「俺のヒーローアカデミア」はじまります!   作:ばうえもん

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インターミッション「Saturday Morning」


お労しや


 

昨日は忠雄の部屋に泊まった私達だが、私は緊張で眠りが浅かったのか時々目が覚めていた。決して忠雄が何かしてくれないか期待していた訳では無いのだが……

明け方、座った目の忠雄が妙な事を言い出した。

 

「実に良きちちしりふともも

 こちらもヌカねば…無作法というもの…」

 

「どうしても我慢出来ないのなら右手貸そうか?」

 

「大きなお世話だ!

 …手を貸すでほんとに渡すのはお前くらいだよな」

 

時々艶っぽい吐息を漏らす2人に挟まれて追い詰められていたようで、少し可愛そうなので右手をハズして差し出したのだがジョークと思われてしまった。

 

「完徹でしょ、少し寝たら?」

 

代わりと言ってはなんだが正気に戻った様なので布団をめくり隣をポンポンと叩く。うん、ナチュラルに添い寝を要求する私も頭回ってないわ

 

「寝てないのはお互い様だろうが……」

 

とか言いながら素直ベッドに潜り込んで来たものだから思わず硬直してしまったのだが……すかーっと寝息をたて始めたので肩透かしだ。

この男はと思わなくもないが、彼の匂いと体温を感じて寝るのも悪くない。ならばこの状況を堪能すべく彼に抱きつきそのまま私も睡魔に身を委ねたのだった……

 

 


 

インターミッション「Saturday Morning」

 


 

朝食を食べ終わった忠雄はちび切奈に纏わり付かれている。我ながらフリ-ダム過ぎて謎な個性だ

 

「しかし切奈はちびの制御は出来んのか?」

 

「集中すれば出来るけど普段はどうしてもね」

 

私がそう告げると忠雄はちびを見て…ちびは睨めっことでも思ったのか変顔をしてそれを見たポニーが朝食を噴出した(乙女にあるまじき失態は同情する)後ちびは私の顔で変顔すんな!!

その様子を見ていた忠雄は諦めたように溜息一つ、なんかゴメン

 

「んー、ここまでする気は無かったけどしゃーないか。額出してくれ」

 

「これでいい?」

 

何をする気か知らないけどこの流れで忠雄が無駄な事はしないだろうと素直に髪を上げて額を見せる

 

「ああ、ちょっと眩しいから目を瞑ってくれ。」

 

そう言って翠色の綺麗な珠を近づけて来た

珠が光ったと思われる光の後に頭の中に何かが流れこんで来た。これは…知識?!思考の並列処理って殆ど個性じゃない!

 

「どうだ?複数展開すると負荷で頭痛や発熱するしエネルギー消耗して血糖値が下るが、サブ1つくらいならさほど負担にならないハズだ」

 

「ええ、これならちびを管理出来るけど…これ教えていいの?」

 

「何をしたのですか?」

 

「口頭では説明に時間が掛かるから個性で記憶を渡した。内容はながら作業のちょっとしたコツだ」

 

頭脳系個性と申告出来そうなこの技術をちょっとしたコツとは忠雄の引き出しの多さに感心よりも呆れがくる。ホントどんだけ個性以外の力を持っているのやら

茨は少し考え込んだ後、今までの話の流れから当たりを付けたらしく切り込んできた

 

「察するに複数の操作を要求される個性持ちの私やポニーにも有用な知識のようですが?」

 

そう、普通はそう考える。

個性の良し悪しで人生のその後が決まりかねないこのご時世、個人のアイデンティティである個性を中心に物事を考えがちで、ましてやヒーローを目指す自分達の様な人間はそれが顕著になりがちだ。だからこそ個性以外にも力を求める忠雄の在り方は異質で浮いている半面思考の柔軟さとなり彼の強みとなっている。

 

「贔屓は良くないネ」

 

そう言って額を出して詰め寄る2人に根負けしたような忠雄は……

 

「そーだな、わかった。でもお前ら昨日の副作用でぶっちゃけかなり出力アップしてるハズだからな、正直欲張り過ぎだぞ」

 

