魔法科高校の『触れ得ざる者』   作:那珂之川

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覚悟(けつい)、宿命(さだめ)、疑念(じつじょう)

 6月8日、土曜日。悠元は町田のマンションの自室でモニターと睨めっこしていた。モニターに映るのは新ソ連の広大な土地で、それ以外のウィンドウには数多の情報が表示されている。それを見た結果、ベゾブラゾフが専用列車[アルガン]でウラジオストクに到着したことを確認した。

 

(ここまでは、ある程度原作をなぞっている。だが、問題はここからだ)

 

 日本国内にいた新ソ連の工作員は全て国外追放もしくは処分したかのどちらかで、新ソ連に繋がりのある民間企業などは粗方洗い出した上で、関係を切る様に言い含めた。別に脅迫はしていないが、向こうも事の重大さを把握したのか頷いてくれた。話がすんなり進むのは良いことだが、解せなかった。

 

 深雪と水波には達也の別荘へ向かうように伝えた。折角の休日だし、ピクシーがいるので達也一人でもどうとでもなるわけだが、家族の団欒ぐらいはしてもいいだろうということで送り出した。なお、深夜は『旦那様のお世話が最優先ですので』と言って残っていた。

 ともかく、ベゾブラゾフの情報を掴んだ以上は伝えないわけにはいかない。悠元は耳にレシーバーを付けてヴィジホンを掛けると、ワンコールもしない内に達也の姿がモニターに映った。

 

「達也、折角の家族の団欒だというのにすまないな」

『気にしないでくれ。それで、何か掴めたか?』

 

 向こうもベゾブラゾフのことで連絡を寄越したのだと理解してくれたので、悠元はそのまま本題を切り出した。

 

「ベゾブラゾフが動いた。大型CADを牽引した専用列車でウラジオストクに入ったのが確認出来た。今回のターゲットは間違いなく達也だろう。俺の場合は戦略級魔法師として狙うには根拠が薄すぎるからな」

『確かにそうだろうな。ところで、その大型CADとは?』

「向こうのコードネームで[アルガン]と呼ばれるもので、要は意図的に七草姉妹やシールズ姉妹のようなことを行うためのもの。一番近いのは昨年の南盾島で達也が分解したあのCADだな」

 

 南盾島の海軍研究所にあったCADの違いといえば、ベゾブラゾフが意識して魔法を行使するか研究者が魔法発動の指示を出すかの違いでしかない。単一の魔法に特化させることで、魔法発動速度を殺さずに戦略級魔法を行使する手法を使うあたり、余程[トゥマーン・ボンバ]に自信があるのだろうとみている。

 

「とはいえ、ベゾブラゾフが[恒星炉]関係者として俺を狙う可能性もゼロじゃない。先日の戦闘データの時点で連続して距離の離れた2か所を同時爆撃する可能性が完全にゼロじゃない以上、こちらが下手に動くこともできない」

『……すまないな、悠元』

「別に達也の責任じゃないだろうに。大体、ベゾブラゾフに喧嘩を売ったような格好となったのは俺が原因だ。なので、自分を追い込むなよ?」

『そうだな。ありがとう、悠元』

 

 よもや、達也から謝罪だけでなく感謝の言葉まで出てきたことに思わず苦笑を浮かべた。モニターの向こうからも笑みを漏らす様な声が聞こえてきたので、大方深雪だろうと思った。

 

「それで、攻撃が予想される時間は明け方の時間帯。天気予報では、小雨で風も弱い状態になるとみているから、仕掛けてくるとすれば大体朝5時ぐらい。多少前後することもあるし、大幅に時間をずらして攻撃するかもしれないことは留意してくれ」

『分かった。情報提供に感謝する。そちらも気を付けてくれ』

 

 達也との通信を終えた後、悠元はふと机の引き出しから一つの箱を取り出した。ルービックキューブサイズの金属の箱で、表面に魔法障壁の魔法陣が刻まれたもの。魔法訓練の時、レオにこの箱を使って魔法障壁のデモンストレーションをした訳だが、実はこの金属製の立方体自体、悠元が自作したものではない。

