うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる:その2 作:madamu
「会場警備ですか?」
十文字会頭の説明についオウム返しをしてしまった。
3限目をサボれる特典はあるが告げられた内容はあまり嬉しくない。
「そうだ。萬。今回の九校戦では試験的に一部学生による警備補助を取り入れる」
部活連本部。言いたくはないが風紀委員室より片付いている。
部屋の奥、執務机を挟んで十文字会頭が答える。
そこには運動系部活の主要メンバー総勢20名が勢揃いしている。
「それですとスパイ行為や不正行為に手を出す輩がいないとは言えませんよ」
操弾射撃部の部員が声を上げる。
尤もだ。九校戦は論文コンペとは違う。
リアルタイムで行う競技会では自校の生徒以外は皆敵だ。
そんな環境に警備とは言え他校生が近くにいては競技の戦術チェックなど出来ない。
「うちの学校でそんなことをする奴はいないが、他校で不埒な奴がいないとは限らないな」
辰巳先輩が頷く。
先輩、モノリスの選手候補だから気が楽かも知れないが、警備参加が確実な俺は気苦労しそうで嫌なんだぞ。
あと、いい加減剣道部の部室に置いた2世代前のレア物CAD持って帰ってください。邪魔です。
何ですか、「ハンディゲーム機内蔵型CAD」とか。
「だが将来有事の時に、戦列に並ぶ同じ魔法師をそのようには思いたくない」
会頭の声で辰巳先輩の私物の話から意識が戻る。
「実際は警備と言っても、観客席やコース脇での警備補助がメインです。警備参加の生徒は競技参加の生徒とは別のホテルに泊まることになるから情報共有する機会は少ない予定のはずです」
市原先輩が警備の大枠の話を始める。
基本的には選手との接触はほぼなく、スパイ行為についてはできない。
今回の警備の話は本当に嬉しくない。
各運動系部活は九校戦後に夏の大会が待っている。
剣術部と剣道部は秋の大会だから良いが、クロスフィールドは夏の大会で3年生が引退だから万全の体制で迎えたいはずだ。
そこに警備の話だ。
クロスフィールドの主要選手の一人二人は警備に取られるだろうな。
調整不足で夏大会とか可哀想以外の感情は出てこない。
「いいか、言いたいことはあるだろうが、九校戦の選手たちが安心して全力を尽くせるよう努めるのも在校生の務めだ」
各部活から招集された面々の内心を感じ取った十文字会頭が、やや圧力のある声で宣言する。
この人のリーダーぶりは生まれつきな気がするな。
パパ、ママと口にする前に「責任」と一緒生まれてきた感じだ。
戦争が身近なこの時代で、兵器としての魔法師の頂点に立つ家の跡取りというのも大変だろう。
裏番辺りに話せば「君もでしょう」と笑われそうだが。
◆
「ここに来て泥棒騒ぎとはね」
まゆみんが溜息をつく。
たまに顔出す生徒会室ではあーちゃんや市原鈴音(通称リン、何でも年上の彼氏がいるそうで、なかなか紹介してくれない。年上には興味が無いので安心して欲しい。千葉の長男にも次男にも興味は無い!)が忙しそうに校内SNSへ、九校戦についての情報を上げている。
「キヨ、これでもため息減らしてるのよ」
「ため息するとほうれい線深くなるらしいよ」
私の言葉にあーちゃんのみならず、リンも「えっ」と声を出す。
リンの表情差分の少なさは、ほうれい線対策だったのか!
「へ~リンもほうれい線とか気にするんだ~」
「まあ、人並みには」
少し顔が赤くなる。噂の彼氏のため?
「でも、今年はエンジニアが確保できて助かったわ」
私と司波達也君の2名がギリギリで参加が決まった。
学内から選手選抜が終わる頃、九校戦関係者の自宅に立て続けに泥棒が入った。
と言っても盗まれるというよりは、情報端末への不正アクセスの痕跡や、自宅書斎を荒らされるなど、普通の泥棒とも動きが違う。
九校戦の主催である魔法師協会は即座に警備強化を行った。
勿論国防軍への警備強化依頼を出したが「実地研修」と「学生主体の自治」の名の下に、選手やエンジニアとして参加しない学生による警備班を組織しようと言うのだ。
うちからは運動系部活から数人。
まあ、真人は行かされるだろうな。実家が警察関係だし、格闘技道場の跡取だし。
近接戦闘なら沢木碧に匹敵し、剣術でも桐原武明にも劣らない。
そして「裏技」まで持つ最強の2年生。最優ははんぞー君だが、最強は真人でしょ。
「今年も浴衣かな~」
「本当に好きですね。コスプレ」
リンから呆れた声がでる。
私は九校戦の中日、午後の試合がなくなる日にはちょっとだけ変わった格好をしている。
浴衣姿に、アオザイ。
男子高校生の鼻の下が伸びた視線は、笑ってしまうやら楽しいやら。
「はいはい、筆頭エンジニア殿、あんまりうちの品性を落とさないでね」
まゆみんに釘を刺されたが、君昨年のバニーガール計画に最後までノリノリだったじゃない。
◆
「司波くん、君には【キヨさん】か【おねーちゃん】と呼ぶ権利をあげよう」
「十二江先輩」
困り顔をして私に声を掛けるのは司波達也きゅんではなく、五十里くんだ。
2年生で1番女装の似合う男子。
既に千代田花音と結託して女生徒の制服を着せたことがある。
スネ毛がなくてツルツル。
いやー似合ってたわ。
「五十里くん、君には婚約者がいるから手を出せないのが残念な限りだ」
残念そうな声を出したけど本当に残念なのだ。
こういう線の細い感じの男子大好き!
「兄弟は妹だけで十二分です。先輩にはご兄弟はいらっしゃらないのですか」
顔も合わせず返答する司波達也君はCADのメンテに使う簡易の測定器の充電状況を確認している。
正直、ホテルについてすぐに初日の競技に参加する生徒のCAD調整があるから、ゆっくりとは出来ない。
ここはスタッフ用の大型バンの中。
前方には選手が乗ったバスが走っている。
もうあと1時間もすればホテルに到着する。
そう、九校戦のスケジュールは始まっている。
この後はそ無頭竜による自爆テロだが、ジュウモンと深雪ちゃんと達也君の活躍で事なきを得るはず。
「一人っ子なのよ。おねーさんは。まゆみんとこの双子ちゃんには今一つ好かれてないし」
あの双子からは「変な人」扱いで、あんまり好かれてない。
「破廉恥!」と言われたときはちょっとだけ傷ついた。
そしてトラックは急ブレーキ。
さあ、始まったざますよ!