魔法科高校の『触れ得ざる者』   作:那珂之川

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二つの『アンタッチャブル』

 “この世界”の達也の出生に関する事実を知り、頭を抱えたくなる悠元であったが、それは今更か、と諦めた上で真夜の話を聞く。

 

「悠元さんはまた姿を隠した上で夕食に参加してください。次期当主の方々の証人となって頂く予定ですので」

「分かりました。それに付随することなのですが、勝成さんのガーディアンである堤琴鳴さんと堤奏太さんの二人についてご報告を」

 

 悠元は勝成らの妨害を受けた際、矢面に立つ形で琴鳴と奏太の2人と戦い、更に途中で介入した勝成すら一撃で退けたこと。そして、琴鳴と奏太の2人に穂波や水波と同じ処置を施したことも報告すると、真夜は笑みを零した。

 

「あら、やはり悠君の仕業でしたか」

「何かあったのですか?」

「実は着替えている時に葉山さんから連絡がありまして、琴鳴さんの胸部が大きくなったそうで、それを目の当たりにした勝成さんが琴鳴さんの魔法で吹き飛ばされたと」

 

 自分の服装など気にせずに慌てて介抱する琴鳴の胸部を見た勝成は、「ここに天国があったのか……」と言って気絶したらしく、琴鳴は慌てふためいて勝成を自分の胸に押し付けるように抱きしめたらしい。奏太は琴鳴の魔法の巻き添えを食らって気絶したらしく、事態の収拾に水波が駆り出されて何とか収まったらしい。

 

「……勝成さんと奏太さんは死んでませんよね?」

「琴鳴さんが無意識的にセーブしたようでして。愛の成せる業って凄いわね。何にせよ、勝成さんが次期当主辞退の代わりに琴鳴さんと婚姻するのは認めようと思います」

「その辺は四葉家の家内の事ですのでお任せします」

 

 そして、この時期に話すべきことではないが、周公瑾の師にあたる顧傑についての情報を提供することにした。出来るだけ早い時期に話しておけば、対策のしようもあると考えたからだ。

 

「真夜さん。先日達也が討伐した周公瑾ですが、更に上の存在―――黒幕の顧傑に関してです。そちらも彼の術などについての詳細はないでしょうから、こちらをお渡しします」

「あら、これはご丁寧に。これはお礼にもう一度」

「止めてください。深雪に凍結されかねません」

「ふふ、冗談ですよ」

 

 悠元は『記憶編纂(メモリーライズ)』で電子データ化した顧傑に関する詳細な情報が入ったメモリーカードを真夜に差し出し、真夜は素直に受け取った上で冗談めいたことを言ったので、悠元は勘弁してほしいと降参の意思を示した。

 

「でも、剛三さんですら知らなかった情報を良く調べられたわね」

「調べたというよりは、偶発的に入手したという言い方が正しいでしょうね。周公瑾は広義的に言えば“パラサイト”の類で、肉体を消滅させた後に自分を乗っ取ろうと目論んだようで」

「その先は想像が付いてしまうわね。周公瑾も哀れと言うべきかしら」

 

 情報の出所が顧傑に最も近い「周公瑾」なのだから、顧傑に関する情報の信憑性は疑うべくもないし、それを消滅させた悠元の手腕は最早“世界最強”の名を冠しても過分ではないと真夜は感じた。

 

「この情報を師族会議に流す際は剛三殿か千姫殿の名で出しておきます。悠君もそのほうが宜しいでしょう?」

「ええ、そうしていただけると助かります。事前に爺さんと母上にはこの情報を提供していますので、上手く辻褄は合わせられるかと思います」

 

 そうして話し込んでいると葉山が姿を見せたので、『仮装行列(パレード)』で再び姿を変える。その手際に葉山は「流石でございます」と褒め、真夜に至っては嬉しそうに悠元の右手を握っていた。

 これでは真夜に「婚約者が出来ました」と言っているようなものではないか……と思いつつも、葉山がどうにもならないといった感じで首を横に振ったので、奥の食堂までの辛抱だと諦めつつ真夜を案内するような感じで歩いていく。

 

「…………」

「み、深雪? どうしたんだ?」

「お兄様、何故だか分かりませんが、叔母様に嫉妬してしまうんです……」

「み、深雪姉さま……」

「その、落ち着いてください……」

「……」

(この際、悠元君でもいいから早く来てー! 私には無理よー!)

