この〇〇のない世界で   作:ぱちぱち

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新年あけましておめでとうございますその2。
正式な最新話はこちらになります
タクミがなんで怒られてるのかは前の番外編をご覧ください(見なくても大丈夫です)

誤字修正:佐藤東沙様、たまごん様、a092476601様、yelm01様ありがとうございます!


このライブのない世界で

「彼女について、というのは何とも答えづらい言葉です」

「孫の友人であり、私にとっての恩人であり。何と言いますか言葉にし辛い相手でしてね」

「絵について? ああ、それなら簡単ですよ」

「彼女は漫画家ではありませんね。あのレコードのあれ。あんなものは漫画とは言わない」

「まぁ、一枚の絵として見るなら上手じゃないですか?」

「私がもし彼女の絵を漫画にするなら――」

 

~手越治虫 週間日曜日 発刊記念でのインタビュー~

 

 

 

 

 

「自分がなんで正座しているかわかるか?」

「はい……」

「はいじゃないが」

 

 ガンッ、と机に拳を叩きつける黒っちを隣に立つ銀さんがまぁまぁと宥める。というか銀さん居なかったら普通に正座なんてしな嘘ですごめんなさいごめんなさいごめんなさい。

 

 まぁ、今回はちょっとやりすぎたと思ってるし反省はしてる。前回大阪に行ったのあれ他の予定色々とぶっちして行ったんだよね。本来の予定だったら一週間くらいの間、私は富士山の近くに滞在する予定だったんだ。

 

 一週間も山に居て何をするのかっていうと、961プロ主導で今大きな合同ライブというか、ロック主体の音楽の祭典を企画してたんだよね。ちょっと前にテレビでアイドル全般が酷い事になってたのもちょっと関係あったりする。

 

 あれで盛り上がってきてたアイドルって業種がさ、引退続出でしぼみかけてるんだよね。これも全部舞って奴が悪いんだけど。

 

 美城の幸姫ちゃんという癒し枠が居なかったら、アイドル業界は舞とその他死屍累々って感じの焼け野原みたいな状況だったかもしれない。あんだけ逆境の中に居るのに折れずにメディアへの露出やらを精力的に行えるメンタリティは正直凄いの一言だ。

 

 そんな幸姫ちゃんに触発されるようにこれまで目立たなかった芽もチラホラと芽吹いてきてるらしいんだけど、業界自体はどうしても規模が縮小してしまっている感が否めない。

 

 で、話を戻すと。伸び始めていた音楽業界が萎んでしまった分、てこ入れを入れなきゃいけないのは当然のことで。そこで白羽の矢というか大きなイベントをぶち上げないか、と企画されたのがこの合同ライブなわけだ。

 

 企画からゴーサインまでの時間が結構早かったから、もしかしたら元々そういうイベントを企画してたのかもしれないね。日本の音楽イベントってまだまだ数も少ないし。

 

 って事で富士山近くのスキー場を貸し切って野外ライブステージを立てまくって、961中心ではあるけど全国のアーティストを集めて行われたのが『フジヤマ・ロックンロールフェスタ』略してヤマロックである。

 

 前に世話になったXross(クロス)や、最近売り出し中の野素虎陀無四(のすとらだむす)とか結構伸びてる連中ばっかり集めたこの一大フェス、結構な規模になりそうだから初回にはぜひ参加してくれって黒ちゃんからも言われてたんだよね。

 

 野素虎陀無四(のすとらだむす)とか歌に合わせて蝋人形に私を詰めて登場。いきなり出現した私が歌い始めるって最高にバカな演出考えてきてて、これはやるっきゃないと思ってたんだけどさ。マンガゴッドが出現したんじゃそっちを優先するっきゃないからね。うん。

 

 一応本番には間に合ったんだけど打ち合わせも何も出来なくて予定してたイベントも殆どできなくなったし。

 

「百歩譲ってそこは良い。イベントには顔を出していたからな」

「え。間に合わせるために上空からパラシュート降下してステージに突っ込んだ件も!?」

「お嬢……」

「ごえんあさい」

 

 もしかしてゆ、許された? と期待を声に込めてみるもその後に頭上から降ってきた絶対零度の銀さんボイスにんな事はなかったと再び額を地面にこすりつける。猛虎落地勢! はまだ連載されてなかったか。でもだっちゃの方が週間日曜日で連載されそうだからいつか見れそうだね。

 

 しかしパラシュートでステージ乱入以上に許せない……え、なんだろう。もしかして京都についでに寄って熱いゲーム議論交わして来たのがバレたのか? あの人達うちの会社がミカン1出した時からファンみたいなもんだからついつい御呼ばれに応じちゃったんだよね。

