魔法科高校の『触れ得ざる者』   作:那珂之川

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ストックが溜まり気味だったので開放。


四葉の代理(戦略級魔法師)

 日曜日。折角の休日だというのに、呼び出された側の魔法大学2年の女子生徒こと五十嵐(いがらし)亜実(つぐみ)は不機嫌であった。その不機嫌の矛先は呼び出した側の真由美に向けられていた。

 

「ごめんね、つぐみん。折角の休日なのに」

「全くだよ。十文字君も今回は大変だね」

「いや、気にしないでくれると助かる」

「それで……これ普通の市販車なのは確かだけど、良く手に入ったよね」

 

 諦めも入ったのか、呆れ顔で克人が迎えに来た車を見やっていた。今回は真由美が既に実家暮らしではないため、五十嵐家の前で落ち合うこととなった。なお、摩利は前回出張ってもらった代わりとして休んでいる。

 亜実が克人が乗ってきた車を知っていたのは、五十嵐家で買おうか悩んでいたことを親経由で相談されたことがあったからだ。元からあるものをカスタマイズしたものではなく、俗に言う特別仕様車(オリジナルモデルをチューンアップした少数生産の仕様)だ……その元が軍用車ベースであったとしても。

 

「つぐみん、知ってたの?」

「うちでも買おうか悩んだからね。結局用途の都合で買わなかったけど。それで、もう出発する?」

「そうだな……」

 

 真由美から誰か連れてくることは事前に聞かされており、これ以上駄弁っていても時間の無駄であると判断したのか、各々車に乗り込んだのだった。

 

  ◇ ◇ ◇

 

 最初からそこまでテンションが高いとは言えないが、意気揚々に近い状態だったテンションは達也の返答によって一気に急降下した。

 

「お断りします」

「何故だ」

 

 毅然とした態度で返答した達也に対し、重々しい声で尋ねたのは克人。

 双方共に“対立”の姿勢を崩していないことに亜実は冷や汗が流れっぱなしだった。一方、この展開を予想していたのか真由美は能面を顔に貼り付けたが如く無表情であった。そして、深雪の表情は厳しいと言わざるを得ないほどに内心が窺えない表情を見せている。

 

「質問に質問を返すのは恐縮ですが、何故十文字先輩は自分がディオーネー計画に参加すべきであると判断したのですか?」

 

 達也が拒絶を示した克人のリクエストは、USNAもといエドワード・クラークが主導するディオーネー計画への参加。そこに至るまでの過程の説明を克人に求めた。

 

「2年前の九校戦の折、お前に言った台詞を覚えているな?」

「お前は十師族になるべきだ、とそうおっしゃってましたね」

「そうだ」

 

 十師族・師補十八家―――師族会議は九島烈が提唱した日本魔法界の魔法師互助システム。発足から30年以上が経ち、その役目は既に引き継がれた。

 

「俺は強い力を持つ者、優れた者にはそれに見合った道義的責任が生じると思っている」

 

 だが、大半の魔法師がそこまでの力を持たず、魔法という力を差し引けば一般市民と大差ない力を持つ程度というのが実情。これはこの国に限った事ではなく、世界中どこの国でも起こり得ていること。

 一方、魔法という力を恐れ、魔法師でない者たちは魔法師を人類ではない“別の種族”と見做している例も少なくない。人間主義が今でも跋扈しているのはその考えが根底に根付いている。

 

「魔法師が別の種族だという考えには、欠片も賛同することは出来ない。だが、魔法師が人類全体から見ればマイノリティになってしまうのも避けられない事実。だからこそ、老師の唱えた十師族という制度は正しいと考えている」

「それが行き過ぎて非魔法師に対する蔑視や排斥に繋がらなければ、自分も概ね賛成だと思っています」

 

 考え過ぎだと思われるだろうが、既にその片鱗は第一高校の一科生・二科生間の問題として顕在していた。魔法科高校というある程度限定された空間だからこそ、一科生の不満のはけ口が二科生に向かうことで非魔法師への被害を減らす側面にも繋がっていた。