 

 その頃、奥の食堂では魔法が漏れないように我慢こそしているが、かなり機嫌が悪い深雪の様子に達也も思わず動揺を隠せず、文弥と亜夜子は何とか抑えるように宥めており、勝成は下手に首を突っ込むと危ないと判断して顔を伏せるようにして目線を逸らし、夕歌は内心で悠元の助けを呼んでいたのだった。

 

  ◇ ◇ ◇

 

 奥の食堂の扉―――上座側の扉の前に着いたところで真夜が悠元から手を放し、その両脇に悠元と葉山が控える感じとなる。傍に控える使用人が扉を開けてそのまま進むと、次期当主候補世代―――右側は手前から達也、深雪、夕歌。左側は手前から文弥、亜夜子、勝成の六人。

 普通ならガーディアンである達也は自分で椅子を引くのだが、今回は給仕役の使用人が椅子を引いた。他の五人も同じように使用人が椅子を引いていた。

 

「皆さん、急な招待にも関わらず、よくおいでくださいました」

 

 そう言って真夜が葉山の引いた椅子に腰を下ろすと、他の六人も腰を下ろした。そして、真夜は悠元の方を見やった。

 

「本当ならば身内のみといいたいところですが、貴方も色々あって食事に在りつけておりませんので、折角ですからご一緒にいかがですか、()()()()?」

 

 このタイミングで正体を明かす、というのは見知らぬ人間だと色々疑問が出るからだろう。真夜の意図を理解した悠元は『仮装行列(パレード)』を解除すると、事情を知っている真夜と葉山、達也と夕歌以外の面々は驚きを露わにした。

 そして、悠元は四葉の次期当主候補の中で一応初対面となる勝成に視線を向けて自己紹介をする。

 

「昼は大変失礼を致しました、新発田勝成さん。元十師族・三矢家三男、護人・神楽坂家が次期当主、神楽坂悠元と申します。貴方や貴方のガーディアンのお二人のことは燈也―――六塚殿から聞いておりました」

「……成程、道理で私が勝てなかったわけだ。私の方も部下共々申し訳ありませんでした」

「お気になさらず。勝成さん自身に責任の所在はありませんし、騙していたのは私の方ですから、お気遣いなく」

 

 勝成の言葉にそう断りを入れた上で、悠元は真夜と向かいあう形で下座の空いている椅子に自ら椅子を引いて腰を下ろした。

 四葉家のスポンサーである神楽坂家の人間が上座に座らなくていいのかと思うだろうが、そのことを知っているのは次期当主候補でも限られている上、今回の集まりはあくまでも四葉家の次期当主に関するもの。下手に上座に座って要らぬ勘繰りをされるよりはマシだと判断した結果だ。

 悠元の左側に座っている夕歌はホッとした表情を浮かべ、深雪の表情は先程と打って変わってご機嫌だった。これには達也と文弥、亜夜子が揃って「本当に助かった」という目線を送っていて、一体何があったのかと思わざるを得なかった。

 

 この中には成人している人間もいるが、酒はなく洋食のコース料理(厳密なコースというよりはそれっぽい感じの料理の出し方)を丁重に頂く。この辺は明日が正月で御節が出るからという理由が最もだろう。

 そして、食事を終えたところで真夜が切り出した。

 

「―――さて、そろそろ本題に入りましょうか。勝成さん、夕歌さん、深雪さん、文弥さん。貴方達は四葉家次期当主候補の四人。いよいよ明日の慶春会で次期当主を指名します……というのは、皆さんもある程度は予想がついていると思いますが」

 

 真夜の言葉に四人の表情が引き締まる。ここまでは原作通りの展開だ。だが、真夜はここで唐突に最大級の爆弾発言をした。

 

「実は、五人目の次期当主候補がおりまして、その方を皆さんに紹介したかったのです」

 

