うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる:その2 作:madamu
学校から少しだけ離れた喫茶店。
学内で出来ない話をするにはもってこいの場所である。
「私が生徒会会長選に立候補ですか」
中条あずさの声には驚きと心配がない交ぜになっていた。
正面の席には司波達也と司波深雪が座っている。
「現在の一科、二科の融和策を推進するには七草会長の薫陶を受けた中条先輩が最もふさわしいと思います」
黒髪の美少女、司波深雪の言葉は事実だ。
司波深雪は多少、若干、それなり、おおいに、兄への想いが強い少女ではあるが人間の善性については正直に評価する面もある。
だが中条あずさが生徒会の会長職に推されているのはそれだけではなかった。
「こういった評価をするのは大変失礼かとは思うのですが、中条先輩だけが四葉光夜を抑えることが唯一出来ます。その手腕を頼らせていただけないでしょうか」
司波達也の言葉は、言葉通り大変申し訳ないと言った口調であった。
感情が希薄な人間の出来る最大限の感情表現でもあった。
四葉光夜は事実上校内の支配者であった。
高圧さは無いものの、七草真由美以上の華、十文字克人を超える威厳、渡辺摩利を凌駕する人心掌握。
すでにその知性、実績とも校内のNO.1である。
だが唯一にして、その四葉光夜が「懐いている」人物が中条あずさなのだ。
部活連の次期会頭が内定している服部は即座に「四葉光夜」用の窓口担当執行部員を作り(これは森崎駿と須田渉が指名される可能性が圧倒的に高い)、10月からの体制を着実に作り上げていた。
「あずささん、お昼どうですか」「俺から業者に連絡します」「あずささんはお弁当作ったりしないんですか」
時折四葉光夜から質問攻めにあうが、中条あずさとしてはあまり悪い気はしなかった。
多少なりとも恋の予感もしており、なんとも甘酸っぱい高校生活を楽しんでいた。
ふと光夜の顔が近づくと「睫毛長いな~」と的外れな感想も出て来る。
「ですけど、私は人をまとめたりするのが、得意ではないですし」
弱々しげに、どちらかというと自分の気の弱さを卑下するような返事だった。
ちょうどその時、喫茶店のドアについたカウベルがガラガラと鳴る。
ふとその方向を横目で見た司波深雪には、森崎駿、千葉エリカ、西城レオンハルト、吉田幹比古、柴田美月、桐原武明、壬生沙耶香の7人である。
「なんだ中条、司波兄とデートか」
桐原のちょっとしたジョークは、司波深雪による空調効果を一段と強くした。桐原君、と壬生沙耶香が名前を呼びながら肘で脇腹を突く。
「生徒会選挙に向けての説得ですよ」
司波達也が妹の肩に手を置き、落ち着かせながら状況を一言で説明した。
7人は達也達のすぐ近くにある大きめのラウンドテーブルに着席し、説得に参加した。
参加と言うよりも、世間話の方が比重が大きい。
「私は入試が良かったので生徒会に所属しましたが、あまりその、人に対して、アレコレを言うのは得意ではないんです」
早口で少し俯きながら中条あずさは告げた。
「中条先輩。光夜の学内での評価って知ってます?」
意地悪なような、少しだけ中条あずさを責めるような口調で千葉エリカは問うた。
エリカからしてみたら、中条あずさによる本人評が的外れであることが、少し苛立しいところがある。
「え、光夜君ですか」
「そう、その光夜」
「えっと、入試主席で九校戦の優勝の立役者で、文武両道の優等生、ですか」
キツめなエリカの声に少し怯えて応える。
「違うのよ、中条さん」
ため息が交じりそうな、口調で説明を始めたのは壬生沙耶香である。
「四葉君は部活連の武道系、運動系の部活の勧誘に対して自分を負かしたら入部する条件を出したわ。そして彼はどの部活にも入ること無く生徒会に参加している」
補足をしたのは桐原である。
「言っとくが手を抜いたわけじゃない。どの部活も本気だった。木部主将や沢木といった実力者も10秒と持たなかった」
「それだけじゃないの、四葉君の論文はインデックス入りが確定しているらしいの」
壬生沙耶香の言葉にウンウンと頷くのは森崎だった。
彼は四葉光夜の部活の相棒として行動を共にすることが多いが、四葉光夜の才能が「魔法行使」だけでは無く「魔法創作」にも長けていることを知っていた。
「光夜と達也と竜也と幽玄の魔法理論の話とか、ありゃ異次元だよな~。俺100年勉強しても理解できないかも」