 

「現状、この国において反魔法主義の運動は下火となっているが、世界各国の情勢を見る限りにおいて何時再発しても何ら不思議ではない状態に置かれている。魔法師がいるからこそ、世界から戦争が無くならないという誹謗中傷に近いものも少なくない」

 

 その一端は九校戦の中止だが、これについては達也に全面的な非があるとは思っていない。克人はそのことには敢えて触れず、言葉を続ける。

 

「司波、ディオーネー計画に参加することのメリットは当然理解している筈だ。それでも十師族の直系に連なるものとして参加を拒むというのか?」

「当然です」

「そこまで拒否するだけの根拠をお前は持っているというのか?」

「そう理解して頂いても構いません」

 

 火花を散らす達也と克人。そして、克人の態度を見た真由美が内心で『あ、これはマズいわ』と思ったのも束の間、克人が十師族当主としての使命感から達也に呼び掛けようとしたところで、思わぬ方向から声が響く。

 

「おやおや、困りますなあ。十文字家当主・十文字克人殿」

「誰!?」

「貴方は確か……神坂さん、でしたか」

(い、いつの間に部屋の中に……)

 

 スーツ姿にサングラスを掛けた青年―――達也が神坂と声を掛けた人物の登場に、事情を知らない真由美と亜実は驚き、素性を知っている達也と深雪、水波はそれほど驚く素振りを見せなかった。一方、話を遮られた克人の重々しい声と鋭い視線は神坂に向けられるが、それを何とも思わない青年は涼しい表情を浮かべていた。

 

「部外者が一体何用だ。その様子から司波と認識があるようだが、もしや四葉家の関係者か?」

「部外者、ですか。私はこれでも“師族会議議長の名代”として赴いたのですがね」

 

 そう言って懐から放り投げられたのは一通の封筒。封はされておらず、特に魔法の反応も見られない。近くに置かれたということで達也が中から便箋を取り出して目を通すと、神坂に目線を向けた。

 

「……これを十文字先輩に見せても?」

「ええ、そうして頂けると助かります」

 

 その言葉を聞いて、達也は封筒ごと便箋を克人の前に置き、克人と真由美、亜実がそれを見て驚きを隠せなかった。

 その内容というのは、神坂(かみさか)千歳(ちとせ)(今回のことに合わせて改名された神坂グループでの正式な籍を持つ悠元のビジネスネーム)を師族会議議長の名代として派遣する旨であり、賛同者は悠元以外に現総理大臣のみならず現内閣に所属する国務大臣クラス、そして主要財閥グループのトップたちが署名されている。

 

「事情は理解した。だが、ここで司波の要求を呑んだとしても何の問題の解決にもならない」

「それは、十師族当主としてのご判断と解釈しても?」

「勿論だ」

 

 克人としての考え方に加え、彼自身の気質で達也をディオーネー計画に参加させることに傾いてしまっている。だが、師族会議としての統一見解ではないことに加え、議長の名代である神坂の言葉でも引こうとしていない。

 ならば……と、神坂は一つの提案を切り出す。

 

「そうですか……でしたら、こうしましょう。私が司波殿の代理として、十文字当主・十文字克人―――貴方に決闘を申し込む。貴方が勝てば私も司波殿を説得いたしますが、貴方が負けた場合は結果を日本魔法協会に報告し、以後司波達也殿に対する干渉を取り止めるように説得して頂きます」

「ええっ!?」

 

 ここで驚いたのは亜実。十師族直系の同世代では最強格の一角を担う克人に師族会議議長の名代とはいえ無名の魔法師が達也の代理として挑むというのだ。事情を知らない人間からすればそう思われても仕方がない。だが、その挑発によって克人の闘争心に火が付いた。

 

「今述べた言葉を取り消すならば、今の内だぞ」

「取り消しませんよ。何故ならば、勝つのは私の方ですから。怖気ずくのならば今すぐ帰って頂いても一向に構いませんが」

 