 剛三との旅行で登山用の装備もなしにエベレストへ登山するという苦行というか、常人なら無理難題に挑んだ際、頂上まであと少しのところで一息入れていた悠元が近くのクレバスの中を覗くと、氷の中に不釣り合いな黒い立方体があり、氷を溶かして取り出し、そのまま日本に持ち帰った。

 

 魔法陣は魔法障壁を発動させるものだという単純なものだが、術式を逆に読み込むという手法を覚えた悠元が改めてこの箱を解析した結果、この箱に対して特定の条件が満たされた場合、黒い立方体と対になっている“何か”が引き寄せられるという解析結果を得た。

 地下深くに封印するとしても、その“何か”の容積次第では封印区画そのものが潰されかねない。ただ、この箱の発動条件が『戦略級魔法に相当する霊力を注ぎ込む』というものなので、いつどうなってもいいように目の届く範囲で置いていた。

 

「……未知のリスクはあるが、保険として託すべきだろうな」

 

 今の達也や深雪、水波が[トゥマーン・ボンバ]を防ぎ切る確率は高いが、それでも絶対という言葉で保障できないため、悠元は悩んだ末にメールを達也へ送り、その黒い箱を達也の居る伊豆の別荘へ[鏡の扉(ミラーゲート)]で送った。

 国防軍が何かしらの情報ルートでベゾブラゾフの動向を探っているのは間違いないし、どうせ達也に情報を伝えないのは分かっている話だ。その行為自体が達也と国防軍に決定的な亀裂を入れることに繋がると認識もせずに。

 そして、悠元は椅子から立ち上がると、壁に取り付けられたコンソールのキーを叩いてコードを打ちこむ。すると、壁の一部が開閉して、其処には直刃と思しき太刀の形状をしたCADが鞘に納められた状態で置かれていた。見た目は刀というより木刀に近しい形状と言える。

 

 これまで悠元が手掛けた[サード・アイ・ゼロ]に始まり、[サード・アイ]と[サード・アイ・エクリプス]の稼働データを基に悠元が一から図面を引き、全て自分の手で作製した太刀形状特化型CAD。開発コードは[サード・アイ・ティターニア]―――自身の異名である[殲滅の奇術師(ティターニア)]の名を冠し、これまでの技術の粋を一本に集約することで完成した代物。そして、太刀ということで[布都御魂剣(フツノミタマノツルギ)]と名を付けた。

 銃ではなく太刀にしたのは、悠元にとって一番手に馴染むものとして選択した結果で、太刀の刃は潰されている形だが、セリアが使っていた[レーヴァテイン]の機構を読み取った上で再現したことで、現代魔法の戦い方でも天神魔法をCADに付与して戦闘することが可能となった。

 そして、この形状にしたのはもう一つ理由があり、天魔抜刀の触媒として金属の実体を用いた武器を使う必要があった。とはいえ、現存している聖遺物(レリック)を使い潰す訳にもいかないため、刃の金属構成は神楽坂家が保有している“真打の[草薙剣]”から解析したデータを基に[複製]を用い、人工的な聖遺物として完成させた。

 

 神や悪魔ですら御しきり、陰陽の力を均衡に保ち、(うつつ)の表と(かがみ)の裏を一つに束ねることで、あらゆる災厄を断ち斬る力と成す―――これが、天魔抜刀の完成を見ることなく亡くなった神楽坂家三代目当主の文言。

 悠元はその太刀を手に取ると、静かに鞘から抜く。金属は眩い光を放ち、無機物の筈なのにまるで力が込められているようにも見えた。それを再び鞘に納めると、壁のスペースに戻すことなく机の横に立てかけた。

 

 その太刀は、まるでこの先に立ちはだかるであろう困難を主人と共に闘える喜びを噛み締めるような雰囲気を漂わせて、静かにその時を待ちわびているようにも見えた。

 

  ◇ ◇ ◇

 

 ベゾブラゾフはウラジオストクに着いてすぐ、情報部からの報告を受けていた。とはいえ、日本国内の工作員は粗方追放されているだけでなく、新ソ連に通じる情報も根こそぎ破壊されている為、頼りになるのは大亜連合などから経由して日本入りした僅かな工作員の情報と新ソ連軍の軍事衛星による“予測情報”ぐらいしかない。

