「俺のヒーローアカデミア」はじまります! 作:ばうえもん
『彼女の事情』
圧倒的な質量が向かってくる絶望感
ここで無理をする意味は無い、試験なのだから不要な行為で時間を浪費するわけにはいかない、逃げ出すのではなく合格する為にこの場を退くだけ、
言い訳を重ねていた私はソレを見てしまいました。無意味な行為、ただの障害に向かい走り出すその背中を
入試の時に見たあのヒーローの背中を、今でも時折幼稚な嫉妬と後悔と自己嫌悪と共に思い出します。
入学式の日に彼を見て、私を含む数人は彼の評価を下げました。なんとなくですが「雄英」に合格出来たから来たとのだと思えたからです。
将来の為に良い学校へ行く、別に珍しい話では無いでしょう。だけどその程度気持ちではこの雄英でやっていけるハズが無いのですから
事実彼は自己紹介で「雄英に受かる事が目的になっていたので将来の目標はこれから考える」と臆面もなく言いました。
クラスの大半が彼の評価を下げたのですが、放課後に早速学校から訓練施設の使用許可をもぎ取った手並みに関心したのか幾人かのクラスメイトは彼の評価を改めたようです。
そして不思議な事に幾人かのクラスメイトは彼の事を最初から高く評価していました。なんでも試験会場が一緒だったそうです。なるほど、強個性持ちなのでしょう。
その私の思い違いと思い上がりは翌日打ち砕かれました
個性把握テスト、50m走を圧倒的速度で走りきるその姿は入試の日に見たあの背中と同じモノでした。
ヒーローになる為に
雄英合格が目的で受験した彼はまるでヒーローのように脅威へ立ち向かう事を選んだ
この時から私は横嶋忠雄の事が嫌いになりました。
インターミッション「彼と彼女の事情」
「榛葉くん、昨日の事で尋ねたい事があるのだが」
「なんですか?」
「君の個性は治療も出来たんだな、それでお願いしたい事があるのだが」
今までもちょくちょく使ってたんですけどね、以前は擦り傷くらいが関の山でしたが
「ちょっと今は理由が有ってチカラ自体使用出来ないのですが、先ずは横嶋さんに相談出来ませんか?」
「横嶋くんには別件で話したい事が有ったので会いに行くのならご一緒するが」
「ではちょっと連絡しますね」
とスマホのメッセージアプリで連絡して今日もお昼の約束ゲットしました
飯田さんと2人でB組を訪ねると、横嶋さんは硬そうな人とチャラそうな人の2人と会話中でした
「なんだ横嶋、今日もA組の奴と昼食か?」
「ああ、なんか相談事だそうだ」
「物間以上にA組を敵視していたお前がねえ」
「むっ、そうだったのかい」
「全部が全部ってわけじゃないから」
「やっぱり体育祭のプレゼント・マイク先生と爆豪くんが悪いんだ」
「まーな」
思わず口に出してしまいましたが横嶋さんから同意は得ました
そこへ髪の毛が茨で痛そうですが綺麗な顔をした美人さんが話掛けてきました。綺麗な花には棘があるって感じですか?何か言葉にも棘があるような……ハッ!?まさかこの
「へー、そーですか」
「なんだよ、塩崎、言いたい事あるなら言えよ」
「いえ、てっきりそちらの方と職場体験を御一緒して絆されたのかと」
「無いとは言わんよ、わりーか?」
「それはそれは、仲良き事はなんとやらですね」
「またらしくない遠回しな、不満が有るなら言ってくれ、ちゃんと聞くから」
「いえいえ、最近話題の執事さんは随分とオモテになりますね」
「それは辞めてくれ。あんときゃ頭に血がのぼってたんだ」
「どうだか、少し増長されていらっしゃるようですから放課後の訓練で叩きのめして差し上げましょう」
「ほー、さっきから下手に出てれば言いたい放題だな、その茨!俺のホワイトラビットで刈り取ってくれるわ!! ショートも似合うんじゃねーか?イメチェンしてやるよ」
何処がとハッキリ言えませんがなんとなく私と一緒の時と何か違いますね。少し子供っぽいような
などと考えていたら荊の
「……ショートカット……似合い…ますか」
頬染めて「似合い…ますか」じゃねーですよ。貴方さっきまで<●><●>こ〜んな目をしてたじゃないですか!
