魔法科高校の『触れ得ざる者』   作:那珂之川

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九校戦一日目⑤

 当初の予定通り、女子スピード・シューティングは真由美が優勝し、男子スピード・シューティングも一高が優勝した。あずさが真由美に対して祝福し、真由美も笑顔で頷く。

 

「会長、スピード・シューティング優勝おめでとうございます!」

「ありがとう。摩利も無事、準決勝進出ね」

「まずは予定通り……いや、それ以上だな」

 

 既に夜も更け、食事と入浴を済ませて寝るだけという時間。真由美の部屋に女子生徒会役員(プラス風紀委員長)が集まっていた。いや、正確には更にもう一人いるわけなのだが、その一人が端末とにらめっこする様にしながらキーボードを叩いていて、会話に入ってこないことに真由美は頬を膨らませていた。

 

「もう、悠君はこんな時ぐらい手を休めてもいいのに」

「仕事を増やしたのは会長でしょうに。それよりも、優勝おめでとうございます」

「ふふ、ありがとう。悠君に頼んだ甲斐はあったかな」

 

 そう言いながら上目遣いを向けてくることに悠元は内心溜息を吐きたかった。先日会った澪との会談から、真由美の縁談が破談になった場合、自分にその矛先が向けられかねないという危惧があった。

 別に真由美自身に思うところはないと述べておくし、女性としては魅力的だと思う。ただ、それに付随するものが厄介すぎるということも付け加えておく。

 

「準々決勝から使ってたCADって、三矢君が組んだものなんですか!?」

「既存品の焼き直しと市販品のプロセッサやアーキテクチャを繋げただけですよ……言っておきますけど、現当主様への説明はお願いしますね?」

「それは分かってるわ……根掘り葉掘り聞いてきそうなのが厭らしいけど」

 

 真由美が使った小銃型CADを組む羽目になった経緯は、練習場においての佳奈と真由美の一戦後、佳奈が自分のCADのことを話した(トーラス・シルバーのことは綺麗に隠した)ため、そこから真由美が競技用CADでいいから組んで欲しいと頼み込んできたのだ。

 その条件として、真由美の父親であり七草家現当主である七草弘一(さえぐさこういち)に対しての説明は真由美自身で行う、ということで決着した。ライフル自体魔法科高校の魔法工学レベルに落とし込んでいる(そのために佳奈と美嘉から授業内容をすべて聞いていた)ため、そこからトーラス・シルバーに繋がる可能性は極めて低い。

 

「それはおいといて。摩利もそうだけど、小早川さんに亜実も準決勝進出は凄いことよ」

「ああ、亜実の成長はあたしも驚かされた。燈也君と付き合い始めたことがプラスに働いたようだな……もっとも、直ぐに婚約者となっていたが」

「いいわよねー……ねえ、悠君」

「寝言は寝てから仰ってください」

 

 女子バトル・ボードは摩利、小早川、亜実の3人全員が準決勝進出を決めた。摩利も小早川の実力は知っていたが、亜実が一気に実力を伸ばしたことを素直に賞賛していた。そこに付け加えられた言葉を聞いて真由美は期待の眼差しを悠元に向けるが、それをバッサリと切り捨てたことに真由美はわざとらしく頬をプクッと膨らませていた。

 

「やはり、バスの中で言った通りになりましたね」

「ちょっと、リンちゃん! ……はあ。にしても、はんぞーくんも誘ったのに、CADの調整があると言って残ってるみたいだし」

 

 服部も無事準決勝に勝ち上がった。詩鶴のヨガのお蔭でメンタル面が一気に安定したのが大きいだろう。とはいえ、本人としては他人の力で勝ったようなものであり、明日はエンジニアを務める木下という技術スタッフと準決勝以降の調整と作戦を念入りにするようだ。

 

「服部くんのメンタル面は落ち着いたんですが、夕食を持って行ったときに本人が木下先輩と作戦を念入りに再確認したいと言っていました」

「幸い、木下君は女子クラウド・ボールのサブエンジニアなので、抜けても問題は生じませんが……」

和泉(いずみ)一人に任せるのもリスキーじゃないか?」

 