 それでも、無暗に攻撃しては新ソ連の面子どころかエドワード・クラークから非難が飛ぶのは必至。何より、司波達也を確実に葬る為に一撃で片を付けなければならない以上、予測情報とはいえベゾブラゾフが頼りに出来るものならば何でも使う腹積もりだった。

 

「本人の滞在予測は、東京・町田か伊豆の別荘地か……」

 

 もし、ここで東京に向けて放とうものならば、ベゾブラゾフの行いで新ソ連が火の海になってしまうという最悪のシナリオを引くことになるし、東京には十文字家の[ファランクス]があるため、狙うにしては論外。そこから、ベゾブラゾフが民間人への被害を最小限に抑えるという意味で伊豆の別荘を狙うことに照準を絞った。

 照準の判断材料の一つとして、第一高校付近で司波達也の姿が確認できていないという工作員からの情報で狙いを一つに絞った。もし、これで当たりを付けることが出来れば、もしかすれば日本にあるもう一つの戦略級魔法―――ベゾブラゾフの[トゥマーン・ボンバ]を発動不能にさせた[シャイニング・バスター]も引き摺り出せると考えた。

 

 一人でいてくれることを願うばかりだが、こればかりは運の要素とも言える状況で贅沢など言えるはずがない。仮に誰かがいて、それが強力な魔法師だとしても、今回は彼の魔法力を強化するための外付け端末[イグローク]も連れて来ているし、宗谷海峡での交戦を経てベゾブラゾフの作戦も念入りに練られている。

 

 ベゾブラゾフは人工授精によって誕生した魔法師で、昔流で言えば『試験管ベビー』だ。

 遺伝子操作は行わずに無数の受精卵を作り出し、その中から選ばれた最高傑作。それが新ソ連の戦略級魔法師イーゴリ・アンドレイビッチ・ベゾブラゾフ。

 当然、その成功例の受精卵は生化学的にコピーされ、彼の“妹”とも言える存在(クローン)が七人も生み出された。()()()()はベゾブラゾフと同じように戦略級魔法師となることが期待され、実際に戦略級魔法[トゥマーン・ボンバ]をマスターするに至った。

 

 だが、人間の遺伝子は21世紀初頭の時点でも機械のように画一的な性質を引き出すための構造全てを解析できていたわけではない。いくら大本が成功したからといって、それを複製して100パーセント同じものが出来る事など皆無に等しい。

 それは彼女たち―――[アンドレエヴナ]と名付けられたベゾブラゾフのコピー体にも当て嵌まることで、彼女たちは無菌室の中でしか生きられないという身体的な欠陥を抱えてしまった。さらに、一応[トゥマーン・ボンバ]を発動することは出来ても、実戦レベルで使うには余りにも乏しい発動速度と射程距離しか有さなかった。

 そこで、新ソ連は彼女たち単体での運用ではなく、ベゾブラゾフの[トゥマーン・ボンバ]に上乗せをさせる形を取った。元々ベゾブラゾフの遺伝子情報をコピーして生み出されたので、魔法演算領域を同調させるのはさほど難しくなかったからだ。

 

 ()()であるベゾブラゾフが精神の浸食を受けないよう徹底的に自我を奪われ、ただ魔法の発動を補助するだけの生体機械『奏者(イグローク)』となった。香港系マフィアが扱っていた[ソーサリー・ブースター]は魔法師の大脳を生きたまま封入して魔法補助に用いていたが、それ並みに性質が悪い話だろう。

 だが、現代魔法の進歩の過程において、人道を著しく外れた生体実験などザラにあったことで、その一端は日本にもかつて存在した(現在は悠元の治療で全員真っ当な人間に更生中だが)強化調整体もその一端だった。

 

 ベゾブラゾフは『指揮者(デイリジオール)』として、七人の[アンドレエヴナ]を意のままに操る立場。当然、彼に彼女たちを憐れんだりするなどという躊躇いは一切有していない。

 

 それはもしかしたら、ベゾブラゾフ自身の運命だったのかもしれない。

 

 作られた存在であり、生存競争の勝者として敗者を貪っているのも、彼が勝ち得た結果でしかない。新ソ連における魔法研究の第一人者として名を馳せても、彼はその生き方以外を選ぶ権利などなかった。