「……いい感じじゃねーの
伸ばすだけじゃなく縮めるのもいけるのか
つーか髪型変え放題とか女子力高い個性だな」
「こう、頭が軽くて違和感が有るのですが変ではないですか?」
「いや、いいよ。塩崎はショートボブも似合うな」
「横嶋さんもバンダナ外して後ろに髪を流した方が落ち着いた感じがしていいですよ」
「ヒーロー活動じゃない時は気を抜きたいんだがな」
先程までの一触即発な空気はなんだったんですかね?空気が緩んだのは好いのですがピンク色なのはいただけません!それは私の(になる予定)だ!!
「あー、こりゃ塩崎も落とされてたか」
「ホント横嶋はタラシだね」
硬そうな人とチャラそうな人!もっと言ってやって下さい!!
「おい、こら聞こえてるぞ」
「そうですよ、私は別に、ただ今現在世間から注目されている横嶋さんには節度を持って行動して貰いたいだけですよ」
むっ、それは聞き捨てなりませんね。ここは私の横嶋さんがどうだったかちゃんと説明しさし上げましょう
「職場体験中もそうでしたが昨日の横嶋さんはかなり真面目でしたよ。普段からジェントルさんに迷惑かけないように気を張ってますから」
ええ、ほんと、私ばかり浮かれて空回りしてましたから……
ですが横嶋さんは何か気まずそうな表情で私と飯田さんを見て
「あー、とにかく飯いくぞ」
誤魔化すように言いました。昨日の大喧嘩を気にしているのでしょうか?
「では御一緒します」
荊の
「私もいいかな、A組の人と話したいし」
更にサイドテールの女子に続いて何人か集まってきました。
「あー、ひょっとして俺が煽ったせいでA組と距離取ってたか」
「全く無いとは言わないけど先ずはクラス優先だっただけよ」
「そうですな、A組には取っ付きにくい方が居ますのも原因ですが」
「ほんっと、すみません」
心当たりを思い浮かべつつ私と飯田さんは小さくなり頭を下げるしかありませんでした
今まであまり交流がなかったので色々と情報交換をしつつ食事、拳藤さんと鉄哲さんはそれぞれ八百万さんに切島くんと職場体験先が一緒だったそうです
ちらちらと此方を伺うのは荊の
そんな私達を生暖かい目で見る宍田さんと物間さん。私はその2人と違って裸も見せた仲なんです!リードしているんです!!
そして何故か我関せずで飯田さんと話す横嶋さん……
「ハンターですか!!永遠の狩人ですか!!横嶋さんは釣った魚に餌をやらないタイプですか!!釣った魚は美味しく料理して頂くのがマナーですよ!!!」
「お前は何を言い出すんだ」
と心底呆れた様子の横嶋さん、まさかの自覚無し!?
「横嶋、いつか刺されるよ」
同じく呆れたようにつぶやく物間さん
おかげで何故か塩崎さんと取蔭さんの2人と意気投合、3人で……えっ?他にも居るんですか?…とにかく横嶋忠雄被害者の会を結成する事になりました。
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食事を済ませてお茶を飲み、横嶋さんの様子が変わったのを察してテーブルが静かになりました
「それで飯田の用はなんとなく想像がつくが、治療絡みだろ。教師にも相談した方がいいぞ」
「それは校外で個性使用するからだろうか」
「それもだが未だお兄さん入院中だろ、病院で医療関係者でも無い人間が好き勝手するのは不味いだろ」
「ああ、気が急いていたようだ。確かにそれは問題だな」
「つーわけだから交渉係として担任を巻き込む事を勧める。それと榛葉は多分問題は無いと思うが念の為に後で治療術式を見せてくれ」
察しが良くて細かい点にも気が付いて、なのにどうして塩崎さんや取蔭さんの事を…いけませんね、こういう場ではキチンと振る舞うのが私が見てきた横嶋さんです。私もしっかりしないと
「はい、つきましてはまた横嶋さんの魔力をお借り出来ないかと。自力では使えない大出力術式の使用も考えています」
脊髄損傷による下半身麻痺、以前の私なら今は使えなくても将来高位呪文を習得すればと軽く考えていましたが、イリュージョンさんの傷を治療した時にそんなに簡単な問題では無いと思い直しました。
「まじか、この際ブラド先生とリカバリーガールも巻き込むか」
「しかし医師が治せないものを治せるものなのか?」
鉄哲さんから疑問の声が上がりました。この問にはちゃんと答えないと行けませんね。ですが使った事が無いのでわかる事が少ないのです
「それは、医療知識が無いのでなんとも」
「あー、今ここで式を書き出せるか?」
そこへ横嶋さんからの助け舟。しっかりしないとと思えど先は永いです
「あんちょこ有りますのでどーぞ」
「古代ギリシャ語かよ、これはまた古い式を使うな」
「読めるんですか?」
説明しようと身を乗り出したらこの人普通に読んでるんですけど……
「俺の場合は使える言語が多いとその分出来る事が増えるからな」
「専門でやってる奴よりは数段落ちるから榛葉の出番は取らんよ。ある程度の組織再生も可能のようだな。詠唱者の知識にも影響受けそうだから榛葉次第だな」
「医療関係とかさっぱりなんですが」
横嶋さんは私を立ててくれましたが、寧ろ私の勉強不足が問題だとわかる結果になりました。
「となると長期戦だな、担当医に詳しく話が聴ければ可能性が上がるが、果たして何の実績も無い素人の治療を許してもらえるものか、無理だろうな」
ここで再び鉄哲さんからの疑問の声
「人助けだろ、なんで駄目なんだ」
「応急手当とかならまだしも本格的な治療行為を行うなら医療関連の免許がいるのは当然だ。常識だろ!