 その発言に六人の視線が悠元に向けられるが、肝心の悠元本人は興味が無いといった感じで目線を逸らしていた。大体、神楽坂家次期当主に指名されている人間が四葉家次期当主に指名されるはずなどないし、いくら神楽坂家の繋がりがあろうとも脈略が無さすぎる。

 深雪の婿養子という線はあるだろうが、その線は当にない事など真夜から確認済みだ。

 

「真夜殿、これでは話が進みません。私が五人目の候補ではないかと思われ、次期当主候補の方々も困惑しております」

「あらら、ごめんなさい。皆さん、悠元さんは四葉の大事なお方として今回の見届け役を担って頂いてるだけですので悪しからず」

「……叔母様、発言の許可を頂きたいのですが、宜しいでしょうか?」

 

 ここで発言したのはこの中で筆頭候補に挙げられる深雪だ。悠元の助け舟を出したいという気持ちもあるが、深雪が一番気になっているのは深雪よりも上座に座っている達也の存在であった。

 

「深雪さん。ええ、宜しいですよ」

「では、失礼して……先程、叔母様が仰られた『五人目』の次期当主候補というのは、お兄様が私よりも上座に座っていることに関係しているのでしょうか?」

「流石ね、深雪さん。そう、五人目の次期当主候補は貴方ですよ、達也さん」

 

 真夜が述べた台詞に、悠元以外の面々が驚きを隠せない様子で、一方の達也はまるでこの事態を予測していたような様子を見せていた。今までの四葉本家での扱いから一変すれば、達也でも一体何があったのかを疑問に思うだろう。

 ただ、次期当主候補にまで担ぎ上げられるのはさしもの達也も予想外と言った感じの様子が垣間見えた。すると、ここで疑問を呈したのは勝成だった。

 

「御当主様、ご質問がございます」

「何かしら、勝成さん」

「御当主様もご存じのことですが、達也君は確かに優れた戦闘魔法師であることは私も認めております。ですが、達也君から感じる魔法力に関しては、それ程のものとは見えないのです。御当主様は何故、このタイミングで達也君を次期当主候補として発表したのかをお教えいただきたい」

 

 勝成の疑問は至極尤もと言えた。次期当主候補の中で深雪は達也の実力を信頼しているし、文弥と亜夜子は達也に好意的な部分もあり、彼の実力を良く知っている。夕歌も無論達也に掛けられている『誓約(オース)』の関係で達也の実力を把握している。

 だが、達也の『誓約(オース)』を解除したところで深雪の事象干渉力に匹敵し得るとは考えられない、と勝成はそう思ったのだろう。その疑問を解決すべく、真夜はその答えを述べる。

 

「勝成さんがそう思っても仕方がない事なのです。何故なら、現在の達也さんの魔法力は『誓約(オース)』と3つの封印で大幅に制限しているのですから」

 

 この封印というのは、最初津久葉家の『誓約(オース)』によるものと思っていた。だが、神楽坂家に伝わる魔法を学んだことで、達也に掛けられた封印は天神魔法における精神干渉系魔法『極星霊座(きょくせいれいざ)』であると判明した。

 この魔法は被術者の魔法力や魔法演算領域といった精神領域の一部を半永久的に凍結し、そのトリガーとなる対象者の特定の行動を被術者に施すことで封印が解除される仕組みだ。簡単に言えば、トリガーを握る対象者がハイリスクを負わない『誓約(オース)』の上位互換版と言える。

 なお、その解除方法は口付け―――これを設定した千姫本人曰く「お姫様のキスで王子様が覚醒するってロマンチックじゃない?」とのことらしいが、起こす相手は王子様というより魔王と呼ぶ方が妥当な気もする。

 

「論より証拠を見せた方がいいでしょう。深雪さん、亜夜子さん、それに夕歌さん。達也さんに口付けをしてあげてください。それですべてハッキリとしますので」

 

 『誓約(オース)』の場合は深雪が達也の額に口付けをするのだが、この世界の場合は罷り間違って『極星霊座』が解除されないようにするためのものだと考えられる。亜夜子はともかく、深雪と夕歌は不安げな表情を向けていたので、悠元は二人に声を発した。

