にいいよ。どうせスープレックスをくらうのは委員長だからな」

 

 悠元の言葉に達也は首を傾げるが、その言葉の意味を理解した摩利は冷や汗が流れる。摩利の前任者の制裁はある意味洒落にならないのを知っているからだ。

 

「……悠元君、できれば美嘉さんには」

「姉さんなら『第六感が囁いた』とか言って気付きますよ、絶対に」

「うぐっ」

 

 別に言う気はないが、無駄に勘の鋭い姉のことだから言わなくても飛んできて関節技掛けるところまでがテンプレである。悠元の関節技は美嘉直伝だったりする……美嘉の技の犠牲になっていたのは大概元治というのはここだけの話だ。

 片付けをしながら摩利が達也を風紀委員に入れた理由について触れる。すると、達也がそれに対して意見を発する。

 

「二科生対策としてはむしろ逆効果かと。同じ二科生の先輩たちは下級生に取り締まられるわけですから」

「だが、同じ1年からは歓迎されると思うぞ」

「一科生からは歓迎に倍する反感があるかと思いますよ」

 

 自分を送り出すように励ましたクラスメイトの顔が思い浮かびつつ、達也は摩利の言葉に対して反論めいた言葉を発する。そこに悠元が言葉を発する。

 

「達也、俺も1年の一科生なんだが?」

「悠元は例外中の例外だな。お前の姉達が、聞けば聞くほど人間離れしているようにしか聞こえないからな。無論お前も」

「酷い言い草だな、オイ……ま、反感っていう意味じゃ筆頭は森崎かな」

「森崎なら、教職員推薦枠で風紀委員会(ウチ)にはいることになったぞ」

「えっ」

 

 摩利の言ったことに対して、達也は思わず積み上げていたものを乗せ損ねていた。それを見た摩利は達也の驚く顔を見て笑みを零した。そのことには悠元も驚きを隠せなかったが、端末を立ち上げて状態を確認する。

 

「君たちも、驚くことがあるんだな」

「それはそうですよ」

「驚かなかったらただの強面ですよ、それ」

 

 しかし、未遂とはいえ森崎が教職員推薦枠とは驚きだ。燈也は……正直荒事に巻き込まれたくないってタイプだし、話が仮に来ても断った可能性が高いだろう。

 

「……悠元、それは俺のことを言っているのか?」

「俺、名前は一切出してないんだけど?」

「からかい方が深雪に似てきたな、お前は」

 

 そんな会話をしつつ端末のデータ整理をし始めたところで二人の男子生徒が入ってきた。腕章からして風紀委員だということは直ぐに分かった。その二人は挨拶をすると、摩利の姿が目に入った。

 

「ハヨーッス」

「おはようございます」

「お、姐さん! いらしてたんですかい」

 

 姐さんという言葉は妙に合っているなと思いつつ、表情に出さないよう努める。すると、割と細めの男子生徒が踵を正して報告をする。

 

「委員長。本日の巡回終了しました。逮捕者、ありません!」

 

 その言葉に対して、摩利が返礼の代わりに姐さんと呼んだ短髪の男子生徒を丸めた紙で叩く。スパンッ、という乾いた良い音が部屋の中に響かせつつ、摩利はそれで頭を何度も叩きながら注意でもするように叫ぶ。

 

「姐さんって言うな! お前の頭は飾りか!」

「そ、そんなポンポン叩かないで下さいよー……ところで委員長、新入り達ですかい?」

 

 摩利に叩かれた男子が悠元と達也に気付いて尋ねると、摩利はそれに対して答えた。

 

「横にいるのはな。端末を見ているのは生徒会役員で手伝ってもらっているわけだ」

「へぇー……そっちのは、紋無し、ですか」

辰巳(たつみ)先輩、その発言は禁止用語に抵触する恐れがあります。この場合、二科生と呼ぶべきかと思われます」

 

 二人の男子生徒は悠元と達也を値踏みするような視線を向けていた。別段困るものではないと思いつつ端末を弄り続けていると、摩利が二人に純然たる事実を告げる。

 

「二人とも、そんな了見では足元を掬われるぞ。……ここだけの話だが、さっき服部が足元を掬われた」

「何と、入学してから負けなしの服部が?」

「ああ、正式な試合でだ」

「へえ、そいつは頼もしい限りだ」

「逸材ですね」

 

 それを見た摩利がニヤニヤと、からかうようにその事実を告げると、二人の生徒の表情は真剣味を増した。まるで褒めるような言葉に達也は驚くような素振りを見せた。すると、端末の調整を終えた悠元が近づき、摩利は視線を悠元に向けた。

 

「おや、そっちは終わったのか?」

「ええ。―――生徒会会計、1年の三矢悠元です」

 

