うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる:その2 作:madamu
「でもさ、記憶は上手く組み合ってるけど現実感がないよね」
司波雪光、一校の王子様は風紀委員室で頭を抱える相馬新に話かけていた。
現時点で風紀委員に名を連ねている転生者はカナデ一人である。
今は、風紀委員の各面々のスケジュールが合わず生徒会会長補佐の雪光が留守番をしておりその相手に相馬新がいた。
「なに悩んでいるの?いいじゃない、夜天さんは四葉の次期候補じゃないし、カナデは変わらずだし一夫多妻制でもすればいいじゃない」
半分本気、半分冗談と言った口調だ。
「奈波ちゃんと結婚離婚繰り返してた奴に言われたくない」
「あー言ってはいけないこと」
重蔵の言葉に棒読みで返す雪光。
雪光の前世では確かに七海奈波と二度結婚して二度離婚した。
大学時代に一度。好き合ったというより気が合った感じでの結婚だった。
だがお互い仕事をする中で生活リズムがズレ始め、一週間で20時間同じ空間にいれば良い方だった時もある。
そこで一回目の離婚。
40代でもう一度結婚。奈波の海洋調査への傾倒と、雪光の月面用機動車の製作による方向性の違いから二度目の離婚。
その後はたまに肉体関係を持つ男女友達の間柄となった。
七宝琢磨に「責任取れ!」と会うたびに言われていた。
「お前の方こそどうなんだよ」
「そう言われても…」
重蔵の言葉に立場が入れ替わる。
雪光は中年になるまで吹っ切れずにいた七草真由美と、今は恋愛関係と言える距離まで近づいた。
だが七海奈波との数十年の関係を考えると、雪光はなぜか真由美への最接近をためらっていた。
「俺の悩みわかるだろ」
「身に染みます」
重蔵の言葉に頷く雪光。
(どうしたもんか)
重蔵が悩むのは二人をどうするかである。
二人とも妻であり愛する人だが接し方を悩ませる。
カナデに対しては残して逝ってしまったことに負い目がある。
夜天こと霞については、彼女が死ぬまで不安にさせなかったか自信が無い。
正直言って両名に合わせる顔が無い。
先日の一堂に会した場でも、あまり会話が出来なかった。
(軍務じゃないからな~)
軍神の加護も一人の男の悩みには無力だ。
「そう言えばワタナベさんは?」
渋い顔をしながら無理にでも話題を変える雪光。
雪光も七草真由美と七海奈波から少し逃避したいのか、今一番現実的な話題を出してきた。
「昨日連絡来て保護した」
ため息の代わりに、昨日の出来事を伝えた。
既に周公瑾は日本政府の庇護下だ。
◆
一校から駅へ向かう大通りから一本外れた通りに甘味処の看板のある喫茶店がある。
「久々に食べる気がするわ」
「私もです」
「帰っていい?」
最初はカナデ、次に夜天、最後は清姫。
うきうきとした言葉に、落ち着いた返事、そして逃げ出したい声。
落ち着いた美少女に、白百合の様な美女、そして長身の麗人。
周りから見れば、その美しさ可憐さに距離を取りたくなるほどだ。
美しすぎるというのも、時には目の毒である。
「夜天さんもいきなり親類縁者が増えてびっくりしなかった?」
梁のある店内は喫茶店というよりは甘味処の名前の通り、大正レトロの風情がある。
奥の席に案内されながらカナデは夜天に質問する。
確かに光夜、雪光、竜也と四葉に後継者候補が一気に三人も増えた。
「意外とすんなり受け入れましたね。逆に母に対する記憶の方が混乱します」
冷徹な笑顔を讃えた母。分家との関係性を悪くしながらも、娘である夜天を守った母。それは病的な妄執と紙一重だった。
それがである。
「竜也、元気かしら」「光夜さんは学校に慣れているかしら」「達也さんにそのあたり上手く取り計らってくれるかしら」
身内のことを心配する美熟女となり、心配し始めると深夜や木庭優衣(光夜の母)が止めるまでアレコレと騒ぎ始める。
四葉の里は夜天の成長とともに大きく変革した。
大漢の忌み子への視線はきつかったが、夜天の能力と経験をもってすれば分家の「自称一流の戦闘魔法師」など子供同然。
心を病みかけていた母も竜也の出産とともに回復。
深夜も原作の様な極端な任務遂行もせず、四葉基準では幸せな家庭を築いていた。
光夜が10歳になるころには、発言力も強く木庭家も分家並みの発言力を有していた。
9歳になる光夜に分家の当主含めた10名がものの十秒で倒されたことがその要因だ。