 自分でCADを調整できるというのはエンジニアの負担を減らせるのだが、そう簡単に出来るものではない。限られた人数で遣り繰りするというのも楽なことではないからだ。そんな議論を繰り広げている中、あずさはずっと端末と睨めっこしている悠元が何をしているのか尋ねた。

 

「そういえば、三矢君は何をしているのですか? 態々折り畳み型端末を持ち込んでまでとなると、九校戦に関係しそうですけど」

「これですか? 九校戦には関係ありますけど、詳しいことは言えません。片方はそこにいる会長に頼まれた案件ですが」

「会長……フォローはしませんからね?」

 

 端末には2つの起動式が表示されている。一つは真由美が明日使うことになる魔法の起動式。もう一つは、九校戦本番では使わずにお蔵入りとなりそうなものだ。後者の詳細は明かせないし、何より、その魔法は使用者の魔法特性に完全依存した起動式のため、本人以外では規定出力の1パーセントも出ないように組まれている。

 悠元の言葉を聞いた鈴音はわざとらしく溜息を零した上で、淡々とした口調で真由美に言い放った。

 

「別に大したものじゃないわよ。『倍速反転(ダブル・バウンド)』をより高速化出来ないかって頼んだだけだもの」

「……真由美、美嘉に負けたことをまだ引き摺ってたのか」

「ふぐぅ!?」

 

 起動式の改良についても佳奈から聞き及んだため、これも止む無く了承した。まあ、燈也に提供した術式のこともあるので、それで差引イーブンという感じではあるが……なお、燈也に渡した『改良版・魔弾の射手』は七草家の人間の誰も知らない。燈也からも一切漏れないようになっている。最悪の場合は『魔法大全(インデックス)』に掲載された射撃台座生成術式を改造したらそれに近くなった、と誤魔化すことも想定済みだ。

 更に『ダブル・バウンド』の単純な高速化だけではなく、ちょっとしたサプライズも含んだ記述構成となっているが、これは使ってみてからのお楽しみというものだ。

 とても女子の口から出ていいようなものではない声を真由美が出したことはさておき、摩利の鋭い指摘に真由美は縮こまるような仕草を見せていた。これには流石に悠元もフォローを入れるのだが、それを聞いた真由美は悠元に抱き付いていた。

 

「渡辺先輩、そう虐めないであげてください。会長用の起動式はほぼ完成していますので、問題はないですよ」

「悠くーん!」

「会長? なぜ悠元さんに抱き着くのですか?」

「深雪、ストップ! ストップ!!」

 

 その行為を見た深雪が笑顔を浮かべて危うく魔法が漏れ出るところを、悠元が持ち前の事象干渉力で抑え込んだ。4月の時よりも勝手が分かってきたことに喜ぶべきなのかどうかは解らないが。その上で、エンジニアがらみの話に戻す。

 

「で、話を戻すのですが、エンジニアは誰が担当するのですか? 自分はピラーズ・ブレイクの試合を見たいのですが……」

「CADの件と起動式のことを鑑みても、悠元君にはあまり負担を掛けられませんね。明日と明後日がオフの司波君にお願いしましょう」

「って、見に来てくれないの?」

「膨れないでください。試合スケジュール的に十文字先輩の試合とは被らないでしょうし、可能な限りは見ますよ」

 

 明日はクラウド・ボールの予選から決勝とアイス・ピラーズ・ブレイクの予選が行われる。大会のスケジュール上、真由美と克人の試合を敢えて被らせないようなトーナメント表になることは想定済みだ。この辺は視聴率を稼ぎたいメディア側の思惑も含んでいるのだろうが。ただ、そうなると花音の1回戦は見れなくなるだろうと思う。

 その後、真由美は深雪に達也への連絡をお願いした。その際にまだ抱き付いたままの真由美に対して満面の笑顔を向けた深雪を見た一同は、その怖さと真由美のスルー力に揃って溜息を吐いたのだった。

 

 ◇ ◇ ◇

 

「―――それで、こんな時間に来たというわけか。ここまで付き添ってきた悠元も大変だな」

「お兄様、私を幼い子どもと勘違いされておりませんか?」

 