 彼は新シベリア鉄道の軍用列車で牽引してきた大型CAD[アルガン]の最終調整を係員に指示した。

 

  ◇ ◇ ◇

 

 戦略級魔法師―――とりわけ国家公認の[十三使徒]の動向を掴むのは、世界各国の軍事関係者にとっては死活問題といえた。特にこれまで表に出てこなかったベゾブラゾフはディオーネー計画への参加という出来事によって、[十三使徒]の中でも注目を浴びている形だ。

 そして、日本にとってベゾブラゾフは国境を接する非同盟大国の戦略級魔法師。直接的な脅威であり、一昨年秋に佐渡沖で戦略級魔法を行使し、今年に入ってからは佐渡沖と宗谷海峡で使われた魔法の当事者の可能性が極めて高いと目される。

 ベゾブラゾフの行動を把握・監視することは、国防上の重要課題とも言えた。

 

 防衛省内の国防陸軍最高司令部。その司令室に座る蘇我大将が参謀部からベゾブラゾフに関する動向の報告を受けたのは、6月8日の午後のことだった。司令室には蘇我のみならず、参謀長を務める大友中将の二人がいて、互いに司令の執務机ではなく、応接用のテーブルに座って相対している。

 

「―――ベゾブラゾフがこの時期にウラジオストク入りですか。そうなると、狙いはやはり」

「我が国だろう。いや、正確には司波達也君を狙っての攻撃とみるのが妥当だな」

 

 世界の世論がディオーネー計画とSTEP計画の二極化となっている今、その中核を担っている元[トーラス・シルバー]の片割れである達也を狙ってのものだろう、と蘇我は推察した。

 

「ちなみに、“彼”を狙う可能性もありますが」

「そちらこそ一番の悪手だ。そもそも、我々ですら明確に所在を掴めないことが多い彼を新ソ連はどうやって狙うというのだ?」

「……不可能の所業、ですな」

 

 別に悠元が自身の所在を公開していないわけではない。だが、日本屈指の監視システムでも明確な所在を掴ませない彼をどうやって狙いを付けた上で殺せるというのか、という根本的な疑問を蘇我は口にした。

 人質を取って誘き出すという手法も考えられなくはないが、以前彼が中学生の時に友人が攫われそうになった際、魔法は最小限の行使としつつ、武術のみで大の大人たちを叩き伏せた。武術だけでも達人級の腕前なのに、魔法まで用いられると勝ち目がない。それは、沖縄方面の魔法師部隊が悉く叩きのめされたという報告で明らかだった。

 

 それに、5年前の沖縄で前線を張ったことと、一昨年秋の戦略級魔法による新ソ連艦隊消滅およびウラジオストク軍港の破壊。この時点でも一線級の実力を有していた彼が複数の戦略級魔法を有している事実を蘇我は把握している為、彼ならば相手の戦略級魔法すら封じる魔法を編み出していても不思議ではない……というのが、蘇我の偽らざる感想だった。

 

「仮に闇雲にベゾブラゾフが戦略級魔法を行使すれば、それこそ彼が協力を表明しているディオーネー計画そのものの信憑性にまで発展する。それが分かっていながらここまでのことをするとなると……新ソ連が痺れを切らしたとみるのが妥当だろう」

「堪え性がありませんな、新ソ連は」

「上条大将も以前述べていたが、ソビエトの栄光という旗頭を明確に示している以上、領土的野心など消えていないのだろう。今回のことだけを見ても、確かにその通りだと思う。先んじて、独自ルートで四葉家に警告の手紙は送っておいた」

 

 気休め程度にしかならない、と思いつつも、四葉家を正面切って敵に回すことなど出来ない。四葉家だけでなく、神楽坂家や上泉家まで出張ってくる可能性があるだけに、蘇我は国防陸軍としての最大限の配慮をすることしかできなかった。

 

「参謀長、ここで気になるのは司波達也君が“大黒竜也特尉”として在籍している第101旅団の動向だ」

「よもやとは思いますが、佐伯少将が何かされるとお思いで?」

「ないことに越したことはないが、彼女は九島退役少将の正式な引退宣言後、どうも司波君を使いたがっているように見えてしまうのだよ」

 

