うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる:その2   作:madamu

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それを言ったら戦争だろうが!

十文字克人の下校は一般生徒と変わらない。

十師族だからと言って車両での送り迎えは行っておらず、本人もその点については異議はない。

 

部活連は事実上服部刑部に会頭の座を引き継がれた。

あとは学校側への申請と関係各所の承認を得れば晴れて服部会頭の誕生である。

その打ち合わせもあり、下校は遅れた。少しだけ空は夜寄りだ。

 

同級生の女子(主に十二江)から「筋肉モリモリのマッチョマン」と言われる通り

十文字克人は質量が詰まった肉体を持っていた。

元々筋肉の付きやすい体質だったのもあるが、戦場に立つことを求められる魔法師、特に十師族の頭領の一人としては

魔法だけでなく、肉体でも優等である必要性を感じていた。

人を鼓舞し、先頭に立つべき必要な能力。

 

校門を出て少し坂を下るとまばらに歩く生徒たちの背中が見える。

みな部活や研究で下校が遅れた生徒たちだ。

 

「pai、ご飯行きたい」

後ろから声かけてきたのはよく聞く声だ。

身長は一校女子でも一番大きいだろう。

十文字が比較対象として思いついた司波達也と同じか、少しこちらの女子の方が背が高いか。

振り返ると、長身の女子の顔を見て一つ息を吐く。

「なぜいつも俺なんだ」

「おっさん顔だからじゃない」

長身の女子の隣にいる七草真由美より小柄な一年女子がぶっきら棒に言った。

 

「ふけ顔だと食事を共にしなければいけない理由でもあるのか、羅門」

「金持ってんだろ、おごってよ」

明け透け、というよりは露骨、直球な物言い。好かれる人間には好かれるが、嫌う人間には徹底的に嫌われる。

十文字克人はそれを嫌う人種でもある。

眉間にしわを寄せ、この顔つきの厳しい女子生徒と、天真爛漫を体現する長身女子に改めて一言言ってやろうと思ったときに三人目の女子が現れた。

 

正しくは自家用車で乗り付け、後部座席のドアを開けた瞬間だ。

 

「理由は一つ。貴方が十文字家の人間だからです」

「藤林」

(話の通じる奴が来たな)それが偽らざる十文字の気持であった。

藤林家の車は昨今の丸い小型モビリティーとは違う、数名の人間が対面で座れるリムジンタイプの高級車輌だ。

運転席と助手席には運転手と護衛と思われる女性と男性がいる。

 

「十文字先輩、どうぞ。ご自宅までお送りしながらたかられる理由を教えますよ」

藤林奏での言葉に一瞬思案をしたが「下手な考え休むに似たり」という言葉が浮かび十文字は「邪魔するぞ」と言って車両に乗り込み、その後にアーデルとミシェルも乗り込んだ。

 

「そこに飲み物はいってるから好きにね。お菓子が少し入ってるけど食べる?」

藤林の言葉にうなずきながら、ミシェルは備え付けの冷蔵庫から飲み物と食べ物を漁り、アーデルは少し欠伸をし「紅茶取って」とミシェルにリクエストを伝える。

 

説明の始まらない状況に、十文字は腕を組み渋い顔をした。

 

「先輩、可愛い後輩女子に囲まれて帰れるんだから喜んでください」

「自分で可愛いと言うか」

「客観的評価を当人が言葉にしているだけです」

余裕の微笑みの藤林奏に憮然と返すが、さらに返される。

 

「pai、女子の見る目なさそう」とウシシシと楽しそうに笑うミシェル・フィリオ。

「何を言う、美的感覚に関しては一般人並だ。それでなぜ十文字家が理由になる」

言い訳のように答えつつ理由に迫る。

 

藤林奏では手元にグラスを持ち炭酸飲料を入れ、一口飲む。

表情は変わらず、緊張などは見受けられない。

「大亜連、USNAの軍内の一部による日本侵攻作戦が画策されています。それに関係して、十師族の人間、特に人質になりうる若年者に警備がつくようになります」

十文字克人一人が息を飲んだ。

すぐ傍ではミシェルが「きのこ派?たけのこ派?どっちの方が美味しいかな」とアーデルにどのお菓子を食べるか聞いている。

 

「それをお前たちが担っていると」

「それを言ったら戦争だろうが!」

十文字克人とアーデル・フォン・羅門の声が被る。

 

気まずい沈黙。

 

藤林奏が咳払いを一つ。

「私は、たけのこ派。先輩、別に我々は誰かに頼まれて動いているわけじゃないんです。七草前会長には雪光と達也がついています」

「俺は守られるほど弱いというのか」

腕を組み憮然とした表情の十文字克人に対して他の3名は、そんな十文字の態度を意に介さない。

「実戦経験ないでしょ。私ならそこらの魔法師なら3秒で殺せる」

口にお菓子を入れてアーデルが勝手に答える。

「アディはホント、物騒。なのでpaiが実家に警備要員を出さないのなら後輩が警備しようと」

「明朝には国防軍から護衛が出されると思います」

ミシェルも口にお菓子を放り込み屈託なく笑う。カナデはすました顔でもう一度ドリンクを飲む。

1人納得のいかない十文字克人は、三人の顔をじっと見る。

「藤林、お前は、お前たちはどこまで状況を把握している。その情報源はなんだ」

 

