うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる:その2   作:madamu

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ウィスキー。ダブル。ロックで

「周公瑾か」

久慈灘は協力者としての周公瑾に初めて会ったようで、少し胡散臭げに見ていた。

 

レストランからうって変わって今度は夜の新宿。中華飯店の一室だ。

高層階の店の窓から眼下に広がるのは新宿の街並み。

歌舞伎町周辺は100年前から変わらずの繁華街だ。客引き、風俗店も変わらずで、LEDの照らし出す路上の光景は映画のようであり、2095年の今でも「近未来」と言う単語を思い起こさせる。

雨が降ってはいないのでブレードランナーっぽくはない。あの映画は見ていないが。

 

円卓に座る周公瑾と言われる長髪の美青年。白磁の肌に流れる黒髪。優しく微笑んだ顔は刀剣男子っぽい。

萬の家に何本かの日本刀があるが残念ながら顕現はしていなかった。

 

部屋の中には5人、周公瑾に相馬、黒羽、久慈灘、そして俺、萬真人だ。

 

「今回はどんなもんですか?」

相馬の口調は世間話だ。緊張のひとかけらもない。

この男、相馬新だか関重蔵だかと言う男は心底信用できない。

諜報員であり、転生者であり、俺の睨みだと殺し屋だ。それも生死観が崩れている。

修羅場はいくつも経験したのだろう。

何と言うか、この「魔法科高校の劣等生」と言う世界でも異質なのだ。

四葉達や羅門達とも違うもっと深くてドロドロしておぞましく、暗い。そんな感じを俺は相馬新に見ている。

 

俺の印象を補強する証拠はこいつの隙だ。

恐ろしいことにこいつと学内で会うと動作の先が読める。

その読みと動作が異様に一致する。

武道家がどんな読み鋭くとも歩幅や体の向きまで読むことはできない。それが一致する。

まるで俺の「読むこと」が操られているようだ。

 

「いや~、【影の中の男】でしたっけ?会うことは無かったんですが、どうやら国内に数十人規模でパラサイト?を持ち込んだみたいです」

数十という言葉に一瞬だけ緊張が部屋を充満する。緊張と言うより「予想外」といった方が正しいか。

周は困った顔をして頭をかく。この人の責任じゃないが伝える人間としては、なんともなしに責任を感じてしまう。

ただ周の困った顔もすぐ収まり真剣な表情に変わる。

「一つ不思議なことが。密輸業者の紹介を求められました」

「具体的に」

久慈灘は短く話を促す。

 

「色々です。薬物、武器、動物、美術品。どうも目をくらます意図もあったのでしょう。手広く接触しました」

群発戦争後、人や物の国家間の流入は簡単ではなくなった。

海外からの輸入品には21世紀初頭に比べるとべらぼうな関税がかかり、日米安全保障など既に過去の遺物だ。

 

「あとはUSNA関係は?」

相馬が目の前の揚げ団子をつまみながら話を進める。

「そうですね、アジア系で流ちょうな英語をしゃべる男が二人。影の中の男の使者とか言っていましたね。態度を考えるにUSNAの関係者、それもCIA系の人物でしょう」

頭を抱えたくなった。

CIA。まるで映画だ。

映画の敵役で不動の1位。CIA。

正しくは中央情報局ではなく「Continent Intelligence Agency」となる。

北米大陸はすでに一つに統一され、アルファベットの意味も少し変わった。

 

「つまりは影の中の男は大漢だけではなくUSNAも取り込んだと」

久慈灘は腕を組み神妙な顔付きになる。

「正確には親大陸で反日本かつ強硬路線な情報系軍事組織とみるといいでしょう」

「つまりはタカ派か」

周の言葉に頷きまとめる久慈灘。

 

「国防系シンクタンクの一つ。太平洋地域情報分析センターというのがある。旧CIAの東アジア調査室が母体だったが、日本が魔法技術によって世界の軍事大国になったことで反日本閥が寄せ集まった集団だ。色々派閥の集合体なこともあり、人脈だけは広い」

黒羽が妙に詳しく説明してくる。

こいつの情報網はどれだけ広いのだ。

「そこだと?」

俺の言葉に肩をすくめる黒羽。

何ともなしにアメリカ人っぽい。司波達也の外見でアメリカ人風。声が中村悠一ならキャプテン・アメリカだな。

「もういくつかあるが、さっと思いつくのはここです」

 