「そこには同意するよ。四次元相違については立ち話でするようなレベルじゃない」
レオのぼやきに同意する幹比古。
一科二科含めても1年生では最優の1人である幹比古が理解出来ないほどの最先端理論を立ち話する4人は、やはり高校生のレベルにはいない。
「使われる単語の定義が長いだけで、要点さえ掴めば幹比古でも立ち話が出来るさ」
「俺には無理ってことか」
達也のフォローに反応したのは幹比古では無く、レオだった。
トホホと肩を落とすレオの背中をバンバン叩きエリカは「あんたの学力だとね、ははは」と笑う。
森崎はジト目でエリカを見て「お前の方が数学成績悪いだろ」と呟いた。
「四次元相違ですか」
中条あずさは息を呑んだ。
端的に言えばワームホールやワープホールという空間圧縮に関する超難問だ。
20年前に新ソ連の魔法研究の主たる課題で、もしその技術が確立されていれば、世界の地図は変わっただろう。
「四葉君は一人孤独の丘にいる王子様よ。その人が学校内を動き回る。凡才程度じゃその佇まいで自信を無くすのよ」
まるで、その凡才は自分だと言わんばかり壬生沙耶香の言葉に中条あずさは再び息を呑む。
自虐するような淀んだ目を一瞬見せた壬生紗耶香に司波深雪も小さいながら共感した。
司波深雪から見ても、数カ月違いの兄達はその能力は群を抜いている。
いや双子の雪光や夜天の存在も考えれば、優等生と称えられる自分自身を非才の一人と思ってしまうほどだ。
竜也は幼い頃から、四葉の闇として暗躍し既に当主代理とも言える発言力を有している。その能力は達也に匹敵する破壊力と共に、深雪を凌駕する魔法師としての才能。誰もその立場に疑問を挟めない。
光夜も実戦魔法師としてはどの分家の魔法師よりも優秀だ。沖縄防衛の際には、その魔法で敵の軍艦を中空に浮かせ、上下逆さまにしていた。一族内、いや存命の魔法師では唯一竜也を凌ぐ天才なのだ。
雪光もその実力は劣るところが無い。トーラス・シルバーのオフィシャルパーツブランド「スノーセブン」を設立し、CADの世界にも多大な影響力を持ち、また魔装大隊にも達也とともに「桐ヶ谷和人」特尉として参加している。
夜天の実力は、深雪は直接見たことが無いが伝え聞くところによると「肉体そのものを支配する」力とのことで、四葉の精神干渉魔法とも全く違う魔技とされている。竜也が今の地位に就く前は、血筋さえ問題なければ次の女帝として君臨するはずだった。
一族の若年者の中では最も落ち着き、大人びた光夜は本当に別格の一人だ。
学内で「氷雪姫」と異名を持つ深雪ですら、光夜の存在には数歩及ばない。
「そんな四葉君を、普通に扱える貴女は全校生徒に頼られてるわ」
落ち着いた、それでいて突き放すような複雑な感情で壬生紗耶香は中条あずさに、自分自身の重要性を説いた。
「中条、俺からも頼む。一科二科の問題、四葉の問題、それを解決なしえるのは一校だけでもお前だけだ」
桐原の言葉に司波深雪も続く。
「公約はただ一つでいいんです。一科二科の融和も一度棚上げにしてもいいんです。【四葉光夜の面倒を見る】それを公約すれば、みんなが安心します」
そう言われた中条あずさは少し身を固くして考えてしまう。
その中で中条あずさ攻略の糸口を提示したのは森崎だった。
「会長選立候補したら、年末のCADコンペのビジネスデイに招待しますよ」
日本国内のCADメーカーの来年度を占うのが年末の「CADコンペ」だ。
俯いた中条あずさは恐るべき速さで、森崎の方を見る。
森崎としてはCADマニアとして有名な中条への効果のない餌として言ったに過ぎない。
だがその中条あずさの反応を見て司波達也が決定的な一言を告げる。
「中条先輩、トーラスシルバーのプレモデル興味ありませんか?」
5分後、中条あずさは会長選への出馬を決めた。
◆
「ハックシュン」
光夜は珍しく声を上げてくしゃみをした。
傍にいた竜也が心配する。
「風邪か」
「いや、あずささんが俺の噂をした」
断言。一校に入学して以来、光夜の話す内容の半分は中条あずさのことだ。
内心で竜也は光夜が中条家への婿入りを狙っているのではないかと疑っている。
(お前が中条家に行ったら、俺が光井家に婿養子に行き難いではないか)
黒羽竜也こと四葉竜也は当主の座を達也か光夜、または雪光、深雪あたりに押し付けようと画策していた。
珍しく原作キャラ同士の会話がメイン回