かばんちゃんで1期ラストから再構成してみる「けものフレンズ2」   作:米ビーバー

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かばんが海岸を出発した丁度そのころ――――。


―― ViViViViViVi ――


電子音を響かせて膨大なデータを受信しているらしいラッキービーストを、興味深そうに見つめる影が二つ


「これは―――興味深いのです」
「今までこんなことはなかったのです」


顔を見合わせる二つの影。


「これは―――きっとかばんのしわざなのです」
「ですね。ラッキービーストが変わった反応をみせるのは、パークにヒトがいるときだけですから」


頷き合う二人。片方はオオアフリカコノハズク。通称「ハカセ」
もう片方はワシミミズク。通称は「助手」


キョウシュウエリアのジャパリとしょかんで起きたこのラッキービーストの異変は、キョウシュウエリア全体に広がり―――


一様に怖がったり焦ったりするフレンズが多い中、一部フレンズは目を輝かせて状況を見守る結果になっていた。


この異変の原因が解明するのは、もう少し後になる――――。



#1 『あたらしいとち、あたらしいフレンズ』 Aパート

「この辺り、なんだかサバンナに似てて歩きやすーい!」

 

こころなしかウキウキと足取りも軽く、「ほっ、ほっ」と片足でちょんちょんとステップを踏む余裕も見せるサーバルと―――

 

「サーバルちゃん、元気だねー」

 

えっちらおっちらとリュックを背負って進むかばんちゃん。

それでもその足取りはキョウシュウエリアのさばんなちほーで初めてサーバルと出会った頃と比べると随分と軽い。これまでのサーバルとの旅や、過ごした日々の成長は、確実にかばんの力になっていると、かばん自身が自覚できる変化だった。

 

「かばんちゃんもあるくのはやくなったよね!」

 

サーバルもそう言ってニコニコと笑顔を見せる。かばんもそれに笑顔で返し、腕のラッキービーストをちらりと見た。

 

「ラッキーさん。この方向で合ってますか?」

『―――――――』

 

 しかしかばんから話しかけたというのにラッキービーストからの反応は何もない。緑色の光を静かにたたえている表面には、【NOW UPDATE】という見たことのない文字と、だんだんと増えて行っている数字が映っていた。

出発してからしばらくして、ラッキービーストの説明が入らないことに気付いたかばんが腕を見たが、その時にはもうこうなっていたのだ。

 道しるべの無いかばんは顔を戻して前を見る。どこまでもどこまでも続いている水分の少ない枯れ模様の草木が生える乾いた大地。どの程度歩いたのかはいまいち把握ができていないのが現状である。

 

「おひさまが沈む前に、おっきな木を見つけておこう?セルリアンが出てきても、木の上ならあんぜんだよっ!」

「そうだね。ぼくも木登りはできるようになったし……でも、木の上で眠るのはまだ苦手かも?」

 

こうして歩いているとかつてのサバンナでのサーバルとの旅を思い出す。そういえばそのころラッキービーストはおらず、サーバルと二人で、サーバルにサバンナをガイドしてもらいながら旅をしたんだったな と、かばんは朧げに記憶を手繰り、思い出していく。

 

 

 何もかもわからないことだらけで、自分に何ができるのかもわからなくて、だめな自分が辛くて、申し訳なくて。自分が生まれた意味もわからず、ただただ困惑して、混乱して、絶望していたころの自分。それを救ってくれたサーバルや、フレンズの皆。

 

 

 色々なことがあって、色々なことをやって、経験したことが身に付いたときも、身に付かなかったことも、さまざまにあった。

 

「―――サーバルちゃん。ついてきてくれて、ありがとう」

「えっ?なぁに?どうしたの?」

 

突然にありがとうを口にされて戸惑うサーバルに、かばんは笑顔でもう一度、ありがとうと告げる。

 

「キョウシュウでもいろんな場所についてきてくれて、いろんな所を旅してまわったけど、サーバルちゃんと一緒だったから。だから、ありがとう」

「ううん。わたしもかばんちゃんと一緒に旅をしてきて楽しかったよ!それに、こっちでもいっしょだよっ!!」

 

ニコニコと笑顔で返し、スキップするようにけんけん足で歩くサーバルが「あっ、あそことか、良い場所かも?」と叫んで、手ごろな大きさの樹の影にむかって駆けだしていく。

かばんはそんなサーバルに苦笑しながら、後を追いかけた―――。

 

 

 

**********

 

 

 

 ごろごろと木陰で転がり休むサーバルと、樹に背中を預け、トレードマークになった帽子を胸に抱く形で休憩するかばん。日が落ちて、周囲は闇に覆われており、周囲はが暗くて恐怖感を煽るように、かばんには感じられた。

かつてサバンナからジャングルに抜ける途中で休憩したときも夜だったが、あの時は外灯の明かりが存在した。今は月明かり星明り以外に明かりと呼べるものが無い。ポケットからマッチを取り出してじっと見つめるかばんだったが、サーバルたちフレンズが火を怖がることを知っているので、すぐに考えを改めポケットに仕舞う。

 

「それにしても、ぜんぜんフレンズをみかけないなぁ」

「そうだね……まるで最初にサーバルちゃんに会ったときのサバンナみたい……」

 

サバンナのころの記憶を思い出しているからか、そんなことを口にしてしまう。

かばんの言葉に、サーバルは少し首をかしげて「あっ」と声を上げた。

 