「惰弱な」の言葉に心を折られた魔法師も多かった。
ちなみに司波龍郎は【円満な別居中】で達也が20歳になるタイミングで深夜と離婚を予定されている。
古葉小百合は司波家に顔を出し、エンジニアとしての達也に相談することが時折ある。
深雪には好かれていないが、それなりに幸せである。
雪光曰く「二度目の沖縄なんてバカンス」といった状況だったらしい。
なにせ、達也、竜也、光夜、雪光の揃いぶみだったからだ。
唯一変わらなかったのは分家からの不満を逃がす意味で行われた「仮想魔法領域実験」とその顛末だけだった。
さらにである、十師族のごく一部では七草弘一と四葉真夜の不倫関係というのは公然の事実となっている。
16年近く前の十師族会議の晩。一度の間違いは黒羽竜也こと四葉竜也をこの世の生み出した。
「嬉しくもなんともない」と竜也本人はクールな顔で言っていた。
夜天は事情は分からないが本当に嬉しくもなんともないのだろうと感じていた。
「高村マリアとは親友でしたね」
「そう、付き合いは長いわ。前の時は60年以上かしら。彼女の葬式にも出席したわ」
カナデの記憶では世界各地から弔問客やカチューシャが運営していた亡命者の教育機関の出身者など多くの人が溢れていた。
「昔は自信と勢いが形になったような性格だったけど、今は落ち着いてるわね」
30代の時に「新ソ連の奴らに煮え湯を飲ませてやる!」と言って日本とUSNAとインドを往復していたのは今は懐かしい。
その時にリーナと出会って「カチューシャは精密な運行をする暴走機関車」ということで見解が一致した。
本人は「あんたたちの旦那と比較すればまとも」と言っていたのが懐かしい。
カナデと夜天はそれぞれ、黒蜜豆の白玉、白玉とわらび餅の黒砂糖まぶしを頼んだ。
清姫は「胃が痛い」と言って、緑茶だけ。
二人の頼んだ甘味が届くとカナデは前置きもなく話し始めた。
「正直、あの人との結婚はいつ頃できそう?」
その言葉にさらりと夜天は返す。
「そうですね。重蔵さんの任務が一段落つけば」
「早ければ2年進級時か」
そのやりとりを不安な顔で聞いていた清姫が間に入った。
「ちょっと待って」
マリアと夜天のやり取りから、この二人にも埋めることが不可能な溝があると思っていたがここまでの会話は和やかとまではいかないが、世間話が出来る程度の仲と思えてくる。
そんな清姫の考えを感じ取ったカナデが答える。
「別段敵対的なわけじゃないの。私はあの人の妻だけど、夜天さんの年齢を考えれば先に結婚するなら夜天さんよ」
「それは前世の結婚からくる余裕ですか」
ちょっと棘のある夜天の言葉。
「純粋な算数よ」
夜天はわらび餅を一つ食べ、口元をナプキンで拭う。
「私は前の時は2年も満たぬ間の夫婦でした。先に死んでしまって、あの人の人生に無駄な時間を作ってしまったかもしれませんね」
それは懺悔も反省でもない。自分の感情を含めた事実を述べた。
カナデも口元をナプキンで拭うと少しだけ寂しい微笑みをした。
「私は逆。先に死なれて抜け殻だった。カチューシャには助けられた。居なかったら不味いことになっていたかも」
その言葉に清姫はマリアのこと言葉を思いだす。
愛する人を残してしまった妻と、愛する人に残された妻。
同一の人を愛するが、立場は全く逆。
そんな二人なのだ。
1人の男を取り合う。いやそうではない。1人の男の人生に最後まで寄り添うことが出来なかった二人なのだ。
「夜天さんは根本的には別に結婚制度とかどうでもいいでしょ。あの人のそばにいられれば」
そう言うとカナデはお茶をすする。
「そうですね。あの人と一緒に生活を営めればそれだけでいいです」
夜天もお茶をすする。同意。
「じゃあ、戦略目標は一緒ね」
湯呑を置き、白玉に手を付けるカナデ。
清姫はその意味を把握しきれずにいた。男女の感情、それも特殊な運命を背負った二人にしかわからない感情に戸惑っていた。
「一緒?」
夜天とカナデの視線が絡む。
「自分が死なないように、そしてあの人を死なせないように」
カナデの言葉に夜天がうなずく。
清姫には茶飲み話で彼女たちの人生の目標が明確化されているのがわかった。
この二人には言葉少なに行っている同盟成立の瞬間なのだ。
愛する男と添い遂げることを目標に。
「私が独占欲にかられる可能性は?」
「別にそれでもいいけど、きっとあの人独占欲の強い女のあしらい方知ってると思う」
