うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる:その2   作:madamu

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活動報告で4話まとめて投稿したい。と書いた俺よ、ごめん。書いた矢先に投稿するぜ。


La bête du Gévaudan

「ちぃ!」

十文字家の代名詞。ファランクスの光沢ある障壁は四足獣に躱される。

4分前の護衛による吉祥寺への進路変更から、事態は急変した。

 

車内から外部を見るにはモニターに映る外部カメラの映像か、後方の小窓から外を除くしかない。

十文字の放ったファランクス(と言ってもこの場合は射出型の障壁に近い)は精度も悪く、四足獣にあたることはない。

魔法の命中精度には視覚は重要な要素だ。

 

渋滞と火災の原因は4体の四足獣であった。

外見は大型犬なのか、ライオンなのか虎なのか判別がつかない。

車列の先方からまっすぐに第一高校の部活連前会頭の乗る車両に肉薄してきた。

涎も垂らさず、吠えもせず、低くうなり声だけ。

体表は膨張した筋肉が皮膚を突き破り骨格の変容も激しい。血はすでに凝固し、体表にへばりついている。

目立つのは巨大化した牙と爪。

路上に残る小型モビリティ(と言っても優に500kgはあるが)は四足獣に押され脇にズレたり、横転するものもある。

 

(なんだ!あの馬力は!)

十文字は迫りくる4頭の四足獣に息を飲む。

通常の対魔法師戦闘とは違う、動物(?)との戦闘は今まで培ったノウハウをどう使っていいか選択肢が浮かばない。

 

「あれは?!」

十文字は落ち着いた三人に聞いた。

一人焦る自分と比較しても、彼女たちの態度は驚くほどだ。

藤林奏では何事もないようにグラスの中味を飲み干し、グラスをケースに戻す。

ミシェル・フィリオは「お~」とまるで動物園に来た子供のように四足獣を見ている。

1人戦闘態勢に入っているのはアーデル・フォン・羅門だけだ。

 

「”La bête du Gévaudan”パラサイトを憑依させた四足獣の通称」

アーデルの身体には細かい紋様が浮かび上がる。

青白く光る紋様はアーデルを並の男性より遥かに強靭にする。

握力170kg、ベンチプレスは400kgを超える。

アーデルの言葉通り十文字を5秒で殺せる状態だ。

 

運転手はすでに、車列から抜け時速80kmを超えて住宅街の車道を走っている。

周辺には法定速度を超えて走る自家用車に驚く人と、禍々しい赤黒い四足獣に恐怖し叫び声をあげる人の2パターンだ。

助手席の窓から上半身を出した護衛は小型の連射性のあるライフルを撃つが、一頭に1発、2発当たるが怯む様子はない。

 

獣の動きは脊椎動物の運動能力を大きく離れ、まさに魔獣と言っても良い動きであった。

「パラサイト?あのパラサイトか?」

十文字の確認は、確認と言うより混乱に近い。それが混乱に聞こえないのは落ち着いた声のおかげでもある。

「そのパラサイト」

ぶっきら棒にそう答えてアーデルは自分の近くのドアを開ける。

 

「すぐ閉めてよ」

フィリオが風圧でばたつく髪を押さえる。

「おい!らも」

十文字がアーデルの突然の行動に驚きの声をあげるが、アーデルは気のもせず、車両の外へ踊りだす。

 

時速80kmで車外に飛び出て無事には…済んだ。

まるでスケートリンクで滑り出したフィギュアスケーターのようにアーデルは地面を両足で滑る。

1秒間、アスファルト上のスケートをしたアーデルはスカートの下で見えぬ足にさらなる魔法を行使した。

四足獣へ逆走し、一気に間合いを詰める。まずは手近な前足の肥大化した一頭。

 

アーデルは拳に想子を集中させる。

彼女が習い覚えた術では「fam」という技術である。

「らぁ!」

声とともにいきなりの反撃に一瞬体をこわばらせた獣が頭部を思いっきり殴られる。

50kg程度のアーデルが高速で近づき一撃を与える。その衝撃は乗用車の突撃と変わらない。

魔法により加重と硬質化された一撃は確実に四足獣の行動能力を奪った。

 

薄手の制服を透けて見えるアーデルの紋様はさらに強く発光し、彼女のスタイルの良さを異様に際立たせている。

残された3頭は速度を緩め、アーデルを囲むように歩を進める。

 

