「俺のヒーローアカデミア」はじまります!   作:ばうえもん

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ヒーローとして軸がぶれている 完結編1


 

まさか自分の身にこんな事が起きるだなんて、私は今まで想像すらしていなかった。

 

私の後ろには職場体験でお世話になっているマジックヒーロー・イリュージョンさんが血を流して倒れている。パトロール中に見かけた不審な人影を追って裏路地に入った所を襲われたのだ。

 

私も応戦しようとしたのだがヒーロー殺しの動きをとらえる事は出来ずに発動体である杖を破壊されてしまった。発動体を無くすと私に出来る事は極端に少なくなる、予備の杖も準備してはいたが持ち歩いてはいなかった。

これは自分の危機感の無さが招いた事態だ、もう一つの世界の私が危機感を持って行動していたというのに、その記憶を受け取った私は何も学習してはいなかったのだ。

 

逃げ出したくて仕方が無いのに、足が震え動けなくなった私にヒーロー殺しはこう言ったのだ

 

「ガキか、見逃してやるからそいつを置いて行ってしまえ」

 

動き出せない私の代わりにイリュージョンさんが答える

 

「……彼女を見逃してくれるのか?

 アリサ君、俺の事はいいから君は逃げるんだ!!」

 

逃げ出したくて仕方が無いのに、その場に根を張ったように私の足は動こうとはしなかった。

芯の無い私は進む事も引く事も出来ずにただただその場に立ち尽くす事しか出来なかった……

 

 


 

ヒーローとして軸がぶれている 完結編1

 


 

体育祭から職場体験までの数日、別に物間や黒色に霊力を流して悶えさせて…くそ、お塩島は麻帆良の女子中学生を悶えさせていたというのにこの差はなんだ!!

 

あー、いや、とにかくそれだけではなく自身の強化にも努めていた。霊力制御の精度が上がった事により前世の妄想の中でも難易度が高く諦めていた物の再現に取り掛かったのだ。特に文珠のコストパフォーマンスの悪さをある程度の改善が出来たのが大きい!

 

仮称『劣化文珠』、保有霊力を減らした事と保存性を捨てた事により外殻の生成に使う霊力を大幅に減らすことができた為に生産性を10倍以上上げる事が出来た物だ。

勿論犠牲にした物が有る以上は欠点が存在する。本来の文珠は破損こそしたものの銃弾を止める強固な外殻を持つのだが、劣化文珠は保存性を捨てた為に取り出してから30秒程度で外殻の崩壊が始まり1分持たないで内部の霊力が漏れ出し消滅する。故に基本(爆)のような一気に使い切る用途で使用する物である。

一応裏技として俺の奥の手の栄光の手(ハンズ・オブ・グローリー)に食わせて能力を付加する使い方の場合はある程度の効果の維持も可能である。

 

逆に生産性以外の利点は、通常より出力を落としたので複数制御の難易度が下がったのである。それにより文珠の大体3割程度の出力しかない劣化文珠も2~3文字の使用で意味を補えば通常の文珠以上の効果が出せる。

勿論複数使用よりは1個の方が発動が速いのでその辺り判断も重要になってくる。

そんなこんなで以前より気軽に文珠を使えるようになった。

 

 

というわけで保須市への移動中、影から取り出した偵察用に作ったスズメ型の式神を生み出す式神符108枚の束から1枚抜き出し術式を幾つか(追)(加)して、それを元にして残りの107枚の符に纏めて(複)(写)する。

既に完成した呪符を書き換えるとか無理が効くのは文珠が有ってこそだ。

 

 

保須市に到着後は愛美さんが話しを通してくれたとあるビルの屋上、兄ちゃんが周囲を警戒するなか座禅から軽い集中状態になり式神符に霊力を注いで起動し接続する。

108枚の式神符から生み出されたスズメが保須市の空に舞う、愛美さんが設定した巡回ルートを飛び続けるように命令を出して、スーツのウェアラブルコンピュータと電子式神で送られてくる映像の処理に入る。流石に108鬼の視界の処理はむっちゃきついわ、型月クロス系から高速思考とか分割思考とか持って来れないか…あっ、なんか急に楽になったと思ったらペルソナが憑いたのか。しかしこれは…かつて魔界と呼ばれた3つの世界の一つ"なの破界"の魔導士が使うマルチタスクと高速思考なのか?まさか魔導師スキル持ちのYOKOSHIMAが居たのか!ほんとクロスを含めるとYOKOSHIMAは何でもありだな。

