うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる:その2   作:madamu

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「十二江さん、ここ?」

昼下がりの横浜。

私は編み込みヘアーの美少女、高村“ランペイジ”マリアちゃんと共に喫茶店へと入っていった。

 

私は明るい青のワンピースにワンポイントでブラウンレザーの細身のベルト。

流石に麦わら帽子はなし。そこまで乙女チックなのは苦手。

 

マリアちゃんと言えばローライズのフェイクレザーのパンツに黒のTシャツ。ブーツを思わせるスニーカー姿で、スポーティというよりはファイティングっていう感じだ。

 

ランペイジという渾名(さっき勝手につけた)はこのカッコイイ服装と待ち合わせの横浜駅でナンパ師の皆さんを「うるさい」「邪魔」「玉潰すぞ」「マズい面を見せるな」と一刀のもとに断罪したのも関係する。

ナンパ師諸君は逆ギレするかと思ったらマリアちゃんの圧力に小声で「はい」と呟くだけ。

顔が赤くなっていた人はたぶんMの人なんだろう。

 

ここは桜木町の喫茶店。

2007年にオープンした老舗だ。

なんかね、2000年代初頭のモノが老舗とか骨董品とか言われると違和感があったりする。

少し前世に引きづられているのかね。

 

今日は面談だ。三人だけで。

 

「お待たせ~。美人を待つ楽しみを堪能してくれた?」

「美人には慣れているので楽しくないですね」

秒で返答したのは笑顔の相馬新。

 

さっきマリアちゃんに聞いたら相馬新は30代らしい。

こんな台詞をノータイムで笑顔で切り返すとか、なんかかっこいいやら悔しいやら。

笑顔を見る限りはたんなる男子学生だ。それもあまり特徴のない感じの。

町で10人男子学生を集めれば2,3人は含まれるようななんともいえない普通の容貌。

 

「コイツの言葉を真に受ける必要はないわ」

そう言いつつ、相馬新の前に座るマリアちゃん。

不機嫌を隠すつもりは一切無いらしい。

「どうも口調が昔に戻るわね。アンタの顔見てるからかしら」

私も席に座ると相馬新は私には視線を投げず本題に入る。

「俺の話を聞かせてくれないか。どうやら俺より俺の未来に詳しいようだし」

 

彼女はテーブルの注文用タブレットからコーヒーを二つ。

「長い話になるから覚悟して。十二江さんも、コーヒーでいいわね」

「あっ、はい」

こりゃ、ダメだ。私は完全に子供扱いだ。

この場に決定権も主導権も何一つ無い。

 

マリアちゃんの話をロード中……………………

 

 

 

 

マジか。

 

 

高村マリア、前の名前は川村エカテリーナ。

 

彼女の話だと、相馬新こと関重蔵始め10人以上の転生者が存在した「魔法科高校の劣等生」世界の出身?らしい。

 

信じられない話ばかりだ。

司波達也そっくりのUSNAの軍人や深雪ちゃんの双子ちゃん。

藤林響子の妹に、四葉の天才児。

信じられない。

 

ヒドラジンが流出した横浜港の海水から、ヒドラジンの成分を無害に近い状態まで変異させる魔法とか、頭おかしいんじゃない。

何それ、四葉の天才児。

天才というか化け物の類いだよ。

 

音速に匹敵する速さで走るとか、ネットワークに生身で介入とか、直立戦車を体当たりで倒すとか、冗談にも程がある。

真人ならいざ知らず、か弱い私には信じられないことばかりだ。

 

関重蔵との馴れそめを親友の藤林奏から嫌と言うほど聞かされたおかげで、関重蔵の動きはある程度把握しているらしい。

「結婚十年の祝いに十輪の青い薔薇とか恥ずかしくなるわ」

 

新ソ連とのアレコレを聞く限り彼女は我々高校生側では無く、十師族、特に九島や四葉、七草に匹敵する存在だったようだ。

俗に言う権力者側。上に立ち人を導く側。

う~ん、すごい話だ。

内閣府と直接交渉とか外務事務次官との亡命受け入れ組織の話とか、ちょっと現実的な話でも手の届かないレベルでの話だ。

 

