魔法科高校の『触れ得ざる者』   作:那珂之川

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彼の影が薄いと言われたので、丸々一本書き上げました。


自分の恋路、他人の恋心

 僕の名前は六塚(むつづか)燈也(とうや)。六塚家現当主六塚(むつづか)温子(あつこ)の弟として生を受けた人間だ。

 

 男なのにまるで女性のような華奢な体格をもって生まれていた……言っておくが、性別が男だということを示す生殖器はしっかりある。生まれは魔法技能師開発第六研究所―――東北地方にある研究所で、僕は姉の遺伝子を使って生み出された調整体という存在だ。

 調整体は本来、遺伝子の安定性を著しく欠いているために寿命が短いとされている。

 だが、自分の場合は何の因果か本来の人間が持ち得る寿命以上を持っているらしい。そんな奇跡の存在である僕を研究所の人たちは、まるで実験動物のように見ていた。

 生まれが生まれであったために六塚の名を与えられることはなく、『No.18』という番号でしか呼ばなかった。

 

 そんな生活に嫌気が差して、僕は研究所を抜け出した。

 山に登り、誰にも憚ることなく自然を楽しむ。頂上から見える風景に、そういう生き方も悪くないと思い始めていた。

 すると、僕を待っていたかのように一人の女性がそこに立っていた。

 彼女こそが六塚温子……僕の遺伝上の姉でもあり、母でもあり、同一人物でもある……彼女は手を差し出してこう言い放った。

 

『ねえ……六塚家(ウチ)の家族にならない?』 

 

 僕は迷ったが、実験動物のまま一生を終える気になどなる訳がない……その誘いを受ける形で、僕は六塚の名を名乗ることになった。名前は番号からもじって『()()』―――これが今から10年前の話。

 姉はその後正式に六塚家当主となり、僕はその補佐を担っていた。

 姉の両親は双方ともに遺伝子調整を受けた存在で、父は早くに亡くなっていたらしい。母親も父親の死で魔法力が急激に衰え、そこに姉が当主の座を継いだ。他人事のように話せるのは僕の生まれ所以かもしれないが。

 

 それから3年……姉は僕に一つの提案をした。それは、進学を東北の第五高校ではなく関東の第一高校にするというもの。

 これは、第六研に在籍する一部の連中が僕に関する研究を未だ諦めていないというものだった。

 

 姉からの提案を知った第六研の連中が密かに追手を差し向け、僕は逃げた。姉譲りの熱量操作だけでなく、僕自身に備わった『熱源感知(ヒートレーダー)』という固有技能で追手を上手く躱すことができた。

 いくつの山を越えたかもわからない……気が付けば、僕の目の前に迫りくる大型二輪の姿。

 魔法を使おうという選択肢など思いつくはずなどなく、僕はその場に蹲った。

 

 ……だが、衝撃はいつまで経っても来ない。それを疑問に思った僕が目を開けると、何と大型二輪を受け止めるように跳ね飛ばされた男子の姿があった。慌てて駆け寄る僕の姿にその男子はこう言った。

 

『……ったく、とっとと逃げてりゃ世話なかったのにな。無事か? ガキンチョ』

 

 普通なら死んでもおかしくない交通事故……のはずなのだが、その男子は痛みを堪えつつも立ち上がろうとしたので、僕は魔法で応急処置をした。とはいっても、熱量操作による痛覚の緩和だが。

 結果、肋骨3本に罅が入る……うん、この時点でおかしい。何せ大型二輪が時速約60キロメートル出してた状態でぶつかれば、間違いなく粉砕骨折は免れないはずなのに、と僕は前の前にいる男子が不思議すぎて理解できなかった。

 

 連絡を受けて慌てて飛んできた姉が彼とその家族に頭を下げた。

 今回のことは僕の過失という部分もあるので、それは仕方ないだろう……姉が支払った治療費の額を見て、向こうが愕然としていたのは今でもよく覚えている。口止めという部分もあったのだろうが、肋骨に罅だけで一束(100万円)は誰だってビビると思う。僕も内心ビビってた。

 僕を庇って助けてくれた彼の名前は西城(さいじょう)レオンハルト―――その彼と一高で再会できないかと考え、姉の提案を受け入れた。

 姉の計らいで、五高OBがいる新発田(しばた)家にお世話になることとなった。

 現当主の(おさむ)さんは電話という形で話したことがある。『男たる者鍛えることこそ大事』という感じの武闘派だが、特定のこと(それが何かは知らないけど)が絡まない限りまともだろうという印象を感じた。