 

「それが達也の力を証明するためなら、今回は目を瞑る。さあ、遠慮せずにやってくれ」

「悠元、それは俺が言いたい台詞なのだが」

 

 達也の言いたいことは理解するが、達也が四葉の次期当主候補に足り得ると証明するために必要な事ならば、ここは我慢するのが自分の選択だろう。それに、深雪が四葉家における兄の待遇改善を求めてきた節はずっと感じていたので、その深雪の想いを無駄にしたくない。

 

「ありがとうございます、悠元さん……お兄様、いきます」

 

 思い切りの良さが出てきたのか、深雪が先頭を切る形で達也と口づけを交わす。そして、夕歌も「こうなったらやるしかないわよね!」と言った感じで口づけをし、残すは亜夜子となったわけだが、何時も大胆な行動をする亜夜子にしては何だかおとなしかった。

 そして、その理由を悠元は察してしまった。

 

「……ファーストキスか」

「い、言わないでください! しかも、こんな知り合いの前で……特に文弥の前でなんて」

「いや、なんで僕がいると恥ずかしく感じるのさ!?」

 

 文弥の言うことも尤もだろう。あれだけ弟をからかおうとしていた姉がいきなり女らしい態度を見せたことで、流石の文弥も今の発言は“理不尽”だと思ったのだろう。これをみた真夜が悪戯っ子のような笑みを浮かべて達也と亜夜子に提案した。

 

「では、一時的にこちらの扉を使っても宜しいので、その扉の向こうでしても良いのですよ?」

「御当主様!?」

「はあ……」

 

 これでは埒が明かないと判断したのか、達也は立ち上がって亜夜子の傍に寄った。自分の愛しい人が傍に居るせいか、いつものような発言がなかなか出てこない亜夜子の様子を察してか、達也はこう尋ねた。

 

「亜夜子、今まですまなかった」

「た、達也さん?」

「知っての通り、俺は深雪以外に激しい情動が持てずにいた。だが、亜夜子が俺のことをどう思っているかは悠元や深雪に散々言われてしまった……その上で、亜夜子は俺を愛してくれるか?」

 

 明らかに恋の告白じみている言葉に、悠元は徐にカメラを取り出してこっそり撮影する。レコーダーも起動しているため、音声データも残すつもりだ。それを知ってか知らずか、亜夜子は達也の言葉に対してハッキリと答えた。

 

「何を今更。達也さんは私の心を射止めたのです。私だって、深雪姉さまのように好きな人と添い遂げたいのです。父が迷惑を掛けた以上、達也さんの愛人でも構いません。私のファーストキスを貰うのですから、絶対にお傍においてくれないと襲ってしまいますよ?」

 

 そういって、亜夜子は達也と口づけを交わす。そして、3つの『極星霊座』の封印が解かれたことで、達也の身体から膨大な量の想子が噴き出す。それは深雪が『誓約(オース)』を解除した時に発するサイオンよりも桁外れに多いのが見て取れた。

 この想子波は他の次期当主候補も感じており、一番近くにいる亜夜子は達也の膨大な想子量に“酔って”しまい、達也の胸に凭れ掛かった。他の候補や真夜に関しては、悠元が溢れ出すサイオンを制御して想子酔いを防いでいた。

 

「あ、す、すみません達也さん。あまりの想子量で、その、酔ってしまいまして」

「いや、俺の方こそ済まない。それと、悠元も感謝する」

「気にするな。今まで少ない魔法力を上手くやりくりしていたんだ。そんだけ膨大な魔法力を手に入れていきなり制御しきるのは達也でも難しいだろうからな」

 

 それに、良い絵も撮れたからな、とまでは口に出さなかった。このデータは後で亜夜子に渡すのは確定となり、亜夜子にとってはいい記念になるか、思い出して恥ずかしがるか……そこは本人次第と言うところだろう。