「藤林奏ね」

相馬新君の呟きは先ほどの年齢不詳とは全く違う年齢を重ねた大人の一言だ。

出会ったことも、ましてやこの世界に存在することさえ怪しい女性。

その女性と結婚し、あまつさえ子供までいた。

そりゃ色んな感情が一言に凝縮される。

悲しいとも嬉しいとも違う、なんというか感慨深い感じだ。

 

「で、君は俺が藤林奏より早く死んだことに腹が立っている」

「そう、親友が立ち直るのに7年かかったわ。息子がいてくれなきゃ、アンタの後を追ってた可能性もあるくらい」

「申し訳ないことをした。モテる男の罪だね」

言葉は冗談めいている、がそれに付随する感情はわからない。悲しんでいるのか、何も感じていないのか。

相馬君は手元のコーラに口をつけるが一切の動揺は見て取れない。

この人は何を考えている?

何も考えていないのか、それともこの程度では動揺しないのか。

 

「その冗談、私は笑えないわ」

マリアちゃんは冷めたコーヒーに口をつける。

 

「四葉の娘について感想は」

相馬君は話題をバッサリ変えた。

マリアちゃんの返事は簡潔。

「別の世界線」

「そう考えると辻褄が合うな」

辻褄。うん、辻褄が合う。

 

「カナデ」と言う女性の存在と四葉夜天の主張の矛盾。

 

別の世界線でもセキジュウゾウがいるなら、矛盾では無くなる。

じゃあこの相馬君は3度目の転生?

「2時間後に萬パイセン同伴で会うことになっている」

相馬君はこれからの予定を告げる。

今日、真人が一緒ではない理由はこれだ。

情報交換したいが感情面での衝突は避ける。

そのためマリアちゃんには私、夜天さんには真人がつくことになった。

 

「そう」

「何で四葉を嫌うんだ?」

マリアちゃんは二杯目のコーヒーを注文。

相馬君の質問に目を伏せる。

 

「何となくよ。四葉という名前には良い思い出が無いしね」

少し寂しそうな言い方だ。

「その四葉光夜とかいうのは嫌な奴なのか」

もしかして、俺様超TUEEEE君とか?嫌な奴だわ、それ。

「良い奴よ。中条あずさと結婚するほど」

 

ブッ!

「あ、ごめん。驚いて」

コーヒーを少し吹き出し、しどろもどろに弁明をしてしまう。

あのあーちゃんの旦那さん?何?洗脳?脅迫?

「言っておくけど、恋愛結婚よ。知っている限りあれほど仲の良い夫婦は他にいないわ」

私のリアクションを察したのか、マリアちゃんは二人の関係を簡潔に説明してくれた。

 

「変な質問だが、君は横浜の事件について協力体制を敷く気はない感じがするけど」

相馬君はコーラを飲み干すと本題に入る。

え、協力する気がない?

 

「そうね、他の転生者が動かなくても被害を少なくする算段は整っているわ」

 

「さすが、高村製紙の御息女」

「女のプライバシーを探るのね」

「そう言うならちゃんと隠しなさいな」

 

え、高村製紙の御息女なのか。

 

高村製紙とは、国内で数少ない紙の製造メーカーである。

特に和紙の生産量については国内第一位。

と言っても2095年では伝統産業を守る有名中小企業くらいで、紙に関する業界では有名だが普通の人は知らない。

 

「ちょっとご説明を」

う~敗北感。いや、単なる調査不足だ。

我ながら凡ミスだ。

 

意識が横浜に向かっていた。

勝手に協力が強固になると想った。

う~ん、どうも味方というモノがわかってないんだ私は。

 

転生者は味方。

黙っていることはあるだろうがお互いの手札はある程度見せ合う。

そう思っていた。

みんな、この「魔法科高校の劣等生」世界を生き抜きつつも好意的にとらえていると思っていた。

だけど、マリアちゃんや夜天さん、相馬君を見ていると、もっとリアルにもっと危機感を持っている必要を感じる。

この人たちは「魔法科高校の劣等生」世界ではなく自分の世界で生きている。

私は甘ちゃんなんだ。

 

「どの辺りを?」

タブレットで2杯目の飲み物を選択する相馬君は、まるで生徒の質問に答える先生の顔だ。

年下、いや実際は年長者だから私への接する態度はこっちが正解なのかも。

「マリアちゃんが協力に積極的じゃないこと」

この短い会話で、そこまで推し量るにはどの点を見ていたの?私はどれだけ馬鹿だったのか?