それに実績が無い、信頼性が無い、安全性の保障が無い、そもそも俺と榛葉以外に理解出来ないの無いない尽くしだ
無難な方法は退院後に行う事だな。それまでにリカバリーガールに見て貰って最低限安全性の保障だけでも欲しい」
「歯がゆいな」
飯田さんには申し訳ありませんが、私も以前の様に軽くは考えていません。
今の私達に出来る事は周囲の大人を頼って自分達に出来る事と出来ない事をはっきりとさせる事で、それから堅実に出来る事を増やして行きましょう
なお横嶋さんは飯田さんのお兄さんである"ターボヒーローインゲニウム"のファンなのでお見舞いに行きたいそうですが、重症ですからしばらく面会は無理だそうです。
今後についての話し合いが済んだ所で、飯田さんが改めて横嶋さんに話を切り出しました。
なんでも体育祭のトーナメントの準決勝で取蔭さんが横嶋さんが肉体のリミッターの解除をしていると話したのを聞いたそうで、気になって調べてみたところいわゆる火事場の馬鹿力という物に行きついたそうです。そして先日飯田さん自身も危機的状況で周囲の動きがスローに見えて、まるで水中を進むようなもどかしいい動きしか出来なかったそうです。
「もしあの感覚を自在に引き出す方法があるのなら、何も返せる物は無いが無理を承知で頼む!教えて欲しい!!」
立ち上がった飯田さんはそう言って腰を直角に曲げて礼をしました。
すっごく周囲の注目を集めて居心地悪いんですが……
「頭上げろ、放課後体操着に着替えて集合な、場所は後で連絡するから」
「有難う」
がっしりと握手する2人と何故か拍手するB組の方々、ちょっと冷静にし過ぎて乗り遅れたようです。この場で1人素面だと逆に恥ずかしいです。
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放課後です、
飯田さんがB組の自主訓練に混じりに行く際に私にも声をかけて下さいましたが、私は私でやるべきことがあります。
「非常に残念ですがお一人で行って下さい」
「そ、そうか、その、無理はしない方がいいぞ。無念さが滲み出ている」
「いえ、これから行う事は私が皆さんに置いて行かれないようにする為にも必要な事なのです」
「そうか、彼と一緒にいて君もやるべき事を決めたのだな。お互い頑張ろう」
飯田さんは私の決心を聞いて思い当たったのか真摯な顔で頑張ろうと言って去って行きました。
職員室までいざ出陣!
「相澤先生、ご相談があります。治療術の事でリカバリーガールに教えを乞いたいのですが」
私の戦いはこれからです!
『鉄血の鼓動2』
「ガコン」と、人体から発生したとは思えない重い金属音、硬化系ならまだしも普通の肉体が立てる音では無い
続くは増強系もかくやの速度で飛び出し標的へ迫り繰り出される鋼色の拳
打ち付けられた標的は砕ける事はなかった。見かけ倒しなのか?否!!
「なんかあきらかに人間が出す音じゃなかった気がするが失敗か?」
「よく見ろ山田、裏側だ」
「山田って呼ぶな…んじゃこりゃぁあああ」」
分厚い標的の背後がひび割れ崩れおちていく、打点が拳の先、標的内部まで衝撃が貫通した結果だ
「ふぅ、
「いや、おま、生徒が死ぬぞ」