 

 いや、京都の方は一応黒ちゃんにも伝えてあったしあっちは仕事の関係上外せないというか、ついに完成したエイリアンフルボッコゲーム(以降スペースウォー)の販売計画をどっからかぎつけたのか流通に一枚かみたいって言われたんだよね。

 

 いや、実際ありがたいんだよね。なんだかんだ老舗の玩具メーカーだからその方面の流通網もあるし、ミカン1を結構な頻度で買ってくれてるからコンピューターへの理解もある。

 

 というかあれだ。多分ゲーム機開発始めてるんだろうね、すでに。その上で今後売れるゲームとはってのを間近で見ておきたいのかな。まぁ、そちらがその気ならこちらもやぶさかではない。ミカン本社はPCとアーケードゲームでキャパが一杯だし、ゲームハードの開発は行う予定はなかったから棲み分けもできる。

 

 おし、組もうかとその場のノリで即決し、後日担当の人が来るので、と細かい話をすべてミノルちゃんに丸投げしてライブ会場にヘリで乗り付けたんだったか。ミノルちゃんからの怨嗟の声が今も耳に残ってる気がするぜ!

 

「……そちらも頭が痛いが、違う」

「えぇっと、じゃあ、なに?」

 

 本格的に訳がわからないよ……という表情を浮かべた私に黒ちゃんはため息を一つつくと、手元にあったカセットレコーダーのボタンをかちり、と押した。ラジオの録音もできる最新式、さすがに社長は良い物持ってるじゃねーかと感心していると、ざらざらとした音の後に録音された音声が室内に流れ始めた。

 

『自分の価値観を他人に委ねるな! お前がなりたいお前の姿はお前しか分からないんだ。だから勉強を頑張って良い子でありたいならそうしな。ロックやりたいならロックしろよ。ツッパりたいんなら堂々とツッパッて社会に中指立てちまえ!』

「初ラジオで放送事故とは凄いな。PTAからの抗議の電話が鳴りやまないんだがお前はうちの会社の電話回線をパンクさせるのが趣味なのか?」

「本当に申し訳ありませんでした」

 

 ここ数時間行っていた土下座の数倍気持ちを込めて頭を床にこすりつける。これは完璧に私が悪いパターンですね、はい。

 

 

 

『ボス! やっと戻ってきたかすごいぞ、これは、すごいぞ!』

『ボスゥ! こっちにボスに見てほしい書類が山と!』

『ボスッ! 増産の依頼が大量に来てますよ! 生産が全然追いつかないし、国外からも!』

 

 日本での悲しい事故から数日。映画作成の方が佳境に入り本当は離れる気はなかったんだが、米国側の呼び出しがそろそろ洒落にならない強さになってきたので急遽アメリカに戻ることになった。

 

 矢みたいに『戻ってきてくれ』コールや手紙の催促が飛んできてたからな。スペースウォーが発売されるから仕方ないのもあるんだが、帰ってきて早々に私を待ち受けていたのは全方位を良い年のおっさんどもに包囲されモミクチャにされるという可哀そうな図であった。

 

 おい、これ普通の女の子ならトラウマものだぞ貴様ら――あ、違った、私は普通の13歳の女の子だった。いかんいかん。たまにメッキが剥がれそうになるから注意しないとな。

 

『普通の女の子はマンハッタンを拳で制圧しないと思うんだ』

『なんでや! 途中からマイキーとかも参戦してたやん!』

『お陰で彼は一試合棒に振っちゃったけどね。感謝状やら貰って喜んでたみたいだけど』

 

 それを言われると若干心が痛い。いや、私の会社……PC関係のミカンや芸能関係のエキサイトプロダクション……が入ってるビルはニューヨーク州はマンハッタンにあるんだけどさ。昼間はともかく、夜になると治安がヤバいのなんのって。

 

 ここに来た当初は道端をギャングやマフィアが我が物顔で普通に歩く無法地帯というか、地下鉄に至っては年中無休で何か事件が起きるような有様だったんだよね。

 

 で、うちに所属してる連中は基本的にもやしっ子か歌手やらアイドルやらで、一部のやんちゃボーイズ&ガールズを除けば喧嘩なんかできるわけもない連中なのだ。放っとけばその内に悪い連中に捕まって最近年2回やってる祭典でも出回り始めた薄い本みたいな事をされかねない。

 

 勿論そこは社主として対策を。腕っこきで暇してる連中(無職のレッドショルダー)を集めて警備として雇い、仕事に出る際の送迎も任せて社員の安全を確保したんだが、それはあくまでも対処でしかなく根本的な解決にはならない。

