PTSD…心的外傷後ストレス障害
強烈なショック体験、強い精神的ストレスが、
こころのダメージとなって、時間がたってから
も、その経験に対して強い恐怖を感じる障害
薄暗い部屋の一室、灯す明かりは天井の電灯1つだけ。そんな部屋に二人の話声が響く。
「んで、この人形が指揮官に対して暴行を行い、傷害を追わせて、ここに連れてこられたやつか。」
「ああ、これに対しての処置だがその"指揮官"からのお願いごとでな、壊すなと。できれば、現場復帰をさせてあげろだそうだ。」
「ほお、お優しいことで。まっそれが
「では、頼んだ。」
黒服の男が扉からでた、残るはパイプイスに座る男と両腕を枷で縛られた少女、否 戦術人形 FNC だ。本来であれば明るい彼女であるが今や見る影もない。ただ俯いている。
「一応聞いておくが、ここにいる理由は知っているよな?」
「………」
男が質問を投げ掛けるもFNCは反応しない。それに対し男はため息をつきながら書類を捲る。
「……お前は、任務を完了し帰投後、自身の指揮官に対し暴行を行った。だが、すぐさま副官及び人形複数名で取り押さえられた。当初はウィルスによる影響だと考えられ、データの解析が行われたが問題なし、なんかのバグかと思われたがこれも無し……システム面は至って正常だったわけで、じゃあ、何が原因だって話になった。ここまではいいか?」
「………」
「黙りかよ、少しは反応してくれよな…。そういや、お菓子が好きだってな、手持ちは少ないが、ほら飴だ食うか?」
男が飴を差し出してもFNCは反応しない。そんな、態度に男もイラつき始める。
「…ったく、何で自分の指揮官を殴ったりしたんだ?お前さんはあの基地でも古参なんだろ、練度も高いし、任務の成功率も高い、何の不満があったんだ?せっかく指揮官が現場復帰をしてくれるってのに。」
「……たくない」
FNCが小さく呟いた、だが身体が震えている。何かに怯えるように。
「何かあるなら言ってくれ。何をしたくないんだ。」
男はパイプイスから立ち、FNCに近づく
「…戦いたくない」
FNCは力なく呟いた
「戦いたくないって、お前さん達は戦うために作られたり改修されたりしたんだろ、戦うように中のデータも作られたはずだ、それが何で戦いたくないんだ?」
男は、膝を着き目線を合わせる。FNCの目からは生気を感じられない。そもそも、人形として機能しているかさえ疑わしい。
「…壊されていくからだよ、目の前で……。私が任務にいくたび壊れていくの、基地に帰るのはいつも私1人、亡骸を持ち帰っても修復されるのは私1人。同じ型の人形がいる…でもあの子じゃない。……あの基地にはいないんだよ…。指揮官も私1人じゃ任務にいかせてくれない、変わらないじゃん!帰ってくるのは私1人なんだから……。ねぇ、どうしてなんで私は1人なの…。どうしてあの子たちは壊されるの…?」
FNCの叫びが部屋に響く。それは彼女の悲鳴か怒りか慟哭か、彼女の思いが声となり外へ流れる。
「…お前の言っている人形は、作戦報告書を見る限りだと……お前を銃弾から守る盾だな。」
男がそう言い放つとFNCは、顔を上げる。
「私たちは、戦うために作られたんじゃなかったの!?…盾ってなに?あの子たちは戦わずに、銃を撃たずにただ壊されただけなの?……ねぇ、私たちは、戦うために作られたんだよね…なんでなの、ねぇ。」
「ああ、そうだお前たちは戦うために作られた…だが、その戦いはこっちが決める。いいか、お前たちは人形は人間の代わりなんだ。数が少なくなった人間の代わりに動くものなんだ。」
FNCの叫びを打ち消すかのごとく男は言葉を放つ。
「…じゃあ、何で私たちには感情があるの…これが無ければ私はこんな思いをしなくてすんだのに…。」
FNCは、項垂れるながらも男に問いかける。
「疑似感情モジュールのことか…、確かに感情が無ければ動きやすいだろうな、こっちの言うことをキチンと聞く人形になるな、だが俺たちはそんな人形のどこを見ればいい?なにも考えていないただのものになにを感じ取れるんだ?」
「わからないよ、人形の私にわかるはずがないよ…。」
「そうだな、俺にもわからん。今のお前さんのように意思を示してくれた方がよっぽど理解ができる。感情っていうのは、互いのことを理解するためにあるんだ、こっちのことを理解できない奴に背中は預けられないからな…まっ、部下の人形に殴られた指揮官もいるがな。」
男は笑いながらパイプイスに座り直す。
「で、話を戻すか、基地には戻るのか?」
「戻らないよ、戻ったらまた、戦わないといけない。」
