うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる:その2   作:madamu

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シリアス


一条将輝

「はぁはぁ」

大きく呼吸を繰り返す一条将輝は、久々の実践訓練で身体を苛めていた。

先週。

9月の第一週に十師族内に「パラサイトの上陸」「大亜連の工作員」の話題が上がり、義勇兵を募る方向に雰囲気が向いている。

 

佐渡での戦闘経験がある将輝自身、求められれば十師族としての責務を果たすべく義勇兵参加を希望していた。

父親からは「今度はそうはなるまい。国防軍も積極的に動いている様だ」と話され、佐渡防衛とは違い蚊帳の外に置かれた気がしないでもなかった。

 

「どうした?バテたか」

「馬鹿を言え。このくらいでちょうどいい」

さほど呼吸が乱れていない兵介が声をかけて来る。

将輝も強がって言葉を返す。

 

運動場のランニング用コースには呼吸を乱す三校生たちが疲れに負けて寝転がっている。

少し後ろには吉祥寺真紅郎が疲れの為寝転がり大きく早い呼吸をし、時折「つ…か……た」と呟く。

 

有志による訓練は最後のハイポート(ライフル持ったままのランニング)も終わり、兵介と将輝を除く各人はよろよろライフルと同じ重量に型抜きされたラバーボードを持ち上げ校舎へ戻っていく。

 

体力面で言えば三校No.1は黒城兵介。

一条将輝も入学当初は体力気力とも一年生ではNo.1と自負あったが、実際に入学すると黒城兵介が居りその自信は早々に崩された。

だがそれで腐るような男ではなかった。

身体を鍛え直し、学問に勤め、学内自治にも参与した。

結果「最強は黒城兵介、最高は一条将輝」と呼ばれるほどの1年生となった。

 

「ジョージ、起きろよ」

「ま…さき…」

今にも死にそうな真紅郎はラバーボードを力なく兵介に投げつけつつ、差し出された将輝の手を握った。

 

一般男子生徒と比べる吉祥寺真紅郎の体力は並だ。

無論一条将輝の参謀としては格闘戦や魔法戦などでは非凡ならざる部分を見せるが、いかせん持久力という点についてはまだまだである。

 

「復帰してすぐに実践訓練なんてやるから」

しょうもない奴だなと言わんばかりの笑顔で真紅郎を起こす将輝。

九校戦モノリスコード新人戦では三人とも活躍したが、吉祥寺真紅郎がマッチアップした相手が悪かった。

四葉光夜は仁王立ちのまま真紅郎の魔法を悉くキャンセルし続けた。

必殺の不可視の魔弾も、それを発展させた不可視の散弾、隠し玉として準備した「荷重砲撃」も一切通用しなかった。

ちなみに「荷重砲撃」は兵介からのアイデアを具体化したもので、魔法大全(インデックス)への登録も予定されている。

 

荷重砲撃は視界範囲内の任意点から数mの重力子を活性化し通常の数倍~数十倍の重力を対象に与える魔法だ。

「重力子プラス」の活性化は理論的には証明したが(真紅郎自身が)、そこから発展した「不可視の魔弾」に続く

カーディナルコードを利用した純粋な攻撃魔法である。

 

自信作を容易に潰され、真紅郎は動揺したところを四葉光夜の行った「雷電」と名付けられた魔法で気絶してしまった。

その後夏休み期間中は秋に向けての研究の再開により、まともな運動は今日が久々だ。

 

「体が鈍ったままだと健康に悪いからね」

立ち上がった真紅郎。

身長で言うと3人中で最も低い。

低いと言っても高校1年生の平均身長と比べると若干程度の低さで、高1で180cm近い一条将輝と180cmを越える黒城兵介が育ちすぎとも言える。

 

「今週末には金沢基地で訓練会があるらしいがどうする?」

「パス。そろそろ論文の装置が来るから調整始めないと」

兵介がラバーボードを玩びながら今週末の予定を言うと、真紅郎は「もう勘弁」といった表情で週末の予定を伝える。

 

