休日に今井さんちでクッキーを焼くお話

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ボツになった作品です。ネタ要素強めだから、折角なのであげてみますね。

落ちも何も無いので、テキトーに読み流してください


休日はクッキーと共に

 焼き上がりを告げるベルの音と、香ばしい匂いに誘われて、小走りでオーブントースターの前へと向かう。

 

「うん!今回は中々イイ感じに焼けた気がする!」

 

 ミトンを手に嵌め込んで、オーブンを開けてゆっくり下敷きと共にクッキーを取り出す。その瞬間、先程とは比べ物にならないほど濃厚で、甘い香りがアタシの鼻を刺激する。

 

 

 アタシ、今井リサは、最近バンドの練習がない日は、こうして趣味としてお菓子作りに勤しんでいる。最近は、趣味というよりかは義務化されてきているような気がするが。

 

 Roselia結成初期の頃こそ、紗夜も友希那も『遊びじゃない』とか言って中々食べてもらえなかったクッキーが、今では『持ってこないとモチベーション維持が難しい』なんて言い出す始末。おかげで毎週オーブンの前で焼き加減と睨めっこする羽目になっている。

 

 いやー、自分が作ったものに人気が出るのは嬉しいけど、ここまで綺麗に手のひら返しされると、逆に複雑な気分になるなぁ……。

 

 まだ焼きたてで、湯気を立てているクッキーを見つめて苦笑いする。今回は、星型、ウサギ型、ベースの形、キーボードの形、パン……のような形など、彼女達の好みに合わせて焼いてみた。

 

「えーっと、少し冷ましてる間に紅茶を入れて……」

 

 いつもの、メンバーに渡すものだったら、冷ました後は直ぐに袋詰めしてしまうが、今回だけはそういう訳には行かない。なんせ、この後すぐに食べてくれるお客様達がいるからだ。

 

「いやー、まさか有咲から、『ポピパのみんなにお菓子をあげたい』なんて言い出すなんてねぇ……。お姉さん、ちょっと感動しちゃった」

 

 そう、今日は我が家にPoppin'Partyの子達が来ているのだ。有咲が自分の作ったクッキーを食べてもらいたいから、だそうだ。

 材料や道具は全てウチに揃っているから、どうせだったらウチに呼んでしまおうって感じで今に至る。

 ……え?じゃあなんでアタシが作ってるかって?

 

『ハイ!!リサ先輩が作ったクッキーも食べたいです!』

 

 事の発端は香澄のこの発言。なんでも、あこが絶賛するから食べてみたくなったらしい。

 

 あ、でも安心して。有咲が作ったものは既に彼女達の胃の中だから!美味しいって絶賛されて、有咲の顔が真っ赤だったから!

 

 ティーポット片手に、誰に言う訳でもなく、脳内で勝手に流れていく言い訳達。お菓子作りをしていると、偶にこういう脳内会話が発生しちゃうんだよね〜。

 

 人数分の紅茶を入れつつ、もう片方の手をクッキーの上にかざして、冷め具合を確認する。

 

「うん、こんな感じで大丈夫そうだね」

 

 紅茶をお盆に乗せつつ、もう一度チラッとクッキーを見る。その出来栄えはどう見てもここ最近で作ったもので一番良いものだった。

 

 ……ポピパちゃん達に出すものだけど、こんなに美味しそうに焼けてるし、一つくらい食べても良いよね?

 

「うん、やっぱりお客さんに出す前に毒味位はしておかないとね」

 

 なんなら作ったのはアタシなんだから、毒味する必要性は皆無だが、それでも人間の三大欲求には敵わない。

 ティーポットを音を立てない様にそっと置き、明後日の方を向きながら、香ばしい方へとずっと手を伸ばす。大丈夫、一つくらいなら、ササッと取っちゃえば――

 

「リサさん、私の髪になにか付いてます?」

 

 ――手を伸ばした先には、サラサラな黒髪が待っていた。

 

「うわっ!?いつの間に!?」

 

 咄嗟に、身ごと手を引っ込める。ビ、ビックリした……!

