怒号と咆哮が、折り重なる様に戦場へ響いている。草木の生えない荒野。その全てが赤茶色に染まっている空間の中、多種族で構成されたヒューマンと
「盾ェ、構えぇッ――!!」
号令によって展開された巨盾の壁に、モンスターの剛腕が振り下ろされる。盾を構えていた団員は、歯を食い縛りながら
「前衛、
目まぐるしく変化し続ける戦況に、我らが団長、フィン・ディムナが矢継ぎ早に指示を飛ばす。既に深層にいる俺達は、上の層では『
「ティオナ、ティオネ!左翼支援急げッ!八幡、前方の敵に奇襲を掛けろッ!」
指示を受けたアマゾネスの姉妹が、Lv.5の脚力をもって疾走し、三匹いた筈のモンスターを一瞬で灰に変える。ティオナが倒す前に何か言っていたが、きっと泣き言か何かだろう。そして俺は、前方に現れた四匹のモンスターの内、三匹に『蛙鳥』を投擲する。一匹は頭を、そしてもう二匹は魔石の存在する胸部を貫かれ、絶命する。残った一匹が驚愕で顔を染めるのと同時に肉薄、反応させる隙すら与えぬ間に『蛙口』で胴を斬り捨てた。
現在相手にしているモンスターは『フォモール』。一匹一匹が大人のヒューマンを軽々と越える巨体をしており、その腕には
「まだかっ……」
俺達前衛組が庇っている後衛組。魔導士や
「【――忍び寄る戦火、免れえぬ破滅。開戦の角笛は高らかに鳴り響き、暴虐なる争乱が全てを包み込む】」
戦場に響く『長文詠唱』。リヴェリアさんが持つ攻撃魔法。その中で、今回発動させるのは恐らく第二階位に位置する『レア・ラーヴァテイン』だろう。術が完成するまでおよそ三十秒。一見すると短い時間だが、こと戦闘となれば隙以外の何物でもない
「【至れ、紅蓮の炎、無慈悲の猛火】」
紡がれ続ける『詠唱』。完成に近づいていく『魔法』に、持っている武器に思わず力が入る。しかし―――、
『――オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオウッッ!!』
「嘗めるな」と言わんばかりに吠えた『フォモール』が、盾持ちの前衛の元へ驀進する。恐らくこの群れの中で一番大きな個体であろう一体が、盾持ちの前衛目掛けて己の獲物によって強烈な一撃を放つ。結果、前衛を吹き飛ばし防衛線の一角を欠落させた。
「――ベート、八幡、穴を埋めろ!」
「ちッ、何やってやがる!?」
「ラウル、後頼むッ!」
「は、はいっス!」
空いてしまった防衛線に、ベートと俺が急行するが間に合わない。防衛線の中に、モンスターにモンスターが侵入していく。クソッ、遅かったかッ!
「ベート、お前はこれ以上侵入させるな。俺は中に入ったモンスターを殺るッ」
「俺に命令すんじゃねェッ!」
悪態をつきつつ、更に侵入しようとするモンスターをベートが蹴殺する。そして俺は、侵入したモンスターを屠るべく疾走したが、既にフォモールが魔導士に攻撃を加えんと獲物を上段に構え、その馬鹿げた膂力を以て身動きが取れなくなった魔導士―――レフィーヤに獲物を振り下ろしていた。
「レフィーヤ!?」
別方向から驚愕の声が上がる。直撃は免れた様だが、レフィーヤの眼前の地面を抉ったその一撃は、衝撃波だけでレフィーヤを殴り飛ばすには十分な威力を持っていた。俺はレフィーヤの元へ向かうべく、己の体弾丸に変える。そしてもう一人、俺と同じくレフィーヤの元へ駛走する金髪の少女を視界に捉える。
「――ぁ」
『フゥーッ……!』
止めを刺さそうと、転がったレフィーヤの元へフォモールが歩みより、獲物を持った腕を振り上げる。そしてその腕がレフィーヤ目掛けて振り下ろされようとした瞬間、胴と首を斬り分ける二つの斬撃が、フォモールを肉塊へと変える。
「……」
その場にへたり込んだレフィーヤが、金色の長髪をたなびかせる少女――アイズ・ヴァレンシュタインと俺を呆然と見つめる。
「アイズ、八幡!」
前方から、ティオナの歓喜の声が聞こえる。アイズはレフィーヤの無事を確認すると、すぐさま前線へ急行する。って……
「おい、アイズ!あまり前に出すぎるな!」
俺の制止も聞かず、アイズは迫り来るモンスターの群れへと走り去ってしまった。
「ったく、後でフィンに怒られても知らねぇからな……。……レフィーヤ、立てるか?」
行ってしまったアイズに呆れつつ、未だ地面にへたり込んでいるレフィーヤに、一応無事かを確認する。呆然と俺を見つめていたレフィーヤは、ぎこちなく頷く。
「なら結構。いいか?常に周りを観て現状を把握しろ。どんな攻撃でも必ず誰かが守ってくれるなんて保証は何処にもない。それくらい、分かってる筈だ。そろそろ自分の身くらい、自分で守れる様になれ」
「……それくらい……分かってます」
何が起こるかわからない『
「【レア・ラーヴァテイン】!!」
数え切れない程の炎柱が
長くなってしまいました。
原作を確認する→言い回しや文を変える→八幡視点に変える
この作業も辛いですが、『異常事態(イレギュラー)』などの特別なルビを探すのもわりと辛かったりします。