その日、青年は昏い瞳をしていた。
その日、青年は嘆いていた。
その日、青年は失っていたことを知ってしまった。
ようやく手に入れたと思っていた
血を分けた己の半身とも言える少女は泣き崩れ、目の前に広がる光景の意味することを理解しまいと
青年は、Lv.5となってから久しく忘れていた感情を思いだした。その感情は、もう味わいたくないと思っていたもの。味わいたくなかったらから、強くなった。打ち勝つために。守るために。失わないために。しかし、待っていたのはそんな青年を嘲笑うかのような現実だった。
青年は、何もできなかったのだ。過去に起きたことは、事実を後から知ることしか許されない。その場にいることができないのだ。そして、己の意識が曖昧になり始めた頃、青年は収めることのできない感情の濁流を吐き出すかのように、握りしめた
――――――そうだ。これが、『絶望』だ。
「…………」
目が覚めると、俺はベッドではなくソファーの上で寝ていた。寝ている間に汗を掻いたらしく、衣服はじっとりとしていて冷たくなっていた。口の中は乾ききり、ソファーで寝たせいか体の節々が固まってしまい、動こうとする度にパキパキと音が鳴る。そして、夢に出てきた
……クソッ、最悪の朝だ。
俺の部屋は、この『黄昏の館』にある書斎に最も近い場所に存在している。この部屋を俺が使おうと決めたのには三つ理由がある。一つは、読書を好む俺にとって書斎が近いこの部屋の立地が理想的だったこと。一つは書斎が近くに在るということで、この部屋の周りで騒ぐようなヤツが居ないこと。そしてもう一つは、k……
ガンガンガンッ!
……そう、この上の部屋は我が最愛の妹、コマチエルがいる部屋なのだ。というか小町ちゃん?お兄ちゃんちゃんと起きてるから。確かに目覚めが悪いのは認めるけど床を蹴って起こそうとするのやめてね?一度床を踏み抜いた後、壊れないようにとか言って一部ミスリルの床にしやがって。
余談だが、イタズラ心で小町が床を蹴るタイミングに合わせて雷属性の魔剣(特注で作った威力の弱いもの)を使ったら、二週間口を訊いてくれなくなった。まじで死ぬか考えた二週間だった。
小町によって毎日行われるこの蹴りに対して、俺は起きていることを伝える為に氷属性の魔剣(これも特注)を
なんだか今日は運が悪い。明日遠征があるってのに、ここまで運が悪いと明日の遠征で何か起こっしまうのではないかと疑ってしまう。
「ハァ……また後で買いに行かなきゃなぁ」
特注だから高いんだよなぁ、あれ。
そんなことを考えながら、いい加減湿った服が気持ち悪いので着替えつつ、俺は遠征の準備で心もとなくなった財布に顔をしかめながら、自分の部屋を後にした。
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