 

「辛そうだが大丈夫かね、余り負担が大きいようなら中断しても……」

 

「大丈夫です。コツは掴みましたので行けます」

 

おっと、しかめ面になってたんだろうな。兄ちゃんに心配かけてしまった。

しかしこれは助かる、速さを求める俺には非常に有用なスキルだ。思考加速系はエグリゴリの高機動型サイボーグ等も持ってる高速機動における必須条件だからな!

 

 

 

「っ、見つけた!!」

 

巡回を開始して30分もたたないうちに路地裏で血を流す人影とそれを庇う女性、対峙するは刃物を持った男を見つけてしまった!!

 

『こちらでも確認したわ、ルートを送るからジェントルは直ぐに向かって、ストライプは』

 

「式神で牽制します!」

 

喰い気味に愛美さんに答えながら式神の操作に意識を振り分ける

 

空気をトランポリンにして空中を移動する弾兄ちゃんを援護すべく保須市内に展開したスズメ式神に現場に集合するよう命令すると同時に、ヒーロー殺しを発見した個体には背後から特攻させ仕込んでおいた術式を起動して炸裂させ衝撃波を撒き散らす。5円破魔札程度のコケ脅しだが不意をついたので気を引く事が出来た。

 

『まかせるわ!

 ジェントルが到着するまで時間を稼いで』

 

動きが止まったヒーロー殺しに現場に集まったスズメ式神をまとわりつかせる。兄ちゃんはまだか!?

何体か切り捨てられて紙に戻ったので少し距離をとり、被害者とヒーロー殺しを分断するように配置して今度は複数体を連鎖炸裂させて衝撃波を増幅して叩き込む、先程の攻撃がスズメの自爆と想像できなかったようでまともに喰らってくれた!

たいした威力ではない為怯ませることすら出来なかったが問題無い、何故ならそこには既にヒーローが到着したからだ!

 

遅れて集まるスズメ式神を現場周囲に死角を無くすように配置して現場をモニターしつつ、自身も兄ちゃんが移動に使ったエアトランポリンを使い現場に向かう。

最近霊視の精度が上がった為か個性で干渉を受けた物体を判別出来るようになったのだが、こういう時に個性の残滓が見えるのが役に立つので有難い。

 

 

それにしても2日目だから大丈夫だと思った矢先にこれだ、どうもなにかと騒動の中心にいるYOKOSHIMAのフラグ体質を継承してしまったのではなかろうか?

どうせなら主人公補正をくれ!YOKOSHIMAの主人公補正はヒロインの悲劇度に比例している節があるからヒロインが居ない俺には縁が無さそうだけどな!!

 

 


『今日のトムラさん2』


 

とある薄暗いバーの中、相も変わらずピアノを弾く白服の男

テーブルを入れるハズのスペースを占拠するグランドピアノと肉塊にそもそもグランドピアノなんぞいったい何処から入れたんだと突っ込みそうになり、黒霧の仕業だと思い直す。

 

縦も横も前も後ろも分け隔てなく、平等に差別することなく万遍なく、とにかくデカいその男は、見るからに憎々しく肉々しい。それでいてそれなりに動ける自分よりも速く動くのだから質が悪い。昨日この場所から叩き出そうとして終ぞ触れる事すら出来なかったのだ。

誠実とか謙虚とかそういう類の言葉とは全く無縁そうな眼つきをしており、肩口までだらしなく伸びた頭髪は、以下略なほどに果てしなく鬱陶しい。何故こんな奴がピアノなどという趣味を持つのか?しかも上手いのが腹立たしい。

死柄木弔が内心、黒霧のイヤガラセかと思ってしまったのも無理はない。

 

「……先生、本当にコイツが必要なのか?」

 

嘗てない程の無力感につい口をついた言葉は豪快なピアノをバックに非常に情けなく響いた

 

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