 

「まず、第一に協力する気なら俺を一発殴って終わらせるだろ。ここまで話しが長く続くのは気持ちのしこりがある証拠さ。解決できない怒りを理論的にぶつける」

相馬君が人差し指を立てる。次に中指も立てる。

「第二に、西日本魔法師連絡会から派遣された民間魔法師が3名、横浜で活動していることが確認されている。この3名は元は佐渡義勇軍にも参戦しているゴリゴリだよ。1人は元国防軍所属だ」

そして薬指も立てる。

「さっきナンパした一人はうちの工作員だ。あれで高村マリアのパーソナリティはわかる」

コーラが運ばれてきた。

 

「高村マリアは服装通りに攻撃的な面を有するが、その攻撃性は自己の制御下にあり決して無軌道な人物ではない。また西日本魔法師連絡会派遣の魔法師を傘下に持ち組織的行動が可能。その資金についても、違法性の低い経済行為によって賄われている」

 

私は息をのんだ。いや、騙されているのか?謎の説得力で丸め込まれている?

先入観で相馬君の言っていることを歪んで捉えている?

わからなくなってきた。

 

「あとは彼女は前の時の横浜騒乱の具体的なキーパーソンについて話していない」

相馬君は視線を私からマリアちゃんへ移す。私は小さく言いを着いた。

思考と緊張の檻から解き放たれた気分だ。

 

「周公瑾」

相馬君の一言。

そうだ、横浜騒乱の黒幕の一人。そしてこれから先の明確な敵。大漢の生き残り。

前世の話には一切出てこなかった。

絶対に話に上がるべき重要人物。そこが抜けていた。いや抜かして話していた。

 

マリアちゃんは一気にコーヒーを飲干す。

「この人は憑依型の転生者よ」

 

私はこの日何度目かの絶句をした。

 

 

疲れた。自分が転生初心者であることを痛感した。

相馬君を残し、喫茶店を出て横浜駅に向かって歩いていた。

 

横には会談に満足したのか、最後には「情報共有もする、必要なら戦力は出す、ただアンタのにやけ面を終わったら殴るわ」

と共闘の約束はしてくれたマリアちゃん。

 

私は私で、自分の甘さや世界の深さ、つまりは転生者の生き方をまじまじと語られ凹んでいた。

司波達也を救うというのは想像以上に苦難の道で「血脈」からどう離すか、そして四葉真夜をどうするのか。

自分で言うのもなんだか、折角の美貌も今や病人レベルで顔が青くなっているはず。

 

「十二江さん、やる気があるなら鍛えてあげる」

マリアちゃんが小さく呟く。

私に垂らされた蜘蛛の糸。そっと横を向くとマリアちゃんの意思の強い瞳が私を見据えていた。

「うん、生き抜くためにも」

生き抜く。そう、生き抜くのだ。ハッピーエンド、いや人生にエンドなんてないけどさ。

自分が生き抜き司波達也を救うため。

 

「そう、生き抜くのよ。貴女はこれからも司波達也が関係しうる事件に関わる義務があるわ。それが転生者がチートと引き換えに持つ使命よ」

 

もう一度息を飲んだ。

 

【転生者の使命】

 

この言葉によって私は、ライトノベル「魔法科高校の劣等生」に本当にかかわることとなる。

司波達也の先輩、七草真由美の親友と言うポジションの登場人物ではなく

世界を、身の回りの平穏を、友達の命を守るために奔走することとなる。

 

私は誰かの世界を守るのではなく、私と私の周りを守る。

それが出来るのが転生者なのだろう。

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