思い付いたものを適当に書きなぐっているシリーズ。
要は気分。
駄文。
―― カツンッ…、カツンッ…
長い廊下に、軽めの靴の音が響き、一定のリズムでそれは続き、ピタリと止まった音の次には、コンコンとドアをノックする音が廊下に響く。誰も居ない空間は、音が良く響き、長い為に更に拡張されている様で。
数秒の後に、中から声が聞こえ、ガチャリとドアノブを回す音と共に、また、靴の音が響くかと思ったが響かずにドアが締まるのと同時に吸い込まれてしまった。
広い部屋に、何も無い空間。ただ、白い到って普通のベッドと食事を取るためのテーブルが置かれている空間。ベッドには、金糸の髪を持つ大柄の男が一人、来訪者を嬉しそうな楽しそうな、けれどニヒルな笑みを微かに浮かべて見ているだけだった。来訪者は呆れた様な諦めた様な溜息と表情で、慣れた様子でベッドの横へと移動し、右手に杖を瞬時に出して握る。
「お加減は、如何…?」
静かな声ではあるけれど、凛とした声色で通る声。発せられた言葉は、若干の、いや、それなりの嫌味を含めては居たけれど、目の前の金色の人は意に介した様子も無く視線を少し動かすだけで。そう言う反応も予期して居たのか、来訪者、光の戦士、英雄、冒険者、様々な名を持つ者は持ち上げて居た杖を床にトントンと打ち付ける。
「見たら分かると思ったんだが、分からないか?」
「分かったら苦労しません」
からかいを含んだ言葉にピシャリと光の戦士は返し、溜息を盛大に隠しもせずに吐けば、右手に杖を持ったまま左手を金色に翳し、何かを唱えれば淡い緑色の様な黄緑色の様な光が現れ、ふわふわと優しい暖かさをもった様に金色を包み込み、すぅっと吸い込まれる様に消えれば翳して居た手を下ろし、持って居た杖を一瞬で消して仕舞う。
特に悪化した場所も無く、徐々に回復している相手の傷とエーテルに安堵した様な表情を浮かべ、先程の溜息とは違う息を吐き、ゆっくりと視線を合わせる様に金色へと目を向ける。
「一週間くらい、ジッとして居れば、痛みは無くなりますよ」
目を細め暗にジッとして居てくれと言う様な言い方で言葉にし、邪魔になった髪を軽く後ろへと梳き、少し困った様な笑みを浮かべれば、さてとどうしようかと少し考える様な仕草を見せ、動かして居た視線を金色へと戻せば、光の戦士をジッと見ている目と合う。
何も見て居ない様な、無機質な目。けれど、何処か寂しい様な、哀しい様な、それでも闘志を垣間見る様な、火が其処にはある様な目は、一度見てしまったら吸い込まれてしまいそうな、そんな錯覚を起こしても可笑しくないくらいの、カリスマ性を持って居て。ハッと、した後に大袈裟に逸らした視線と顔は、金色にとっては面白かった様子で、くすっと笑う声が微かに聞こえる。
「お前は何故、俺を生かした」
「……。さぁ?分かりません。理由など、無かったに等しい。私の前には生かせる可能性と、殺せる可能性が、あって…。その、二択で生かす事を選んだ、それだけ」
「殺す可能性を選ばなかったのは?」
「そう、ですね…。そう、生きて居て欲しい、と思ったから」
暗い重い空気から一転、金色は顔を片手で覆って肩を揺らして、笑いを堪える様に、いや文字通り堪えている状態で口元に弧を描いて、至極愉しそうな嬉しそうな、若干複雑そうな様子も垣間見えるもののそれは一瞬で、光の戦士は気付く事も無く。笑われた事に、訝し気な表情を浮かべ、ジト目で金色を凝視し。
「笑う事…?」
「…っは。ああ、とんだ、お人好しだ」
「…。貴方は、私だ。別の、私が選ばなかった、違う、私。でも、貴方は、私では無い。だから、交わる事は無いし、私は、貴方にはならない。けれど、それでも…、立っている場所は、同じとは言わない、似た場所だと、思ったから」
「それで、生かしたと?」