 彼の息子である勝成(かつしげ)さんはよき人格者で、(つつみ)琴鳴(ことな)さんも僕を可愛がってくれる。琴鳴さんの弟である奏太(かなた)さんは最初のころ変に警戒していたが、琴鳴さんの説教と勝成さんとの会話で何とかなった。

 理由を聞くことはしなかったが、姉が四葉家現当主に対して崇拝のような敬意を見せていたことからして、多分新発田家は四葉家の関係者なのだろう。そんな事を考えるようになってしまったあたり、僕も十師族―――六塚家の人間なのかもしれない。

 

 その後、奏太さんとは偶に模擬戦をするぐらいの仲となった。僕としては異なるタイプの魔法師と戦える機会などないので、非常にありがたかった。

 尤も、彼は負けず嫌いなので必要以上に迫ってくるときがある。その後は琴鳴さんの拳骨が奏太さんに炸裂するパターンがお約束となった。

 

 なお、僕を捕まえようとしていた連中は『お引越し』したそうだ。なので、僕もそれ以上は問い詰めなかった。面倒なことは聞かないほうが幸せということもある。『触らぬ神に祟りなし』とも言うからね。

 

 いくら東北と関東で知名度が違うとはいえ、六塚家はこの国の魔法師社会で頂点に立つ十師族の一つ。名前で近寄ってくる人間もいるのでは? と身構えていたが、意外にもそれはなかった。

 理由は僕よりも入試の成績が良かった2人のクラスメイトだ。

 

 一人は三矢悠元。一高の『触れ得ざる者』と呼ばれている三矢家の係累で今年度の新入生総代。魔法実習でも卓越した技能を見せ、現代魔法における新技術を生み出すほどの頭脳を持ち合わせている。

 加えて、非公開だが正式な試合で十文字家次期当主の『ファランクス』を破って勝ったと本人から聞いた。当人に自覚は無いが、その時点で十師族でも最強格に位置する人物……もはや人間離れした存在だ。

 

 もう一人は司波深雪。入学式で祝辞を悠元の代理で読み上げた才女。その風貌はまるで『芸術品を切り取った』かのような雰囲気を漂わせる。そして、口には出さないが……僕とどこか同じような印象を受けていた。

 普段は物静かな少女なのだが、悠元や彼女のお兄さんが絡むと感情的になりやすい(雫曰く『残念美人』)。そして彼女が怒りや嫉妬といった感情を発露させるとそれに呼応して凍結魔法が発動する。

 

 これは僕も経験がある。自分の魔法制御力が甘かったころ、自身の固有魔法である『絶氷の業炎(ニブルヘイム・フレア)』が自動的に発動して周囲のものを凍らせる現象を引き起こしていた。

 尤も、彼女の場合は自分よりもさらに強力な“精神干渉系魔法”なのかもしれない。お互いの魔法に関する必要以上の詮索は、マナー違反なので敢えて問う様なことはしないと決めているけどね。

 

 お蔭で目立つこともなく、その二人とは同じクラスメイトの友人として誼を結んだ。

 更に、この学校でレオと再会することもできた。あの時のことを話すとレオはキョトンとしていた。まさか十師族の人間を助けたなどとは露にも思わなかっただろう。

 そして、その縁で同じ山岳部に入ることとした。入部初日で二人揃って上級トレーニングコース完走という伝説を作ってしまったことは……僕は悪くないし、レオも悪くない。富士山ジョギングに比べるとお散歩気分だね。

 

 それから数週間が過ぎたころ、突如学校に襲撃者が現れた。幸い銃を持っているのは少数だったが、ナイフを持ったテロリストがバイアスロン部の面々を襲う瞬間、僕は躊躇うことなく魔法を発動させた。

 熱量(エネルギー)制御によって空気中に存在する水蒸気で対象物を瞬間凍結させる魔法『零度拘束(アブソリュート・メイデン)』を発動。呼吸だけはできるようにしてテロリストを無力化した。

 僕の場合、移動系魔法の基礎単一工程で上空に打ち上げるよりもこっちのほうが早いという利点もあるので、躊躇うことなくその選択をした訳だ。

 