 役職については特に会長と副会長以外上下の関係もないため、書記に深雪が就任し、会計に悠元が就任した。すると、その男子生徒二人は悠元の名字にやはり注目した。

 

「三矢……すると、美嘉(ねえ)さんの弟ってことですかい?」

「ああ、そうだ。これもここだけの話だが……正式な試合で彼は十文字を破った。十八番(おはこ)である『ファランクス』を破った上でな」

「なっ!?」

「あの十文字会頭をですか……彼といい、今年の1年は逸材揃いですね」

 

 3年でトップクラスの実力を持っている克人を正式な試合で破った―――それも1年の男子が、という事実。それも正当な評価をする二人に悠元も驚きを隠せない。すると、摩利は意外だろ? と問いかけつつ喋った。

 

「この学校にはブルームだ、ウィードだとそんなつまらない肩書きで優越感に浸ったり劣等感に溺れたりする奴らばかりだ。正直言って、うんざりしていたんだよ、あたしは。それでも、前任者―――美嘉さんはあたしの話をちゃんと理解してくれていてね。その縁で風紀委員長に抜擢されたわけだが」

 

 それでも摩利が入学して風紀委員になった時はかなり減った方だと話す。それを成したのは先代の風紀委員長―――三矢美嘉だった。時には校長相手でも一歩も引かなかった問題児的な側面も持っていたが、一高において優秀な成績を打ち立てていたことも確かであった。

 

「幸い、真由美も十文字もあたしがこんな性格だと理解してくれているから、生徒会推薦枠と部活連枠はそういう優越感の少ない奴を選んでくれている。教職員推薦枠のこともあるからゼロってわけにはいかないが……君にとっても、居心地の悪くない場所だと思うよ」

 

 その摩利の説明ののち、男子生徒二人は達也と悠元に自己紹介をする。

 

「3-Cの辰巳鋼太郎(こうたろう)だ。腕の立つ奴は大歓迎だ。よろしくな、司波に三矢」

「2-Dの沢木(さわき)(みどり)だ。歓迎するよ、司波君に三矢君」

「……1年の、司波達也です。こちらこそ、よろしくお願いします」

「同じく、よろしくお願いします」

 

 達也と悠元は先輩二人と握手を交わしつつ挨拶をした。こうして忙しい一日が……まだ終わらなかった。その夜、悠元は達也にコーヒーを差し入れしようと司波家の地下に向かう。すると、CAD調整室から気配を感じて扉を開く。

 

「達也、コーヒーの……」

 

 さて、状況把握を開始する。

 モニターの椅子が横倒しになっている。達也が横たわっていて、その近くには深雪が座っている。達也は普通の過ごしやすい服装だが、深雪の場合は下着の上に1枚羽織っているだけ。

 恐らく、夕方の模擬戦を見て深雪が対人戦闘も見据えた術式の調整を頼みに来たのだろうが……あ、二人ともこっちに気付いた。

 

「……悠元?」

「あ、あの、悠元さん。これは、その……」

「ああ、うん。CADの調整でイザコザあったんだよね。コーヒーはここに置いとくから、冷めないうちに飲んで。では、ごゆっくり」

 

 ……これでいいよね? うん、兄妹のスキンシップに首を突っ込んだら馬に蹴られて地獄まで落ちそうだ。悠元はそう思いながら自室に戻り、明日に備えるのであった。

 一方の達也はというと、悠元が今の光景を見て兄妹間の何かだと思ってそそくさと出て行ったところまでは読み取れた。本人もCAD調整のためのものだとは理解しているだろう。

 兄妹の禁断の愛というものは、いくら妹に対して激しい情動が残っている達也でも常識的に考えてダメであると認識していた。悠元も恐らく兄妹のいざこざ程度であると思っている筈だ。

 

「……お兄様のせいですからね」

「深雪、それは明らかに理不尽というやつじゃないのか?」

 

 ただ、何をどう勘違いしたのか……深雪から放たれた謂れのない責任発言に、達也はそう返すしかできなかった。

 

  ◇ ◇ ◇

 

 達也が風紀委員に選出された翌日、悠元は職員室に呼ばれた。個人で受けたオリエンテーションで伝え忘れた連絡事項の関係ではあったが、教職員側で処理できる問題とのことだった。ただ、一応伝えておきたいということで呼ばれただけなので、ものの30秒も掛からなかった。

 

「あの程度なら別に端末のメッセージ程度でもいいのに……ん?」

 

 すると、悠元の視界の先には3人の男子生徒の姿があった。先日の騒ぎの一科生(とうじしゃ)側であり、その中には森崎の姿も見受けられた。

 彼らの表情は何だか「納得がいかない」という感じであったために聞き耳(『聴覚強化』で音の指向性を森崎らがいる方向だけから拾う)を立ててみると、彼らの話している内容は風紀委員に関してだった。