 

 そこでしょうがなく私自らが出向いて連中とお話(腕力)した結果マンハッタン島全域の治安のアップに成功。その際にニューヨークで防衛戦があったマイキーが善意で手伝ってくれて……てのは良かったんだが、結果として彼は予定されていた試合を一戦延期する羽目になったのだ。

 

 当然関係各所には謝罪行脚する羽目になり、1年くらいタイトルマッチがあるたびにロハでリングの上で歌ったりとかする羽目になった。まぁお陰で周辺の治安は劇的に改善したし何なら夜の盛り場は粗方うちが抑えたから、新人が気軽に演奏できる職場も手に入ったしで結果良ければすべて良しというね。

 

「嘘を言わないでください。レポート作成の疲れでストレスが溜まっていた所にズンチャカ騒いでいた連中が目障りで叩き潰しただけでしょうに」

「真実は何も解決しないよミノルちゃん!!?」

 

 あと正しくは一発ギャグが滑ったからむしゃくしゃしてやったんだけどこれは誰にも言ってない、私と警官さん(たまたま居合わせた)との間の秘密だから割愛しておく。ウケると思ったんだけどな、マイコーのポゥッ!の物まね。

 

『まぁ、新作ゲームの発想にも繋がったし確かに悪い事ばかりじゃなかったけどね』

『ん、新作ゲーム?』

『ああ。開発陣はデバッグ位しか仕事がなかったからね。丁度いいから新しい物、今度はもうちょっと凝ったゲームに挑戦してもらってたんだ。まだまだ1面しかできていないけど、素晴らしい出来だよ!』

 

 スペースウォーの発売でやたらと忙しいって話だったのにどこにそんな余裕が……と疑問符を上げると、何故か最も忙しいはずのウィルが目を輝かせてそう語りかけてきた。おい、目の下のクマがスポーツ選手のアイブラックみたいになってるぞ?

 

『眠気も吹き飛ぶくらいに面白いんだ! 是非見てくれよ! スペースウォーと同じ筐体で出来るようにしているから切り替えて利用可能、どちらのゲームを遊ぶのか最初にプレイヤーに選ばせる事もできる! そしてなんと、今回はスペースウォーと違って射撃ではなく格闘! 横に歩いていくように動かしてどんどんステージを進めて、途中出てくる敵をパンチでキックでなぎ倒しながら進んでいくんだ!』

『それなんてファイナル〇ァイト?』

『むむっ、流石はボス、良いネーミングセンスだ。でもこれが最後になっても困るから、うん。このゲームはマンハッタンファイトと名付けよう!』

『名付けないでください』

 

 テンションの振り切れたウィルさんはその後もギラギラと目を輝かせたまま新作ゲームの素晴らしさとこのゲームを作成した製作陣を称え、廊下に飛び出すとスペースウォーとマンハッタンファイトで我が社は一気に米国トップ企業に上り詰めると叫び始めながら走り去っていった。

 

 無言でぽかーんと佇む開発部の中。おほん、と咳払いをしてウォズバーンさんが口を開く。

 

『ここ数日、缶詰状態で生産と流通の対応をしていたんだ。そっとしておきましょう』

『あ、はい』

 

 なお、ウィルさんは階段の手前で電池が切れたように倒れこんでいたため手近なソファーに叩き込んで寝かせた模様。次の日には元気に動いてたからこの人の体力も大概だと思う。

 

 

 

 高級感溢れるホテルのとある一室。その中で二人の男女は張り詰めた空気の中、互いの瞳を真っ直ぐ見据えて見つめ合っていた。

 片方は10代半ばにも至らない少女。そしてもう片方はそろそろ還暦を超えるだろうという老人。孫と祖父ほどに年齢が離れたその二人は、しかし微笑ましさなど微塵も感じさせないヒリつくような空気の中、まずは少女が口を開いた。

 

『ここに、500万ドルの小切手があります。全てが思い通りになる額です』

 

 手元の小さなショーケースを机の上に乗せて開く。その中に、まるで宝物のように入れられた一枚の小切手に向かい合う老人がごくりと唾を飲み込んだ。

 

『ただ一回。ここでイエスと言えばこのお金は貴社の物になる。決断は、貴方の右手に任せよう』

『このやり取りまたやるのかいタクミ』

『天丼は大事だって日本の漫才で言ってるから』

 