 克人の殺気にも近い雰囲気に対し、それを涼しい表情で流しながら挑発の言葉を口にする神坂。そして、その様子を静かに見ていた達也だったが、神坂の視線が達也のほうへ向いたことに気付いて視線を合わせた。

 

「ということですが、いかがでしょうか司波殿。本来十師族の直系同士の諍いに対して不躾な提案とは存じますが」

「……いえ、この場は宜しくお願い致します」

「ちょっと達也君、正気なの!?」

「至って正気ですが、それが何か?」

 

 何せ、達也は神坂が悠元の変装した姿だと知っている。その実力は()()()()既に分かっているからこそ、真由美の問いかけに対して涼しい反応を見せた。そして、悠元が矢面に立つからこそ、深雪が感情で魔法を漏らす様な事が無いという安心感もあった。

 それに、“師族会議議長の名代”ということはその辺の解決に関わる権限を与えられているとみていい。深雪と水波を守るだけに集中できるのならば、ここは悠元に任せるのが一番だと判断した。

 

「先に行っているぞ」

 

 克人は立ち上がり、そう告げて別荘を後にした。真由美と亜実は心配そうに達也たちを見ていたが、克人の後を追った。その場には悠元と達也、深雪と水波、そしてピクシーだけが残る形となった。

 

「さて、()()。“ネズミ駆除”には燈也や光宣にも協力してもらってるから、深雪と水波の護りだけ任せた」

「既にそこまで手を打っていたか……“アレ”は使うのか?」

「いや、2年前と同じ手はバレるからな。今回は別の方法で[ファランクス]を圧倒する。というわけで、一応CADは準備しといてくれ」

「分かった。ピクシー、CADを」

「畏まりました、マスター」

 

 最初の隠語は国防軍情報部の干渉に対するもの。後者は2年前の模擬戦で悠元が使った[円卓の剣(ラウンド・ブレード)]に関するもの。だが、悠元は今回別の方法で[ファランクス]を突破すると宣言した。

 彼の固有魔法だけでも反則級である以上、何をしたとしても悠元の勝利はゆるぎないと判断しつつ、達也の命令でピクシーがCADのケースを持って歩み寄る。それを見た悠元が先に歩み出そうとしたところで、スーツの裾を掴まれた。

 悠元が振り向くと、近付くのは深雪の顔。そして、唇同士が重なる。

 

「……おまじないのキスです。勝ってくださいね、悠元さん」

「やれやれ……これはこれで大変なことだな」

 

 不意打ちのキスに対し、達也は妹の積極性に頭を抱え、水波は「あわわわ……」と言いながら頬を赤らめ、ピクシーについては……何やら学習している素振りが見えた。三者三様の有様に対し、一番頭を抱えたくなったのは悠元であったが。

 

 悠元たちが外に出ると、克人たちは乗ってきたSUVの前にいた。この場で戦ってもいいが、ここでは克人が十全の実力を出せないと判断して克人の許に歩みより、そのまま通り過ぎかけたところで悠元が振り返る。

 

「ついてくるといい、十文字克人。ここだと被害が出かねないので場所を移す」

 

 悠元を先頭に、達也と深雪、水波が歩き出し、克人、真由美と亜実が歩き出す。歩きながら真由美は先日悠元と話していた内容をここにして思い出し、おもわず「あっ」と漏らしかけたのを慌てて堪えたが、その様子を運悪く亜実に見られた。

 

(まゆみん? 何を思い出したのか吐いてもらいましょうか?)

(いや、これは言えないの! あのスーツ姿の人物が悠君だなんて……あっ)

(……それ、十文字君が勝てないじゃん)

 

 真由美が正体を漏らしたのは亜実の口の堅さを期待してのものであり、余計なことをしないようにするためのもの。仮に摩利が居たら、逆に真由美を抑え込んでいた未来があったのかもしれない。

 二人の会話は小声で克人には聞こえなかったが、聴覚が異常に優れている悠元には当然この会話が聞こえていた。お仕置きはこの件が無事済んだ後で……というのも覚えておきながら歩を進める。

 

  ◇ ◇ ◇

 