「あそこは実戦部隊はいないだろう。軍がCIA系からの直の命令で動くとは思え・・・そうかパラサイトを増殖すれば一気に実戦部隊が手に入るか」

相馬の指摘しつつ、敵がパラサイトを持つことによる利点を説明した。

増殖する憑依情報体。情報体を確保するだけ、無辜の市民に憑依させ操ることが可能だ。

戦闘能力だけで言えば対人戦は下手な魔法師よりも高い。と言うか大半の魔法師より強い。

 

「在日米国市民の多い横浜で大規模騒乱。日本の治安維持が期待できない状態になれば、USNAから軍事的介入、とはいかなくても第七艦隊の派遣は即時で議会承認されるでしょう」

「そして、横浜沖から艦砲射撃」

相馬は俺に簡単に説明し、想定される一つの予想を黒羽が口にする。

 

「僕らはみんな~生きている~♪」

相馬が裏声で一小節歌う。本人的には玉川紗貴子の物まねのようだ。口元がにやけている。

攻殻機動隊のセカンドギグの米帝ミサイル発射にかけての歌だろう。

「セカンドギグより笑い男編の方が好きだ」

それに気づいて俺が話題を拾う。

 

「押井信者はいないだろうな」

久慈灘が苦い顔がでそれぞれの顔を見る。

「なんだ親を押井信者に殺されたか」

黒羽は興味なさそうに答える。

「スカイ・クロラに無駄金出した」

久慈灘はさらに苦い顔。

「いやー、スカイ・クロラについては押井信者でも擁護できる部分と出来ない部分が」

「海外ロケやったのアバロンだっけか」

周と相馬が少しだけ会話ずらす。

 

数秒の沈黙。

 

「パラサイトを尖兵に大亜連を呼び込み、USNAによる軍事的圧力をかける」

黒羽が敵の、いや影の中の男のスポンサーの動向を看破し

「群発戦争以上とはならないが、それでも万単位の死者の可能性はある」

久慈灘の捕捉する。両者とも声に苦いものがある。

 

「抑え込むにはパラサイトと大亜連の潜入部隊を潰すこと。出来れば論文コンペ前に」

「または論文コンペ当日に完膚なきまでに日本の魔法師で敵対勢力を黙らせる」

俺の提案に、黒羽が別の案を出す。

奴が言ったのは敵への牽制を含めた案。被害を出す可能性も高い案。

 

一瞬、俺と黒羽の視線が交わる。

 

◆

 

高層階から離れてビルの外に出ると、小雨が降っていた。

相馬は電話が来たらしく周とまだ部屋に残っている。黒羽はさっさと通りの向こうへ歩いて行った。

大通りでもなく、ビルと飲食店の人一人分の小さな通り、汚れて狭くて誰も通らない。

そこに滑り込んでいったと思うと数秒と立たず消えていた。

相馬も酷いが、黒羽の動向の気に食わない。

黒羽は、相馬と四葉光夜だけが「対等である」と態度で示している。

二周目だが何だが知らないが、裏番をはじめとした二科生を軽んじている様にも見える。

 

「先輩、別の店で飲み直しませんか」

「俺は高校生だ」

久慈灘が店を出てすぐに外で声をかけて来る。

多少のストレスのある会談だったので、憂さ晴らしの一つもしたいのだろう。

切れ長の目には先ほどの気難しさは無く、インテリ感あふれる美青年だ。

 

「高校生でも酒を出す店を知ってますよ」

「家が警察関係だ。勘弁してくれ」

「違法酒場なので大丈夫ですよ」

何が大丈夫なんだ。

 

10分後。

「よう」

「なんだ、来てたか」

狼谷が先に店にいた。

日頃の野性的な制服の着こなしとは全く違うスーツ姿だ。

新進の企業家と言っても通じるだろう。

「不良決定戦」などやっていたのでもう少し幼いかと思ったら、こちらの方が狼谷の本質なのだろうか。

 

新宿の具体的な場所は言えないが、西武新宿駅のあった公園から徒歩で4分ほど。

マンションの一室。中に入るとカウンターしかないバーだった。

室内は木製品が多く、なんとも落ち着く。

 

「どうやってここを知ったんだ」

俺の質問に狼谷、久慈灘はニヤッと笑う。

「そりゃ、俺たちの中で一番の悪党に昔教えてもらったんですよ」

「”違法”に関してはあの人が一番でね」

ああ、相馬か。

 