「まったく、高校生活しながら義勇兵参加も楽じゃないな」

将輝はその端整な顔立ちに疲労の影を見せた。

就学時間を除くと一条将輝の1日は想像以上に忙しい。

父の十師族として役割の名代。

地元の国防軍基地で行われるミーティングへの出席。

意見表明する機会は少ないが一条の次期頭領が参加することで、ミーティングへの参加率は上がる。

この辺りの人間心理については将輝自身あまりわかっていない。

「必要な人間を会議に出席させるには、より重要な人物が出席すれば出て来ざるえない」とは父剛毅の言葉だ。

 

父は父で京都の魔法師協会本部に顔を出したり、横浜の関東支部に行ったりと移動距離なら将輝の何倍も動いている。

 

「親父の名代と言ってもな」

今はまだメッセンジャー程度だがこれから先を考えると、国防軍との顔繋ぎは重要な仕事だ。

「まあ国防軍と上手くやれば金沢は安心だろ」

あっけらかんと考え無しのように将暉の言葉に返したのは兵介だ。

 

前世では国防海軍海兵大隊を指揮した男はこの辺りの「顔繋ぎ」を思いの外重視していた。

 

なんやかんで前線視察に来た四葉光夜、後方支援として西日本の治安維持政策に尽力した九島光宣こと桜井光宣。

逆に関東防衛を重視して関東圏から離れない十文字、陰謀毎には余念のない七草。

 

前線で体を張った兵介としては現場レベルで話の通じる光夜や光宣は非常に助かった。

反面、十文字や七草は安全圏での策動というイメージが抜けない。

 

「光夜、もう少し丁寧にやれよ」と光夜の魔法行使後に文句を言った事もある。

上陸予定の海岸線に仕掛けられた地雷を全て連鎖的に爆発させたときは、白く美しい砂浜が焦げて、景観が台無しになった。

「分隊長、あの四葉と知り合いなんですね」と恐る恐る聞かれた事もあった。

 

兵介の知る前世の将輝は四葉の動向に振り回され、十文字の頑固に苦労していた。

一条の頭領としての苦労を感じながら薄く笑う何とも渋い男になった。多少額が広くなったが。

 

「それよりも委員会どうするんだ」

学内組織の掛け持ちが多い将輝としての悩みの種は父親の名代による学内組織の会議の欠席が多いことである。

兵介の言葉に将輝は苦い顔をした。それは次の言葉を言う為のちょっとした罪悪感である。

「代わりに頼む」

 

整った顔立ちに、スポーツマンとした身なり、家柄、学力、魔法師としての実績と実力。

一条将輝という少年は「息抜き」「ちょっとした手抜き」といったものとは無縁の人生だったせいもあり、こういった人にモノを頼む際には今二つ苦手だったりする。

 

「ええ~、昼飯3回」

「高すぎじゃない」

「女子から将輝がどこにいるか聞かれて、失望されるの俺だよ。悪くないのに」

兵介の要求に真紅郎が異議を唱えるがその対価の真意を聞くと真紅郎は頷いた。

 

将輝は校舎に向かいながら兵介に「そのうち払う」と言わんばかりに手を振る。

この後は三年生と論文コンペティションの警備に参加について話をする予定だった。

 

夕刻の校舎には部活や委員会活動、自己の研究で残る者。

それなりの人数が残っていた。

 

夕陽は校舎を朱に染める。

三人のいる第二運動場から少し離れた第二研究棟から声がした。

最初は女生徒が実験で驚いたか、はしゃいだかと思われた。

だが叫び声の次には誰かを呼ぶ声、そしてまた叫び声。

 

そして一人の悲鳴から連鎖し、二人、五人、十人と驚愕と恐怖の声が広がっていく。

 

「なんだ!」

複数、それも助けを求めるような叫び声。最初気付いたのは兵介。

「将輝!兵介!職員室でCADを取ってこよう!」

次に声を出して行動を示したのは真紅郎だった。

 

三校の歴史に残るパラサイト襲撃事件である。

 

「クソ!」

(最悪だ!)