 このホテルは軍の関連施設であるため、セキュリティー面はしっかりしているだろうと達也は認識している。だが、流石に遅い時間でもあるためと、万が一のことを考えれば悠元が一緒に来てくれたことを労った。これには深雪も珍しく頬を膨らませていた。悠元は他にも仕事があると言って深雪を達也の部屋に送り届けると、そのまま自分の部屋に向かっていった。

 

「まあ、連絡してくれたことは感謝するが……深雪。お前はいつまで自分の気持ちを隠し続けるつもりだ? いや、この場合は自分の感情に嘘を付いていると言うべきか……」

 

 達也の言葉に深雪は俯いてしまう。兄としては妹の恋路を邪魔するつもりはないし、応援してやりたいと思っている。達也の持つ知識から推察するに、深雪の初恋の相手が悠元であるということまでは読み取れていた。

 悠元に対する行動を見る限りにおいても、それを感じていた。加えて、雫も深雪と似たような行動を取っていることから、彼女も悠元に対して好意を持っていると推測できた。

 自身のこと以外となると鋭い達也のことはさておき、その言葉を聞いた深雪はポツリと零した。

 

「分かってはいました。雫が悠元さんに向けている感情のことも。でも……怖いんです。今の幸せな時間を壊してしまうのではないかと……」

「そうか……すまない。新人戦が控えているのに、余計なことでお前の心を乱してしまったな」

「お、お兄様は悪くありません! 私がハッキリとしないから……」

 

 このことは新人戦の後にでもすべき話だったな、と達也は反省しつつ深雪に謝罪の言葉を口にする。それに対して深雪が弁明しつつ、何かを思い出したように頬を赤らめていた。どうやら、懇親会の夜に悠元の部屋に押し掛けた時のことを思い出したようだと達也はそれとなく察した。

 

「一応言っておくが、俺は悠元なら素直に応援してやりたいと思っている。母上もいたく気に入っているからな。悪いことにはならんだろうと思うが……」

 

 彼の力は強大である、と達也は率直に感じていた。実戦経験があり、尚且つ同年代で最強クラスの克人を破った以上、十代の十師族では「クリムゾン・プリンス」と同等以上の実力を有しているだろう。

 加えて彼は達也の十八番である『分解』と『再成』を使用できる。更には神霊魔法という古式魔法まで会得した存在で、秘匿しているが魔工技師としても世界トップクラスのハードウェア設計能力を有している。

 けれども、それで必要以上に威張ったりはせず、何の気兼ねもなく二科生の教室に足を運んだりしている。達也自身、服部との勝負の際に悠元を「親友」と自然と口にしたぐらいに、彼のことを認めているのは確かだった。

 

「もしかして、四葉……叔母様が関わってくると?」

「司波家への居候の件は叔母上からの頼みだったから、何かあるのだろう……お前にとっては大変だろうが、まずは新人戦だ。アイツは深雪への関心を逸らす為に派手にやるだろう。だから、気にせず存分にやるといい。先ほどのこともあるし、部屋まで送っていこう」

 

 悠元は三矢家の家督継承に関わる立場ではない。ギリギリ長男の予備という辺りだろう。そこに四葉家が関与してくることは明白だし、深夜経由で真夜に深雪の心境が伝わっているのは間違いないと踏んでいる。

 とはいえ、深雪は現状四葉家次期当主候補の筆頭筋。そこに悠元が四葉家の婿養子となる可能性もある……二人が結ばれる前提で考えていることに、達也は思わず内心で苦笑した。

 それはともかく、フォローとしてはこれぐらいだろうな、と思いつつ達也は立ち上がった。そして、深雪が泊まっている部屋まで送り届けると提案した。

 

「いえ、作業中のようですから、お手を煩わせるわけには……」

「なに、これは遊びのようなものだから気にしなくていい」

 

 達也が先程まで座っていた備え付けのデスクには、持ち込んだ端末が置かれている。そのモニターにはCADの設計図と起動式のデータが表示されているが、これに関しては“遊び”だと達也は述べた。それを聞いた深雪は思い出したようにクスッと笑みを漏らした。

 

「お兄様といい、悠元さんといい、それを遊びや玩具なんて言えるのはお二人ぐらいですよ?」

 