 アタシをビックリさせた張本人、花園たえことおたえは、その可愛らしい顔でウーンと一つ唸ると、人差し指を立てる。

 

「オーブンの前でウロウロしてる時から?」

「それ、結構前だよね……。声掛けてよ〜!」

「リサさん、忙しそうだったので」

 

 なんでもないような顔で言うおたえ。そういう心遣いはありがたいけど、おかげでクッキーを食べ損ねちゃったよ……。

 ……まぁ、今回のは元からポピパちゃん達にあげるものだったし、仕方ない、仕方ない!割り切るのも大事!

 

「それにしても、リサさんすっごくいい匂い……」

「はぇ!?ちょ、お、おたえ!?」

 

 心の中で最上クッキーとの別れに決意を固めていると、いきなりおたえが、私のお腹辺りに手を回して匂いを嗅ぎ始める。

 

「クッキーの匂いだ……」

「そりゃ、クッキー焼いてたからね……」

 

 腹部でスンスンしているおたえの頭を軽く二度叩いて動いてもらう。でないと、折角入れた紅茶が冷めてしまう。……あと私の体温が下がらなくなってしまう。

 

「さ、第二陣も焼けたから、早くみんなで食べよっか!ほら見て、ウサギの形〜!」

 

 恐らく赤くなっているであろう顔のまま、ウサギの形のクッキーを指さす。おたえならきっと、文字通り食いついて、離れてくれるはず――!

 

「あっ!オッちゃんだ!」

「え、オッちゃん??」

 

 ――予想の斜め上を行った瞬間だった。オッちゃん?え、誰?親戚のおじさん?

 

「オッドアイのオッちゃんです!」

 

 アタシの頭の上の疑問符が見えたのか、ウサギ型のクッキーを両手で持ったおたえが、説明する様に言う。

 え、えーっと……?焼き色やらデコレーションやらで、おたえ自身が飼ってるウサギと似てる……ってことかな?

 

「まさかオッちゃん、クッキーにもなれるとは……」

 

 どうやらそういうことらしい。

 

「あ、アハハ……。まぁ似てるなら良かったよ」

 

 やっぱおたえって不思議な子だなぁ……。ルックスも大人びていて、身長も相まってモデルさんみたいなのに、その反面どこか抜けていて子供みたい。

 

「でも、流石にオッちゃんは食べられない……」

「まぁ気持ちも分かるけど、折角作ったクッキーなんだから食べてよ」

 

 なんの気もなしにそう言った……のだが、おたえの綺麗な顔がみるみる青ざめ出す。……あ、あれ?アタシ、なんか変な事言った?

 

「オッちゃんを食べろなんて、なんて残酷なこと言うんですか!そういえばリサさん、耳にウサギ付けてますよね。しかも、ウサギの生首逆さ吊り……やっぱりリサさんって……」

 

 なにやら勝手に話が進んで、勝手に動物虐待者に仕立てあげられてる!?

 アタシからジリジリと距離を取り出すおたえに向かって、手を前に出して必死に弁明する。

 

「イヤイヤイヤ。違うから!確かにそう見えるけど違うからね!?こういうデザインだから!」

「動物を虐める人は全員そういうこというんですよ!リサさん酷い……いたっ」

 

 何事か捲したてるように言うおたえの頭部を、後ろから放たれた手刀が一閃する。

 

「だーもう!中々帰ってこないと思ったら何やってんだお前は!……リサさん、すみません」

 

 ――おたえの影から現れた手刀の主、市ヶ谷有咲が、アタシに向かって頭を下げていた。

 

「あー、いや全然」

「ほら、おたえも謝れ!どうせお前が変な事言ってたんだろ!」

「だってリサさんがオッちゃんを食べろって……」

「オッちゃんに似ているクッキーを、だろ!?オッちゃん自体を食べろなんて誰も言ってねーだろ!そんくらい分かれ!もうホントすみません……」

 

 すみません!すみません!と何度も頭を下げる有咲を見ながら、やっぱポピパちゃんって面白いなぁ、と心の中で笑うしかなかった。


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