「そうでしたか、しかし副作用ですから意図したわけではないですよね。寧ろ私達は被害者では?」

 

「あのな、自業自得だろうが…」

 

そんな疲れた様な忠雄の言い分を無視して2人は

 

「ですので、デートで手を打ちましょう」

 

「ワタシ食べたいスイーツあるからデートするですヨ」

 

「なんでそうなる……、全員でいいならエスコートするよ」

 

昨日から溜息ばかりの忠雄だが、なんだかんだで自身に好意的な相手には甘いよね

 

「仕方がないですね、今回はそれでよしとしましょう」

 

「おかしいよな、なんで俺が許して貰う流れなんだ?」

 

可哀想だけどここは私も乗っかる事にする

 

「デート、楽しみにしてるから」

 

にっこり笑ってそう告げれば

 

「お、おう」

 

虚を突かれたような表情からが徐々に赤くなる。照れてるわね、出来れば男女の機微も柔軟になってくれないかしら

 

忠雄のマンションから一緒に登校しているが昨日ほどの視線を感じない、おそらく忠雄が以前やっていた人払いみたいな周囲の意識に干渉する何かをしたのだろう。

でもこれって軽く犯罪ではなかろうか? 忠雄に確認しても多分「個性じゃ無いから個性犯罪じゃ無い」って答えが返ってきそうだけど、それってヒーローとしてどうなの?

もっともそれも学校までで、流石に校内でそれをするのも不自然だろうからチラチラと周囲の視線を感じる様になった。

 

朝の教室にお揃いで登校となれば当然の詰問

 

「お揃いで登校とか昨日は横嶋の処に泊まったの?不味くない?」

 

「昨日は遅くなるなら自分の部屋に泊まれば良いとポニーが言ってくれましたから」

 

「あっ、なるほどポニーの処に」

 

以前の茨なら謀は穢れに通じると嘘はつかない。

今日の茨も確かに嘘は言ってない。ただ不都合な事は言わないし相手の間違いを訂正もしないが…

 

「何処に泊まったか言ってないノコ」

 

だがトリックに気付いて余計な事を言い出す女が居たのだ。

 

「バレたか。でも小森が期待しているような事は無いから、どんな事を期待してたか知らないけど…」

 

だから軽口で何でもない事の様に流す。実際そんなに男女の仲的に良い事は無かったし

 

「つまんないノコ…」

 

だが何か悪戯を思いついたのか横嶋に突撃していった。

 

「ねーねー、お泊まりまでしてナニも無かったって横嶋ってEDなの!?」

 

「ね!?」

 

そしてしれっと混ざる小大、ほんとあの娘の考えてる事はわからないわ

 

「俺はロリコンでは無いがその身を持って確認してみるか?俺はロリコンでは無いが」

 

失礼な事を言った駄目菌糸類と小大を最後まで発言を待たず片手で吊り下げる。アレ痛いのよね…

大体忠雄のそれは馬並みとでも形容すべきサイズで……?なんでこんな事考えてるんだろう?私達の際どい恰好にも忠雄は一切反応しなかったハズだけど…??

 

「ギャー!

 暴力反対!頭割れる!!それとロリキノコじゃないノコ!!」

 

「んっっ❤」

 

そこの単語女はなんで顔赤らめる。アンタは無意識にターゲットから外されているから

 

「ヨ、横嶋、それ位で」

 

「黒色アリガトー、頭割れるかと思った」

 

腰が引け気味の黒色の取りなしで解放された菌糸類は救い主たる黒色に抱きついて…

あー、黒色フリーズしてるわ。コイツ何気に自意識過剰なところあるから勘違いするかもね、個人的にはカップル成立するなら悪くない組み合わせと思うけど

 

そして誇大小大はワクワクと擬音を浮かべそうな視線を忠雄に向ける

 

「いや、確認はしないから……」

 

忠雄が悪い訳じゃないけどどうしてこう癖が強い娘が集まるのかしら?