 そんなことはないと思う、と返したくはあったが、それを言ってしまうと目の前にいる妹から言い返されてしまうと察したのか、達也は苦笑をこぼすことしかできなかった。一先ず機嫌が直った深雪を送り届けるため、達也はデスクに置いてあった自分の部屋のキーを手に取ったのだった。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 そこから少し前に時間は遡る。

 女子スピード・シューティング決勝が終わった後、ホテルのVIPルームの一室で二人の人物が顔を合わせていた。

 

「烈殿。先日お会いしたばかりだというのに、急遽会談の申し入れを受け入れてくださったこと、真に感謝します」

「なに、先日のあれはこちらの身勝手な都合によるもの。君が気に病む必要もあるまい」

 

 一人は十師族の一角を担う七草家の現当主、七草弘一。

 もう一人は十師族のシステムを構築した九島家先代当主、九島烈。

 この二人は九校戦懇親会があった日にも会談をしていた。とはいっても、烈がアポなしで七草家を訪れ、真由美を無理に引き止めた上で学校のことについて尋ねた程度のもの。その際に烈は三人の人物―――三矢悠元、司波達也、そして司波深雪のことについて真由美から聞いていた。

 

「まずはご息女の優勝に対して祝福を述べさせてもらおう。あれは実に見応えがあった。世界に名立たる精密射撃能力者となれば、君もさぞ鼻が高いことだろう」

「先生にそこまで仰っていただけるとは、感謝に堪えません」

「そこまで低頭にならずとも良い。それで、如何用の相談かな?」

 

 烈は弘一が真由美のことを持ち出すのでは、と予測はしていた。弘一の口から出た言葉は正しく彼女に関することであった。

 

「先程出た真由美のことです。我々のような存在は早婚が望まれる風習にあります」

「無論、それは承知している。だが、確か彼女の婚約候補に五輪家長男がいたのではなかったかな?」

「それなのですが、お互いに上手くいっていないようでして。調べたところ、件の長男はどうやら三矢家の次女に対して恋愛感情を抱いているような節が見受けられました」

 

 弘一は五輪家の長男が三矢家の次女―――佳奈に対して恋愛感情を覗かせていると睨んでいた。お互いに同い年で同じ大学に通っているため、接点は真由美よりも多いだろう。無論、あらゆる諜報を駆使した結果ともいえる。

 だが、三矢家の方からは五輪家に対して一切アプローチをしていない。長男が家督継承への段階を着実に踏み、次男が上泉家に婿養子となったため、無理に娘婿の家格を求める必要がなくなったのだ。

 

「その件は私も三矢殿から伺っている。娘たちは自由な恋愛でも構わないと思っているようだ。あれだけの高い資質を無視はできないが、それに対して私から無理強いは出来ない」

「それは分かっております。先生には三矢殿の三男と真由美の婚約にお力添えを、と思いまして……」

 

 以前五輪家長女と悠元を婚約させてはどうかという話も持ち上がったが、それが破談となった経緯も弘一は掴んでいた。悠元に関しては泉美との婚約話もあったのだが、十山家の関連(プラス、バレンタインの一件)で上泉家を怒らせてしまったため、立ち消えになった経緯がある。なので、烈の力を借りる形で真由美との婚約相手に悠元を選択する方向に持っていこうとしていた。

 悠元とは三矢を名乗る以前から親交があり、真由美だけでなく香澄や泉美と打ち解けている。そこで泉美を選択肢に出さなかったことは泉美を怒らせる要因になりかねないが、彼女とて姉の幸せを願っている筈だと内心でそう結論付けた上で烈に提案を持ち掛けた。

 その弘一の提案に対して、烈は表情を変えることなく問いかけた。

 

「五輪家との縁談は如何するつもりだ?」

「お互いに合わない以上は解消するより他にありません。仮にその長男が三矢の次女と恋仲になれば、三矢を介する形で五輪と縁を結ぶことができ、四葉への牽制に繋がるかと……」

 

 弘一の考えた案は、四葉と繋がりを持つ三矢を引き込んで、三矢と七草で四葉を抑えるという方向性に持っていこうというものだった。元第三研という誼があるため、そこに関しては元も納得してくれるだろうと踏んでいた。

 その意図を読み切った上で、烈は口を開いた。

 