夜天のジャブにカナデのカウンター、いや自分の夫の女性の扱いを説明した。
夜天も声を出さず軽く笑い、小さくうなずく。
「わかりました。では最初は私が結婚を。子供も先で?」
夜天は30代半ばに差し掛かる。いくら医療技術が発展しても出産、つまりは新しい命を生み出すのは命懸けだ。
夜天の母、真夜が深夜の「精神構造干渉」の魔法がかけられなかったのは憐憫だけでなく
胎内にいた夜天の存在が魔法の正常な動作をゆがめる可能性があったからだ。
一つの身体に二つの命。出産とは奇跡なのだ。
「ええOK。だたし一つ条件が」
カナデが声を一つ落とす。
「なんでしょうか」
その真剣な声に夜天も改めて居住まいを正す。
「子供の名前。男の子が生まれてもアラタとはつけないで」
寂しくはあるが決意に満ちた言葉。
夜天は一度息を飲み、「わかりました」と呟くように了承する。
カナデはその了承対して、条件の理由を述べた。
「あの子は前世だけにとどめておきたいの」
神の都合で生き直す苦労は子供には背負わせたくない。
それがカナデの母親としての想いだった。
◆
「光井さん」
「ほのか」
黒羽竜也は血縁や友人らが言う"光井ほのかにしか見せない笑顔"を光井ほのかに見せていた。
横には北山雫がブロックするように座っている。
北山雫の認識では黒羽竜也は確実に下心を持って光井ほのかに接している。
気づいていないのはほのかだけだ。
GW後から始まった「黒羽竜也勉強塾」
ロボ研の見える喫茶室ででは週に一度、一年一科生の同率首席の黒羽竜也が自習をしておりその場に勉強を教わりたい生徒が自然と集まっていた。
その中には優等生の光井ほのかと北山雫も参加していた。
一年生は粒ぞろいどころではなかった。
タレントが圧倒的に多い。以下総合成績順である。
「完璧」四葉光夜/「当代第一」黒羽竜也
「一校の王子様」司波雪光/「氷雪の美少女」司波深雪/「才媛麗人」藤林奏
「光彩妖精」光井ほのか
「音子使い」北山雫
「クイック・ドロウ」森崎駿
「国立魔法大学付属第一高校初代恋愛博士」須田渉
~~学校の評価基準の壁~~
「天才エンジニア」司波達也/「神道魔法の麒麟児」吉田幹比古/「超理論」久慈灘幽玄
「水晶眼の少女」柴田美月
「魔狼の末裔」狼谷一樹
「千葉の娘」千葉エリカ/「二科のマスコット」ミシェル・フィリオ
「鉄壁要塞」西城レオンハルト
~~超えられない壁~~
「クレイジー・デンジャラス・ビューティ・スタンピード・オブ・バイオレンス」アーデル・フォン・羅門
「だから~、なんで放出系のところに振動系が入るんだよ!」
「文字数が同じ」
「文字数で判断しない!」
喫茶室の奥、定位置では森崎を囲むようにアーデル・フォン・羅門と狼谷一樹、千葉エリカ、ミシェル・フィリオ、西城レオンハルトが座っている。
怒られているのは羅門である。
「なー、この文法おかしくないか?」
レオはタブレットに表記された英文に苦しんでいた。
「おかしくない、THAT構文については翻訳機に別項で記載があるから読め。エリカ、そこはベルヌ条約だ」
「えー魔法に著作権あるのおかしくな~い」
エリカは倫理の科目で出ていた「著作権」について、誤った記載をしている。
「2011年に最高裁で判決出て、判例を元に2020年に著作権法に追加された」
「えーでもー」
森崎の指摘に不満の声。
「百家の魔法の中には特許以外に著作権で特例的に保護されてるモノもあるの!特に!千葉の剣術の伝書は著作権法における特例条項により保護期間が2120年まで延長されてるだろ!」
「えっ、そうなの」
森崎からの指摘で千葉の名前が出た。少し冷や汗を流すエリカ。
「お前、スクワット30回な」
厳しい視線を飛ばす森崎は、ペナルティを告げた。エリカはテーブルから少し離れてスクワットを始める。
周りの生徒からはくすくすと笑い声が漏れる。
「モーリー!出来た!」
「うー、計算式が違う!検算!」
ミシェルが元気よく、計算式を書かれたタブレットを見せると、森崎は数秒タブレットを見て次の指示を飛ばす。
「はーい(^O^)/」
ミシェルは元気よく返事。
「なあ、ココア頼んでいいか?」
「人数分だ。ココア来るまでに1問解け」
脳にカロリーを送るべくココアを所望した狼谷に森崎は人数分の注文を促す。
賑やかな中で、転生者たちの情報端末に通知が来る。
送信者は【相馬新】
本文は無く件名だけ。
【周さんとのお茶会のお誘い】
話進まないな~