恋はどれだけ人を盲目にさせるのか。

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オリジナル短編小説です。どうぞ、よしなに。


一目見たときから

 初めて見た顔。しかし、昔からよく知っているその人。

 

 そして、一目見た時から一生支えていこうと思えた。

 

 

━━ ━━ ━━

 

 

 ある日、唐突に暗闇に落とされた。

 

 なんで!? どうして!! 後悔の念だけが残り、渦巻く。

 

「大丈夫よ」

 

 聞き覚えのない声に顔を上げるが、顔を確認することは出来ない。

 

 涙を拭ってみたが気休め程度、なおも声の発生源は見ることができない。

 

「大丈夫よ。私が一生支えてあげるんだから」

 

 心強い言葉に少し落ち着く。

 

「支える……?」

 

「ええ、一生ね」

 

 再び、力強く唱える彼女。

 

 その一言一言に深く引き込まれた。

 

 

━━ ━━ ━━

 

 

「信じれば変われるって本当かしら」

 

 どこかで聞いた言葉を(そら)んじる。

 

 いつも通りの視界に飽き飽きしているが、自分からは変わらない、変えられない。

 

「大丈夫。きっと変われる。私が変えてみせる」

 

 宙に投げた疑念に十年来の親友が返す。

 

「そう、貴方が言うと心強いわね」

 

 信頼しているわ。相棒。

 

 そして、明日は運命の日。

 

 

━━ ━━ ━━

 

 

 運命。

 

 なんて残酷な響き。運で命が決まるなんて。

 

 命運、って言葉もあるけど。私は、この言葉も嫌いだ。

 

 自分の人生は、自分で決める。運になんか左右されてたまるか。今までだってそうしてきた。

 

 だから、必死に勉強して。

 

 そして、医学部に入って。

 

 全ては、親友を救うため。

 

 

 ――なんとしてでも変えてやる。

 

 

━━ ━━ ━━

 

 

 運命の垣根を越えて、手術は成功した、らしい。

 

 私は小さい頃、唐突に目が見えなくなり光を奪われた。

 

 その時に手を差し伸べてくれたのが今の相棒。

 

 そして、私の目を治してもくれた。少しは恩返しがしたい。

 

 

「ねぇ、調子はどう?」

 

「悪くはないわね」

 

「そう、よかった」

 

「この包帯はいつ取れるの?」

 

 素朴な疑問。

 

 手術は成功した。まだ目は、包帯に覆われままだ。

 

 だから早くこれを取り除き、久しい光を感じたい。

 

 そして、まだ見ぬ親友の顔をこの目で。

 

「すぐにでも取れるけど――」

 

「今すぐに取って!」

 

 思考するより先に言葉が出た。

 

「…………わかったわ」

 

 少し開いた間に何かが引っかかった。でもそれより目が見えるという感動が頭を塗り替えた。

 

 ――病院だからか白が多い。これから色々な色と景色を見るのだと心が躍った。

 

 そうだ、と。親友の方へと目を向ける。

 

「ねぇ」

 

「……」

 

 十年来のパートナーは目を閉じ黙っている。

 

「目を開けて、顔をよく見せて」

 

「…………」

 

 そっ、と開かれた(まぶた)。そこには、

 

 ──眼球がなかった。

 

「ごめん、こうするしか、あなたの目を治せなかったの」

 

 返す言葉が出なかった。昔なら「なんで!? どうして!!」と喚いたかもしれない。

 

「本当、に……ごめ、んなさい……」

 

「……謝らなくていいわ。あなたが選んだ選択だから。私もそれに従うわ」

 

 

 

 初めて見た顔には目がなかった。でも、昔からよく知っているその人。

 

 そして、一目見た時から恩を返すように一生支えていこうと思った。

 

 

 

 




ちょっと残酷描写というか胸クソエンドで申し訳ない。でもこれが僕の大好物なんだ。

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