『かかってきな!畜生共!』

アーデルは肉体の外側に想子で作った人型の力場を纏い、東欧の古い言語で獣たちを威圧する。

最大出力ではないがこの人型の力場の状態がアーデルの戦闘状態である。

対魔法師用高速弾でも致命傷は与えられない。

拳銃用弾丸では力場は貫通せず、最大出力であれば12.7mmの徹甲弾さえ容易に防ぎきる。

広範囲の魔法さえ、相当の干渉力がない限りはこの状態のアーデルを毒すことはできない。

少なくとも前世で司波深雪の無差別コーキュートスを防いだ実績もある。

 

3頭はその姿のアーデルに押されやや距離を取り、低い声で唸り睨み続けるしかない。

 

「おい!止めろ!」

車を止めさせて援護に向かおうとする十文字に対して反抗するように車は加速をする。

すでに車内のモニターに映るアーデルは小さい。

怒りと少しの焦燥を漂わせた十文字に対して手櫛で髪を直したフィリオが

「pai、援軍来たよ」笑顔を見せ窓の外を指さす。

 

遠吠えだ。

「狼谷か!」

目まぐるしい状況変化に十文字克人は思考がまとまらない。

(どういうことだ!二科生はどうなっている!十師族以外のルートでどの程度国防、いや魔法師たちの暗部へアクセスしている?いや、狼谷はあの事件から見れば東欧系の血筋ということは「黒い森」に)

狼谷への言及を脳内でした瞬間に車の横を逆走する巨大な影を見た。

 

狼谷一樹の狼形態には二種類ある。

純粋な四足歩行の狼と、二足歩行による「人狼」の二種類である。

今、車の横を通り過ぎたのは四足歩行の狼である。

その外観はまさに巨大な狼である。

前世では「美輪明宏の声じゃない」と突っ込まれたことがあるが、体毛の色は白ではなく濃紺に近い色であり「ガンメタリック」と自称したら「プラモ用の塗料か」とこれも突っ込まれた。

 

巨躯が向かう先は3頭の獣と睨みあるアーデルではなく、アーデルの睨む先にいる情報次元に潜むパラサイトである。

狼谷の嗅覚はパラサイトの存在をかぎ取り、そして牙はそれを噛み殺すことが出来る。

 

『くたばれ!』

暴れまわるアーデルはすでに2頭目を行動不能、つまりは頭を潰したところだった。

彼女への攻撃は力場を貫通させることなく、傷を負わすにはいたっていない。

 

狼谷はアーデルの横を通り過ぎ、近くで横転している小型モビリティーを踏み台に高く飛ぶ。

そして中空に浮く、パラサイトの見えぬ喉笛に食らいつく。

情報次元では小さく波紋が広がる。情報次元レベルでの死だ。

 

その後は作業となった。

意識を共有するパラサイトは一つの情報次元体の死で動きが止まる。

残り2頭の獣も、まるで動揺するように2歩ほどよろめいた。

そこに獣よりも暴虐な少女の形をした小さな嵐が近づき頭を潰す。

肉体を捨てさせられたパラサイトが中空に浮くと、物理世界から干渉する牙により消滅を余儀なくされた。

 

狼谷到着から3分で戦闘は終結した。

「wooo」

低く唸る。アーデルに「俺は戻るぞ」と唸り声で伝えると狼谷は背を向け走り出す。

 

「お腹減った」

アーデルはお腹を抑え十文字に何をおごらせるか思案を始めた。

 

 

「十文字先輩、実戦の経験は」

吉祥寺の国防軍オフィスまであと数分の車内では藤林奏が十文字克人に言葉を投げた。

言葉としては試す意味合いがある。

「正直に言って魔法師同士による戦闘経験は数えるほどしかない」

表情には動揺は出ないが、その言葉は自分の力量不足を痛感している。

魔法師との戦闘も十全な準備と支援、情報を揃えたモノで突発的な戦闘や、偶発的な戦いというモノとは無縁でもあった。

 

「今回の感想は」

「感想も何も、想像を大きく超えるものだ」

再度の奏の質問に、絞り出した声。

十文字克人は、例えば一条将暉や沢木碧等との戦闘では遅れを取る事はないし、勝つだけの自信もあった。

 

しかし四足獣の存在はあまりにも非現実的であり彼の常識と自信に少なくない衝撃を与えていた。

 

「当面の間はこの襲撃に準ずることが起きる可能性があります。護衛をつけられては」

それは提案ではなく、指示や命令の類いのものである。

この2歳年下の少女の方が十文字克人よりさも、荒事に動じていない。

 

「俺だけではないな。学校側にも警備の増強を進言しよう。勿論全国の各校に」

学校を話題に盛り込むことで十文字は自分の立場を再度確認した。自分は十師族で魔法師を守る立場でもあると。

 

それを高校生の強がりとして藤林奏は受け取り、ミシェルはかつての主人の成長の兆しとして喜んだ。

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