「そう言ってもな、お前さん戻らなかったらどうするんだ?銃を手放しコアを抜いたお前さんに何が出来るんだ?戦いに怯え、いない人形の亡骸を抱えるお前に何が出来るんだ?この時代、何もできない人形の面倒を見ることはできないぞ。」
「…戦えないよ私は。戦ったらまた、一人になるもん。」
そんなFNCを見かねてか男は、書類を捲りながら話し出す。
「そのことなんだが、人形を作るにしてもコストが掛かるんだ。壊れた人形を修復してるのはコストを抑えるためなんだか、そのまま放置されることもよくある。バックアップがあるからな壊れてもどうにかなるんだが、放置された人形が非合法な連中の資金源になってるんだ、人形のパーツには色々入ってるからな…それなりの金にはなる。」
男が話し出したことに疑問を覚えるFNC
「それと私のことに何の関係があるの?」
「まーだ続きがあるんだ。聞きな。」
男は語る、その問題に対し危機感を覚えた上層部は、練度の低い人形を盾にする行為を禁じ、大破した人形の回収を義務付けた。だが、基地にかかる負担や戦略の縛りに対しての反発もあるそうだ、これに対しても上層部は新しい戦略システムを導入することも発表した。
「まっ、こんなとこか。どうだい、お前さんの危惧していることは無くなったぜ。これで、戻る気になったか?」
「…それでも戦えないよ、それにあの基地に私の居場所なんてない。」
一瞬顔を上げるFNCだったがすぐに俯いてしまう。
「…確かに上司を殴った職場には戻りたくないな。」
飴を取りだし手で転がしながらFNCに近づく男。
「だったら、俺の所にこないか?」
FNCの目の前に飴を差し出す男。
「戦えない私をおいてどうするの?」
「戦えなくとも出来ることはあるさ。てか、高い練度を持った人形をそうそう逃すと思うか?」
「…言ってることが変じゃない?散々私には何もできないって言ったし、というかその話があるんだったら最初から言ってよね。」
FNCは不機嫌そうに話すが、その顔には感情が感じられる。
「すまんすまん、いやなに人形が強いストレスを受けた場合のデータ取りもやれって上からのお達しも来ててね、この枷でデータをとってたんだ。」
男はそう言いながら、枷を叩く。
「で、どうする?俺の所にくるか来ないか…どっちにする?」
「あなたの所に行ったとして私は何をするの?」
「新人どもに対しての訓練だな。戦い方がデータとして入っていても身体が追い付かなきゃ意味がないからな、言ってしまえば頭と身体の
「…私に出来るのかな?」
心配そうな表情を浮かべるFNC
「出来るさ、多くの任務を成功させ、多くの人形を壊された光景を見たお前には出来ることだ。それにこの訓練がお前さんの言っているあの子たちのような人形を減らせるさ。」
FNCの目が一瞬見開かれる
「私がやれば減らせるんだよね。」
「ああ、そうだ。完全になくなるということはないが確実に減る。」
FNCが顔を上げ、目の前にある飴を口で奪い取り噛み砕く。部屋には飴を砕く音が響く。
「わかった、あなたに着いていって、やる。」
「ああ、いいだろう。」
男が枷にあるボタンを押すとFNCの腕から枷が外れる。
「よし、立ちな。これから色々と手続きをしなきゃならないんでな。」
「そうだ、あなたに着いていくって言ったけど私の所属ってまだあの基地なの?」
「そのための手続きだ。そこいらの指揮官よりも立場は上なんだどうにかするさ。…飴、食うか?」
「あ、うん…ありがと。そういえば、名前聞いてなかったね。」
「そういえば、言ってなかったな。俺は……」
二人は部屋から出ていく。残るはパイプイスと枷だけだ
____________________________________________
~数週間後~
「そこ!立ちどまらない!弾に当たりたいんですか!」
FNCは銃から
「そこのライフル!この程度の距離こっちからでも届くよ!」
FNCが言い放つと同時にペイント弾を放ち、ライフルの人形をペイント濡れにする。
FNCの周囲にはペイント濡れになった人形が倒れ伏している。それをみながらFNCはバックパックから飴を取りだし口に放り込む。
「いいですか、この程度でやられていては実戦では、なにも出来ずに終わりますよ!」
そんな、惨状を見た男がぽつり。
「…とんでもねぇもん引き取っちまったな。」
Twitterで流れた来たイラストを見て閃きました。
男:飴食う? G&K内でそこそこに地位にいる人物。情報などは公開されいないが、本人は割と表に出ている。曰く、「誰も俺のことなど気にしないさ。」とのこと
FNC:トラウマを刻んでしまった人形。戦闘能力は高く、アサルトライフル以外の銃種も使用可能とのこと。しかし、過去のことから目に感情がない。 機嫌がいいと飴をかみ砕いちゃう子。