 達也は絶対に気付いているだろうが、必要なら達也にマスターデータを渡すだけで解決する。他人の恋路を温かく見守ることはあっても、極力首を突っ込みたくないからだ。

 亜夜子の想子酔いは対応した経験のある悠元が『癒しの風(フローラル・ウィンド)』で治療し、達也が自分の席に戻ったところで真夜が声を発した。

 

「さて、これで達也さんが次期当主候補であると証明できたことでしょう。勝成さんも納得していただけたかしら?」

「はい、それはもう充分に感じました。御当主様、新発田家は私―――新発田勝成の次期当主候補の地位を返上し、四葉家の次期当主候補に司波達也君を推薦したいと考えております」

 

 原作だと、勝成は黒羽家の文弥、津久葉家の夕歌に続く形で多数決の論理に従って次期当主の座を返上していた。その対価として琴鳴との婚姻を認めてほしいと頼んだのだ。

 だが、勝成は先程の達也の魔法力を見ただけでなく、姿を偽っていたとはいえ悠元と戦闘する形となり、敗北を喫した。この時点で自分が四葉の次期当主となるには不相応と判断したのだろう。

 

「あら、それは先程の達也さんの魔法力を感じての事かしら? それとも、先程悠元さんが述べていたことかしら?」

「それらもありますが、四葉を四葉たらしめる意味において、私は御当主様に近い血縁者の達也君と深雪さんのどちらかが次期当主となるべきだと考えています。津久葉家と黒羽家が深雪さんを推すというのであれば、多数決の論理に従います。当主・(おさむ)からは次期当主候補の進退と推薦は自分に任せると仰っておりましたので、したがって私は達也君を推薦いたします」

 

 四葉の『触れてはならぬ者(アンタッチャブル)』の名を体現する意味において、勝成は真夜に近い血縁者の達也か深雪が次期当主になるべきと進言した。まさか勝成がいの一番に名乗り出たことは想定外と言えよう。だが、勝成が最初に辞退した意味は恐らく、彼がそれと引き換えに望むことだろう。

 

「それで、次期当主候補の地位を返上するにあたり、御当主様にお力添えを願いたいことがございます」

「もしかして、貴方のガーディアンである堤琴鳴さんとのご結婚に私から口添えをして欲しい、ということですか?」

「はい。父からは調整体が故に止められておりましたが……」

「そうね……愛する者同士を引き裂く真似は出来ないし、勝成さんが新発田家当主を継ぐことになるなら問題はないでしょう。それに勝成さん、琴鳴さんは調整体であっても既に調整体ではありませんから」

「? それは一体……もしや、琴鳴の体格がより女性らしく変化したことと何か関係が?」

 

 体格の変化、という単語に達也と深雪は悠元の方を見やると、悠元は黙って頷きつつグラスの水に口を付けていた。疑問を浮かべる勝成は、変化の前後で関わっている人間となれば一人該当することに気付き、悠元の方を見やった。

 

「……もしや、君が琴鳴を?」

「ええ、俺の固有魔法である『領域強化(リインフォース)』によって、琴鳴さんと奏太さんは普通の人間と同じ寿命を獲得しています。言っておきますが、このことは部外秘でお願いします。無論、身内が相手でも漏らすことは許しません。最悪記憶を消し飛ばさないといけませんので」

「そうか……感謝する、神楽坂殿」

「いいんですよ。その代わり、末永く幸せにしないと許しませんから」

 

 幸いにも、ここにいる人間は勝成を除くと悠元のことをかなり知っている部類の人間しかいない。それでも、悠元の固有魔法に関して2つとも知っているのは夕歌だけで、それ以外は『領域強化(リインフォース)』しか知らない。一応治療魔法のような触れ方にしたが、この魔法の本質である“構造情報干渉・強化”の部分は話せる相手が大分限られる。

 少なくとも、これを期に達也と深雪に話しておくことは必要だと考えている悠元であった。

 




 四葉家への顧傑に関する情報提供は師族会議辺を見越してのものです。

 本来ならば格上となる主人公が上座に座らなかったのは、その食事会の目的が四葉の次期当主に関するものだと理解しており、その場でスポンサー面する必要が無いと判断したまでの事です。

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