「恨む気持ちも、憎い気持ちも、両方ある。けれど、貴方は、私の、戦友(とも)だと、思ったから。私は、死ぬわけにはいかない、朋友(とも)に誓った。立ち止まらないと、振り返らないと、嘆かないと。貴方は、私の、通過点で、通り道でしかないよ。ゼノス」
真っ直ぐな、前しか見て居ない様な、高見しか見て居ない様な目は、何処までも綺麗な色を放ち、金色、ゼノスの視線を射抜く。其処には、言葉通り、ゼノスでさえも、敵さえも自分の力に変えて、乗り越えて、道のりにして行く、その意思があり。気圧される様に無言で表情の消えたゼノスは、目を細め口元に弧を描き、ゆっくりと首を横へと向ければ、光の戦士を覗き込む様な角度でゆっくりと口を開き。
「生かした後は、どうする?」
「……」
「考えて無かった、と言う顔をするな。今、考えろ」
「そんな無茶な…」
問われた事にきょとんとした表情を浮かべれば、図星を指されムッとした表情を浮かべるものの、ゼノスに応えない訳にもいかずに、考える仕草を見せ、無言で小難しそうな表情で眉根を寄せ。その間も、ゼノスは光の戦士を眺めて待って居るものの、待って居るのも飽きた辺りで、手を動かせば、それに反応して光の戦士も動けば、暫しの見詰め合いの結果、光の戦士が口を開き。
「私と一緒に、在れば良い」
淡々とした声色ではあるけれど、それが一番良いと言わんばかりの表情で、うんうんと数回頷くも、目の前の相手が面食らった表情を浮かべた後に愉しそうな嬉しそうな表情を浮かべ、ニヒルな笑みを浮かべれば先ほど動かそうとして居た手を動かし、ゆっくりとそのまま光の戦士へと伸ばせば、指先で髪へと触れ。
「それは、求婚か?」
その一言を頭で処理出来なかった様子で、小首を傾げるものの、段々と理解して来たと共に自分が言った言葉の意味も、そう言う意味で受け取れる様な事に気付き、一気に顔を赤くさせれば、思いっきり首が撮れないだろうかと言うくらいに左右に振って、言葉にならなかったのか口だけを開けたり閉じたりを繰り返し、やっと冷静になれるまでに一分ほど要し。
「断じてない…!」
力一杯の否定をすれば、今にも殺してやろうかと言わんばかりの殺気染みた視線を向けるものの、ゼノスは意に介しておらず、シレッとして居て別に何でも良い、みたいな、そんな雰囲気で。そんな様子を見れば、力が抜けたのか光の戦士は深い深い溜息を吐き出し、胸元に手を当てて落ち着けばジト目で相手を見詰め。
「一緒に戦う方が、数倍、楽しいと思ったからそう言っただけ。貴方は、戦友(とも)だと言ったでしょう。それに、私はまだ、立ち止まれない」
軽く頭を抱えた状態で言葉にした思いを口にすれば、ゼノスは楽しそうな面白そうな表情を浮かべ、手をヒラヒラと振るだけで返し。ふと、廊下で物音がするのに気付き、ああもうそんな時間かと片足を引き、ドアの方まで光の戦士が移動する。
「お迎えが来たし、また」
あの、ゼノスが居る場所に一人で行かせるのは、他の者が最初は反対したものの、それを押し切って光の戦士が強行突破と言う名の我儘を押し通したためで。帰りは迎えが来る事で同意をさせ、今に至って居る訳で。ドアノブに手を掛けた後に半身だけゼノスへと向け。
「お大事に」
本当にそう思って居るのか分からない様な声色で言葉にすれば、ガチャリと音を立ててドアノブを回せば、ドアの先に居たのはアリゼーとヒエンで。二人は心配そうな表情を浮かべて居るものの、光の戦士が無事出て来た事に安堵した様子を浮かべ、笑みを浮かべ。それに釣られる様に、答える様に光の戦士も柔らかい笑みを浮かべ、ゆっくりとドアの向こう側に消え…。
ぱたりと閉じたドアの中、ゼノスは、目を細め、光の戦士を見送った後に、世界に興味が無いと言わんばかりに目を閉じ、ベッドに沈み込んだ。
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