求め、欲したモノ   作:彩たか

5 / 7
言い忘れてましたが、小説を基に執筆しております。なので、アニメの方とは差異が生じてしまいますが許してください。そんなこんなで『第五話』。どうぞ。


第五話 遠征Ⅰ①

怒号と咆哮が、折り重なる様に戦場へ響いている。草木の生えない荒野。その全てが赤茶色に染まっている空間の中、多種族で構成されたヒューマンと亜人(デミヒューマン)の一団は、押し寄せて来たモンスターの群れと戦闘を繰り広げる。小町との遠征準備から、既に数日は経ったであろう現在、俺達【ロキ・ファミリア】は遠征開始から数十回目となる戦闘を始めていた。

 

 

「盾ェ、構えぇッ――!!」

号令によって展開された巨盾の壁に、モンスターの剛腕が振り下ろされる。盾を構えていた団員は、歯を食い縛りながら(かかと)を地面に埋める。

「前衛、密集陣形(たいけい)を崩すな!後衛組は攻撃を続行!」

目まぐるしく変化し続ける戦況に、我らが団長、フィン・ディムナが矢継ぎ早に指示を飛ばす。既に深層にいる俺達は、上の層では『異常事態(イレギュラー)』や『怪物の宴(モンスターパーティー)』でしか出会えないような、『深層』特有のモンスターの物量に顔を歪めつつ、一匹、また一匹とモンスターを屠っていく。

 

「ティオナ、ティオネ!左翼支援急げッ!八幡、前方の敵に奇襲を掛けろッ!」

指示を受けたアマゾネスの姉妹が、Lv.5の脚力をもって疾走し、三匹いた筈のモンスターを一瞬で灰に変える。ティオナが倒す前に何か言っていたが、きっと泣き言か何かだろう。そして俺は、前方に現れた四匹のモンスターの内、三匹に『蛙鳥』を投擲する。一匹は頭を、そしてもう二匹は魔石の存在する胸部を貫かれ、絶命する。残った一匹が驚愕で顔を染めるのと同時に肉薄、反応させる隙すら与えぬ間に『蛙口』で胴を斬り捨てた。

 

 

現在相手にしているモンスターは『フォモール』。一匹一匹が大人のヒューマンを軽々と越える巨体をしており、その腕には天然武器(ネイチャーウェポン)であろう化石の骨に酷似した棍棒型の武器が握られている。そして、その図体のデカさ、物量、棍棒、全てを武器にして、盾を構えている団員達によって造られている防衛線の規模を、少しずつ狭めていた。

「まだかっ……」

俺達前衛組が庇っている後衛組。魔導士や弓使い(アーチャー)が前衛組の援護をしているその中でも、更に中心にいるハイエルフサマは、白銀の杖を水平に構え、その美しく高雅(こうが)な声で呪文を紡いでいた。

「【――忍び寄る戦火、免れえぬ破滅。開戦の角笛は高らかに鳴り響き、暴虐なる争乱が全てを包み込む】」

戦場に響く『長文詠唱』。リヴェリアさんが持つ攻撃魔法。その中で、今回発動させるのは恐らく第二階位に位置する『レア・ラーヴァテイン』だろう。術が完成するまでおよそ三十秒。一見すると短い時間だが、こと戦闘となれば隙以外の何物でもない()()()となる。故にその時間を守るのが俺達の役割なのだ。

 

「【至れ、紅蓮の炎、無慈悲の猛火】」

紡がれ続ける『詠唱』。完成に近づいていく『魔法』に、持っている武器に思わず力が入る。しかし―――、

『――オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオウッッ!!』

「嘗めるな」と言わんばかりに吠えた『フォモール』が、盾持ちの前衛の元へ驀進する。恐らくこの群れの中で一番大きな個体であろう一体が、盾持ちの前衛目掛けて己の獲物によって強烈な一撃を放つ。結果、前衛を吹き飛ばし防衛線の一角を欠落させた。

「――ベート、八幡、穴を埋めろ!」

「ちッ、何やってやがる!?」

「ラウル、後頼むッ!」

「は、はいっス!」

空いてしまった防衛線に、ベートと俺が急行するが間に合わない。防衛線の中に、モンスターにモンスターが侵入していく。クソッ、遅かったかッ!

「ベート、お前はこれ以上侵入させるな。俺は中に入ったモンスターを殺るッ」

「俺に命令すんじゃねェッ!」

悪態をつきつつ、更に侵入しようとするモンスターをベートが蹴殺する。そして俺は、侵入したモンスターを屠るべく疾走したが、既にフォモールが魔導士に攻撃を加えんと獲物を上段に構え、その馬鹿げた膂力を以て身動きが取れなくなった魔導士―――レフィーヤに獲物を振り下ろしていた。

 

「レフィーヤ!?」

別方向から驚愕の声が上がる。直撃は免れた様だが、レフィーヤの眼前の地面を抉ったその一撃は、衝撃波だけでレフィーヤを殴り飛ばすには十分な威力を持っていた。俺はレフィーヤの元へ向かうべく、己の体弾丸に変える。そしてもう一人、俺と同じくレフィーヤの元へ駛走する金髪の少女を視界に捉える。

「――ぁ」

『フゥーッ……!』

止めを刺さそうと、転がったレフィーヤの元へフォモールが歩みより、獲物を持った腕を振り上げる。そしてその腕がレフィーヤ目掛けて振り下ろされようとした瞬間、胴と首を斬り分ける二つの斬撃が、フォモールを肉塊へと変える。

「……」

その場にへたり込んだレフィーヤが、金色の長髪をたなびかせる少女――アイズ・ヴァレンシュタインと俺を呆然と見つめる。

「アイズ、八幡!」

前方から、ティオナの歓喜の声が聞こえる。アイズはレフィーヤの無事を確認すると、すぐさま前線へ急行する。って……

「おい、アイズ!あまり前に出すぎるな!」

俺の制止も聞かず、アイズは迫り来るモンスターの群れへと走り去ってしまった。

「ったく、後でフィンに怒られても知らねぇからな……。……レフィーヤ、立てるか?」

行ってしまったアイズに呆れつつ、未だ地面にへたり込んでいるレフィーヤに、一応無事かを確認する。呆然と俺を見つめていたレフィーヤは、ぎこちなく頷く。

「なら結構。いいか?常に周りを観て現状を把握しろ。どんな攻撃でも必ず誰かが守ってくれるなんて保証は何処にもない。それくらい、分かってる筈だ。そろそろ自分の身くらい、自分で守れる様になれ」

「……それくらい……分かってます」

何が起こるかわからない『地下迷宮(ダンジョン)』。そこで自分を守れないということは死に直結する。言外にそれを伝えると、レフィーヤは「分かってます」と、相も変わらず複雑な顔をしつつ立ち上がる。そんな無駄口をレフィーヤと叩いている間に、どうやらリヴェリアさんの『魔法』が完成したらしい。前方で夥しい数のモンスターを切り刻んでいたアイズがこちらへ戻って来ると同時に術が発動する。

 

「【レア・ラーヴァテイン】!!」

数え切れない程の炎柱が魔法円(マジックサークル)から出現し、広間(ルーム)全体を炎の海に変える。残っていたモンスターは一瞬にして灰になり、炎の存在しないここにまで、熱風という形で威力の凄まじさが伝わる。全員の顔が緋色に染まっていく中で、俺達は、静かに構えていた武器を下ろした。




長くなってしまいました。

原作を確認する→言い回しや文を変える→八幡視点に変える

この作業も辛いですが、『異常事態(イレギュラー)』などの特別なルビを探すのもわりと辛かったりします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。