 確か、今朝は“欠員”―――卒業した元3年生の風紀委員の抜けた穴のことで、実力が伴う役職だけに進学などが決まっている生徒に限定される―――の補充が間に合ったということで風紀委員会の招集が掛かり、達也が先に向かったことは知っていたので、そこでの顔合わせで森崎が達也と遭遇したのだろう。

 

「全く、おかしいと思わないか? 一体どんな手品を使ったんだか……」

「そう思うだろう? しかも、生徒会推薦枠だとさ。どうせ、司波さんに泣きついたに決まってる」

(何で達也が弱い前提なんだ、こいつらは……)

 

 仮に達也があの場に介入していた場合、体術だけで一科生側全員を圧倒できると推察できる。

 何せ、自分の場合は『抜き足』で彼らに割り込み、『術式解体(グラム・デモリッション)』で起動式を片っ端から吹き飛ばしたのだから、達也はそれに準ずる動きで制圧可能なレベルと予測している。

 “あの程度の技巧”を見破ったのは確実に達也だけだ。エリカはそれとなく予想出来ているかもしれない。深雪は……勘だけで気付くかもしれないと思ったのは異常なのだろうか。

 

 というか、燈也から聞き及んだ範囲だけ見ても、深雪にアピールしようとして失敗しているのに、自分にやられて懲りていないようだ。

 尤も、その程度で心が折れるようでは魔法師として食べていけるだけの実力など到底身に付かないだろう……常識外れの鍛錬を受け続けて魔法師としての一般常識が破壊されているかもしれないが、精神を如何に安定させられるかが魔法の発動において重要な要素の一つとなるため、別におかしいことは言っていないつもりだ。

 

(てか、そろそろその会話を止めとけよ……深雪に凍らされても知らんぞ?)

 

 結局、森崎たちの達也に対する“悪口”は1年A組の教室に入っても続き、「二科生(ウィード)一科生(ブルーム)を取り締まるなんて失礼極まりない話だ」とか「僕の足を引っ張らないでもらいたい」などと平然と発言した。

 そしてそれは、当然同じ教室にいる深雪の耳に入るわけで、結果として1年A組の教室は一気に気温が下がり、一科生の風紀委員―――即ち達也の悪口を述べていた3人も凍らされていた。これだけの事象干渉力を平然と発動できる深雪に内心で感心しつつ、事態の推移を見守った。

 流石に“全面凍結”となれば対処するつもりでいたが、深雪は寸止めの形にしつつも生徒会役員として忠告し、森崎が了解の返事を返したところで深雪の“魔法”が解除された。それ以上のトラブルは起きないと判断し、悠元は「何も見なかった」ことにして自分の席に着いたのだった。

 

 新入部員勧誘週間。新しく入った1年生を獲得しようと各部活動が躍起になる時期。この時は部活のパフォーマンスを行う関係で一時的にCADの所有制限が緩む。この辺は生徒会長をしていた佳奈や生徒会長・風紀委員長をしていた美嘉からいろいろ聞いている。

 

「勧誘合戦?」

「ああ。各クラブからすれば人数確保は予算確保。ある意味熾烈になるわけよ。それだけだったら問題はないんだが」

「何かあるの?」

「これは表向きにされてない話だが、新入生の入試成績が各クラブに出回っていて、成績優秀者は特にターゲットとなる」

 

 普通なら個人情報保護とかに抵触しかねないものだが、学校側としては九校戦を睨みつつ、クラブ間で競争を煽って切磋琢磨させたいという狙いから見ない振りをしている、というものだ。当然、こんな事情は一部の人間しか知らない。

 当然新入生が知るはずもない話を悠元が知っているのは、自身の姉たちと今の生徒会長である真由美から聞いていたからだ。

 

「それって本当なんですか?」

「生徒会長をしていた姉3人と七草会長にも確認したら本当のことだってな。ほのかと雫もそうだが、燈也も真っ先に狙われる可能性があるから気を付けておけ」

「解ったよ、悠元。心に留めておくことにする」

 

 雫とほのか、燈也にそのあたりのことを伝えた後、立ち上がって教室を出た。何せ全校生徒とは言わないが数百人をたった9人の風紀委員で監視できる筈もなく、当然その補佐として生徒会も忙しくなるので、早速生徒会役員としての仕事というわけだ。

 するとその途中、先程教室にはいなかった深雪と合流して生徒会室に向かう。どうやら達也と途中まで一緒に行っていたのだが、『俺のことはいいから悠元のところに行ってやれ』と言われ、その言葉に従ったとのこと。

 別に深雪と付き合っているわけではないんだがなぁ……嫌というわけじゃないが、身の丈に合ってないような気がする。なお、当の達也は風紀委員会本部だろう。今日から勧誘週間なので達也は風紀委員として巡回することになり、二科生の風紀委員という前例のない要員なのでトラブルが起こらないことを祈りたいが……達也ってトラブルメイカーな気質があるからな。