十文字からの質問への答えは簡単だった。

「私とアディは人狼事件で知り合った公安関係者から、カナデは家関係。一番は四葉家の情報網に噛んでいるから~」

ミシェル・フィリオは極力ありそうな嘘をついた。流石に転生者による事前知識によるものとは言えない。

ただ四葉家からの情報というのは正しい。

四葉夜天を頂点とした四葉の情報部隊の優秀さは国家レベルの諜報機関とほぼ同レベルだ。

そこに関重蔵からの国防関係の情報、どこからか持ってくる黒羽竜也の情報、獅子王院楠葉の古式周りの情報、フィリオの地脈調査によるサイオン分布の異変。

転生者による調査は、この島国の諜報機関以上の情報収集を可能にしている。

 

「そういうことです。十文字先輩、年齢らしく守られてみては」

藤林奏は落ち着いて諭すように十文字克人に言う。

 

「だが藤林、本来魔法師とはこういった戦争へ繋がる事態での活動を期待され、実際に期待に応えている。その中で、俺が十文字家次期当主たる責務を持つ俺が守られるというのは本末転倒だ。俺は戦いの場に立つべきなのだ」

諭す藤林奏に反論ではなく正論をぶつける十文字は腕組みを解き、説得力のある顔で藤林を見る。

 

「お前たち1年の行動は、決して褒められたものではない。藤林、お前は九島の縁者として求められる役目があるだろう。だがその役目は年長者である我々3年生が担うべきだ。藤林、四葉光夜との会談の席をセッティングしてもらいたい」

十文字克人は事の中心に四葉がいると考え、その窓口になり得る四葉光夜との会談を藤林奏に求めた。

願いではなく、宣言に近い物言いだった。

学校の将来を担う1年生ではなく、卒業を控え学校から飛び立つ3年の仕事だと。

 

藤林奏はこの年長の子供の「リーダーごっこ」に嘆息する。

たかが十師族の次期頭領が動いたところで、指揮権や方針決定の権限が十文字克人の元に集約されることはないし発言権も付与されない。

(家の実力も本人の実力としておいてあげたいけど)

組織を動かすには金がかかる。

特に民間人である十師族が国防、公安などに働きかけるにはそれなりの寄付が必要となる。

その「金」については十文字家の資産ではこの規模の事件では足りない。

 

勿論首都防衛のお題目を言えば、国防軍も動くがそれは「建前」で押しているだけで実利が無いと動かない者たちからすれば「鬱陶しい正論だけで働かそうという正義の味方気取り」とみられる。

人を動かすには「建前」と「実利」が必要で十文字克人には後者を提示するだけのものがない。

 

「壁しか出せないくせに偉そうに」

アーデル・フォン・羅門は吐き捨てるようにつぶやく。

十文字はその言葉で身動きが止まる。

ファランクスを主体とした強力な戦闘者ではあるが事実それだけである。

 

「組織を動かすには億単位の金が必要。出せないでしょ。それなら小銭使って後輩に飯をおごれよ」

アーデルの脳裏には十文字克人の子供の乳母として苦労したミシェルと、何かにつけては「十師族の役目」しか言わない「頑固」な当主としての十文字の顔が浮かんでいた。

「あんたね、十文字家とか十師族とかお題目言うけど役立ってないよ。大金使う決定権ないでしょ。先輩だかファランクス使いだか知らないけど、5秒あれば殺せるよ」

「アディ!」

 

責めるようなアーデルに対して名前で強くいさめたのはミシェルだった。

この二人の前世、つまりは以前の世界では「十文字閥」の人間だ。

特にミシェルは十文字克人の子供の乳母として十文字家の血統を後世に残した。

そのミシェルの苦労を知っている羅門としては、この以前と変わらぬ「建前男」を凹ます意図もあった。

そして、実力として本当に5秒で十文字克人を殺すことも可能である。

 

転生者たちはチートと共に、前世の経験や知識、実力がそのまま引き継がれている。

アーデルは前世での25年に及ぶ戦闘経験があり、その経験や実力は2095年の今ならば多くの魔法師たちと隔絶した実力と言える。

匹敵するのは転生者と、ごく一部の本物の魔法実力者だけだ。

そしてアーデルの認識では十文字克人は「本物の魔法実力者」には含まれていない。

 

「そういうことです。十文字先輩」

言いたいことを言ってくれた、と藤林奏は内心留飲をさげた。

前世で九島の当主となった従兄が「十文字の石頭」と愚痴ていたことがあったからだ。

 

十文字は眼をつむり小声で「わかった」と答えるのが精一杯である。

事実、資産を動かすには現当主である父の決定が必要であり、十文字克人が出来るのは提案までだ。

ここでの会話は十文字克人の負けである。

 

数分の沈黙。車の走行音だけが流れる。

 

車が急停車する。

助手席の男性護衛が「前方で渋滞です。火災も見えます。ルートを変えて、このまま吉祥寺の国防軍の施設に向かいます」

後部座席の面々に伝える。

「なにが起きた」

十文字克人は誰に聞くでもなく呟く。

それに答えたのはアーデルだった。

「単なる前哨戦。殺し合いのスタート」

 

アーデルの頬や首筋には青白く光る紋様が浮かんだ。

 




十文字先輩が嫌いなわけではない。
ちなみに186cm90kgらしいよ。
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