「……弘一。申し訳ないが、()()それに力を貸すことが出来ない」

「……何故ですか?」

「剛三から三矢悠元君のことについてある程度聞き及んだ。彼の婚姻については、三矢家ではなく上泉家と“神楽坂家”がすべて取り仕切っているとな」

「!?」

 

 烈が口にした言葉に弘一は驚愕の表情を浮かべた。

 神楽坂家―――陰陽道系古式魔法の大家にして、上泉家と並んでこの国の中心を担う『護人(さきもり)』とされる家。政財界に対して非常に強い影響力を有しており、時の内閣総理大臣であっても神楽坂家に対して頭を下げねばならず、その家に命令することを許されるのはこの国の象徴たる天皇だけである。

 十師族の更に上の存在であるにも拘らず、上泉家と違ってこれまでこの国の表舞台に立とうとしてこなかった。その家に悠元の婚約者を決める権限が委ねられていることには驚きというほかなかった。

 

「君の娘と婚約させようとしていたことは、神楽坂家も無論知っていたであろう。だが、十山家の一件で遺憾と述べていたそうだ……これは剛三から聞き及んだことだ」

「では、元殿も認めていた彼と私の娘の婚約のことは、上泉家と神楽坂家の取決めがあったと……?」

「一切の断言はしていないが、恐らくそうであろう……四葉を弱らせようと逸ったのが拙かったな、弘一」

 

 烈は、剛三が四葉の弱体化を望んでいないことは既に聞いていた。だが、このままでは十師族という相互監視システムが崩壊しかねないことも理解している。これで神楽坂家が上泉家と同調するような方針を持っているのだとしたら、早めに手を打つ必要があるだろうと烈は思慮した。

 剛三の言っていたことも理解はしている。だが、烈は彼のように純粋かつ強力な魔法師でないため、力に対する恐怖を人一倍感じていた。その意味で、懇親会において的確に烈の魔法を対処して見せた悠元を如何様に考えているのかが烈にとって一番の疑問であった。

 

「先程『今は』と仰られましたが、それは如何なる意味なのでしょう?」

「―――先日、神楽坂家より書状が届いた。吉日を選んで次期当主を発表するとな。私の推測が間違っていなければ……彼がその次期当主候補に成り得ると踏んでいる」

 

 これについては、正直「やられた」と烈は感じていた。神楽坂家はそれが誰なのかを明かしていないが、書状が送られてきたのは烈が九校戦観戦のために出発する直前であった。つまり、九校戦に出場する選手の中にその次期当主がいると睨んだ。

 

「先生は神楽坂家現当主をご存じなのでしょうか?」

「知っておる。あ奴はとんだ“女狐”で、剛三同様に食えぬ奴よ。一応の繋がりはあるが、一筋縄でいかぬ相手と心得ておくがいい」

 

 上泉家と神楽坂家は魔法師としての力を維持するための相互婚姻を数代おきに行っており、少なからず血縁関係にある。つまり、上泉家の血を引く三矢家も神楽坂家の遠縁にあたる形となっている。このことは十師族でもごく一部しか知らない事実である。

 なので、三矢家の人間から神楽坂家の次期当主が選ばれても不思議ではない、と推察していた。

 

 本来、魔法使いの家系なら保有する遺伝子の関係で得意分野が偏る傾向にある。だが、今の三矢家の場合はまるで()()()()()()()得意分野も特筆すべき体質も異なる。

 それが何を意味するのかは烈でも解らないことだが、神楽坂家現当主も悠元に対して強い関心を持っていることは確かなことであった。

 

 弘一に対して、神楽坂家との繋がりを持てるように配慮はするが、そこから先は弘一次第だと、口にはしなかったがその意味も込めた言葉を烈は呟いた。

 口に出さないが、今年の九校戦終了後に神楽坂家当主が烈に対して呼び出しをしている。烈はそれを好機とみて、神楽坂家が十師族というシステムを如何様に見ているのか問いただそうと決めたのだった。

 




深雪の心境の変化は新人戦女子アイス・ピラーズ・ブレイクにて語る予定です。
端的に言えばネタ稼g(瞬間凍結)

後半はオリジナル設定マシマシです。

お気に入り3000突破は手が震えました(小並感)
拙い出来の文章ですが、宜しくお願いいたします。

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