 

「達也がねえ……要らぬ気を回すぐらいなら、彼女の1人でも作って安心させろって言いたいが」

「体面的なことに興味がないお兄様にそれは酷ですよ、悠元さん」

「解ってはいるけどさ、ある程度刺激を与えていかないと別の方面で余計酷くなるだけだ……そっちの趣味があるとか言われたら、俺が真っ先に被害を受けかねない」

「……確かに、それはお兄様の風聞にも宜しくありませんね」

 

 望み薄かもしれないが、何もしないよかマシ、ということだろう。そんなことを思いつつ、悠元と深雪は生徒会室に入った。

 すると、忙しいとぼやきながらモニターを見つめている真由美に対して、その背後に立っている摩利は冷ややかな目を向けていた。

 

「おい、何だそれは?」

「えっ? ……だって、今日は私だけ配膳機(ダイニングサーバ)だったから寂しかったの! って、いったーい!」

「そういうことは家でやれ!」

 

 どうやら真由美は弁当のおかずのレシピを検索していたようで、摩利の鉄拳と説教が炸裂した。こんな光景など生徒会では日常茶飯事なので、メンバーの中で一番付き合いの短い深雪もすでに慣れていた。悠元に関しては真由美の性格を知っていたので、初見の時点で逆に納得していた。

 日常茶飯事といえば、真由美がよく悠元に絡むので深雪もこれにはよく反応してしまうことだろう……修羅場というには程遠いじゃれ合いみたいなものだが。

 

 新入部員勧誘週間は生徒会も風紀委員や部活連の補助に入る。部活連の幹部も風紀委員会の補助に入るが、違反者・逮捕者については基本的に風紀委員が対応する。その辺の説明を摩利がした後、悠元が問いかける。

 

「渡辺委員長。もし周囲に風紀委員がおらず、犯人が逃走を図った場合は?」

「その場合は自身で判断して対処してくれると助かる。流石に風紀委員だけで全てのトラブルを対処するのは難しいからな。できれば、連絡は私か真由美にしてくれ」

 

 副会長の服部が部活連に詰めることとなり、生徒会長である真由美は逮捕者への対処という意味で生徒会室に缶詰めとなる。というか、生徒会メンバーがほとんど女性なため、残る男性メンバーとなる悠元が自動的に巡回要員となる。

 なお、風紀委員長の摩利以外に真由美もその対象に含まれていることを小声で尋ねると、次のような答えが摩利から返ってきた。

 

(渡辺委員長は分かりますが、七草会長は何故ですか? 本部へ詰めることになる服部副会長ならまだ分かりますが)

(実は真由美が駄々をこねてしまってな……済まないが、この期間だけだから我慢してくれると助かる)

(……分かりました)

 

 人が多いところからではなく少ないところを歩いていると、気が付けば体育会系部活動の部室の前に来ていた。部室の前にある立て看板からするに、ここはどうやら山岳部の部室らしい。すると、その部長らしき人に声をかけられた。

 

「お、入部希望者かい?」

「いえ、生徒会会計の三矢です。今は風紀委員の手伝いをしてまして」

「ここら辺は、流石にトラブルなんて起きないな。ところで今『三矢』と名乗ったようだが、ひょっとして美嘉先輩の弟かな?」

「ええ。姉をご存じで?」

 

 その部長が言うには、美嘉は生徒会をしながら山岳部に入っていて、1週間でトレーニングコースを10周するまでになったと話した。それについていこうとしたら部員全員の体力が見違えるように伸びたことも話してくれた。

 そんな姉の武勇伝を聞いたところで山岳部の部室に2人の男子生徒が来ていた。しかも、その2人はどちらも悠元にとって顔見知りともいえた。

 

「あれ、悠元?」

「レオに燈也? これまた珍しい組み合わせだな」

「あはは、やっぱり意外でした?」

「そりゃあなあ……」

 

 外見的にレオは山岳部がバッチリ似合うが、燈也に関してはイメージ的に文化系がしっくりきていた。しかも、一科生と二科生というある意味異色な組み合わせ。どうやら2人とも山岳部に入るらしいが、燈也は大丈夫なのかと尋ねるとこう言った。

 

「大丈夫ですよ。夏休みは一日一回富士山の麓から山頂を往復(ジョギング)してましたから」

「……なあ、レオ。燈也の見る目が変わりそうなんだが」

「安心しろ悠元、俺もそう思う」

 

 仮に魔法込とはいえ、それを夏休みの間ずっとやっていたという燈也の発言に、やっぱり彼も“十師族”なんだと実感しつつ、悠元とレオは燈也の持つポテンシャルに驚きを隠せなかったのであった。

 




 ※7/29 優等生アニメ第3話より教室凍結のシーンを加筆。

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