今日は午前中、雨が降っていた。
朝は車で行き、徒歩で帰るはめになった。
だが、それで良い。そう思える景色に出会った。普段であれば自転車で走り抜けるだけの駅への道。されど、徒歩で行くとなれば……否、徒歩で、雨上がりで、少しだけ風が吹く日となればこそ。こんなにも綺麗で狂気的な空を見ることが出来た。
ああ、生きている。
大空を仰いで、息を吸って、大空を仰いで、息を吐く。
ああ、なんと生きていることだろうか。
急くな命よ、しかして座するな。無駄に使える時は無いが故に。
不思議と涙一条、肩の荷が降りたかのように軽い足取りで家への帰路へつく。そんなこんなで小さな用水路沿いの道を歩く。花は咲き乱れ、鳥は唄い、風は優しくそよぐ。何処か、自分が特別な存在なのではないかと思えてしまう風景を歩いて行く中で、ふと車が横を通り過ぎるのを見た。
哀れ?可哀想?彼も徒歩であったならば、こんな所でアクセルを踏み抜く勢いで加速などしなかったろうに。事故寸前の速度で狭い車道を走り抜けていくバックランプを見ながら、それをせせら笑う。余裕無き人間はこうも急ぎ急ぎ生きるのか、と。だからこそ、余裕綽々に生きようと願うのだが。
雨の日用の、履き慣れていないスニーカーに少しだけ苛立ちを覚えつつ。今日のこの景色をどうやって家族へ伝えようかと思案する。言葉?いいや、語彙力の乏しいので残念ながら伝えきれないか。写真、写真か。この魅力をどうやって撮ろうか。懐から携帯を出して、一枚撮る。カメラが高性能な携帯で良かったと心から思いつつ、懸命に飛ぶ鳥、名も知らぬ揺れる花。
数枚ほど撮って、立ち止まっていた足を動かす。家までまだまだ15分ほどある。鼻歌混じりに山越え谷越え何千里。若干の遠回りや減速を交えつつも一直線に家へと向かう。
空を見上げながら、歩き歩く。空はグラデーションが掛かっている。自らの上は悠く遠い宇宙のダークブルー。地平線水平線に接近するほどに空は白みが掛かり、ダークブルーは紺色へ、紺色は青色へ、青色は水色へ、水色はアクアブルーへと変貌する。そこに、巨大な綿あめが広がるとなれば恐怖すら覚えるほどに美しい。
季節から入道雲は見掛けないが、幾重にも重なり――否、地上からでは重なっているように見えるその雲達を見つめていると、物思いに耽る。耽ってしまう。我々の上にはいつも空があり、我々はいつしか上を向くことを忘れてしまう。だが、だけど、それでも。上を見上げれば。
ああ、そこには――
――青い、青い空。