 国防陸軍としても、達也が別名で国家非公認戦略級魔法師として在籍している事実は把握しているが、その情報は陸軍最高司令部と第101旅団の佐伯、そして独立魔装大隊のメンバーに限定されている。

 戦略級魔法師という秘匿性も無論の事だが、最大の理由は彼が四葉家の人間という事実を隠す為。日本の国防が四葉家によって左右されている事実を知れば、四葉家を排除しようと大国が動き、かつての大漢崩壊のような大惨事が世界各地に発生するのを防ぐためでもあった。

 

「確かに、彼の戦略級魔法は強力だ。だが、『ハロウィン』の件でも抑えた上であの威力となれば、地球上で迂闊に使わせるわけにもいくない。相手の拠点のみならず、何もかも“消す”魔法など、他国からすれば恐怖に見られても不思議ではない」

「その結果が昨年に起きたUSNAから我が国への妨害ですからな。今後、軍部へ圧力を掛けてくることも想定されますが……」

「聞く理由もないな。我々は自国を守るのが最優先で、同盟国の政府の要請を聞くのは二の次だ。尤も、国家間の交渉事は役人や政治家の仕事。我々が関与する範疇に無い話だ」

 

 話を戻すが、第101旅団がある意味達也という存在に支えられているのは事実。先日の西果新島での工作阻止は、偏に悠元や達也の協力があったからこそ人的に大きな被害を出すことなく成功した。

 十師族に頼らない魔法師部隊の筈なのに、実態は十師族に頼ってしまっているという矛盾。そうなると、佐伯が考えるのは“十師族よりも強い”という実績を作るということ。単純に実力ということではなく、権威や権力による実績という意味で。

 

「参謀長。直に動かせる諜報部隊を見繕って、第101旅団または独立魔装大隊の動向を監視せよ。無理に追跡する必要はないし、目的が判明次第帰還させよ……本音を言えば、こんな情勢下で味方を疑いたくなどないのだがな」

「……了解いたしました」

 

 蘇我とて、佐伯が逸った行動を起こすとは思えない。だが、この情勢下に妙な動きを見せていることも事実。最悪、大黒竜也特尉を第101旅団から切り離して“彼”の部下につける形とすることも考慮せねばならない……と思いながら、大友に対して命令を下す。

 大友も蘇我の心情を察しつつ、敬礼をして任務を受けたのだった。

 




 今回は悠元の事前準備、ベゾブラゾフの動き、そして国防陸軍トップクラスの会談という三本立て。

 深雪や水波を行かせるリスクは当然発生します。原作よりも強化された達也波ならオーバーヒート無しで[トゥマーン・ボンバ]を完璧に防御出来ますが、ベゾブラゾフが[イグローク]を使い潰す覚悟で[トゥマーン・ボンバ]を連続発動させる可能性が当然生じるため、念には念を入れる形で深雪と水波を『達也との家族の団欒の時間を作る』という名目で送り出した形です。勿論、それに対して深雪が悠元にどんな対価を求めたのかは言うまでもないでしょうが。
 そして、夏休み編以来の登場となる黒い箱。それきり登場させていなかった代物ですが、実は聖遺物(レリック)だったという設定。人間が容易に行けない場所ということにしたのは、原作準拠でもあったりします。ある意味キーアイテムです。

 ベゾブラゾフ自身、ディオーネー計画そのものを信用しているというよりは戦略級魔法[マテリアル・バースト]を日本から排除するために司波達也を追放する計画に加担していたのであって、その計画が本格的に進めば自身も宇宙に追放するような流れになった時点で裏切って、USNAを攻撃していても何ら不思議ではなかったと思います。
 なお、町田を狙った場合は悠元が出張ってシベリア鉄道そのものが消滅するという最悪のシナリオの一端を引くことになっていました。

 そして、国防陸軍の最高司令部。達也を引いても悪手、悠元を引けば最悪の凶手。そんな状況で何かを企む部下に頭を悩ます蘇我大将は、第101旅団に監視を付ける方針を固めました。
 本来なら、こんな内輪揉めなどあってはならないのですけどね。

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