 そこまでは良かったんだけれど……3年でSSボード・バイアスロン部部長をしている五十嵐(いがらし)亜実(つぐみ)先輩の僕を見つめる眼差しが、何だか『恋する乙女の目』のように見えていた。そして、気が付いたら両手を握られていた。

 

『そ、その、唐突かもしれないけど……私と、付き合ってください……』

 

 これが一目惚れって奴? と僕は思った。

 まあ、僕が介入する前に彼女が後輩のために奮闘した姿を見て『カッコいい』と思ったことは否定しない。なので、返事はOKした。周囲のバイアスロン部から冷やかしのような声援が飛んでくる。そこにはほのかと雫もいた……今度お返ししてあげようと思う。

 生まれのこともあるが、元々家を継げるような立場でもないために幾分か気が楽である。ただ、先輩の弟が僕と同学年なので大変である……この前『あの姉さんにようやくまともな人が…』と涙を流しながら言っていた。

 その後で先輩が前生徒会長譲りの関節技で弟を締め上げていたが。

 『触れ得ざる者』に気に入られると強くなる……僕には理解したくない世界だと思う。

 

 一応実家の姉に伝えると『今日はお赤飯ね。盛大にお祝いしましょう!』と叫んでいた……耳が痛くなるので、大声はやめてほしい。あと、姉から一度実家に連れてくるようにも言われた。それは気が早いんじゃないかなと思った。

 新発田家の人に伝えると奏太さんが『リア充は滅びろ!』と言い放ったが、琴鳴さんのヘッドロックで撃沈していた。それを見た勝成さんは苦笑いしながら僕の肩に手を置いた。

 この家も姉ほどではないが、随分賑やかなことだと思う。嫌いじゃないけどね。

 

 それから暫くは山岳部とバイアスロン部の掛け持ちという感じで毎日を過ごしていた。偶に悠元と深雪が鍛錬している武道場にお邪魔してはレオやエリカらと軽い運動をするようになった。

 柔道限定の手合わせで深雪がエリカを投げ飛ばしたときはビビったし、レオもビビってた。投げられたほうのエリカも何が起きたのか理解できなかった。投げた方の深雪も思わず苦笑していたぐらいだ……『触れ得ざる者』の噂は本当だったのか、と感じてしまった。

 

 バイアスロン部では五十嵐先輩の抱き枕的(いやし)ポジションとなり、ほかの女子が抱き着こうとすると『私の燈也に手を出す奴は許さないよ?』と口元が笑っていない笑顔で敵意を露わにしていた。

 そういう一途さも可愛いなと零すと、顔を真っ赤にして照れる姿に女性らしさを感じてしまう。そしてそれを周囲の部員が弄って先輩が逆ギレし、僕が止めるまででワンセットの流れである。

 

 なお、その際ラッキースケベ的展開が数回ほど発生してしまった……先輩は恥じらいつつも『ここから先は人のいないところで…ね?』と呟いた。僕は学生生活を満喫したいので、そういうのはまだ早いかと思うんです。

 それを見た雫からは『頑張って』と言われ、ほのかからは『参考にします』と言われた。前者はともかく、後者に関しては絶対参考にしないほうがいいと一応釘は差した。ほのかは今一つ自分のスタイルに自覚がないんだよね。で、先輩の弟もとい鷹輔(ようすけ)からは『これからも暴れ馬の姉を頼む』と言われた……だから、気が早いって。

 

 ここまで達観しているのは理由がある。僕と先輩の交際を聞いた姉が、なんと先輩を僕の許婚に認めるという書状を先輩の実家こと五十嵐家に送ったのだ。

 勿論先方は大混乱。何せ、百家本流である五十嵐家が十師族の一つである六塚家に嫁ぐということ。そうなれば、先輩の実家の家格は自ずと上がることになる。

 僕の場合は生まれのこともあるし、家を継ぐかも分からないけれど……とか思ってたら、姉から『近々六塚家次期当主候補に指名する』と言われた。早めに引退して僕に丸投げし、四葉真夜さんの追っかけでも始める気かな? ……頭が痛くなりそうだ。

 

 僕は盛大に呆れ返ったが、先輩は逆にオロオロしていた。家柄の関係である程度は覚悟していたが、高校生の自分がそういった類に巻き込まれるとは微塵にも思わなかったらしい。本当に私でいいの? という思いもあったのだろう。