 伊豆半島には、先の大戦で対空陣地として接収された元ゴルフ場の跡地がいくつも点在しており、大戦終結後に返還される手筈だったが、運営会社が予想収益とコストの天秤によって受け取りを拒否したケースも少なくなかった。

 そこに手を入れたのは神楽坂家で、運営会社に仕事の斡旋をする代わりとして格安でゴルフ場の跡地を譲り受けた。もしくは株式買収で子会社として跡地の交渉を有利に進めたというケースもあったりするが、悠元はあまり聞かないようにしていた。

 流石に対空兵器は撤去されているが、長年手入れされていない影響で開けた荒れ地となっているゴルフ場の一つに悠元は克人を案内した。

 

「ここなら、家屋や非魔法師への被害はない。存分に戦えるだろう」

「こんな場所で構わないと?」

 

 克人の問いかけは、ここまで開けた場所で決闘を行うという意味。明らかに十師族の一角を担う人間としての問いかけだと悠元も当然気付いている。だからこそ、ここからは()()()()()()として口調を変えて克人に告げる。

 

「よもや、十文字家の当主が言い訳をお望みで?」

「いいだろう。初手は譲ってやる」

 

 言い合いの直後、相対する二人の間に暴風が吹き荒れる。正確には、悠元が[術式解体(グラム・デモリッション)]を付与した亜音速の風の円月輪(チャクラム)―――[烈風月輪(サイクロン・チャクラム)]が克人の[ファランクス]に衝突した影響で生じたもの。

 そして、悠元の左手には拳銃状CADの[セラフィム]がいつの間にか握られていた。悠元が放った[烈風月輪(サイクロン・チャクラム)]は計32発。その悉くを克人は三層のシールドで凌いでいた。

 

「ふむ、領域干渉に情報強化、想子(サイオン)ウォールですか。これまた器用なことを」

「ほう、司波のように見破ったのは流石だと言いたいが、それでは俺は倒せんぞ」

 

 別に揺さぶりのつもりではなかったものの、克人はそのように判断しつつも防御を続ける。

 これは確かに、原作の達也ならば[バリオン・ランス]の使用に踏み切った理由も理解できる。これ以上続けても無駄だと攻撃を中断したところで、悠元に向かって二次元の壁が押し寄せる。

 [ファランクス]の攻撃派生のバリエーション―――[攻撃型ファランクス]。だが、悠元はそれをCADの構えていない右手を眼前に掲げると、何と迫りくる壁を受け止めるどころか完全に押し止めた。

 その上で、悠元は一息吐いた上で右手に想子を収束させると、そのまま手を握った。その瞬間、展開していた24枚の障壁は一瞬にして砕け散った。

 

「ほぅ……」

 

 克人は確かに侮っていた。十師族でもない名も知らぬ一介の魔法師が公言するほどの実力を見せていたことに、感嘆を漏らした。そして、それを見た克人が腰を落とす。当然、悠元の[天神の眼(オシリス・サイト)]には克人の魔法演算領域が激しく想子光を撒き散らしているのが見えている。十文字家にしか存在しない魔法演算領域過剰稼働技術[オーバークロック]―――“首都の最終防壁”たらしめる切り札であり、十文字家の“呪い”とも言うべき先天性の資質。その技術によって、原作の十文字和樹は魔法力を失った。

 先月、一条家当主・一条剛毅が陥ったオーバーヒートの前兆。

 そして、四葉家先々代当主・四葉元造が亡くなった原因とされるオーバーヒートの前兆。

 対抗魔法の障壁と対物障壁を球状に纏い、克人が突撃する。

 

「馬鹿の一つ覚えの如くタックルとは……」

 

 そう呟いた悠元の行動は、構えていたCADを敢えて下ろした。見る人が見れば諦めたのかと思う様な有様だが、[精霊の眼(エレメンタル・サイト)]を持つ達也には悠元の魔法演算領域が既に次の魔法発動準備を終えていることまで読み取った。悠元がいたところに克人が突撃して通過したが、悠元はそこから()()()()()()()()()。悠元の足元には、強引に軌道をずらされて削り取られた雑草の後が確かに残っていた。だが、背中を見せていた克人に対して悠元は敢えて追撃をしなかった。