 プシューッ、と音を立てるように空気が萎むのを感じ、隣に座るミノルちゃんは小さくため息をついた。

 うん、「また」なんだ。済まない。仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。でもこのやり取りを見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない「ときめき」みたいなものを感じてくれたと思う。

 

「なに言ってるんですか?」

「早く青年向けの漫画雑誌が欲しいなって」

 

 2、30年くらいその辺りの動きが遅れてるせいで結構な漫画が世に出ず消えちまったからな。週間日曜日がある程度形になったらその辺りも随時作っていかないといけんだろうし、漫画業界もどんどん規模を大きくしていかないといけん。

 

 手越の爺さんに投げたら大体なんとかなりそうだけど流石にあの年齢の人を馬車馬みたいに働かせるのもアレだし、どうすっぺかねぇ。

 

『日本のコミックも大分盛り上がってきたじゃないか。海外流通部門が予想外の反響で喜びの声を上げてたよ』

『なんだかんだアメコミも人気あるんだよね。日本の漫画はまだまだ発展途上だし。けど凄い勢いで伸びてるから油断してるとあっという間に抜かれちまうぞ?』

『君っていう前例もあるしね。レオパルドンに拘るそのセンスは良く分からんが』

 

 やかましい。30年後くらいにスパイダーマン大集合したときやっぱりレオパルドン使いたいって言っても使わせねーぞ畜生。

 

『まぁ冗談は兎も角、現況の報告に移ろうか』

『こっちはちっとも冗談じゃないんだが』

『ウォッホン。最近はそちらからの梃入れで資金面でも余裕ができたし海外の流通でも活路を見いだせた。アニメの放映も順調だ』

『アニメ、予想以上に人気出てるみたいね。再放送権の販売が順調って聞いたけど』

『ああ。良い出来だと思っていたがここまで人気が出るとは思わなかった。お陰でそれに追随するようにコミックの売り上げも伸びている。下手すると倍以上にね』

 

 そっちに関しては予想通りって所かな。前の世界でのDr.スランプ アラレちゃんの流れは知ってるからな。ちゃんと計画を立てて力のあるコンテンツを使えば、アニメ化ってのはでっかい金の流れを生むもんだ。

 

 集英社なんてあのアニメで業績そのものが劇的に変わっちまったから、それ以降何十年もフジテレビと組んでドラゴンボールやらワンピースやら放映しつづけてたからな。それだけ大きな収益源になるって事だ。

 

『グッズ販売も好調だ。正直ここ十数年の利益をたった2年で超えてしまいそうでやるせない思いだよ』

『上手い事ハマればメディアミックスってのはこんだけデカい金になるんだよね』

 

 グッズ販売に関しては長年マーブルエキサイトと付き合いがあるって言う老舗の玩具メーカーに任せてある。うちはアニメも原作も歌まで全部自前で賄えちゃうから多少は外にお金を出さないとね。妬まれちまう。

 

 妬みってのは怖いんだ。全くこっちが悪くなくてもそんなの関係なくまっすぐ憎しみを向けられちまうからな。関連企業にも気を配っておかないと何されるかわかったもんじゃない。ただでさえ血の気の多い世界だしな。

 

『……その、関連企業の事で少し相談があるんだが』

『ぱーどぅん?』

『やたらと発音のいいスラングはやめろ』

『ごめんて。どうしたの?』

 

 歯切れの悪いスタン爺さんの言葉に思わず聞き返すとやんわりと注意されてしまった。爺さんたまに礼儀作法に厳しかったりするからな。素直に頭を下げて尋ね返すと、眉を寄せた表情のまま、スタン爺さんは口を開く。

 

『DCCコミックを買収したい』

『…………………は?』

 

 全く予想もしていなかった思わぬその一言に目をぱちくりとさせると、スタン爺さんは再度同じ言葉を繰り返して、ゆっくりとした動作で頭を下げた。

 

 え。どゆこと?

 




三が日に更新したかったけど昨日まで毎日飲んでた(白目)
番外編も一緒にアップしたので許してくださいなんでも(ry




クソ女神様とタクミっぽいのの小劇場



クソ女神様
「彼女の肉体は私の下界での肉体」

「ああ、うん。だろうね」

クソ女神様
「あの忌まわしい魔術師に切り離された私の肉体を依り代にあの娘はこの世に降り立った」

「……あー、うん。まぁ、不可抗力とはいえ申し訳ない事をした気がしないでも」

クソ女神様
「私と同じ肉体を持つあの娘が私を拒んだ事で、私は下界に干渉する術を完全に失って貴女とここに居る」

「拒んだっつか殴り飛ばされたじゃなかったっけ? あと私も巻き込むな私は元からここに居るわ」
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