 こうなれば肚を括るしかないし、僕も先輩と付き合うようになったことは嬉しいと思っている。形はどうあれ男性として見て貰えているってことだから。そのことを言ったら、先輩は顔を真っ赤にして俯いていたけど……変なことは言ってないと思う。

 

 結果、他の十師族にも書状を送付する形を取りつつ僕と先輩の婚約を公表する形となった。一高には十師族と百家がいるので直ぐにその噂が広まり、先輩は質問攻めにあったらしい。僕の場合は悠元のお蔭で大した被害もなかったので、彼には内心感謝してる。

 五十嵐家からは滅茶苦茶丁寧な書状が届いたようで、姉曰く『謙りも大事だけど、こっちが高圧的になってるようで頭が痛くなってくるわ』とぼやいていた。

 僕の次期当主の件は六塚家の実質的な分家である六郷(ろくごう)家から既に了解を取り付けているらしい。こういうところは十師族の当主たる手腕が光ったと言うべきだろう。

 

 先輩と付き合うようになってからは、生徒会長である七草会長や部活連の十文字会頭、風紀委員会の渡辺委員長にも顔を覚えられた。渡辺委員長は同じ百家という家柄から先輩とも仲良くなったようで、よく恋愛相談を受けているそうだ。

 お相手は千葉家の方と聞いた……ひょっとして、エリカのお兄さんかな? 彼女からそういう話は聞いたことがないけど、名字からして関係者なのは間違いないだろう。

 

 1学期末考査は学年総合3位。上の二人にはまず勝てないな、と内心苦笑した。そして九校戦も出場が内定した。

 自分は新人戦2種目となるが、新人戦男子スピード・シューティングには恐らく『カーディナル・ジョージ』も出てくるだろう……彼には以前女の子と勘違いされた上で告白されたことがある。なので、そのお礼参りは達成しておきたい。

 直接攻撃できないのが非常に残念なことだ……チッ。

 おっといけない、本音が出てしまったね。

 なお、そのことも含めて九校戦のことを悠元に相談したら、『お前と五十嵐先輩が付き合い始めた理由が分かった……ある意味同類だわ』と言われた。どういう意味なのだろうか?

 

 ◇ ◇ ◇

 

 達也が話を終えて指導室を出てくると、そこには同じクラスメイトであるレオとエリカに美月、深雪と悠元の絡みで知り合った雫とほのか、それに燈也がいた。それだけの人数なので、人通りが少ない教職員棟でも目立っていた。

 

「達也、お疲れさん」

「お勤めご苦労様です、とでも言っておきましょうか?」

「俺はどこぞのヤクザじゃないぞ、燈也。些か面倒だったことは否定しないが」

 

 そう達也が零したのは、指導室で問われていた内容―――『実技ができないのに理論ができるのは、実技で手抜きしているからでは?』と疑惑を持ったらしいと達也が他の面々に話すと、それに疑問を呈したのは燈也だった。立ち止まったままだと目立ってしまうので、無論歩きながらではあるが……ただ、美形揃いなのでどう足掻いても目立つのは言うまでもない。

 

「確かに、二科生は一科生よりも実技が得意ではないのは事実かもしれないです。けど、それはこの学校の評価判定で“低い”だけであって、“出来ない”というのはオーバーな言い方だと思うんですよね……ああ、別に二科生の人を貶すつもりはないですよ?」

「分かってるわよ。燈也はどっかのデリカシーの無い誰かさんと違うって理解してるから」

「一々火種を突っ込まないと気が済まねえのか、お前は」

 

 実技ができない、という単語をそのまま捉えるなら『魔法が使えない』ということになりうる。それだったら入学試験で行った魔法実技に不正があったのかと疑わざるを得ず、ひいてはその判定をした人間が疑われかねない。

 そもそも、魔法実習の記録は残っているのだから、それで魔法を使えるかどうかも判定できるのにそれをしないで指導する―――正直言って『お粗末』と判断できるレベルの話だ。

 

「まあまあ。でも、燈也さんの言う通りですね。それで理論ができないというのは暴論にも聞こえますし」

「寧ろ指導教員がいないのに、理論の成績上位者で二科生が入ってきたことを評価すべきだと思う。うちのクラスメイトは『ズルをした』などと言ってたけど、自分の努力が足りなかったことを恥じるべきだと思う。無論、私自身もだけど」