声に出した短い悪態と同義を心の中でも呟く。

 

既に状況は黒城兵介の想定以上になっていた。

パラサイトの強襲。

これは昨晩、いや今日の未明に関重蔵から伝えられたことで対応方法を検討し始めたところだ。

学校の距離的に近い高村マリアに情報次元での防衛術式を知る古式魔法師紹介してもらうこと。

もう一つは司波雪光の秘密道具を貸出てもらうこと。

雪光の方は今朝連絡を入れ、昼には「夜には持ってく」とのことだった。

 

すでにパラサイトに憑依された女生徒は研究棟を暴れ尽くした。

霊子を吸われ昏倒した生徒は二桁にのぼる。

 

兵介の目の前では真紅郎の不可視の魔弾をその大量の想子で防ぎ、将輝から照準を外すように校内を走り回る。

 

女生徒の生命活動を止め、パラサイトを情報次元に追い出すのは容易だ。

しかし、その姿を認識し止めを刺す手段が兵介には無い。

正しくはそれを行う装備が無い。

 

憑依された女生徒は狙いをつけさせないように左右に体を振り真紅郎に肉薄する。

 

「下がれ!」

障壁を展開し、女生徒と真紅郎の間を分断する。

だが、相手はパラサイトだ。

障壁を切り裂くといった真似が可能なのだ。

兵介は腕を伸ばして、真紅郎の上着を捕まえ後方に投げる。

「うわっ!」

真紅郎は数メートルは投げられる。

「兵介!お前も距離を!」

パラサイトの詳細な能力や習性を、知らない将輝は拳銃型CADを向け牽制する。

 

「将輝!弾をちらして牽制!」

兵介は後にジリジリと下がる。

将輝の発するCADからの想子の波動を感じつつ、障壁のキャンセルのタイミングを見計らう。

 

女生徒は唸り声を上げ、展開した障壁を叩く、叩く。

障壁越しでも彼女の体格以上の圧力を感じる。

 

「一条君!」

廊下の後方から二人の生徒が来た。一人は風紀委員。もう一人は生徒会だ。

「先輩!妖魔です!」

 

一条将輝の判断は速かった。

生徒会所属の男子生徒は九州から県外留学生で神道、それも高千穂の流れを汲んでいる。

「退魔でも、破魔でなんでもいいです!何か対応を!」

 

そう言われた男子生徒は「お、おう」と驚きながらも低く静に言葉を紡ぎ出す。

 

後の事情聴取の際に判明するが、男子生徒の家で伝えられる神楽の際に使われる祝詞で「神に舞いを舞うことを伝え、破魔を祈る」という主旨のモノである。

 

10秒、20秒と時間が流れると女生徒は障壁を叩くのを止めて、手近な窓から飛び出す。

将輝は女生徒に向かってサイオン弾を数発撃ち込むが、女生徒はそれを払い落とし、学校の敷地から抜け出す。

 

「クソ!警察と国防軍に連絡を!至急に!」

 

一条将輝の言葉は即座に実行され、5分とたたず警察と救急が到着し10分後には金沢基地から魔法師中隊と数名の分析官が到着した。

 

その後に一条剛毅も到着。

「今、非常線が張られた。将輝、辛いだろうがお前も手伝え。真紅郎、黒城くん、二人も頼む」

そう伝えた。

 

広域の警戒は48時間続き、168時間後にはその警戒網は解かれた。

 

意識不明の生徒は18名。

 

一条家は正式にパラサイト探索の任を十師族会へと願い出た。

 

そして、金沢には一条剛毅を中心に調査隊を結成。

他の十師族との連携のための名代として一条将輝を東京に派遣した。

 

副官として吉祥寺真紅郎。

護衛として黒城兵介。

 

三人は一時的に一校に学び舎を移した。

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