 

「……何をした?」

「軌道をずらしただけだが、それが何か?」

 

 現代魔法では速度を重視するあまり、直線的な運動を主とするものが多い。軍事利用を考えれば、照準に対して直線的な距離の方が魔法師の負担も少なく、理に適っている運用方法といえる。だが、それ故に現代魔法は“欠陥”であると悠元は断じた。明らかに手の読めるものなど『どうぞ狙ってください』としか思えず、これならば古来からの魔法の方がまだ技術として成り立っているだろうと言える。

 なお、先程の過程は克人の[ファランクス]に対して風の壁で遮り、さながら横方向へ流れるコンベアのように軌道を逸らしただけ。いくら事象干渉力が強くとも、それ以上の干渉力を有する自然現象にはいくら[ファランクス]といえども抗いようがない。

 

 克人の魔法演算領域がまた激しく光る。魔法師としての寿命を縮める[オーバークロック]を惜しみもなく使う意味は、当然術者である克人本人が理解している。それは無論、神坂として対峙している悠元もだ。

 再び障壁魔法を纏って突撃する克人。今度はすれ違う直前で障壁を更に拡大させると踏みつつ、またもや無防備に見える構えを取る。そして、克人が障壁を拡大させる兆候を感じ取った瞬間、悠元の取った行動は[ラグナロク]を構え、両手に持ったCADを拡大する障壁に押し付けた。そして―――

 

「ぶっ飛べ」

 

 悠元がそう呟いた直後、克人は障壁ごと地面に吹き飛ばされた。当然克人は[ファランクス]によって守られていたので無傷に見えたが、彼が立ち上がろうとしたところで体中を激痛が走る。常人よりも我慢強い克人が顔を顰めるほどで、立ち上がれずにその場で荒い呼吸をしていた。

 そして、動けない状態の克人に近付いた悠元は、[ラグナロク]を克人に向けて構えた。

 

「ぐっ……何を、した……」

「簡単な事。貴方の[ファランクス]と貴方を“接続”しただけだ」

 

 本来、現代魔法は魔法が発動した段階で安全性を考慮して魔法師とのパスが切断される。もし、魔法に掛かる負担が全て本人に返る様なことがあれば、瞬く間に魔法師が死ぬことに繋がる。その一例は京都でエリカたちが対峙した古式魔法師の使役術だ。

 悠元が用いたのは、古式魔法の技術を応用して切断された魔法式を術者と再び繋ぐことで魔法干渉の影響を相手に全て返す[貫通衝撃(フィードバック・ブラスト)]。この威力を更に高めたものが戦略級魔法[太極反転(たいきょくはんてん)煌星(こうせい)]にあたる。

 そして、同時に佳奈が得意とする[グラビティ・ブリット]と吉祥寺真紅郎の得意魔法である[インビジブル・ブリット]を掛け合わせた無重力砲撃魔法[グラビティ・ブラスト]を発動し、重力の方向を進行方向とは逆に飛ばして地面に()()()()させた。二つの魔法による地面への衝撃により、予期せぬ魔法のフィードバックによって多大なダメージを神経系に負った克人は動けなくなった、ということだ。

 

「その状態で続けるというのならば、まだお相手しよう。尤も、今度は高度100キロからのフリーフォールを味わっていただくが」

「……俺の負けだ」

 

 言っていることが規格外だが、明らかに虚勢でないことはこの時点で示されたも同然。克人は痛みを堪えながらも、降参の意思を示したのだった。

 




 後の本編でも触れますが、一応補足説明。
 克人が強気の姿勢だったのは、達也の気質は理解しつつも十師族としての決意の強さを推し量るためのものであり、もし悠元が介入しなければ達也にその根拠の説明を迫るつもりでした。つまるところ悠元が焚き付けて原作のような戦闘になった形です。
 あと数話でエスケイプ編もといステップ編へと移行します。

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