「達也さんたちがそんなことする理由がないじゃないですか。悠元さんが止めてくれなかったら教室が極寒の冷凍室になってましたよ…」

 

 美月、雫、ほのかがそう口にすると、周囲の人々は多分深雪だろうなと想像し、達也はそれをフォローして大惨事を防いでいる悠元に内心感謝していた。流石に4月の一件のようなことが起きたら洒落にならないと思うのは事実だ。

 

「そういえばさあ、燈也は4月から五十嵐先輩と付き合ってるんでしょ? ちゃんと彼氏らしいことしてるの?」

「週一ぐらいのペースでデートならしてますよ。あとは登下校も一緒にしてますし……残りはテスト勉強ぐらいでしょうか」

「お、おう……意外に動じないのね」

「これぐらいで動じてたらエリカの玩具にされかねませんからね。伊達に山登りで鍛えてませんし、これでも六塚家の人間ですから」

 

 面白半分に聞いてきたエリカに対してあっさりと答えた燈也に思わず目を丸くするが、彼の言葉に黙ったまま頷くレオ。すると、それを見たエリカがノートを丸めてレオの頭を叩いた。そこから始まる二人の『夫婦喧嘩』に周囲は呆れ返っていた。

 そんな様子を見つつ、燈也はあることを思い出して雫に尋ねた。

 

「そういえば……雫、あの一件の少し前から悠元に結構視線を送ったりしてるみたいですけど」

「そ、そうなの雫!? 全然気付かなかった」

「ほのかは仕方ないよ。……これでもアピールしてるんだけど、全然気付いてくれない」

 

 その雫の言葉に反応したのは、他でもないエリカだった。レオとの喧嘩をすっぱり忘れ去るようにぶった切り、自己加速術式でも使ったかのような速さで雫の腕を掴んでいた。

 

「これは面白そうな予感。雫、カフェテリアで詳しい話を聞こうじゃない!」

「ちょ、まっ……!?」

「ま、待ってよ二人とも!」

「エリカちゃん! すみません、3人を追いかけますので」

 

 エリカに拉致られる雫、そして慌てて追いかけるほのかと美月を見送る形となった達也、レオ、燈也の3人。その様子に達也は事情を知っていそうな燈也に尋ねる。

 

「燈也、何か知ってるのか?」

「新入生勧誘週間の2日目以降の話ですね。偶に態度にも出てましたし。尤も、悠元の場合は生徒会で忙しいですけど……」

「最近はお前の妹の鍛錬にも付き合ってるからな……あいつ、モテるな」

 

 燈也も詳しい話は聞いていないが、雫が5人で会話しているときに結構アピールはしている節はあった。けど、相手が難敵すぎると燈也は思う。何せあの『触れ得ざる者』と謳われた三矢家の人間だ。

 

「けど、その恋敵になりえそうなのが一番の難関かと」

「気分はどうだ? 深雪のお兄様としては」

「俺がどうこうできる問題でも無いだろう……下手に手を出したら火傷じゃすまないだろう」

 

 人の恋路を邪魔すると地獄に落ちる……そんな言葉もある。達也としては妹の恋路を応援してやりたいが、こればかりは当人たちの問題でもあるので下手に口出しもできない。妹から彼を誘導してほしいと言われたら別だが。

 今一つ恋愛感情を理解できず、踏み込めない深雪。それに対して悠元への恋愛感情を見せ始めた雫。この二人もそうだが、その感情を向けられる相手が一番の強敵だろう。

 

「全く、ああいうのを俗に朴念仁と言うんだろうな……どうした、燈也?」

「いえ、何でもないですよ(ほのかが向けている好意に気付かない時点で、達也も朴念仁ですよ……)」

「?」

 

 達也は悠元をそう評したが、これを聞いた燈也の溜息が出そうなほど呆れた表情に、レオは首を傾げたのだった。

 




 元々レオ絡みを補強する目的もありましたが、どうせなら燈也のエピソードに絡めてもいいかなと思い、発展させました。
 燈也絡みのこの一件に他の家(特に娘が父親を『タヌキオヤジ』と呼称する家)が口出ししてこない理由は後々語る予定。
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