「もしかして……セルリアンがいるのかも!?」

「えっ?」

 

サーバルの慌てた声に、かばんはサバンナでのやり取りを思い返していく。崖を越えたり、小川を渡ったり、セルリアンに襲われたり―――そして、泉でカバと出会って―――

 

 

“今日はセルリアンが多いから、みんな出歩かないのですわ”

 

 

「―――あっ!」

 

かばんもカバの言葉に思い当たり周囲を警戒して辺りを見回した。

 

そして―――

 

 

『アップデートカンリョウ、アップデートカンリョウ』

 

「ボス??」

「ラッキーさん!?」

 

唐突にけたたましく声を上げるラッキービーストに身を竦ませる二人を他所に、聞き覚えの無い音を響かせた腕のラッキービースト―――

 

『―――聞こえますか?かばん』『聞こえたら返事をするのです。我々、暇ではないので』

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!しゃべったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

その表面に動物らしきシルエットが浮かび、声が響く。突然に聞こえた普段と違う声に、叫び声を上げて木の上に退避するサーバル。一方で、かばんはその声に聞き覚えがあった。

 

「―――もしかして……ハカセさん、ですか?」

『そうなのです。我々が一番乗りなのです。この島のオサなので』

「いったいどうして……??」

 

わけが分からないかばんに、ミミズクのシルエットだった表示が消えて、元の緑色の輝きに戻る。その腕から、いつものラッキービーストの声が響いた。

 

『オドロカセテゴメンネ。ゴコクエリアノラッキービーストタンマツカラ、ツウシンキノウノデータヲミツケタンダ。ボクヲカイシテ、キョウシュウエリアノラッキービーストタチニデータヲソウシンシタカラ、ムコウノフレンズトオハナシ、デキルヨ』

「ど、どういうこと??さっきのこえ、ハカセ?ボス、ハカセたべちゃったの??」

 

状況も説明も理解の範疇を飛び越えたのか、おそるおそる樹上から戻ってくるサーバル。そんなサーバルに、腕のラッキービーストを留めているベルトを外して、コアを地面の上に置いたかばんは、言葉を探す。

 

「えっと……たぶん、キョウシュウのみんなと、お話しできるようになった……かな?」

「えっ?どうして!?うみのむこうにみんないるのに?」

「ラッキーさん。ハカセさんをもう一度お願いできますか?」

『マカセテ』

 

かばんの言葉に反応したラッキービーストの表面に、再びミミズクのシルエットが浮かぶ。そして―――

 

『いきなり通信が切れるのでおどろいたのです。ですが、状況は把握しているのです。サーバルがびっくりしたと推測するのです。我々はかしこいので』

『ですね。我々はかしこいので』

「うわぁー!!またしゃべったぁぁぁぁぁ!?」

 

再びガリガリと幹をひっかきながら樹上に登ろうとするサーバル。そんなサーバルの大声に、ラッキービーストの向こうから非難するような声が響く。

 

『サーバル、うるさいのです』『ネコ科のフレンズの大声は、耳に響くのです』

「ごっ、ごめん!」

 

再びおそるおそる降りて来るサーバルだが、その尻尾はピンと立ったままでまだまだ警戒しているようだ。

 

『―――ラッキービーストを介して、我々がお話しできるようになったのです』

『新しい機能について急いで調べたのです。我々はかしこいので』

 

かわるがわるハカセと助手―――オオアフリカコノハズクとワシミミズクの声がラッキービーストから響く。と、表面のシルエットが消え、再びラッキービーストの声が響いた。

 

『キョウシュウエリアノ、ラッキービーストガイルバショナラ、ドノフレンズトモカイワデキルヨウニナッタヨ サァ、ダレトオハナシシタイ?』

「そうなの?じゃあ、サバンナのカバともおはなしできる?」

 

サーバルがそう言うと、ラッキービーストの表面にさっきと違ったシルエットが映り、さっきと同じ謎の音が響く。そして……

 

『だぁ~~~~~~れぇ~~~~~~~?』

 

間延びした独特の声が響いた。

 

「あっ!カバ!!カバ!わたし、サーバルだよっ!」

『サーバルぅ??って……あら?ボス?サーバルは、どこぉ?』

「ここだよ!わたしはこーこー!」

 

手を振ってアピールするサーバルだが、そもそも映像が届くわけではないのでカバには届かないし、ラッキービーストのあたらしい機能について知っているのは今のところハカセたちだけなのでカバにもわけがわからない。

 

『サーバルぅ?どこですのぉー?うみのむこうにいったんじゃなかったのー?』

「うみゃあ!ここだよぉ!うみのむこうから、おはなししてるのー!」

 

身振り手振りを交えてひょこひょこと動きながらカバと会話しようと頑張るサーバルを見ながら、ほほえましく見守っていたかばんだったが、疲れには勝てなかったのか、ゆっくりと船を漕ぎ始め―――やがて、寝入ってしまう。

 

 

 夜遅く、月明かりと星明りだけの夜に、サーバルとカバのズレた会話が、説明役不在のまま続いていった――――。

 

 

(Aパート終了)

 

 




眠るかばんと、騒ぐサーバルの二人のいるその大きな木の上で、淡く輝くナニカが一つ。


「――――オモシロそうなフタリだナ……タノシいナ」


ぽつりぽつりとつぶやきながら、淡い光を放つソレが、枝の一本の上でフワフワと浮かんでいた。
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