 

 


『やめろ―――っ! なんでそんな別の生き物を見るような目で俺を見てんだ』


 

明け方から少し寝ることが出来た。文珠を使ったので短時間だが深い眠りで頭はすっきりしたんだが……腰が重い。うぉ、パンツの中が冷たい!!まさか切奈と同じベッドの中で夢精したのか!?

切奈の姿は既に無いが、気付かれたか?知らない振りしてくれたのか?どうする!?

昨夜俺はなんで一緒に寝たんだ、頭回って無いにも程が有るだろう。

 

「あっ!」

 

うぉっ!キッチンから顔出した切奈と目が合ったが目を逸らされた!!

顔赤いし!確実に気付かれている!!

茨とポニーも気不味そうだ、いや彼女達は俺もイッタところ見ているからお互い様だからまだマシか?

なんにして3人とも赤い顔でチラチラとこちらを伺っている。幸い嫌悪はなさそうだけどこの後学校だぞ!?

色々と気が重いが切奈の一言で時間が動き出した。

 

「部屋は換気しておくからシャワー浴びたら?」

 

「頼むわ」

 

顔を合わせるのは気不味かったのかバスルームに逃げ込む俺に対して3人は明らかに安心していた

イッソコロセ

 

そこで切奈から声が掛かる。出来れば後にして欲しいのだが……

 

「バスルーム行く前に昨日の汚れ落とすので服を綺麗にして欲しいんだけど」

 

そう言って洗濯物が入っているらしい籠を差し出してきた。なんか3人ともモジモジとしてるが……朝の光で透けたシャツから見える体には不自然な物は無く……そう、無いのだ。裸シャツ!!!ちょうっ、下半身に血が集まるのを感じて…、おい、なんだよその微笑ましそうな視線は(誤解)

 

咄嗟に取り出した二文字文珠に(/化)の文字を刻んで籠に放り込んでバスルームへ駆け込んだ。

 

 

熱いシャワーを浴びつつ、股間とパンツを念入りに洗いながら思考する

 

どうする?

いっそ記憶を…

しかし我欲で記憶操作など(ヴィラン)の所業ではないか

 

くそ、なじるなりしてくれればまだ良かったのだが、理解してますよみたいな態度が却って辛い。

いっそ消えてしまいたい

 

「ああ、そうか。自分の記憶も消せばいいのか」

 

もうこれしかないと覚悟を決めた俺はバスルームを出て、既に制服に着替え終わった3人に近づく。腰タオルのみのせいか赤い顔で見られているが今は些細な事だ…

 

「3人とも、これをみてくれないか?」

 

「なぁに?」

 

「先ほどの珠ですね、綺麗ですね」

 

 

 (/却)ッ!!

 

 


『とある式神の呟き』


 

こうしてこの場にいる人間から今朝の騒動の全ての記憶(・・・・・)が消えた。誰も何も覚えていない以上は何もなかったのだ…

しかし忠雄の奴無茶しやがって、ワシの記憶まで消えたじゃねーか

 

「とら、何か今朝の記憶に違和感が有るのだが何か異常はなかったか?」

 

『…ワシの記憶(ログ)にはなんにも記録されてねーな。仮にナニかあったとして、ワシと忠雄の両方を出し抜く相手とか想像もしたくねーな』

 

「何ですか?今の声は?」

 

「スマートスピーカー?」

 

「部屋の監視をまかせてる人工知能だよ、電子機器と俺を同時に騙くらかすとか場に対する概念レベルの干渉だろうから先ずねーな。気のせいか?」

 

式神のワシにも効くんだから文珠ってのは大したもんだ。もっともワシには効いたが電子機器には干渉出来なかったようで『概念レベルの干渉』とやらは行われなかった。

きっちり残っていた監視カメラ等の記録映像を確認したから何が起きたのか知っているのだが…、ワシは空気が読める式神だから本人が忘れたいほどの恥と思い込んでいる以上はその意を汲んで止めておくさ。

とにかく忠雄が色々と勘違いしただけでワシは嘘は言ってない、ワシの記憶(ログ)に何も無いのも事実だからな。

文字通り記録されて無い空白、だから消去された事に気付けたのは皮肉なもんだ。

 

 

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