工作員、兵士の次に悪党ね。

 

「ウィスキー。ダブル。ロックで」

「銘柄は如何しましょう」

「適当に」

バーテンダーに流れるように注文をする久慈灘はカウンターで狼谷の左、つまりは俺の右にいる。

「先輩はどうします?」

狼谷は少し俺を試す様に聞いてくる。

違法な、いや二周目の大人たちに対しての態度を見ている様だ。

 

「キャプテン・モルガン、そにあるプライベートで」

「飲み方は」とバーテン。

「ショットに」

前の時によく飲んだ銘柄があって一応体裁を整えられた気がする。

 

「乾杯は何にする?」

「黒羽死ね」

狼谷の言葉に、久慈灘はわざと渋い顔を作り答える。

 

そこから久慈灘はバーテンダーにわからぬ隠語を使って狼谷に会談の中味を伝えた。

時折、黒羽や四葉光夜の話題を混ぜながら。

久慈灘はどうやら向こうの面々に強い対抗心がある。

 

久慈灘は一通り話すと手洗いへと立つ。

狼谷は一席空いた俺を見て来る。

「アイツ、前の人生で七草会長と半年間付き合ってたんですよ。七草会長の卒業とアイツの周辺環境が変わって別れましたけど」

さらっと爆弾を言って来た。

「じゃあ、未練でも」

狼谷は首を横にふる。若い高校生と言うより中年男性の様な重みを感じる。

「その後は一切男女の関係にはなってないですよ。60年間。茶飲み友達から先には踏み込まずね」

手元のウィスキーグラスを一気に煽る。

俺も残ったショットグラスのラムを飲む。

「俺はアイツの友達として雪光が七草会長をタラシこんでるのが嫌なんですよ」

指を鳴らしバーテンダーにもう一杯を求める狼谷。

俺も視線で同じものを注文する。

店のドアが開く音。違法な店でも客足は絶えないようだ。

 

「止めろ。無駄な話で、ここの七草真由美は俺の知ってる彼女じゃない」

戻ってきた久慈灘がつまらなそうに告げて席につく。

席に着き、今度は「スコッチ。適当で」と注文。

「ハードボイルドだな」

「たんなる天の邪鬼だよ」

俺の言葉に少しだけ微笑んで答える。

 

「別に雪光を弁護するわけじゃ……あんまり弁解する要素は無さそうね。中年まで初恋症状抜けなかっただけだし」

店に入ってきたのは彼女だ。

藤林奏。黒のイブニングスーツ。女子高生とは思えないほどの大人っぽさ。

短い黒髪と、美しい瞳。男装の麗人の凛々しさとは違う柔らかい美しさが潜んでいる。

 

彼女の耳には先ほどの話が少し聞こえていたのだろう。

慣れた様子で俺たちの後ろを通り抜け奥のカウンター席で「サイドカー」と告げる。

カクテルの名前だ。

 

俺は藤林を無視して二人の男子高校生に話をつづける。

「お前達はあっちの面々と違って十師族関係には巻き込まれなかったのか」

久慈灘と狼谷は顔を見合わせて笑う。

「こいつとフィリオはがっつりと。敵対してたしな」

「俺は自分の部下守っただけだ」

狼谷が久慈灘を指さすと、少し声を出し思い出が浮かんだのだろう。

 

「むこうはどうだか知りませんが、こっちは高校卒業してからが本番でしたよ」

そう言うと久慈灘は狼谷ともう一度顔を合わせて笑う。

どれだけの事件があったのだろう。二人の笑い方はただ楽しいというより、悪戯を思い出すような笑いでもあった。

一歳年下の男の子、と言うには何ともシニカルかつ思い出深い笑顔だ。

「全部、四葉と九島が悪かったがな」

狼谷の言葉に反応したのは奥の藤林だった。

「どう悪かったのよ」

怒りではなく、単純な好奇心のようで声は軽かった。

「光宣によるパラサイトの召喚。国内の外法使いの扇動。淡路島が一時的にノーマンズランド(無法地帯)にする」

狼谷は指折り数えて3つめで止めた。

それを聞いて藤林は頭を抱える。

「それだけ?」

「止めといた方がいい。光宣をぶん殴りたくなる」

久慈灘がグラスを挙げて合図をする。

 

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